2014/06/01

13時以降

  岩手異動の赴任日を、一日早くした事で、良かった事と悪かった事があり、「バイクで岩手まで自走していくのに、予想外に時間がかかって、もし、一日遅くしていたら、引っ越し荷物の受け取りに間に合わなくなるかもしれなかった」というのが、良かった事だと、前回書きました。 今回は、悪かった事の方を書きます。 この両者は、密接に関連しており、皮肉な結果を生み出す事になりました。


  到着の翌日は、朝、5時に起きました。 無数の夢を見ましたが、全く覚えていません。 3年半前に2ヶ月住んでいた寮で、部屋番こそ違え、全く同じ造りの部屋で目覚めるのは、実にシュールな気分でした。 5時45分頃、バターロール2個で朝食。 家を出たのが、もう一昨日の事とは、とても思えず、昨日一日が、どこかへ消えてしまったように感じられました。

  引っ越し荷物が届くのは、午後1時なので、それまでは、何もやる事がありません。 とりあえず、近所のスーパーへ行き、5キロの無洗米を、1880円で買いました。 他に、トイレット・ペーパー、ティッシュ(詰め替え用)など、嵩張るものを買っておきました。 疲れた・・・。 ここで、11時15分。

  11時50分に、バターロール2個で昼食。 バターロールばっかりですが、理由は単純でして、一番安いんですよ。 ポータブル・カーナビのワンセグ放送は、朝から、ちょこちょこと見ていたんですが、ここに至ってバッテリー切れとなり、昼のニュースは見れませんでした。 天気予報をチラッと見たら、翌日にかけて、雨との事。 でも、どうせ、引っ越し荷物の片付けで忙殺されるに決まっており、出かける予定はありませんから、問題無し。

  午後1時10分前に、寮のエントランスに下りて、トラックを待ちましたが、1時までに来るかどうか分からないので、寮務員室に詰めていた、年の頃、60歳前後の寮務員に、「引っ越しのトラックが来たら、内線電話で呼び出してくれませんか」と言ったら、「俺、そんな事、知らねえ」などと、礼儀も糞もない返事が来ました。 初対面ですぜ。 いい歳扱いて、赤の他人と話す言葉も知らないとは、世間知らずにも程がある。 「どの業者かも知らねえ」 「○○通運です」 「1時と言ったんなら、1時に来るだろ」 正に、≪けんもほろろ≫の用例に使えそうな物言い。 こいつ、どういう親に育てられたんだ? とは言うものの、着いて早々に喧嘩するのもどうかと思い、それ以上何も言わず引き下がりました。 しかし、そんな無礼を働かれて、そのまま済むはずがなかったのだ、と気づくのは、もっと後の事です。

  元の勤め先での知り合いが来たので、入口の所で、立ち話をしました。 彼は、その日の朝方、到着したらしいのですが、その直後に、予定より、6時間も早く、引越し荷物が来てしまって、昼過ぎまで、片付けで疲れきったとの話。 なるほど、早過ぎるのも、問題だな。 それでも、彼の場合、ギリギリ、自分の到着の方が早くて、運が良かったのであって、もし逆だったら、荷物を部屋まで運んで貰えず、ロビーに置いて行かれて、もっと疲れる羽目に陥った事でしょう。 こういう例を聞くと、嫌な予感が、弥が上にも盛り上がりまくるではありませんか。

  案の定、1時を過ぎても、トラックは来ず、1時半になっても、来ませんでした。 そーれ、見た事か! いつまでも、エントランスで待っていても、所在無いので、さきほど話した知り合いが、「引越し屋が、部屋まで訪ねて来た」という話を参考に、部屋に戻って待つ事にしました。 テレビもラジオも、何も無いので、ベッドに横になり、ごろごろして、過ごします。 ところが、3時になっても、まだ来ない! これは、たまげた! 2時間も遅れて、何の連絡も無いとは、私の常識では、許容限度を超えるどころではなく、「ありえへん」話です。 どんなに要不急の約束であっても、2時間以上遅れて、許す人間がいるんですかね? 佐々木小次郎でなくても、鞘を投げ捨てますぜ。

  いい加減、痺れを切らし、最寄りの電話ボックスまで、電話しに行きました。 もう、この時点で、ぶち切れ気味だったのですが、向こうが、調べもせずに、「まもなく着きます」などと、蕎麦屋の出前の言い訳のような言い方をしたため、本当にぶち切れて、「まもなくじゃない! 何時に来るか、訊いてるんだ! こっちは、身動き取れないじゃないか!」と怒鳴りつけてやりました。 その直後、10円玉が切れて、電話が切れてしまったので、もう一枚入れて、かけ直したら、今度は繋がりません。 こんな馬鹿どもに、貴重な10円玉を使うのは、勿体無いと思い、打ち切って、電話ボックスを出ました。

  戻る途中、引っ越しのトラックが入ってくるのを見ましたが、すでに、私の堪忍袋の緒は切れており、後の祭りです。 寮務員室で、先程の口の利き方を知らない寮務員が、引っ越し業者から私へかかって来た電話を受けていたのですが、そいつが、何も言わず 私の方へ受話器を突き出したのを見て、またブチ切れました。 相手が礼儀知らずだという事は分かっていますから、もう、敬語なんか使う必要はありません。 「誰から電話だ!?」「●通から」「はあっ!?」 なんだ、●通って? 「○○通運」 それなら、そうと言え! 自分でしか分かっていない略語を、他人に向かって使うな、馬鹿が!

  私がかけた二度目の電話が通じなかったのは、向こうから寮にかけていたから、話し中で出なかったわけですが、その時は、そんな事まで、頭が回りません。 「ふざけやがって! もう、3時だぞ! おまえら、一体なんなんだ! からかってんのか!」と、寮務員のジジイを怒鳴りつけました。 こういう馬鹿は、怒鳴り倒して、震え上がらせてやらなければ、他人の怖さが分からないのです。 大方、これまでの人生、気心の知れた周囲の人間だけを相手に、なあなあで暮らして来て、他人と知人の区別がついていないのでしょう。 情けない・・・、一体、何をして、何十年も過ごし潰して来たのか? 三歳児並みの折衝能力しか持ち合わせていないのです。

  そうこうしている内に、引っ越し業者が入って来ました。 そちらにも、「何時だと思ってるんだ! 2時間以上、過ぎてるんだぞ!」と怒鳴りつけます。 向こうは恐縮しきっていました。 しかし、その件については、やり過ぎ、言い過ぎとは、全く思いません。 この手の輩は、怒る人間がいないから、それでもいいと思い込んでいるのです。 どぎつく言われて、初めて、自分達が問題行動をしている事に気付くのです。 滑稽な事に、寮務員のジジイまで、私と一緒になって、怒っていました。 尻馬に乗っているというより、自分も責める側に回って、私の怒りの矛先をかわそうというのでしょう。 こんな馬鹿は、どうでもいい。 しかし、怒ってばかりでは、事が進まないので、とにかく、荷物を部屋に運ばせました。

  4往復くらいで、運び込み完了。 エレベーターがあるから、大した手間ではありません。 こんな、いい加減な連中の顔は、0.1秒でも余分に見ていたくないので、私も手伝って、さっさと終わらせ、さっさと追っ払いました。 もう二度と、その会社には頼みません。 2時間遅れを、当たり前だと思っている業者に、どんなに、どうでもいい用件だって、任せられるものですか。

  予定が2時間以上遅れたので、ぐずぐずしていられません。 早く片付けなければ。 とにかく、台所用品を出さなければ、まともな食事が食べられませんし、寝具も展開しなければ、寝られません。 それより何より、テレビが先か。 パソコンの方も、ホームにしているブログを、5月4日には更新再開すると予告してあったので、夜までには、設置しなければなりません。 くそう、2時間のロスが、死ぬほど、痛い!


  で、開梱を進めていたら、突如、ドアがノックされ、ぎくりとしました。 引っ越して来たばかりの私の部屋を訪ねて来るのは、一体、誰やねん? 開けてみると、引っ越し業者の事務責任者と名乗る男が立っていました。 もちろん、初対面。 謝りに来たのかと思ったら、さにあらず。 「沼津の方からの情報では、『13時以降』という事になっていまして・・・」などと言い出しました。 そんな事が、言い訳になると思って、やって来たらしいです。 ガキの屁理屈か? 間髪入れず、言い返します。 「以降って言うなら、来年だって、以降だよ。 当然、13時が目安だろうが。 2時間も遅れていいと思うのかい?」

  そもそも、「○時以降」というのは、「○時以前に来られては、困る」という、客側の都合に合わせた選択肢であって、業者側に、遅れた言い訳にされたのでは、たまったものではありません。 時間指定の意味を、根本的に履き違えていると見た。 ちなみに、私が沼津で、送り出しの時に貰った書類には、その「以降」すらついておらず、「13時」とだけ刷ってありました。 どこで、「以降」がくっついた?

  更に畳みかけ、「遅れる時は、連絡するという、社内の決め事は無いんですか?」と訊くと、「2時15分頃、寮に電話したら、寮務員さんから、『待っているみたいだから、早く来た方がいい』と言われました」などとという、とんでもない証言が飛び出した。 あの、無能ジジイが! 電話が来たのに、私に連絡をしなかったのです。 内線電話をかけるのが面倒なばかりに! それが、私の激怒の原因になったという引け目があるものだから、先ほど、私と一緒になって、引っ越し業者の作業員に向かって怒って見せていたのです。 なるほど、世間知らずな馬鹿の考えそうな事だ。 あまりにも卑怯な発想で、ついぞ思いつかなかった。 しかし、そうであっても、2時15分では、すでに、1時間15分も遅れた時点なのであって、連絡が遅すぎます。 駄目だろ、こいつら。


  引っ越し業者の男は、テキトーにあしらって、帰らせ、開梱と片づけに、本格的に取り掛かりました。 搬入が2時間遅れたせいで、開梱も遅れに遅れ、パソコンを使えるようになったのが、午後6時。 テレビが見れるようになったのが、8時。 布団を出せたのが、10時。 3日ぶりに風呂に入れたのが、11時。 袋ラーメンを煮れるようになったのが、11時半でした。 なんてこったい。 それでも、まだ、冷蔵庫は手付かずです。  ホーム・ブログを更新して、深夜1時に眠りました。 前々日、前日に引き続き、長い一日でした。


  結局、引っ越し荷物が2時間遅れたわけですから、私自身が一日遅く家を出たとしても、充分、間に合ったわけですな。 というわけで、これが、一日早く出たおかげで、悪かった事の、理由です。