2008/02/24

続・増えるリコーダー

過日、≪増えるリコーダー≫という文章で、八本まで増えたソプラノ・リコーダーの内、半分を紹介しましたが、今回は残りの四本について書く事にします。 例によって、「リコーダーなんぞ、わしゃ知らん」という人は、飛ばして下さい。

アウロス 303A
ヤマハ YRS-28BⅢ
全音 スタンダード モデル SB
スズキ SRE-505

  前の四本が100円ショップの品を始めとする≪超廉価モデル≫だったのに比べ、今回の四本は、国内メーカー四社が売っているラインナップの中で、最も安いタイプを揃えたコレクションでして、いわば、≪並の廉価モデル≫です。


≪アウロス 303A≫
 1260円 日本製 バロック式 (運指表・掃除棒・グリス・指掛けフック付き)

  知っている人しか知らないと思いますが、≪アウロス≫というのは、日本のリコーダー専門メーカーなのです。 いや、正確に言うと、会社名は≪トヤマ楽器≫でして、≪アウロス≫はブランド名。 サイトを見てもらえば手っ取り早いんですが、現在整備中だそうで、見る事が出来ません。

  で、この最廉価モデルの303Aですが、見ての通り、色が白です。 象牙を模してあるので、象牙色といった方がいいでしょうか。 大変美しいです。 正直、象牙より美しい。 いや、ほんと。 高いモデルになると白と茶色のツートンになってしまいますが、白一色の方が、ずーっと高級感があります。

  外見はさておき、音ですが、非常に大きな音が出ます。 他と吹き比べてみると、はっきり違いが分かるような大きさで、実に気持ちがいい。 でも、学校で吹くならいざ知らず、家で吹くとなると、この抜けの良さは、却って邪魔になります。 音色は可も無く不可も無く。 音の安定度は良くて、最低音から中音域まで、淀みなく出ます。 廉価モデルの中では優等生ですな。 ちなみに、この笛、他社のものに比べて、長さが5ミリくらい長いです。

  指掛けフックというのは、本体の中程に取り付けて、右手の親指が掛かるようにし、笛を安定させる器具。 アウロスの物は、パチンとはめ込む脱着式で、最もよく出来ているといわれています。 しかし、そもそも初心者向けの装備なので、慣れてしまえば、あってもなくても大差ないという感じです。

  これは、≪アウロス 303A≫のケース。 合成皮革製ですが、作りはしっかりしています。 止め具はホック式。 右端の≪E≫は、イギリス式のEと思われます。 バロック式は、別名イギリス式とも呼ばれるのです。


≪ヤマハ YRS-28BⅢ≫
 1155円 インドネシア製 バロック式 (運指表・指掛けフック付き)

  泣く子も黙る御大ヤマハ楽器の製品。 象牙色の本体に、三音叉マークもバッチリ入っていて、大変美しい笛です。 見ているだけで、惚れ惚れします。 新品の時には、ピカピカ光っていたんですが、何度か使って水洗いする内に、艶は落ちてしまいました。 たぶん、ワックスを塗ってあったのでしょう。 でも、艶がなくなっても、まだ充分に美しいです。

  またまた外見はさておき、肝腎の音ですが、音量はアウロスより幾分小さく、音色も何となく神経質な感じがします。 そして、最低音のドが、出にくいです。 上から、ソ・ファ・ミ・レと塞いで行くと、段々音がビビり始め、全閉のドでは、音が割れるんじゃないかと吹いている方までビビりまくる始末。

  ヤマハに限らず、最低音のドが出にくく設定してある笛は結構あるようですな。 店によっては、「ドが出ない」と苦情を言って来たお客さんに、「指の塞ぎ方に隙間がある」と説明している所があるようですが、完全に塞いでいても、ドが出ない笛はあります。 確認する為には、指穴をマスキング・テープで全部塞いで吹いてみれば分かります。

  この笛、ドだけでなく、高さによって音色が変わる変な癖があり、ソ・ラの辺りは、この世のものとも思われぬような美しい音が出ます。 しかし、ソとラだけでは曲が吹けないから、宝の持ち腐れですな。

  この笛にも指掛けフックがついていますが、粘着テープで貼り付ける方式なので、アウロス以上に使う気が失せます。 こんな付属品、いらないと思うんですがねえ。

  ≪ヤマハ YRS-28BⅢ≫のケース。 材質は布です。 右端の≪B≫は、バロック式を表わしています。 開閉部はマジックテープ。 ケースの下の端に縫い残してある部分があり、通気口になっています。 笛の中に水分を残したまま収納すると、カビが生える事があるので、その対策かと思われます。 リコーダーの生産地はインドネシアでしたが、この布ケースはインド製です。 うーむ、国際的製品だ。


≪全音 スタンダード モデル SB≫
 1155円 日本製 バロック式 (運指表付き)

  全音という会社は、リコーダー以外にも、楽器や楽譜など、音楽関係の製品をたくさん出しています。 かなり有名な会社。 でも、知らない人はやはり知らないでしょうねえ。 サイトがあるので、検索して行ってみると宜しい。 なに、紹介するなら、リンクで繋げ? 誰がそこまで親切なものかね! あたしゃ、全音の社員じゃないんだよ。

  この笛は、最廉価モデルですが、色は中級・上級モデルと同じく、白茶のツートンです。 しかも、ウインド・ウエイが、アーチ形と来たもんだ。 ↓こんな形。

  他社の最廉価モデルは、みなストレート形ですから、こやつは一段上の機構を奢られているわけですな。 ウインド・ウエイというのは、吹き口の穴の事でして、アーチ形にすると、息の通りが僅かに阻害されて、繊細な音色になると言われています。 ストレート形というのは、ただの長方形です。

  で、音ですが、アーチ形を採用している割には、さほど繊細な感じはしません。 特別良くもなく、悪くもなく、音色、安定度、みな平均的。 小学生に使わせるには、良心的な性能といえるでしょう。 高音域にはそこそこ強く、かなりの高さまで、安定した音が出ます。

  ≪全音 スタンダードモデル SB≫のケース。 布製で、開閉部はホック。 裏の上の方に、フック穴あり。 上品な色だと思いますが、子供が使う事を考えると、明るい色は、汚れ易いかもしれません。


≪スズキ SRE-505≫
 1155円 生産地不明 バロック式 (運指表付き)

  スズキ楽器の最廉価モデル。 ヤマハ楽器は、ヤマハ発動機と関係ある会社ですが、スズキ楽器がバイク・車のスズキと関係あるのかどうか、よく分かりません。 なぜか、調べる気にもなりません。

  ネットで調べた段階では、黒だと思っていたんですが、手にしてみると、焦げ茶色でした。 ↓は、頭部管のアップ。

  金文字の≪PLUMA≫は、スズキのリコーダーのブランド名です。 ラテン系の言葉で、≪羽根≫の意味。 それはいいんですが、この最廉価版の≪SRE-505≫のみは、その上に、≪SUZUKI≫と≪S≫マークの浮き彫りが入っているのです。 大方、「小学校に採用された時に、スズキの名前を入れておけば、児童に会社を覚えてもらえるだろう」という魂胆なんでしょうが、狭い所にロゴをゴテゴテ詰め込むのは、ダサさの極致ですな。 ≪PLUMA≫だけにすれば、かっこいいのにねえ。

  この笛、高音に強く、高いファくらいまでなら、いとも容易に出ます。 高音に強いリコーダーというのは珍しいので、貴重な存在と言えます。 私の乏しい経験に照らすと、高いファ辺りまで出せれば、大抵の曲は吹けます。 いや、たぶん。

  これで、外見がよければ、言う事無しなんですがねえ。 いや、言う事まだありました。 足部管が抜け易いのです。 1155円で、これはないだろう。 そういえば、キズも多かったです。 「よく、こんなの出荷したな」 「もしかしたら、中古なんじゃないの?」と思うくらい、あちこちに擦りキズが。 でもまあ、プラスチックなので、歯磨き粉をタオルにちょっとつけて磨けば、表面的なキズは落ちるんですがね。

  スズキ≪SRE-505≫のケース。 布製。 国内メーカーの最廉価版四種の中では、このケースが一番汚れが目立たない色です。 欲を言えば、もうちょっと厚手の生地にした方が長持ちしそうです。


  今回の四本は全部、バロック式の運指です。 バロック式は、ファの音や、半音の指使いが、ジャーマン式とは異なります。 文章で説明するのは難しいので、興味のある方は、メーカー・サイトの図解を御覧下さい。 ちなみに、ソプラノ・リコーダーの場合、国内四社は、すべてのラインナップに、バロック式とジャーマン式の両タイプを揃えています。 私個人の感想ですが、操作はやはり、ジャーマン式の方が簡単です。 ジャーマン式を採用する学校が多いのもむべなるかな。 笛にほとんど興味がない子供に、バロック式を持たせたら、いきなり笛嫌いになってしまうでしょう。

  ネット上で、リコーダーについて偉そうな御高説をぶっている人達は、大概バロック式を勧めていますが、私だったら、これから始めるという人に、バロック式は勧めません。 ジャーマン式である程度吹けるようになってから、バロック式を習っても、別段不都合が無いからです。 問題は、何式の笛で吹いているかではなく、曲が吹けるかどうかなのですから。 私は、両方を日替わりで使っていますが、別段、混乱する事は無いです。 車とバイクの運転の仕方を間違えないのと同じ理屈でして、人間の頭というのは、そんなに単純ではないんですな。


  今回、写真があったので、ケースまで一緒に紹介しましたが、実は私は、笛を陳列台に出しっ放しにしているので、ケースは使っていません。 いちいち吹く度にケースから出すのも面倒ですし、出し入れの度にキズがつくのも嫌だからです。 家の中でしか吹かないから、持ち運びの用も無し。

  小学生は、リコーダーをケースに入れて、持ち運びしているわけですが、吹いた後、洗いもせずに、ケースにぶち込むのは、大変不衛生です。 あけすけに言わせて貰えば、き・た・な・い。 たとえ、クラス一の美少女の笛であっても、唾液がついたまま放置すれば、やがて万億兆の雑菌がうにょろうにょろと繁茂するのであって、そのまま数日おいて、またそれを口につけようというのだから、その無神経ぶりには開いた口が塞がりません。

  プラスチック・リコーダーは、水洗いできますから、吹き終わったら、水道の蛇口の下に持って行って、洗ってしまえばいいのです。 吹き口の外回りをざっと流した後、窓の部分から水を注いで、ウインド・ウエイと管の中を流します。 洗い終えたら、上下に持ち替えて軽く振り、中の水を切ります。 最後に外側の水滴をティッシュかタオルで拭き取ればおしまい。 二分もあれば終わります。 なぜ、学校で、このメンテを教えないのか、大変不可解。