2006/05/07

小田原紀行

  5月3日水曜日に、バイクで小田原へツーリングに行ってきました。 「連休には、無理にでもどこかへ出かけた方が、その年の思い出が出来て良い」という自己方針があるのですが、一月の脱臼以来、バイクに長時間乗るのが怖くなっていたので、日帰り出来る近場を選んだ次第。

  沼津と小田原は、地図で見ると非常に近いですが、間に≪天下の険≫箱根が横たわっているので、おいそれとは行けません。 箱根越えは、距離的には全く大した事はありませんが、走り屋好みの山道が続くので、一般のドライバーやライダーにとっては未だに天下の険なのです。 実際に走り屋が出没する夜間には近寄る事もできませんし、昼間でも、道そのものの怖さは減じません。 国道246号を通って、箱根を北回りで迂回すると、気分的には楽ですが、時間が倍以上かかります。 どっちも嫌だったんですが、「なーに、ゆっくり走れば大丈夫だろう」と思い切って、箱根コースを選びました。 以下、写真で解説。


☆ 箱根の芦ノ湖。 一昨年の夏の経験から、箱根越えは寒いと踏んで、合羽を上だけ着て行きました。 案の定、強烈に寒く、ズボン一枚の下半身から震え上がりました。 天気は上々で、新緑の山並みが美しかったです。


  ゴールデンウイーク中の事とて、渋滞を警戒して、朝6:30に家を出たんですが、ものの一時間で箱根を越えて、あっさり小田原市域に入ってしまいました。 早過ぎて、どこの観光施設も開いていません。 やむなく、小田原の西にある石垣山に登り、石垣山城址で時間を潰しました。 前に一度来た事があるんですが、静かで景色もよく、ピクニックには大変適した所です。


☆ 戦国時代末、豊臣秀吉が小田原攻めの時に作ったのが石垣山城址です。 北条氏は最後の抵抗者でしたから、小田原攻めには秀吉に恭順した全国の大名が集まりました。
 ここは二の丸。 芝生の手入れが行き届いています。

☆ 井戸廓。 小高い山の上にある城なんですが、掘ると水が出たようです。 これだけ掘るには大変な労力が必要だったでしょう。 しかも、斜面は全て石垣で覆われています。 普通、山城には石垣を使わないんですが、秀吉が強引に作らせたようです。

☆ 石垣山から見た、箱根湯本。 正月の箱根駅伝は、この辺を通過していきます。

☆ 石垣山から見た小田原市街。 この写真では分かりませんが、肉眼だと小田原城が見えます。 という事は小田原側からもここが見えるわけで、北条氏を威嚇する為に、この場所を選んで城を作ったわけですな。

☆ 本丸には、スズランがたくさん植えられていました。 誰が手入れしているのか知りませんが、相当マメな人達なんでしょう。 小田原市は観光に力を入れてるんですなあ。

☆ ≪危険! 石垣が崩れ落ちる恐れがあります≫
 間の土が抜けてしまって、崩落寸前です。 ≪石垣山≫の名の由来は、この城が石垣で覆われたからだそうですが、巨大な城全体を覆う石をどこから持って来たのか、どうやって運び上げたのか、想像もつかぬ話です。


  8:30まで石垣山にいて、それから、最初の目的地の≪生命の星・地球博物館≫に向かいました。 石垣山の麓にあるので、すぐに到着してしまい、入り口前で15分くらい待ちました。


☆ えらい立派な建物です。 ここは小田原市立ではなく、神奈川県立なので、金のかかり方が違うようです。 この広大な入り口前広場は無駄なように気がしますが、このくらい距離があった方が、建物が美しく見えるのは確かです。

☆ 未来的な雰囲気。 こういうデザインの建物を現実に建てられるのは、役所とパチンコ屋くらいのものでしょう。


  9:00を待って入館。 料金は、大人一人510円。 10円ってのは何よ? 県立だけあって、女性の受付係も美人ばかり集められています。 ただし、ガイドのような人はいません。
  ここは一口で言うと、地学と生物学の博物館です。 展示品は、模型や標本、解説パネル、ビデオなどで、生き物はいません。

☆ 中は三階建て分の高さがある大空間になっています。 あまりにも大き過ぎて、地震には弱そうですが、博物館はこのくらい大きい方が、非日常的な雰囲気があって良いです。 

☆ 地球の火山分布。 思った通り、日本列島は火山だらけです。

☆ 巨大な水晶の結晶。 中が光っていますが、もちろん、かぐや姫ではなく、ライトで照らされているだけです。 それにしても大きい。 買えば高そうです。

☆ 方解石。 別名、犬歯状結晶。 なるほど犬歯に見えますな。 形と色の組み合わせが神秘的。

☆ 菱マンガン鉱。 どう見てもデキモノにしか見えません。 もし生物コーナーに飾ってあったら、誰も鉱物だとは思わないでしょう。

☆ こういう博物館にはなくてはならない展示物ですな。 アンモナイトの化石。 うじゃうじゃ出土しているようですが、よっぽど繁栄していたのでしょう。

☆ これは何だったか忘れました。 ウミユリ? 違うかな? クラゲみたいですが・・・。

☆ シーラカンスの化石。 体長50センチくらいでした。 

☆ これも、この種の博物館の定番、恐竜の骨格標本。 レプリカですが、大きさを見るだけなら、レプリカで充分です。

☆ 動物の剥製もあり。 よく出来ていますが、剥製というのは生々しくて、あまり好きになれませんな。

☆ 蝶・・・・だという事は見れば分かりますが、これも名前を見て来ませんでした。 写真を撮るのに夢中で、肝腎の説明を読まないというしょーもない観覧者。

☆ わはは! これも名前が分かりません。 変わった羽のつき方ですなあ。 カナードついてまっせ。 大きな虫なので飛行性能がいいとは思えませんが、揚力を補って姿勢を安定させる為に、前翼が発達したんでしょうか?


  一時間ほど観覧して、10:00頃に次の目的地へ。 ほんのちょっと走った所にある、≪松永記念館・老欅荘≫という所。 その昔、≪電力王≫と呼ばれた松永安左エ門という実業家の家だそうです。 見学無料。


☆ 松永記念館。 美術展をやってましたが、大した絵ではありませんでした。

☆ これは、松永安左エ門氏の居宅だった≪老欅荘≫。 いわゆる、数奇屋ですな。 各所に金が掛かっている事が分かります。 敷地は決して広くないですが、趣味の良い贅沢と言えます。

☆ 縁側の上がり石の上に置かれた小石。 「ここから上がるな」という意味でしょうか?


  この後、小田原城に行く予定でしたが、ちょうど、≪北条五代祭≫の武者行列が行なわれる日に当たってしまい、城の周囲は人人人で埋め尽くされていました。 とても、ゆっくり観覧できる状態ではなかったので、城はパスして、市街地から北に抜け、山の中にある、≪辻村植物園≫に向かいました。 しかし、ここは、梅や桜の名所らしく、季節外れで何も見る物がありませんでした。


☆ ここが植物園の中心らしいです。 写ってませんが、ユーカリが何本か植えられていて、異国情緒を醸し出していました。


  隣接して、≪小田原こどもの森公園≫があり、そこにも行きましたが、名前の通り、子供が遊ぶ所でした。 早々に退散。


☆ ミニ列車の駅。 結構賑わってました。 しかし、大人が一人でうろうろしていると、変質者と間違われそうな雰囲気があり、長居できませんでした。


  次に行ったのは、更に北にある、≪小田原フラワーガーデン≫。 ここで昼を食べるつもりでしたが、思ったより小さな施設で、その割に人が多く、落ち着いて食事が出来るような雰囲気ではありませんでした。 ≪トロピカル・ドーム≫を除くと、園芸品売り場と小さな食堂があるだけで、ちょいとショボい観光地でした。


☆ ≪トロピカル・ドーム≫は有料ですが、外からも見えるので、わざわざ入る必要も無かろうと思って、パス。

☆ 藤棚がありました。 少々房が短いですが、色は鮮やかでした。


  さて、今回の旅行の目玉、≪尊徳記念館≫です。 あの薪を背負いながら本を読む銅像で有名な、二宮金次郎は小田原の人だったんですな。 別名が尊徳。 記念館が生家の隣に作られています。
  二宮金次郎は、単に勉強好きの少年だったというだけでなく、成長してから、村や藩の財政建て直しに手腕を発揮し、後には幕府に召し抱えられて、士分にまで上がりました。 その一生を紹介しているのがこの記念館。 五部構成のアニメ・ビデオで分かり易く理解できるように工夫されています。 アニメは一部につき5分程度で、飽きる寸前に終わるようになっています。 もし連続で25分見たら嫌になりますが、5分ずつ見ると次も見たいと思うから不思議。 この記念館を計画した人は相当頭が良いです。 歴史博物館はかくあるべしというお手本みたいな所。


☆ 二宮尊徳の銅像。 ここには薪・読書像はありません。

☆ 生家。  川の氾濫で田畑が流され、両親も亡くなって、この家は人手に渡ってしまったらしいです。 金次郎の努力で田畑は買い戻しましたが、この家は買い戻されることがなく、他の場所へ移築されていたのを、近年になって小田原市が買い取り、元あった場所に戻したのだとか。

☆ 家は、もともと中農の小地主だったそうで、家の間取りは小作農のそれより、少し複雑です。 部屋が仕切ってあるだけでも金があった証拠。

☆ こちらが記念館。 展示室があるのは一階だけで、上は市の文化活動に使われているらしいです。

☆ 展示の一部。 こういう道具や文献の展示は、どこにでもあるので、あまり面白くありません。

☆ 人形発見! いまや、歴史がらみの観光地は、人形がなければ成り立ちませんな。 これは、尊徳さんが、農民を飢饉から救うために、小田原藩の米倉を開けさせている場面。

☆ この人形が一番怖かった。 栃木県さくら村で救済事業をしている時、村人の協力が思うように得られず、悩んだ尊徳さんは、お寺に篭って修行したのだそうです。 しかし、後姿しか見えない人形は怖いで。

☆ ボランティアで、説明係をなさっているAさん。 すいていれば、お客が一人でも案内してくれます。 ウケを狙うような事は一切しませんが、熱意があって非常に分かり易い解説です。
 あまり印象的なので、記念に写真を撮らせてもらいましたが、露出合わせに失敗してしまいました。 まあ、後光で眩しいのだと思ってくださいな。 この方のお蔭で、とても充実した旅になりました。


  これで帰る予定でしたが、まだ日が高かったので、帰り道に二ヶ所ばかり寄り道をしました。 一つは、≪県立21世紀の森≫。 でも、ここはハイキングをする所でした。 森林館や木材工芸センターなどがありましたが、さほど見るべきものは無し。


☆ 森林館の前にあった荷車。 展示用です。 これで材木を運んだとすると、山道は登りも下りも地獄だったでしょうな。


  もう一ヶ所は、246号のすぐそばにあった≪洒水の滝≫。 ある事は知っていましたが、見に行ったのは初めて。 無料駐車場の脇にバイクを停めて、滝まで歩いたんですが、かなり距離がありました。


☆ 落差が大きく、なかなか見事な滝です。 ごく最近、崩落したそうで、ここから先には行けませんでした。

☆ 滝への道の途中にあったお寺の境内。 なぜか風車を持ったお地蔵さんがずらりと並んでました。 ううむ、不気味だ。 夜には来れんなあ。 もっとも、これが無くても、夜にお寺に来たりはしませんが。

☆ 土産物屋なんですが、すげー所に建ててあります。 半分崖から食み出てるじゃありませんか。 展望台だって、もうちょっとしっかり作りますぜ。

☆ 最後に、山の景色で口直し。 この季節の山は命が犇きあっている感じで、生気があって宜しいですな。


  以上で観光はおしまい。 246号線に出て、小山町→御殿場市→裾野市→長泉町→沼津市と走って帰って来ました。 箱根を越えて小田原へ行くより、御殿場から沼津に戻る方が距離が長かったです。

  小田原城に寄れなかったのは残念でしたが、≪生命の星・地球博物館≫は見応えがありましたし、≪尊徳記念館≫も勉強になりました。 これといって気分の悪い事件もなく、まずまず良い旅行でした。