濫読筒井作品 ⑥
≪壊れかた指南≫ 01~04
最も新しい単行本です。 発刊からまだ三ヶ月しか経っていませんが、奇跡的に図書館の書架で見つけました。 いや、奇跡なのか、それとも内容が悪くて予約者が少なかったのかは分かりませんが・・・。
目次の分類に従えば、短編20作とショートショート10作を収録してありますが、作品数の多さから見ても分かるように、いずれも短編というほどの長さはなく、すべてショートショートと言った方がよいと思います。 筒井さんの作品に限りませんが、相変わらず、短編とショートショートの境界は曖昧としていますな。 というか、星新一さん亡き後、ショートショートという言葉自体が使われなくなったような傾向あります。 いずれは短編というジャンルに統合されてしまうのでしょう。
で、内容なんですが・・・・これがねえ、あまり感心しないんですよ。 全般的に≪未完成≫、或いは≪作りかけ≫、物によっては≪出来損ない≫とまで言っても、まだ誉め過ぎのようなひどい作品もあります。 ≪天狗の落し文≫にも、同じような雰囲気がありましたが、こちらは作品としての体裁を取っているだけに、半端ぶりがより際立っています。
最初の一編の、≪漫画の行方≫という作品の中に、「人気作家になると、てなぐさみに描いた漫画でさえ売れるようになる」といった文が出て来るのですが、それは客観事実である以前に、作家の傲慢意識の現われであり、「そんな事は、たとえ腹の底で思っていても、書くべきではないのではないか?」と首を傾げたくなります。 更に読み進むうちに、この短編集全体が、てなぐさみである事に気付き、落胆の度がますます深まります。
筒井さんが読者に媚びるつもりがない事は、≪朝のガスパール≫や≪読者罵倒≫で承知の上ですが、≪壊れかた指南≫は、読者に媚びないというより、作品を作るという姿勢を捨ててしまっており、とてもじゃないが、高い評価は出来ません。 「この程度の半端作品でも、集めて本にすれば、作者の名声だけで売れるだろう」という打算が透け透け。 ≪読者罵倒≫をゲラゲラ笑って読んだ読者でも、≪壊れかた指南≫では、あまりのひどさに憮然としてしまうに違いありません。
全般的にひどいですが、はっとさせられるような拾い物もちらほら無いではないです。 完成度が高いのは、≪大人になれない≫、≪狼三番叟≫、≪逃げ道≫の三話。 特に、≪大人になれない≫は優れています。 意外な結末へ持って行く話の操り方が巧みで、筒井さんならでは書けない作品になっています。 ≪狼三番叟≫は、オチというオチは無いのですが、筒井さんの体験と夢想がうまく融合していて、内容が詰まった普通に高品質な作品です。 ≪逃げ道≫は、登場人物を突き放したような終わり方がショッキングで面白いです。 短いですが、純文学の作法に則った切れのいい作品といえるでしょう。 他に、強いて挙げるなら、≪TANUKI≫なども、話の展開が軽快で面白いのですが、オチだけが弱いのが惜しい所。
他にも一応の起承転結をつけてある話はありますが、いずれも本体とオチのバランスが悪く、途中まで書いて飽きてしまい、適当なオチで無理やり終わらせてしまったと思しき作品が多いです。 中には、≪稲荷の紋次郎≫のように、作者自ら、「これ以上書いても面白くならないからやめる」と開き直っているものもありますが、こんなのは問題以前に問題外で、そんな未完成作品は、発表どころか、家族に見せるのも控えるべきでしょう。 作家というのは常に新しい読者を獲得して行かなければジリ貧になるわけですが、もし初めて筒井作品を読むという少年が、この本を手にしてしまったら、≪稲荷の紋次郎≫あたりで、「馬鹿馬鹿しい。 駄目だ、こんな作家は」と放り出すのは疑いありません。
筒井さんは、どうも小説家という職業に飽きてしまっているようですが、「筒井康隆という人物は、小説家としてしか評価されない」という事を再認識して、危機感を新たにした方が良いと思います。 出来損ないの短編を本にして出版しているようでは、今までに築いた名声すら失いかねません。 読者は作家を見限る時は早いで~。 しかも一旦見限ると、それまで敬愛していた反動で憎悪しますからねえ。 全く売れなくなってから、原点に立ち戻ったって、逃げた読者の半分も戻ってこんと思いますぜ。
そういえば、≪パプリカ≫が、今敏監督の手でアニメになるそうですな。 これには大いに期待できそうです。 もっとも、小説の出来がこれ以上ないくらい良いので、アニメに期待しすぎると肩透かしを食らう恐れがありますが。
最も新しい単行本です。 発刊からまだ三ヶ月しか経っていませんが、奇跡的に図書館の書架で見つけました。 いや、奇跡なのか、それとも内容が悪くて予約者が少なかったのかは分かりませんが・・・。
目次の分類に従えば、短編20作とショートショート10作を収録してありますが、作品数の多さから見ても分かるように、いずれも短編というほどの長さはなく、すべてショートショートと言った方がよいと思います。 筒井さんの作品に限りませんが、相変わらず、短編とショートショートの境界は曖昧としていますな。 というか、星新一さん亡き後、ショートショートという言葉自体が使われなくなったような傾向あります。 いずれは短編というジャンルに統合されてしまうのでしょう。
で、内容なんですが・・・・これがねえ、あまり感心しないんですよ。 全般的に≪未完成≫、或いは≪作りかけ≫、物によっては≪出来損ない≫とまで言っても、まだ誉め過ぎのようなひどい作品もあります。 ≪天狗の落し文≫にも、同じような雰囲気がありましたが、こちらは作品としての体裁を取っているだけに、半端ぶりがより際立っています。
最初の一編の、≪漫画の行方≫という作品の中に、「人気作家になると、てなぐさみに描いた漫画でさえ売れるようになる」といった文が出て来るのですが、それは客観事実である以前に、作家の傲慢意識の現われであり、「そんな事は、たとえ腹の底で思っていても、書くべきではないのではないか?」と首を傾げたくなります。 更に読み進むうちに、この短編集全体が、てなぐさみである事に気付き、落胆の度がますます深まります。
筒井さんが読者に媚びるつもりがない事は、≪朝のガスパール≫や≪読者罵倒≫で承知の上ですが、≪壊れかた指南≫は、読者に媚びないというより、作品を作るという姿勢を捨ててしまっており、とてもじゃないが、高い評価は出来ません。 「この程度の半端作品でも、集めて本にすれば、作者の名声だけで売れるだろう」という打算が透け透け。 ≪読者罵倒≫をゲラゲラ笑って読んだ読者でも、≪壊れかた指南≫では、あまりのひどさに憮然としてしまうに違いありません。
全般的にひどいですが、はっとさせられるような拾い物もちらほら無いではないです。 完成度が高いのは、≪大人になれない≫、≪狼三番叟≫、≪逃げ道≫の三話。 特に、≪大人になれない≫は優れています。 意外な結末へ持って行く話の操り方が巧みで、筒井さんならでは書けない作品になっています。 ≪狼三番叟≫は、オチというオチは無いのですが、筒井さんの体験と夢想がうまく融合していて、内容が詰まった普通に高品質な作品です。 ≪逃げ道≫は、登場人物を突き放したような終わり方がショッキングで面白いです。 短いですが、純文学の作法に則った切れのいい作品といえるでしょう。 他に、強いて挙げるなら、≪TANUKI≫なども、話の展開が軽快で面白いのですが、オチだけが弱いのが惜しい所。
他にも一応の起承転結をつけてある話はありますが、いずれも本体とオチのバランスが悪く、途中まで書いて飽きてしまい、適当なオチで無理やり終わらせてしまったと思しき作品が多いです。 中には、≪稲荷の紋次郎≫のように、作者自ら、「これ以上書いても面白くならないからやめる」と開き直っているものもありますが、こんなのは問題以前に問題外で、そんな未完成作品は、発表どころか、家族に見せるのも控えるべきでしょう。 作家というのは常に新しい読者を獲得して行かなければジリ貧になるわけですが、もし初めて筒井作品を読むという少年が、この本を手にしてしまったら、≪稲荷の紋次郎≫あたりで、「馬鹿馬鹿しい。 駄目だ、こんな作家は」と放り出すのは疑いありません。
筒井さんは、どうも小説家という職業に飽きてしまっているようですが、「筒井康隆という人物は、小説家としてしか評価されない」という事を再認識して、危機感を新たにした方が良いと思います。 出来損ないの短編を本にして出版しているようでは、今までに築いた名声すら失いかねません。 読者は作家を見限る時は早いで~。 しかも一旦見限ると、それまで敬愛していた反動で憎悪しますからねえ。 全く売れなくなってから、原点に立ち戻ったって、逃げた読者の半分も戻ってこんと思いますぜ。
そういえば、≪パプリカ≫が、今敏監督の手でアニメになるそうですな。 これには大いに期待できそうです。 もっとも、小説の出来がこれ以上ないくらい良いので、アニメに期待しすぎると肩透かしを食らう恐れがありますが。
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