2006/04/10

政党の分類

写真と文章は無関係です。
  どうも、政治向きの事を書くと、アクセス数が普段の数倍に跳ね上がる傾向があります。 私は、そんな時だけ覗きに来る人達を、非常に胡散臭いと思っているので、あまり立て続けに書きたくないんですが、今回はタイミングが重なってしまったので、渋々書きます。

  ≪メール問題≫による大混乱の後、民主党の新代表が決まりましたが、誰がなっても政権を取るのは容易ではないでしょう。 政治は水物なので、何が起こるか分からず、全く不可能だとは言いませんが、今のままでは、とても自民党に勝てないでしょうなあ。

  民主党が危機に陥ると、必ず自称識者どもが新聞やテレビに登場して、≪これからの民主党に望む事≫を語り出します。 「社会格差問題で自民党を攻めよ」とか、「イラクからの自衛隊撤退を主張して、国民の支持を集めろ」とか、「周辺諸国外交を重視して、閉塞した現状を打破する道を示せ」とか・・・・。 これらの助言・要望の数々を聞いて感じるのは、「よくもまあこれだけバラバラな事を、一つの政党に期待できるものだな」という呆れです。 つまる所、自民党がやっている事以外の事をすべて民主党に求めているのであって、民主党にアイデンティティーなど、全く望んでいないんですな。

  身近な例にたとえると、「町内会長が気に食わないので、次期会長は、現会長以外の人物なら、どんな人間でも構わない」といった発想に似ています。 しかし、そんないい加減な動機で、バラバラな支持を集めてなりたっている政党が、一枚岩に近い支持者に固められた政党に勝つのは至難の技でしょう。 民主党の支持者には、≪二大政党制≫を標榜している人が多いと思いますが、数だけ集めて、「はい、二大勢力です」と言ったところで、一方が寄せ集めでは、政権のやりとりなどとても無理です。

  結党以来、今に至るまで、民主党には、これといって決まった考え方があるように見えません。 アメリカ風に言うと、自民党は共和党型ですが、では日・民主党は米・民主党型なのかというと、そんな事は無く、類似点はほとんどありません。 米・民主党は進歩自由主義(リベラル)ですが、日・民主党は、どう贔屓目に見ても、リベラル政党とは言えません。 リベラル政党に、前原前代表のような保守主義者がいたら変でしょう? しかも一度は選挙で代表に選ばれたという事は、党内で過半数の支持を得ていたという事で、民主党の半分近くは保守主義者だという事になります。 そんなリベラルがあるものかね!

  ヨーロッパ風に言うと、自民党は、キリスト教系保守政党に相当すると思われますが、では、民主党が、それに対抗する社会民主主義政党に相当するのかというと、それも違います。 日本で社会民主主義といえば、衰えていますが、社民党がそのものズバリの政党で、民主党には、社会民主主義的なところなどほとんど見受けられません。 民主党の中には、旧社会党系や旧民社党系の議員も多数入っているのですが、彼らは社民主義と袂を別ったから民主党に所属しているのであって、そうでなければ、本来、社民党にいるべき人達でしょう。

  すなわち、民主党は、保守政党の対抗馬と期待されているにも拘らず、リベラルでもなければ、社民主義でもないんですな。 じゃあ、一体何なのよ?

  日本の政治風土というのは昔から極端で、国民のほとんどは主義・思想の分類などにはとんと無知です。 「保守主義の反対は共産主義で、その他の政党は、その中間に位置している」くらいにしか思ってません。 言わば、日本人の政党観は、数直線のように一次元なんですな。 しかし、この世の中には、様々な主義・思想が絡み合って存在しているのであって、二次元、三次元で考えなければ、とてもじゃないが全体構造を理解できません。

  余談ですが、ネット上で政治論議の真似事をしている若者達が、揃いも揃って保守主義的なのは、大笑いです。 ネット論議なんぞに時間を割けるという事は、学生でなければ、ひきこもりやフリーターだと思いますが、職が無くて、自分の食費も満足に稼げないくせに、保守政党を支持してどうするねん? 保守主義においては、経済は自由競争が基本ですから、社会的弱者を助けたりしません。 自分で自分の首を絞めてるのが分からんか? つまりね、政党や主義・思想の分類が、全然分かってないんですよ。 大方、民族主義に幻惑されて、保守政党にくっついて歩いてるんでしょうが、まるで、≪ハーメルンの笛吹き≫の子供だね。 ちったあ、自分の頭で考えろよ。 どうしても保守政党を支持したいというなら、年収が一千万円を超えてからにするんだな。 親に養われてるような半端者に支持されても、政党の方が迷惑だぜ。

  話を戻しますが、私の観察では、民主党の本質は、≪自民党と双子の保守政党≫だと思います。 自民党と重なる部分が非常に多く、前原前代表やその支持者達は、自民党にいても何ら支障が無いでしょう。 そもそも、代表選挙の候補になる人達がみんな、元を正せば自民党出身者ですから、無理も無いです。 昔の自民党が、二つに別かれただけなんですな。 しかも右派左派といった主義の違いで別れたのではなく、混在しながら単に細胞分裂したのです。 そう考えると、民主党が自民党との違いを打ち出せない理由がよく理解できます。 双子の兄弟が互いに、「俺はこいつとは全然違う!」と主張し合っても、周囲の人間から見ると、ほとんど違いが感じられないのと同じ事です。

  つまり、民主党に自民党の対抗勢力になる事を期待するのは、そもそも無理なんですな。 二大政党制にしたいのなら、自民党と民主党を再編成して、保守とリベラルに別け直すか、社民党が勢力を盛り返して、保守の対抗馬になるのを待つか、どちらかしかありませんが、どちらも実現は難しいでしょう。

  年寄りの繰り言めきますが、旧社会党が野党として一大勢力を持っていた頃は、日本の政治は安定度が高かったんですなあ。 旧社会党は「万年野党」とか、「反対ばかりしている」とか言われてたけど、今の民主党の混迷ぶりを見ていると、与党に反対するのが野党の最大の責務である事がよく分かります。 自民党も分裂前は、リベラル勢力が力を持っていて、今よりも幅のある政治をしていました。 しかし、あの頃にはもう戻れんでしょう。 均衡が崩れるというのは、本当に恐ろしい事です。 日本の政治は、今後も、危険な綱渡り状態が続く事でしょう。