2006/06/25

狂乱の果て

  サッカー・ワールドカップですが・・・・

  実は私、日本チームを応援していなかったので、予選敗退した事に関してはどうでもいいのです。 そもそも、サッカー・ファンですらないのですから、ワールド・カップや国際試合の時だけ応援するなど、資格外応援であり、サッカーに対する冒涜であり、不遜もいい所です。 また、見ていても、どういう所が見所なのか分からないので、面白くないんですな。

  そういうわけで、選手を責める気持ちなど毛頭なく、ましてや、ジーコ監督の采配を云々する事など考えた事もありません。 五輪の時によく言われる言葉ですが、スポーツは参加する事に意義があるので、全力でやったのなら、結果がどうだろうが、それで充分だと思います。

  ただ、マスコミの報道や応援団の狂乱ぶりに対しては、文句が山ほどあります。 まるで、戦争中かと思いましたよ。 大本営発表が無いだけで、マスコミが大衆を扇動して狂気に追い立てている様子は、そっくりでした。 寄せ書きした日の丸は振り回すは、頭には≪神風≫の鉢巻きするは、さながら悪夢を見ているよう・・・・。 恐らく、一試合でも勝っていたら、提灯行列もやったに違いありません。 日本社会というのは、全然進歩なんかしちゃいないのです。

  まず、マスコミですが、嘘を言って大衆を誘導するのはやめた方がよいでしょう。 

「豪州はパワーだけ。 技術的には日本の方が遥かに上だ」

  一体、どこをどう見て、こういう分析をしたのかが分かりません。 一体、その≪技術≫とやらは、なんの役に立つの? 点を入れられない技術なんて持ってたってしょうがないじゃん! スポーツ記者のくせに、サッカーの戦術理論について何も知らんのだろう! 知らないなら、大言壮語するもんじゃないぜ。 

「クロアチアは初戦の日本を見て油断しているから勝てる」

  あのねえ、クロアチアも初戦で一敗してるんですよ。 第二戦も負けたら、その時点で敗退決定ですわ。 そんな状況で、油断なんてしてるわけないでしょうが! 本当にスポーツ大会の駆け引きが分かってるんでしょうか? 自分がクロアチアの立場だったら、油断するか? 

「ブラジルに2点差で勝てば、予選突破できる」

  このコメントは、単なる勝ち点計算に過ぎないように聞こえますが、ありえない事を日本のマスコミ全部が唱えていると、異様な雰囲気が漂ってきます。 まるで、2点差でブラジルに勝つ事が起こり得るかのように喋っているわけですが、そんな事は、ごくごく常識的に考えれば、絶対に、金輪際、たとえ天が落ちようとも、死者が全員蘇ろうとも、あり得ないと分かるはずです。 あり得ない事が条件になっている場合、少しは言葉を濁した方がよいです。 マスコミが口にすれば、大衆は信じ込んでしまうからです。

  そういや、開会前にはもっと凄い事を言ってましたな。

「日本代表は、優勝も狙えるチームだ」

  もはや、狂っているとしか思えませんな。 そんな気違い沙汰を、プロの解説者が大真面目に口にしていたんですぜ。 1998年のフランス大会の時も、同じような状態になり、3戦全敗で終わった後、新聞に、「冷静な分析もせずに煽り立てるのはよそう」という意見文が載ったりしましたが、マスコミの面々は、そんな指摘には馬耳東風、まったく同じ事を繰り返したわけです。 これは愚かも愚かですが、確信犯的な所もあると思います。 騒げば騒ぐほど視聴率が上がり、新聞・雑誌が売れるので、結果がどうなろうが、大嘘つき呼ばわりされようが、煽りまくった方が得と判断したのでしょう。

  マスコミの中にも、本当のサッカー好きはいるようで、こういう人達は日本チームだけを応援したりしません。 世界のトップ・プレーヤーの妙技を見れるワールド・カップを心行くまで楽しんでいます。 本来、サッカー・ファンというのはそうあるべきでしょう。 またこういう人達の解説は、門外漢が聞いていても、大変面白いです。 素人では気付かない見所を教えてくれるんですな。 「この選手のこのプレーは凄いですよ」と映像で示されると、確かに凄いので、思わず感心してしまいます。 「ニッポン!ニッポン!」騒いでいるだけの薄らトンカチ解説者達には、今回を最後に引退してもらいたいものです。 特に「絶対勝つんです!」とか怒鳴っている連中ですが、本当にもう出てこなくていいからよ。 な。 うるさいだけで、邪魔だ。

  次に、応援団ですが・・・・あー、ここから先は≪激怒モード≫に入るので、温厚な性格の方は、読まないで下さい。

  とにかく、みっともない! 普段、J・リーグの試合なんぞ見にも行かないくせに、日本代表の試合の時だけ、サッカー・ファンに化けるのはよせ! 下品極まりない! 一体、お前らは何者なんだ? いいか、本当のサッカー・ファンは、ブラジルの選手がプレーしているのを見ただけで、うっとり見惚れてしまうものなんだ。 自国チームの応援なんてしてる場合ではなくなってしまうんだ。 お前らの中の一人でも、そんな気分になった者がいるか? 最初から最後まで、「ニッポン!ニッポン!」怒鳴ってただけだろうが? そんなのは、サッカー・ファンとは言わないんだ。 ただのナショナリストだ! つい先年、「スポーツに政治を持ち込むな!」とか何とか聞いた風な事を抜かしていたのは、お前らではなかったのか? 自分の姿をよく見よ! その民族主義で凝り固まった醜い姿を! サッカーなんぞやった事もないくせに、代表と同じユニフォーム着て、顔に日の丸描いて、なんなんだ、その様は?

  0泊2日ツアー? アホか! ワールド・カップを観戦する資格が無いばかりか、開催国に足を踏み入れる資格も無い! お前らみたいなのに来て欲しくて、どの国も一生懸命誘致しているわけじゃないんだ。 試合だけ見て帰るなら、どこでやっても同じじゃないか! 最低の入国者だな。 不法就労者より性質が悪い。 ドイツという国に、一片の敬意も持っていないのだろう?

  「ブラジルに勝つ!」とか軽々しく言っていた奴・・・・お前ら、サッカーの国際勢力図を全然知らないんだろう? 掛け声だけでブラジルに勝てるくらいなら、どの国も苦労はせんわ。 もしかしたら、ブラジルについて、「ただの南米の国」くらいしか知識を持ってなかったんじゃないか? そうでなければ、「勝つ!」なんて言葉が簡単に出るわけがないものな。

  あー、すっきりした! 実はここ半月、もっともっと、ムカムカしていたんですが、これ以上爆発させると、血圧が上がって脳溢血でも起こしかねないので、この程度にしておきます。

  でも、今回、最終戦がブラジルで良かったと思います。 いくら大馬鹿な応援団でも、力の差がどれだけあるか、思い知ったでしょう。 後半戦なんて、動いているのはブラジルの選手だけで、日本選手はボールを取りに行く事も出来ない有様だったですからね。 これでもまだ「勝てた試合だ」なんて言う奴がいたら、それはもう本当の狂人です。 いや、いそうだから困るんですがね。

  前回2002年の時、このコラムで、「2006年には、日本代表は日本サッカー史上最も強くなると思うが、その後、J・リーグ・ブームの時にサッカーを始めた選手達が第一線から外れてしまうので、力は落ちる。 2006年大会は、恐らく日本にとって最後のワールド・カップになるだろう」と書きました。 今回、ジーコ監督が若手を連れて行かなかった事がいろいろと取り沙汰されましたが、もし、「戦力にならない選手を連れて行く余裕が無い」と判断したのだとしたら、今の若手はすでにレベルが落ちているいう事で、もはや日本のサッカーに先は無いという事になります。 今回、アジア勢はすべて予選敗退したので、次回は出場枠が減る事が予想され、本当にこれが最後になるのかもしれません。

  日本チームを強くするためには、優れた選手を育てるしかなく、その為には国内のサッカー熱を盛り上げて、選手の裾野を広げるしかないんですが、さて、今回狂乱した応援団どもが、J・リーグを見に行きますかね? 行かないと思いますねえ。 だから、似て非なるファンなど、価値が無いというのですよ。

  オマケですが、韓国-スイス戦を見ていて、つくづく思い知らされた事があります。 選手個々の動きや、パスの回り具合などを見ると、韓国は日本より明らかに強いと思いましたが、その韓国ですら、スイスに勝てるように見えなかったのです。 これにはショックでした。 もし、人種の違いによる壁があるとしたら、やる気も何も失ってしまいます。 サッカーがマイナー・スポーツに過ぎない日本なんぞ、何十回出場しても予選突破など夢のまた夢でしょう。