2006/08/06

テレビ雑言

  居間のテレビが壊れました。 電源を入れても、ブツブツ小さな音がするだけで、映像も音声も出ません。 三◇電機製の29型ブラウン管テレビです。 買ったのは2001年ですから、たった5年しかもたなかった事になります。 地上波デジタル切り替えまでは充分もつと思っていたので、家中に衝撃が走りました。 今時の家電は、保証期間を過ぎてしまうと、修理にいくら掛かるか分かりません。 出張費だの、技術料だの、訳の分からない費用まで取られます。 その上、修理しても確実に直るという保証は無し。 やむなく買い替える事にしました。

  どうも、大型テレビというのは小型テレビに比べて壊れ易いようです。 うちの居間には、今までに三台の大型テレビが据えられましたが、三台とも6年以内に死にました。 前の二台は松↓電機製だったので、三台目は警戒して他のメーカーにしたんですが、結局駄目でした。 更にショッキングなのは、急遽買い替えた次のテレビも、同じ三◇電機製だという事です。 もうブラウン管テレビは生産が縮小していて、他のメーカーの製品で安いのが無いらしいのです。 壊れ易いと分かりきっていても買わなければならない、この理不尽。 怒りのぶつけ所がありません。

  新しいテレビも大きさは29型で、ブラウン管のアナログ式です。 壊れたテレビの後継製品なのです。 値段は本体税込みで4万円くらい。 一方、地デジ対応の薄型テレビで、同サイズとなると、楽に15万円以上します。 「地デジ切り替えまで5年しかないのに、使えなくなるテレビを買ってもしょうがない」というような考え方は、私の辞書にはありません。 「まだ5年もあるのに、切り替え後値崩れするに決まっている製品に、4倍もの金を払えるか!」というのが、ケチの発想です。 ちなみに、地デジ化は録画デッキから始めるつもりなので、次のテレビが5年以上もっても、当面は使い続ける予定です。

  実を言いますと、私だけなら、もっと小さいテレビでもいいんですよ。 21型くらいでも充分だと思います。 しかし、うちの場合、昼の間、母が居間でテレビ漬けになるので、大きいテレビでないと、外国映画の字幕が読めんというのです。 まったく年寄りというのは不自由なもんです。 また、母はかつて公務員だったせいで、≪倹約≫といった概念がなく、4万円くらいなんとも思ってないんですな。 冗談じゃないよ。 ホームレスが4万円持ってたら、どれだけ贅沢できるか分からないよ。 お金の価値というものは、常に無一文状態に感覚をリセットして量らなければいかんと思うんですがねえ。

  ところで、地デジ切り替えに関して、「アナログ放送が5年後に終了する事を知らずに、アナログテレビを買う人がいまだにたくさんいる」といったニュースがよく流れますが、本当なんですかね? 抗議の意味を込めて、「知りません」と答えているだけなんじゃないですかね? これだけ騒いでいれば、耳に入らないという事はありますまい。 今回、家電量販店のテレビコーナーに行って気付いたんですが、薄型テレビの方は閑古鳥で、ブラウン管テレビの方に客が集中していました。 地デジ化するのは分かってるんですよ、みんな。 分かった上で、今買ったら損だと判断して、安い方を選んでいるんです。

  しっかし、地デジ化には困ったもんですな。 視聴者側に得な事なんか何にもありません。

≪画質がよくなる≫
  余計なお世話です。 画質に拘るような番組なんてないじゃん。 どうしても高画質で見たいドラマや映画があれば、DVDで買って来ます。

≪双方向性がある≫
  いりません。 双方向性となれば、パソコンの方が遥かに高機能です。 地デジの双方向機能なんて、使っている人いるんですかね? 一昔前に、電話に液晶画面とキーボタンをくっつけて、ネットを限定的に利用できるようにした製品がありましたが、あれと同じで、中途半端な代物なんじゃないですかねえ。

≪電波帯が有効利用できる≫
  下らん! それこそ視聴者には何の関係もない! 「余裕が出来た電波帯を携帯電話の機能向上に回す」ですと? どうして、携帯利用者の為にテレビ視聴者が出費しなきゃならんのですか? 理不尽極まりない! そもそも、テレビと携帯とでは、社会的重要度が全然違います。 携帯の機能が今のままでも困る人はいませんが、テレビがなくなれば気が狂う人間はうじゃうじゃいます。

  正直に言いなさいな。 地デジ化したい本音は、家電メーカーが儲けたいからでしょう? 得をするのはどう考えても、メーカーとメーカーからおこぼれが期待できる政治家だけだものね。 あんた方ねえ、資本主義なんだから儲けるのは自由ですが、他者に重大な損失を与えてまで儲けるのは、倫理的犯罪ですぜ。 消費者の事なんか全然考えてないだろう? でなきゃ、これだけポンポン、新規格ばかり作り出せるわけがないものね。 レコードがCDになったのも、LDがDVDになったのも、DVDがブルーレイになるのも、ビデオがHDになったのも、買い替えさせて儲けたいというのがズバリ本音なんだろ?

  そんな卑怯な手で儲けようとしているから、国際市場でシェアをどんどん落すんだよ。 自分の感覚で考えてみたって分かるでしょうが。 消費者の事を考えて、使える物を安く売ろうとするメーカーと、使える物を使えなくして、新しい物を買わせようとするメーカーの、どちらを信用するね? 「それがビジネスだ」なんて利いた風な事を言っていると、その内日本の家電メーカーは全滅するぜ。

  日本の家電メーカーがどこから道を踏み外したかというと、遙か昔、ウォークマンが登場した時に遡ると思います。

「消費者が必要としている物を売るだけではなく、全く新しい生活様式を生み出すような製品をメーカー側から提案しなければならない」

  これです。 今や神話と化したこの発想こそが、傲慢極まりないというのです。 この発想の延長が、地デジ化などという、消費者に対する最悪の裏切り行為に繋がっているのです。 なるほど、あんたらの御大層な≪提案≫とやらに乗っかって、ここまでやって来た。 しかし、それで良い社会になったか? 必要ない物を無理やり買わせるのが、家電メーカーの社会的使命なのか? そんなに地デジが有用だというなら、全国全世帯のテレビを無料で交換したらどうだ? どうだ、出来まい?