2025/10/19

時代を語る車達 ⑯

  出かけた先で撮影した車の写真に、個人の感想的な解説を付けたシリーズです。 正直に白状しますと、このブログの、レギュラー・シリーズを埋める為だけに、せっせと、出先で、車を撮影している次第。





【ホンダ・初代 N-ONE】

  バイクで出かけた時、コンビニに停まっている車を、道路から撮ったので、角度が悪い上に、遠いですが、ホンダ・初代 N-ONEです。 調べた事はありませんが、「エヌ・ワン」と読むんでしょうな。 Nシリーズ全てに言える事ですが、どうも、あまり、いい名前ではありませんな。 しかし、ただの記号名よりは、覚え易いです。

  初代は、2012年から、2020年まで。 現行は、2代目ですが、鉄板部分は、初代も2代目も同じらしいです。 昔だったら、ビッグ・マイナー・チェンジにすら当たらない変更なので、初代、2代目と分けるべきなのかどうかも疑問。 この写真の車は、たぶん、初代だと思います。 後ろバンパーだけを手掛かりに、判断したので、自信はありませんが。

  こういう形が好きな人の気持ちは良く分かる。 ちょっと、レトロっぽくて、フィアットの、NUOVA 500あたりを、想起させるからでしょう。 特に、40歳以下の世代は、そう思うはず。 しかし、私の世代の目には、ミラ・デザインの亜流にしか見えません。 ダイハツ・ミラの、初代から、3代目までの形を指します。 かつて、超名作、初代トゥデイ(丸灯)をデザインしたホンダが、2010年代になって、ミラ・デザインに走ってしまったのは、情けないとまでは言いませんが、残念なところ。

  しかも、この車、セミ・トール・ワゴンに分類されるらしく、背が高い。 1610ミリもあるんですな。 1395ミリの、3代目ミラと比べると、バランスが狂っているように見えてしまうのは、そのせいでしょう。 つくづく、軽自動車の世界では、「ふくらませ病」が蔓延しておりますな。 馬鹿馬鹿しい。 室内高が、10センチ高くなったからといって、どれだけ、乗り易くなると言うのよ? 車は重くなり、運転はつまらなくなるだけです。 広い車内が欲しい人には、N-WGNや、N-BOXがあるのだから、中車高の車まで、膨らませる必要はないと言うのよ。

  「今時、背が高くなければ、売れない」というのは、完全な錯覚であって、いいデザインならば、中車高でも、充分、売れます。 ミライースが、好例です。 レトロに走る必要もありません。 レトロ・ブームなんぞ、とうの昔に過ぎ去っているのであって、わざわざ、レトロ風の現行・新車を探している客が、たくさんいるとは、とても思えない。 メーカー側の錯覚なのです。 その考え方では、背も高くなく、レトロ風とは無縁のミライースが、なぜ売れているかを、説明できないでしょうに。

  話を、N-ONEに戻します。 この写真では分かりませんが、フロントの、ヘッド・ライトとグリルのグラフィックがねえ・・・。 私の世代だと、ああいう形を見ると、≪天才バカボン≫に出て来る、お巡りさんの、「つながり目」を思い浮かべてしまうのです。 マツダや日産でも、そういうのがありましたが、なんで、左右のライトを繋げたがるのか、動機が分からない。 車のフロント・デザインが、人間や動物の顔に相当するイメージで捉えられるのは、車のデザイナーでなくても、誰でも知っている事だと思いますが、目が繋がっているのは、漫画の狸か、バカボンのお巡りさんくらいのもので、それらに似せる事に何か利点があるんですかね? 大いに、解せぬ。 

  まーた、貶してしまったなあ。 現行車ではないけれど、現行の2代目も、あまり変わっていないわけで、やはり、貶すのは、いかんなあ。 ホンダも、新しいデザインを思いつかないのなら、初代トゥデイ(丸灯)を、フォルムはそのまま、現行規格のサイズに拡大した上で、5ドアにして出したら、どうですかね? ・・・と、こんな提案が、金輪際、受け入れられないのは、百も承知の上で言っているわけですが・・・。




【ホンダ・5代目ライフ】

  ホンダの、5代目ライフです。 2008年から、2014年まで、生産・販売されていた車型。 ライフは、この代で終わり、後継車種は、N-WGN(エヌ・ワゴン)になりました。 ちなみに、ライフの初代は、1971-74年に、360ccで出たもの。 だいぶ間が開いて、1997年に、2代目が出ますが、名前を受け継いだだけで、トール・ワゴンとなり、以降、5代目まで、そのカテゴリーで続きます。

  うちには、母の二台目の車として、新車で買った4代目ライフがあったのですが、2008年に、母が車の運転をやめ、その後、私が休日に乗っていたものの、翌2009年には、売却してしまいました。 5代目が出てから売ったので、値段が、ガクンと下がってしまったのですが、その事に気づいたのは、ずっと、後になってからです。 当時、車からは興味が離れていて、5代目が出ても、注意して観察する事はありませんでした。

  ライフは、2代目のデザインが良くて、2016年に、父を病院へ送迎する為に、中古車を買わなければならない事態に至った時、第一候補にしていたのですが、諸般の事情で手に入らず、急いでいた事もあり、中古車店にあった、セルボ・モードを買ったという経緯があります。 デザイン的には、うちにあった4代目も、独自性が強くて、レベルの高いものでした。

  で、この5代目ですが、4代目をベースに、手直しを加えたという印象です。 4代目よりは、角ばっていますが、程良い角ばり方と見るか、中途半端と見るかは、人によって異なるでしょう。 私には、中途半端に見えますが、さりとて、目くじら立てて扱き下ろすほど、悪いとも思いません。 トール・ワゴンとして、良く言えば、普通、悪く言えば、普通過ぎで、印象が薄いです。 特に興味がない場合、この5代目ライフと、初代N-WGNの見分けがつかないという向きもいるのでは?

  この写真の車は、後期型のようですが、前期型よりは、フロント・マスクのデザインが良いです。 特に、グリル付近がカチッとしていて、好ましい。 だけど、その点も、個性という基準で見ると、退歩して、「普通」になってしまったという感じもします。 難しいところですな。 




【三菱・8代目ミニカ】

  三菱の、8代目ミニカ。 1998年から、2011年まで、生産・販売されていた車型。 ミニカは、この代で終了しました。 あまり、印象に残っていないという人も多いと思いますが、同時期に、三菱では、初代・2代目の、ekワゴンを売っていて、そちらが大ヒットしていたせいで、ミニカは、日陰の存在になってしまっていたのです。

  この写真の車は、前期型のようです。 中期型以降、グリル周辺が変わるのですが、前期型の方が、いいデザインだと思います。  3ドア、4ナンバーなので、ボン・バン。 ボン・バンは、大変、安価な値段で売っていたらしく、その点は、好ましい。 やはり、軽は、本体価格・維持費、共に安くなければ、積極的に選ぶ意味が損なわれますから。

  デザインは、古臭いところも、斬新過ぎるところもなく、標準的。 ミニカは、4代目までは、見るに耐えぬ、醜悪なデザイン。 それ以降、脱皮して、5・6・7代目と、特徴的なデザインが続いていたから、この8代目が出た時には、「悪くはないが、何とも、地味である事よ」と思ったものです。 しかし、今から振り返ると、こういう、標準と言えるデザインこそ、優れていたんですな。

  個人的な趣味で言わせてもらいますと、このヘッド・ライトの切り方が、素晴らしい。 センスがないと、こういう形は、なかなか作り出せません。 この写真では分かりませんが、リヤ・コンの形もいいんですよ。 そういうのが得意なデザイナーが担当したんでしょうなあ。 7代目から微かに受け継いだと思われる、前窓から屋根にかけての適度な丸みも、心憎い。

  強いて、難を探せば、Cピラーが、逆台形になっている点が、少し引っ掛かりますが、ダイハツ・MAX(2001年~2005年)ほどの違和感は覚えません。 逆台形を、順台形にしたら、印象の安定度は増すと思いますが、個性は減ずるので、痛し痒しといったところでしょうか。

  「安かったから、下駄代わりに、乗っているだけ」というオーナーの方もいるでしょうが、どうしてどうして、今時のトール・ワゴンや、ハイト・ワゴンなど、相手にもならないくらい、レベルの高いデザインだと思いますよ。 お洒落を狙った、特殊な車ではないからこそ、このデザインには、価値があると言えます。




【三菱・2代目ekワゴン】

  三菱の、「ekワゴン」ですが、これは、2006年から、2013年まで生産販売されていた、2代目です。 2001年から、2006年までの、初代の方が、強く記憶に残っている人が多いと思いますが、代変わりはしたものの、外見は、ほとんど変わらなかったとの事。 昔だったら、マイナー・チェンジの内ですな。 ほとんど変わらなかったのに、なぜ、この写真の車が、2代目だと分かるのかと言うと、左の後ろドアが、スライド式になっているから。 これは、初代にはありませんでした。

  名前に、「ワゴン」が入っているから、トール・ワゴンのようですが、全高は、1550ミリで、現行アルトより、少し高い程度。 そもそも、この車の外観を見て、背が高いという感じはしません。 「セミ・トール・ワゴン」と言うべきなのかも知れませんが、私は、そういう細かいカテゴリー分けを、あまり、いいとは思いません。 背を高く見せないというのは、私に言わせれば、デザインが優れている証拠ですが、昨今の「膨らませブーム」に毒されている向きには、逆の考え方をする人達も多そうですな。

  初代は、車のデザインに興味がない人でも、ハッとさせられたような、優れたデザインでした。 切り餅を大小二つ重ねただけのような、シンプルな形なのに、どうして、あんなに美しく感じるのか、不思議でした。 この2代目も、事情は同じですが、グリルを弄ったせいで、シンプルさが、若干 減じています。 だけど、どこかしら変えなければならないとなれば、グリルが対象になってしまうのは、致し方ないですな。

  この車、持ち主を、センスが良い人と思わせますが、不思議な事に、「標準」も感じさせるのです。 誰が乗っていても、おかしくないような普遍性を、このシンプルなデザインが醸し出しているんですな。 この時期の三菱の軽は、デザインのレベルが高いわ。 特に、初代・2代目のekワゴンには、車に対する哲学すら感じさせます。




  今回は、以上、4台まで。

  出先では、車だけでなく、オートバイも目にするわけですが、滅多な事では、撮影する気になりません。 私は現役時代、バイク通勤を、20年以上していたので、乗るのであれば、車よりも、バイクの方が好きなのですが、他人が乗っているバイクの車種には、ほとんど、興味がないのです。 バイクは、車以上に、「乗って、ナンボ」の道具でして、どの車種を選ぼうが、その人の勝手だと思っています。