2023/09/03

ウクライナ情勢 2023年8月

  久しぶりに、ウクライナ情勢について、日記ブログの方に書いたので、転載します。






【2023/08/22 火】   「矛と盾」

  どうやら、ウクライナ軍の反転攻勢は、勢いが止まって、ロシア軍の再攻勢が、ちらほら見られる状況になった模様。 ただ、ロシア側に、一気に押し返す様子が見られないのは、そもそも、戦争を早く終わらせる気がないのと、もう一つは、ウクライナ軍に、西側供与の兵器を出させたいからでしょう。 もちろん、最優先で破壊して、供与国に、ショックを与える為です。

  反転攻勢の開始直後、レオパルト2や、ブラッドレー歩兵戦闘車が、地雷原に嵌まり、十数両も、残骸をさらした映像が出ましたが、あれは、ゼレンスキー氏始め、同政権の閣僚達にとっては、衝撃だったと思います。 西側民主国家への憧れが、非常に強い人達で、「西側の兵器さえあれば、ロシア軍を容易に圧倒できるはず」と、信じ込んでいたと思うので、正に、あの映像には、目を疑ったと思います。

  しかし、ウクライナ国内であっても、軍人・兵隊は、そうは思っていなかったと思います。 地雷やミサイルなど、対戦車兵器で狙われたら、どの国製の、どんな戦車でも、確実に破壊されてしまう事を、知っていたと思うからです。 軍事の常識として、とうの昔から、攻撃力の方が、防御力より、遥かに強いのであって、「世界最強」などと言っても、対戦車ミサイルが中れば、破壊を免れる戦車など、この世に存在しないのです。

  それが、現実に証明された以上、ウクライナ軍としては、西側から供与された車両型兵器を、前線に出さないのが、戦力を消耗しない、一番の方法ですが、後方に隠しておいたのでは、そもそも、その兵器をもっている意味がない。 出せば、やられる、出さなければ、意味がないで、大いなるジレンマに陥っているわけですな。

  あの映像で、衝撃を受けたのは、ゼレンスキー政権の面々だけではなく、ポーランドや、バルト三国など、ロシアを敵視して、せっせと西側兵器を購入していた国々も、同様でしょう。 一両、10億円以上という、馬鹿高い金を払って、「世界最強」の兵器を揃えても、あっさり、やられてしまうんだわ。 何の為の出費なのか、分かりゃしない。 飾りにもならん。

  「やばい事になったな・・・」と、脂汗を垂らしたのは、ドイツの戦車メーカーでしょう。 あの映像が出てしまったからには、今後、レオパルト2の売れ行きが落ちるのは、避けられますまい。 どうせ、やられてしまうなら、「世界最強」なんて称号は、何の意味もありません。 対戦車ミサイルや、地雷を買っておいた方が、遥かに役に立つではないですか。

  そもそも、戦車と戦車がぶつかりあう、戦車戦自体が、無意味でして、被害を少なくし、戦果を上げたいのなら、敵が戦車を出してきたら、こちらは、戦車を引っ込めて、対戦車ミサイルを装備した、歩兵部隊を出し、敵戦車を破壊した方が、遥かに効率的です。 戦車は、図体が大きいせいで、隠しようがなく、敵歩兵に見つかったら、もう、確実に破壊さてしまいますが、歩兵の方は、隠れているので、敵戦車からは見つかり難いからです。

  一見、戦車と歩兵だと、戦車の方が強そうに思えますが、そんな事は全然ないのであって、もうとっくの昔、第二次世界大戦の後半に、パンツァー・ファウストや、バズーカ砲が出て来た時から、歩兵の対戦車兵器の方が、ずっと強いのです。 これが、兵器知識がない人達には、どうしても、ピンと来ないらしい。 戦車は、戦場では、ただの大きな標的なんだわ。


  ゼレンスキー政権は、F16の供与を待っているようですが、これも、首を傾げるところ。 F22や、ラファール、ユーロ・ファイターならまだしも、F16ですか~? なんだか、兵器の事が全然、分かっていないような気がしますねえ。 おそらく、他の戦闘機は高価なので、「F16でもいいから、供与してくれ」という、控え目な要求なのでしょうが、現状、ミグ29を使用している国が、F16をもらえば、強くなるという考え方が分からん。

  F16の何が問題かというと、単発機である事に尽きます。 エンジンが一つしかないんですよ。 対空ミサイルというのは、後ろから、エンジンに飛び込んで、破壊するので、単発機だと、その時点で、もう、墜落するしかありません。 ところが、エンジンが二つある双発機だと、一つを破壊されても、もう一つで、飛行を続け、帰還できるのです。 帰還できるのと、撃墜されてしまうのとでは、大違いでして、帰還すれば、破壊されたエンジンを交換して、また、飛ぶ事ができますが、撃墜されてしまえば、ただの残骸です。 部品すら使えません。

  「そんな単純な理由で?」と思うでしょうが、事実、そうなんですよ。 ソ連・ロシアでは、アフガン進駐以降、単発機を造らなくなったのですが、アメリカでは、未だに、最新鋭のF35が、単発機でして、この単純な事実が、理解できていない模様。 F35を装備しようと、馬鹿高い予算を請求している国々の軍人も、まるっきり、分かっていないのでしょう。 馬鹿な子供と同じで、ただ、高いオモチャが欲しいだけなんだわ。

  単発・双発の問題を別にしても、ミグ29と、F16では、ミグ29の方が、あらゆる点で、優れていると思いますがねえ。 そもそも、今回の戦争では、ロシア側にしてからが、戦闘機や攻撃機を、積極的に使っていません。 高価なので、対空ミサイルで撃墜されるのを恐れて、出して来ないのでしょう。 使えない兵器に、莫大な金額を投じているのは、無意味の極みですな。

  ウクライナ軍に、F16が供与されても、ロシア側の地対空ミサイルで落とされるか、スホーイ27など、遥かに性能が高い戦闘機に撃墜されるかの、どちらかでしょう。 タダで、もらうのですから、ウクライナ軍としては、ないよりは、あった方が、得ですが、くれぐれも、「F16さえあれば、ロシア軍を圧倒できる」などとは、思わない方がいいです。

  今、F16の訓練をしている操縦士を、一人二人、秘かに訪ねて、訊いてみたら、どうですかね?

「正直な感想が聞きたいんだが、F16があれば、勝てると思うか?」
「乗れと言われれば、乗りますが、できれば、双発機の方がいいです。 パラシュート降下して、敵地に降りるのは、御免ですよ」


  ウクライナ軍の反転攻勢は、「西側の兵器は、圧倒的に強い」という説が、錯覚である事を、はっきりさせました。 おそらく、それも、プーチン氏の目的の一つだったんでしょう。 「西側の兵器は、圧倒的ではないが、ソ連・ロシアの兵器よりは強い」と言うのですら、怪しい。 仮に、両陣営の兵器に、性能差があるとしても、勝てなければ、そんな差には、何の意味もないです。

  ロシアでは、T55など、古い戦車を前線に運んでいるようですが、対戦車兵器でやられてしまうという点では、T55も、レオパルト2も、違いがありません。 敵の対戦車ミサイルを消耗させる為に、標的として使うなら、古い戦車で十分。 戦車兵が気の毒? そんな事はありません。 どうせ、西側の最強戦車に乗っていても、攻撃を防げないのですから、同じではありませんか。

  爆発反応装甲ですら、所期の機能を発揮しないのに、複合装甲や、チョーバム・アーマーなんぞ、糞の役にも立つものか。 みんな、易々とブチ抜かれて、車内は火の海なんだわ。 そんな事はないと言うのなら、自分が実験台になって、推しの装甲を試してみなさいな。 いやあ、私はやりませんよ。 どんな装甲も信用していないから。


  ゼレンスキー政権は、西側供与兵器を頼りにしていたわけですが、それが、最後の綱だったとなると、まずい事になりつつあります。 ウクライナ軍とロシア軍の、地の強さは、互角なので、弾薬・食料など、基本的な物資が続くのであれば、ロシア軍に簡単に押し返されてしまう事はないと思いますが、ロシア軍を圧倒する力もないわけで、 ただ、ズルズルと戦争を続ける事になってしまいます。

  供与国に不平を言っても詮ない事で、「くれと言うから、くれてやったのに、文句ばかり言うな」と、言われてしまうのがオチです。 「確かに、供与してもらったが、量が足りなかった」というのは、ウクライナとしては、言い分けになりますが、供与国側にしてみると、ウクライナが勝てるまで、無限に供与を続けるというのは、現実的ではないです。 それでなくても、西側の兵器は高価なのですから。 何兆円、何十兆円という金額が、鉄錆の残骸に化けて、ウクライナの大地に吸い込まれてしまうのは、いと凄まじき事ですな。


  それにしても、西側供与兵器の中に、自爆ドローンなどの、AI兵器が含まれていないのは、興味深いです。 大方、20世紀で、頭が止まっていて、AI兵器なんて、想像もできないまま、来ていたのでしょう。 米軍で、ドローン兵器というと、無人偵察機や、無人攻撃機がありますが、あれは、遠隔操作で、人間が操縦しているのであって、AI兵器とは次元が違う、前時代のものです。

  プーチン氏が、この戦争を始めた理由は、幾つもあると思いますが、その一つに、「戦車や戦闘機、戦闘艦など、前時代の兵器を使い切ってしまい、軍の兵器体系を刷新する」というのがあるのかも知れません。 戦車はともかく、航空機は、桁違いに高価だから、ドシドシ消費するというわけには行きませんが。

  高級将校が、前線に出されて、バタバタ戦死しているのも、「制服に勲章を並べて、ふんぞり返っているだけの将校など、不要」と考えて、能力がある者だけ、残そうとしているのでは? そうだとすると、「高級将校が戦死したから、ロシア軍は、弱体化するはずだ」といった読みが、全く見当外れに思えて来ます。 軍人なんて、ごく一部の飛び抜けて有能な者を除き、いくらでも、替えが利くんだわ。



【2023/08/23 水】   「中立政権」

  ウクライナ情勢の続き。 断っておきますが、私は、どちらの味方もしていません。 戦争は早く終わった方がいいと思っています。

  今後、供与されるF16が、これといった戦果を上げられず、ウクライナによる反転攻勢の滞りが、明白になった場合、支援国による、次の大規模な供与があるかどうかは、かなり、怪しいです。 理念は理念、現実は現実でして、高価な兵器を、無際限に供与し続けるなど、冷静に考えてみれば、不可能である事が分かるはず。 供与した兵器が、戦局の転換に、ほとんど、効果を上げていないのでは、尚の事です。

  要は、戦争を終わらせられればいいのですが、開戦以来、未だに、プーチン氏の真の目的が分かっておらず、何をどうすれば、戦争を終わらせられるかが、分からない。 唐突に始まったのだから、プーチン氏の目的が達成されたら、そこで、唐突に終わる可能性もありますが、そんな、個人の頭の中でだけ判断される事に、期待をかけているのは、あまりにも、不確かです。

  真の目的は分からないが、なぜ、ウクライナが標的になったのかは、分かります。 反ロ政権が続いていたからでしょう。 開戦以来、感覚が狂ってしまった人も多いと思いますが、反ロ国というのは、元々、そんなにたくさんあったわけではなく、ロシアとの間で、いつ戦争になってもおかしくない状態だった国は、数える程でした。

  ちなみに、日本は、別に、反ロ国ではありませんでした。 歴史的に、ロシアと仲が良いわけではないですが、「いつ戦争になっても、おかしくない」などという、緊張した関係ではなかったのは、誰でも認めるところでしょう。 ロシア語講座の番組も、普通に放送していましたし。

  前任の、駐日ロシア大使が、ウクライナ開戦後、離任する時に、「日本は、反ロではない」と発言しましたが、その意味が理解できた日本人は少なかった模様。 つまり、「日本は、反ロ国ではないから、ロシアが攻めるような事はない」と言いたかったんでしょう。

  反ロではないという点で分類すると、アメリカ、イギリスなども、開戦前までは、反ロではありませんでした。 関係は良くないが、戦争になるには、程遠かったのです。 フランスやドイツは、今でも、反ロとは言い難い。 フィンランドとスウェーデンは、反ロではなかったにも拘らず、NATO加盟を決めた事で、大きく、反ロに近づいてしまいました。 安全を考えたというより、危険を増やしただけに見えますが、今後、どういう影響が出るでしょうねえ。

  フィンランドは、第二次世界大戦で、ナチス・ドイツと組んで、ソ連と戦い、負けた教訓から、戦後は、ソ連・ロシアとの関係を重視して来たのですが、国際的な立ち位置のバランスに苦労した当時の政治家達にしてみれば、NATO加盟など、言語道断、ゾッとする決断に思えるでしょう。 ロシアとNATOで、戦争になれば、戦場になるのは、ロシアと国境を接している国々でして、得になる事など、何もないです。

  開戦当初、西側の政治家や、国際学者、マスコミ関係者に、プーチン氏を精神異常者扱いする一派がいましたが、今では、そういう考え方は、的外れになったようで、誰も言わなくなりました。 狂っているのなら、ヒトラーのように、相手構わず、どこにでも戦争を仕掛けると思いますが、プーチン氏が、ウクライナを狙ったのは、ゼレンスキー政権が、反ロである事を、公言していたからであって、狂気の発露とは言い難いです。 ちなみに、戦争の決定そのものが、狂気だというなら、アメリカは、最も狂っている事になります。

  そういや、正義の味方ヅラして、ロシアを非難し、ウクライナを支援している国々の大半が、帝国主義時代以来の、侵略国家ばかりだというのは、大変、興味深い。 もちろん、日本も含む。 外国人を同じ人間だと思わず、狂ったように、殺しまくっていた国々なんだわ。 自国が犯した過去の大罪を反省もせず、ロシアを非難しているのは、グロテスクにも、程がある。 反省してる? どの国が? 例を知らんなあ。

  プーチン氏にしてみれば、「ウクライナは、ロシアを敵視しているのだから、戦争を仕掛けられて、文句を言うのは、筋違いだろう。 反ロなんだから、ロシアと戦争をしたかったんじゃないのか? 望み通りにしてやったのに、何が不満だ?」と考えているのでは? 些か、ネット論客の屁理屈っぽいですが、ありえない話ではないです。

  逆転して考えると、ウクライナが、反ロでなくなれば、ロシアがウクライナを攻める理由がなくなるわけだ。 今の、ゼレンスキー政権を見ていると、ウクライナが、反ロでなくなるなど、寝言・囈言・戯言のように感じられるでしょうが、意外にも、まだ、10年も経っていない、2014年までは、ウクライナは、親ロ政権が治めていました。 そういう素地はあるのです。

  「これだけ、被害を出して、恨み骨髄に達しているのに、今更、反ロを引っ込められるものか」と思うでしょうが、ここに一つ、身近な例があります。 無差別爆撃や、原爆投下で、とてつもない被害を受けたにも拘らず、負けるや否や、「マッカーサー元帥万歳!」と、諸手を挙げて歓迎してしまった国があるではありませんか。 国民感情なんて、そういう、水物なんだわ。

  親ロでなくてもいいんですよ。 反ロでさえなければ。 何とか、中立政権が作れないものか。 「今後、一切、ロシアを敵視しない」と、公言できる政権が立てば、それで、充分。 敵でないのだから、ロシアが、ウクライナと戦争をする理由はなくなり、ロシアとしては、停戦した上で、国境線の線引き交渉を提案して来るでしょう。 ウクライナが、「永久に中立する」と確約すれば、相当な面積が、戻って来るんじゃないでしょうか。 約束を反古にすれば、また戦争になりますが。

  私が一人で言っている分には、現実感のない空論に過ぎませんが、今後、ウクライナの反転攻勢が停滞し、更なる供与を要求された時に、支援国の中に、同じ事を言い出すところが出て来ると思うのですよ。 「軍事力では、ロシアを押し返せないのだから、戦争を終わらせる為には、中立政権を立てる以外にない」と。

  それらの国にしてみれば、支援地獄が終わるのなら、それが一番。 ウクライナの政権が、どう変わろうが、興味がないところでしょう。 このままでは、「支援疲れ」から、自分の国が「過労死」してしまう恐れがあるから、事態は深刻です。 なにせ、ウクライナ支援は、投資ではないので、いくら注ぎ込んでも、一円も返って来ませんから。

  この件について、ゼレンスキー政権を説得するのは、不可能で、外国から、退陣しろと言われても、絶対、受け入れないでしょう。 また、中立政権を、反ロである、ゼレンスキー政権の主導で人選するというのも、理不尽、且つ、信用度を損なう話。 とりあえず、F16が、期待に添えない事が証明されて、戦況が膠着する事が、前提条件になるでしょうか。

  それにつけても・・・、昨日も書きましたが、なんで、F16なんですかねえ? 気が知れぬ。 同じ旧型でも、F15にしておけば、だいぶ、違ったものを。 もっとも、高価だから、くれと言っても、くれないかも知れませんが。 それにしても、F16ではなあ・・・。 開発・生産元のアメリカだって、F16では、焼け石に水だと分かっているだろうに。 ゼレンスキー政権に勝たせる気が、そもそも、ないんじゃないの?



【2023/08/24 木】   「余説」

≪ワグネルとプリゴジン氏≫
  プリゴジン氏が、墜落死したというニュースが流れていますが、それは さておき。

  ワグネルの存在を、あまり、大きく見過ぎない方がいいです。 そもそも、ロシア正規軍とは、目的が異なる組織でして、内戦状態など、政情が混乱している国に派遣されて、治安維持に当たるのが、本来の任務。 戦場で、ウクライナ軍のような重装備の正規軍を相手に、ドンパチやり合うなど、イレギュラーな活動なのです。

  ワグネルが、ウクライナ戦争で活躍したのは、否定できないところですが、重要な戦闘に参加したというのと、ロシア軍全体の中で、重要な役割を担っていたというのは、別の話です。 実際、ワグネルが撤退した後に、ウクライナ軍の反転攻勢が始まったわけですが、ロシア軍は、ワグネル抜きで対処しており、別に、大きな穴が空いたというわけでもない様子。

  ワグネルが、実力以上に注目を浴びたのは、プリゴジン氏が、積極的に情報発信をしていたからでしょう。 一方、ロシア軍は、情報発信を、極力しない方針のようなので、相対的に、ワグネルが目立っていただけなのだと思います。 ショイグ国防相らは、プリゴジン氏から、名指しで批判されていたのに、全く相手にしていませんでした。 ワグネルを、ロシア軍とは関係ない組織だと思っていたから、そういう反応になったのでしょう。


≪ロシア国内でのドローン攻撃≫
  誰がやっているのか、分かりません。 ウクライナ軍なのか、ロシア国内の反政府組織なのか、はたまた、ロシア政府による、自作自演か。 注目点は、死者が出ていない事でして、やろうと思えば、人が大勢いる所へ突っ込ませて、爆発させる事もできるはずですが、なぜか、そういう事をしていません。

  もし、自作自演だとしたら、何が目的なのか。 「ロシアもやられているんだ」という事を、世界にアピールする為か、ロシア国民のウクライナに対する敵愾心を煽る為か・・・。 しかし、プーチン氏の考えにしては、単純過ぎるような気がせんでもなし。 他の人間が考えて、プーチン氏に許可を求めたとしても、こんなセコい手は嫌がられるような気がしますねえ。


≪核兵器≫
  ロシアは、世界最多の核兵器保有国で、使う事を決断すれば、この戦争は、たちまち、終わります。 ただ、今までの様子を見ていると、最初から、使う気がない様子。 せいぜい、脅しの声明に、「核」という言葉に持ち出す程度です。

  破壊力が桁違いに大きいので、この上なく、使い難い兵器ですが、人道上の非難を避ける手がないでもないです。 たとえば、ほとんど人が住んでいない地域で、脅しの為に爆発させるとか、都市部への予告攻撃とか。

  予告攻撃というのは、たとえば、「今から、1ヵ月後に、○○市に核攻撃を行う」と予告するわけです。 1ヵ月の猶予をやるから、その間に、避難しろというわけだ。 「避難しなければ、避難させなかった方に、責任がある」、そういう言い分けができるという理屈。

  首都から始めて、首都機能を移転した先の都市を追いかけるように、1ヵ月に1都市ずつ、10発も使えば、やられた方は、さすがに、参ってしまい、「もう、やめてくれ」と、降伏して来るのでは? 市民を一人も殺さずに、降伏に追い込める事になります。

  困るのは、全く同じ手を、相手側も使える場合でして、ウクライナが、西側の核保有国から、核兵器の供与を受けて、ロシアの都市に、予告攻撃を行なう事も考えられます。 双方で、どんどん、使えない都市が増えるわけだ。 核攻撃後、その都市は、何年間か、住めなくなりますが、永久にというわけではないです。 現に、広島・長崎では、核攻撃後も、ずっと、人が住んでますし。

  核爆発の場合、放射線の影響が、健康に問題ないレベルまで減るのには、何年くらいかかるんですかね? 原発事故と混同して、「10万年」などという数字を出して来る人もいると思いますが、それじゃあ、広島・長崎の市民は、未だに、被曝し続けているというのか? いい加減な事を言うなよ。

  予告攻撃のような方法は、核保有国では、遥か昔から、検討し尽くされて来た事で、その結論として、「使わない方が、無難」という事になっているんでしょう。 前線で、命を張って戦っているロシア兵は、「俺が死ぬ前に、使ってくれ~!」と、願っているでしょうが。


≪イギリス国防省情報≫
  新型肺炎対策で、大失敗を世界中に曝してから、イギリスという国の見方が変わってしまいましたが、ウクライナ戦争に関する情報発信でも、感心のしようがない事をやっています。 イギリス国防省は、ウクライナの戦場で、何かあるたびに、というか、何かなくても、頻繁に、情報発信しているのですが、その中身が、スカスカなのです。

  おそらく、自前で情報収集する能力がないのではないかと思うのですが、ウクライナ軍や、ウクライナ政府から得た情報を、「『しかし』のところを、『だが』に変え」て、流しているだけ。 ことごとく、どこかで聞いたような話や、想像で補ったコメントばかり。 前半分聞くと、後ろ半分が想像できるから、程度が知れようというもの。

  イギリス国防省情報の、もう一つの問題点は、ロシア軍に対する、憎悪や、侮蔑が感じられる点です。 何とかして、ロシア軍を馬鹿にしよう、見下そうと、躍起になっている模様。 自分達は、こんな大戦争、大作戦に関わる機会を与えられないので、嫉妬から、ケチをつけているのかも知れませんが、そう見られたくないのなら、もっと、主観を除いた表現にした方がいいと思いますねえ。

  イギリス国防省情報に比べると、アメリカの、戦争研究所情報の方が、まだ、聞くに値する。 少なくとも、客観性が感じられるからです。 ただ、ここ数ヵ月、戦争研究所は、あまり、情報発信をしなくなってしまいました。 専ら、衛星情報から、分析していたようですが、やはり、上から見るだけでは、分かる事に限界があるのか。

  アメリカ国防省は、その種の情報発信を、ほとんど、やっていませんが、それは、情報収集能力を、外国に知られたくないからでしょう。 もちろん、中国やインドも、情報収集や、戦況分析をしているはずですが、一言も言いません。 同じ理由だと思います。


≪そもそも論≫
  この戦争の目的が、ウクライナから領土を奪う為、もしくは、ウクライナの反ロ政権を倒す為なら、そもそも、こんな攻め方はしません。 ウクライナ西部を南北から攻めて、隣接国家との国境を遮断するのが、一番です。 ウクライナへの支援物資は、ポーランドなど、西部国境から入って来るわけで、それを止めれば、ウクライナの継戦能力は、あっという間に、なくなってしまうからです。 東部や南部なんて、後から、どうにでもなるのだから、放っておけば良い。

  ウクライナ軍と隣接国家の軍隊から、挟み撃ちに遭うような事はありません。 ロシアは、隣接国家と戦争をしているわけではないからです。 ウクライナ軍は、国外からの物資補給が止まれば、ジリ貧になって、後退するしかなく、ロシア支配地域は、西から東へ広がって行くという寸法。

  こんな事は、特に、軍事知識がなくても、誰でも分かる事でして、言うに及ばず、ロシア軍でも分かっているはず。 なのに、やろうとしなかったのは、そもそもの、戦争の目的が違うからとしか考えられません。  

  プーチン氏が何を目的にしているのかが、相変わらず、分からんなあ。 知能の高い人間が何を考えているかは、それ以下の知能しかない者には、伺い知れないところがあります。 タイプが違うものの、諸葛孔明や、シャア・アズナブルを思い浮かべれば、その知能の特殊性が想像できるでしょうか。 どちらも、最終的には、負けるキャラですが、プーチン氏も、そうなるとは限りません。