2025/09/21

時代を語る車達 ⑮

  出かけた先で撮影した車の写真に、個人の感想的な解説を付けたシリーズです。 随分前にも断った事ですが、このシリーズ、私の勝手な感想なので、乗っている車、乗っていた車、欲しいと思っている車、好きな車など、自分と関わりのある車を貶されても、一切 気にするには及びません。 他人の無責任な戯言だと思って、無視して下さい。





【日産・NV200バネット】

  2009年から、現行。 私は、この車のデザインを、良いとは思っていないのですが、ライバルである、トヨタ・4代目タウンエースは、もっと良くないので、比較すると、こちらの方が良いという事になるのです。 感覚的には、「マシ」程度の違いですが。

  それにしても、ワン・ボックス・カーのデザインは、80年代から、随分と後退したものだと、隔世の感を禁じ得ません。 進歩どころか、退歩しているのだから、奇妙な現象もあったものです。 衝突対策など、機能上の要求に変化があって、こういうデザインにせざるを得なかったのかも知れませんが、それにしても、もっと、やりようがあったと思うのですが・・・。

  このNV200バネットにせよ、タウンエースにせよ、現行のデザインを見て、カッコいいと感じる人は、まず、いないでしょう。 80年代は、違っていたんですよ。 セダンやハッチ・バックに乗っている人達が、嫉妬するくらい、ワン・ボックス・カーは、カッコ良かったのです。

  ちなみに、車の形を、バランスだけで評価する場合、地上に立って、車と同じ高さで見るのではなく、二階の窓から見下ろすと、良し悪しが、はっきり分かります。 ツー・ボックス、つまり、ハッチ・バック車や、ファースト・バック車ですが、それが一番、バランスが悪くて、後ろにふんぞり返っているように見えます。

  次が、セダンやハード・トップなど、ノッチ・バック車で、居室を挟んで、エンジン・ルームと、トランク・ルームで、前後が下がっているので、幾分、バランスがいいです。 しかし、エンジン・ルームよりも、トランク・ルームの方が短いから、その点は、割り引いて、評価する事になります。

  で、一番、前後のバランスがいいのが、ワン・ボックス車なのです。 一つの塊なのだから、バランスが良くなるのは、当然の事。 嘘だと思ったら、二階から見下ろしてみなさいって。 カッコいいと感じるのは、ワン・ボックス車ばかりだから。  ツー・ボックス車に乗っている人達は、自分の車が、いかに、後ろへふんぞり返っているかを目の当たりにして、愛車精神が、いたく傷つくと思いますが、「知らなければ、幸せだったのに! どうしてくれる!」などと詰め寄られても、私は関知しません。

  話を、写真の、NV200バネットに戻しますが、商用車だから、バンパーが、ウレタン素地になるのは、仕方ないとして、ボディーとの接合部の切り方が、斜めになっているのが、どうにも、戴けません。 カラード・パンパーにすれば、同色にできるわけですが、ただ、目立たなくなるというだけで、斜めである事に変わりはない。 どうして、斜めに切るのか、その理由が分からない。 機能上の事情で、衝突時に、その方がいいんでしょうか? バンパーに押されて、フェンダーまで潰れて、修理代が高くなるだけのような気がしますが。

  この写真だけでは分かりませんが、前半分の、強い存在感に比べて、後半分が、虚弱に見えるのも、残念なところです。 リヤコンも、小さ過ぎるのでは? もっとも、それらの問題点を抱えながらも、トヨタ・4代目タウンエースよりは、「マシ」なのですが。 向こうは、前も後ろも、虚弱に見えますからのう。 ああ、80年代が懐かしい事よ。




【スズキ・7代目アルト】

  スズキ・アルトの、7代目です。 2009年から、2014年まで、生産・販売されていた車型。 記憶に残っている事というと、ダイハツ・初代ミラ・イース(2011年から、2017年まで)と、低燃費競争を繰り広げていて、新しいテレビCMが出るたびに、より低くなった燃費数値を誇って、売りにしていた事でしょうか。 香里奈さんが、イメージ・キャラクターをしていたのを覚えています。

  以前、3代目アルトラパン(2015年6月から、現行)を取り上げた時に、「猿のイメージなのに、名前が、兎のままなのは、勿体ない」といった事を書きましたが、兎のイメージに近いのは、この、7代目アルトではないでしょうか。 兎が、耳を後ろに倒して、伏せている姿に見えます。

  アルトは、現行規格になった5代目が、優れたデザインで、「軽の標準」と言ってもいいような出来の良さでしたが、その次の6代目で、大ポカをやり、車というより、レトロ・フューチャーの家具を連想させるような、しょーもないデザインになってしまいました。 見るに耐えんと顔を顰めていた後、この7代目が出て来たので、「まあ、先代よりは、ずっと、いいか」と思ったものですが、今から見ると、この頃、すでに、ふくらませ路線に走っていたんですな。 兎に似ていると思えば、可愛らしさは感じますが、乗り物らしい精悍さや、道具としての機能性は感じられません。

  以下、一般論。

  低燃費化の為に、この頃から採用されるようになった、アイドリング・ストップですが、特段、優れた技術だとは思えません。 「燃費が良くなる程度は僅かであるのに対し、バッテリーに負荷かがかかり、交換頻度が高くなるので、燃費で稼いだ金額を、バッテリーの購入費用で失ってしまう」という説は、私自身が経験したわけではないから、鵜呑みにしないとしても、実際、燃費への貢献は、知れていると思います。

  発車のたびに、セルが回って、エンジンがかかるのは、うるさいと思うのですよ。 信号待ちだけでなく、危険回避の為に急ブレーキを踏んだ時にも、エンジンが止まりますが、それは、運転者が想定していない事なので、「ドキッ!」としてしまうのは避けられますまい。 転ばぬ先の杖で、石橋を叩いて渡るタイプの私としては、そういう時の、「ドキッ!」が、嫌でねえ。 自分が運転していなくても、近くで、エンジン・ストップした車を見るだけで、「ドキッ!」とします。

  アイドリング・ストップって、設定の仕方で、作動しないようにできるんですかね? もし、可能で、私が、そういう車に乗るとしたら、絶対、使わないようにします。 年中、ドキドキしていたのでは、鬱陶しくて仕方ないですから。




【スズキ・5代目アルト】

  アルトの、5代目です。 1998年から、2004年まで、生産・販売された車型。 2018年4月8日にも、同型のアルトの写真を出しています。 以下、その時に書いた解説文。

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   この型から後は、現行規格です。 この型のアルトは、随分前から、デザインが好きで、一昨年、車購入シミュレーションをした時に、候補に入れていたくらいです。 後輪側のフェンダーに、ブリスターを使っているところが、何ともいえぬ。 アルトは、この後の、6代目から、奇妙なデザインになってしまいます。

  この車は、5ドアで、5ナンバーなので、乗用。 ホイール・カバーは、オリジナルのままだと思います。 塗装の劣化は、ほとんど、感じられません。 マット・ガードのデザインが、妙にシンプルで、車本体の凝ったデザインと合わないような感じがします。 本体とは、別の人がデザインしたのかも。

  この型、まだまだ、いくらでも、見る事ができますが、やはり、少しずつ減っているのでしょうなあ。 この型のデザインが優れている事に気づいているのは、少数派だと思うので、特別に珍重される事もなく、姿を消して行くものと思われます。
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  以上。 その車は、5ドアの乗用でした。 こちらは、3ドアの4ナンバーで、ボン・バンです。 乗用に比べて、維持費が安いから、生き残っている可能性が高い。 私は、3ドアに対する評価が辛い人間ですが、セカンド・カーとして、通勤や、個人事業者が仕事に使うのなら、選ぶ意味はあると思います。 実用オンリーならば、維持費が安いのに超した事はない。

  2017年頃には、まだ、多く見かけましたが、さすがに、8年も経つと、減りますなあ。 もう、滅多に見ません。 小泉今日子さんが、テレビCMをやっていたのですが、私ですら、カタログに写真が出ていたから、知っているだけで、CMそのものは、覚えていません。 20世紀は、遠くなりにけり。

  アルトは、初代が、角ばっていて、特に女性向けではなかったのに、値段の安さで売れました。 2代目は、小手先で女性受けを狙ったしょーもないデザインでしたが、名前だけで、そこそこ売れました。 しかし、ミラの方が、デザインが遥かに優れている事は、スズキでも分かっていたようで、3代目・4代目は、ミラを参考にしたデザインになりました。

  そして、5代目がこれですが、ミラ・デザインから、完全に脱却して、何にも似ていない、オリジナリティー溢れる、美しいデザインになりました。 私の個人的趣味では、歴代アルトで、この型が、一番、好きです。 素晴らしい。 しかし・・・、デザインの良さに気づかずに、アルトという名前だけに引かれて、買って乗っていた人も多かったのだろうなあ。 いや、それでもいいのです。 醜い車が大量に出回るのよりは、遥かにありがたい。




【ダイハツ・3代目ブーン(トヨタ・3代目パッソ)】

  生産は、ダイハツ。 ダイハツでは、ブーンという名前で、トヨタからは、パッソという名前で販売されていました。 3代目は、2016年から、2023年までで、4代目は、ありませんでした。 この写真の車は、パッソだと思って撮って来たのですが、帰ってから、写真をよく見たら、ダイハツのマークが付いていて、ブーンだと分かった次第。 初代と2代目は、1リットルと1.3リットルがありましたが、3代目は、1リットルだけ。

  大雑把な話ですが、軽自動車メーカーが作ったリッター・カーは、普通車メーカーが作ったリッター・カーより、造りがいいです。 軽より上位の車種として作るから、高級感を出そうとするんですな。 一方、普通車メーカーにとって、リッター・カーは、最小車種になるので、上位車種と差別化する為に、わざと安っぽい造りにします。 その点、この、ブーン/パッソは、ダイハツが作ったものだから、出来がいいだろうと思われます。

  女性向けを意識していた2代目に比べると、性別を問わない印象になっていますが、女性向けは女性向けで、デザインを変えたグレードがあったようです。 女性ユーザーを当て込んでいる車種では、最初から、そうした方がいいかも知れませんな。 もっとも、私は、そもそも、女性向けのデザインというのを、あまり高く評価していないのですが。 本当に優れたデザインは、乗り手の性別を選ばないものです。

  この車の色では分かり難いですが、明るい色の車なら、特徴的に目に付く点として、Cピラーに、黒いプラスチック部分があります。 おそらく、フィアット・2代目3代目パンダを真似たのでしょう。  昨今、こうなっている小型車が、妙に多いな。 わざわざ、真似るほど、いいデザインだと思えませんが。 小型車のデザインに興味がなく、どんなデザインにすればいいのか分からないから、とりあえず、有名どころを真似るのだとしか思えません。

  根本的な話ですが、日本で、リッター・カーというと、どうしても、軽と天秤にかけてしまい、「軽でもいいのでは?」、もしくは、「軽の方がいいのでは?」と思ってしまいますなあ。 維持費が、だいぶ違うからです。 「車は、まず第一に、移動や運搬の道具」と割り切っている人は、迷わず、軽を選ぶでしょう。 「扱いが楽だから、小さい車の方がいいけれど、軽は、せせこましいから、嫌」という人もいると思いますが、つまらない虚栄心としか思えず、そういう人間そのものが、つまらなく見えます。

  ただし、「軽は、せせこましいイメージがあるけれど、トール・ワゴンやハイト・ワゴンなら、室内が広いから、軽でもいい」という考えの人よりは、リッター・カーを選ぶ人の方が、好ましいです。 ノーマル車高なら、乗車姿勢が適切で、運転の楽しさが味わえるからです。 トールやハイトは、乗り物と言うより、「動く部屋」に過ぎないと言うのよ。




  今回は、以上、4台まで。

  写真の在庫がなくなったので、出かける時には、なるべく カメラを持って行き、意識して、一言 物申したい車を探すようになりました。 つくづく、私が興味を抱くようなデザインの車は、減ったと思います。 「旧車ブーム」などと言われている割には、街なかで、古い車を見かける事は、ほとんど ありません。 もはや、90年代の車すら、滅多に見なくなりました。 残念至極。