治世・乱世
グルジアが南オセチアに侵攻して、ロシアに蹴散らされた折、アメリカがグルジアに軍事援助をしていたと聞いて、「ああ、そうなのか・・・」と思った事がありました。 つまり、アメリカという国は、ロシアを現状のままで置いておく気が無いのです。 言い方を換えると、アメリカは現状のロシアと、対等な国として、この地球上に存在し続けるつもりが無いという事です。
アメリカにとって、ロシアが他の国と明らかに異なる点は、アメリカに匹敵する量の核兵器及びその運搬手段を持っているという事です。 ソ連時代の遺産ですが、ロシアは核兵器の存在価値を熟知していて、通常軍備の更新を控えてでも、戦略ミサイル軍だけは維持して来ました。 世界中で一番核兵器の恐ろしさを知っているアメリカは、ロシアとの友好関係を維持して、自国に対して核兵器が使われる可能性を払拭するだけでは安心できず、ロシアを軍事的に封じ込めて、最終的には核兵器の放棄に追い込むつもりなのだと思われます。
これを演繹して見ると、アメリカの外国に対する姿勢に、一貫した方針を読み取る事が出来ます。 現在、アメリカと仲の良い国、つまり、アメリカから、≪同盟国≫と呼ばれている国々ですが、これらの国は、すべて、軍事的にはアメリカの配下に入っています。 もし世界規模の戦争が起こったとしたら、必ずアメリカ側につくと考えられる国です。 思うに、アメリカが、地球上に存在する事を許容する外国は、これら同盟国だけなのではありますまいか? イランや朝鮮のように、明らかに敵と見做されている国は、常に外交的・軍事的に圧迫を受けていますし、ロシアや中国のように、敵に回る可能性が少しでもある国は、常に警戒され、事あるごとに難癖をつけられています。
アメリカにとって外国とは、自国と同じ立場の≪他者≫ではなく、≪味方≫か、≪味方でない者≫か、≪敵か≫に三分類される、≪夷狄≫に過ぎないのです。 これは、別にアメリカに限った事ではなく、過去の歴史を見てみれば、その時代その地域で最大の国力を誇った国は、押し並べて、この種の自己中心的な世界観を持っていました。 日本も例外ではなく、大日本帝国時代には、今のアメリカ以上に自己中心的な考え方に毒され、極端な事に、外国をすべて敵と見做していました。 もっとも、大日本帝国は実際には軍事部門だけ肥大化した小国だったわけですが、現在のアメリカは軍事的にも経済的にも、世界を押さえ込めるだけの実力を持っているという点が、決定的に違います。
現在のアメリカが、こういう方針を持ち続ける限り、世界から戦争・紛争が無くなる事など、ありえません。 第二次世界大戦後に世界で起こった争い事には、必ずと言っていいほどアメリカの情報機関が絡んでいますが、戦争があればどちらかに加担し、戦争が無ければわざわざ戦争が起こるように情勢を持って行く事を仕事にしているのですから、呆れ返る話です。 アメリカ情報機関の仕事は、この地球上から、≪敵≫と、≪敵に回る可能性がある国≫が一掃され、≪同盟国≫だけで満たされるようになるまで、途切れる事無く続くのでしょう。
今後、ロシアや中国との軍事的緊張は強まる事はあっても、解消される事など考えられません。 朝鮮との交渉は、少しずつ進んでいるように見えますが、アメリカの最終目標を考えれば、核兵器を持った非同盟国をそのまま存続させる事はありえないので、これも、完全な解決など考えられません。 米朝交渉は、どちらかが亡びるまで延々と続くと思われます。 ただ、交渉が半永久的に続く事に対する覚悟の度合いは、朝鮮外交部の方が、アメリカ国務省よりも、上を行っていると思います。 アメリカ側は、「いずれ、朝鮮も、韓国や日本同様に、同盟国として取り込んでしまえば、交渉は終る」と考えているのに対し、朝鮮側には、アメリカに屈するという選択肢は無く、アメリカがこの世から消え去る事も考えられないですから、無限の交渉を覚悟せざるを得ないわけです。
アメリカは原子力協定などで、インドに接近しています。 中国を牽制する為だと言われていますが、そんな単純な話ではないのであって、アメリカがインドに関して恐れているのは、昨今、インドとロシアが、兵器購入で、極めて親密な関係を構築しつつあるからです。 インド軍は、イギリスの植民地だった関係で、独立後しばらく、イギリス製の兵器を使っていましたが、ソ連時代末期から、ぽつぽつソ連製の兵器を買い始め、今はソ連・ロシア製兵器が主力装備になっています。 ちなみにインド軍は、100万人以上の兵員と、ロシア製・自国製の最新兵器、オマケに大型空母まで持っている大軍隊です。
アメリカとしては、インドとロシアというビッグ・パワー同士が、自分の知らない所で関係を深めるのは、甚だ困るわけです。 それで、原子力協定で恩を売って、インドを繋ぎとめておこうという算段。 しかし、アメリカのインドに対する研究は、かなりレベルが低いようですな。 インドを、「将来、成長が見込まれるが、まだまだ純真な心を持った青年」のように見做しているようですが、とんだ間違いです。 あれだけ、ソフト産業をかっさらわれていながら、未だに、「インド人の方が、アメリカ人より知能が高い」事に気付いていないとは、敢えて指摘するも愚かなり。 上から見下せるような相手ではないのは歴然です。 そして、どの国でも、強大な力を持てば、力の劣る外国の言う事など聞く耳持たなくなるのであって、インドだけが例外であるはずがありません。
アメリカには、「中国とインドを争わせて、漁夫の利を」という目論みも当然あるわけですが、≪夷を以て夷を制す≫という政策は、大昔から必ず失敗に終わると決まっています。 一時的に有効なだけで、その内、夷同士で勝負が決まると、その勝者が強大化して、利用しようとした方まで滅ぼされてしまうのです。 中国の王朝は、そのパターンで何回滅びたか分かりませんし、ローマ帝国の衰退も、ゲルマン人を利用しようとした事が原因でした。 アメリカも同じなのであって、インドと中国が熾烈にぶつかり合う頃には、両国の経済力・軍事力は、それぞれアメリカを遥かに追い越していると思われますから、アメリカが何かできるような立場ではなくなっているでしょう。 この点、アメリカが先を読めないのは、些か不思議な感じがします。 行く行く、インドを盟主にして、その同盟国になるつもりなら、まだ分かりますが。
ちなみに、核拡散防止条約ですが、インドが早期に加盟しないとしたら、アメリカにとって悪夢のような結果を招くかもしれませんな。 インドの核兵器保有量が増えて、中国のそれを超えれば、中国はもはや、NPTなどという不平等条約に付き合ってはいられないのであって、さっさと脱退するでしょう。 一旦枷が外れれば、中国とインドが競争で増やし始め、アメリカ・ロシアの保有量とほぼ同じか、それ以上の数まで鰻登りしていくのは、疑いありません。 NPT非加盟のインドと原子力協定を結んでしまった事は、将来、アメリカの痛恨事になる可能性が大きいです。
中国の伝統的世界観に当て嵌めて考えた時、現代は、≪治世≫か、≪乱世≫かと問われれば、明らかに、≪乱世≫の内です。 もっと細かく言うと、春秋戦国時代の前半である、春秋時代によく似ています。 諸国乱立し、群雄割拠しているが、まだ戦国時代には入っていない、嵐の前の静けさに覆われている頃合ですな。 今現在を生きている人々は、こういう幾つもの国が共存する状態が、いつまでも続くと思っているわけですが、歴史を見れば、そういう事はありえないのが分かります。 必ず、戦国時代は訪れ、その先には、天下統一が待っているのです。 文明が発達しておらず、地球が広かった昔なら、ポツンポツンと離れた所に多くの国が存在しても不思議は無かったわけですが、こうと狭くなった現代では、幾つも国が並存している方が奇妙だと見るべきです。
天下統一を成し遂げるのは一国ですが、では、それ以降、その国の文化だけが残るのかというと、そんな事は無いのであって、ごたまぜになって融合していくのが普通です。 また、統一に成功した国は、すぐに滅びてしまうというパターンも存在します。 春秋戦国時代を終わらせた秦は漢に滅ぼされ、三国時代を制した魏は晋に乗っ取られ、五胡十六国時代を統一した隋は僅か二代で滅んで、唐が取って代わりました。 ≪狡兎死して走狗煮らる≫という言葉がありますが、乱世が終わって無用になるのは、武将だけではなく、乱世型に作られた国そのものも、時代に適合できず、治世型の国に滅ぼされてしまうんですな。
もし、アメリカが、新興大国を押さえ込んで、天下統一に成功したとしても、長続きしない可能性は極めて高いです。 常に外部に敵を持っていなければ、国内の意思統一ができないというような悪い癖がある限り、それは全人類を統一する国としては相応しくないでしょう。 軍事力に秀で、侵略を是とする国が、治世に無用なのは、理屈で考えても分かる事です。
アメリカにとって、ロシアが他の国と明らかに異なる点は、アメリカに匹敵する量の核兵器及びその運搬手段を持っているという事です。 ソ連時代の遺産ですが、ロシアは核兵器の存在価値を熟知していて、通常軍備の更新を控えてでも、戦略ミサイル軍だけは維持して来ました。 世界中で一番核兵器の恐ろしさを知っているアメリカは、ロシアとの友好関係を維持して、自国に対して核兵器が使われる可能性を払拭するだけでは安心できず、ロシアを軍事的に封じ込めて、最終的には核兵器の放棄に追い込むつもりなのだと思われます。
これを演繹して見ると、アメリカの外国に対する姿勢に、一貫した方針を読み取る事が出来ます。 現在、アメリカと仲の良い国、つまり、アメリカから、≪同盟国≫と呼ばれている国々ですが、これらの国は、すべて、軍事的にはアメリカの配下に入っています。 もし世界規模の戦争が起こったとしたら、必ずアメリカ側につくと考えられる国です。 思うに、アメリカが、地球上に存在する事を許容する外国は、これら同盟国だけなのではありますまいか? イランや朝鮮のように、明らかに敵と見做されている国は、常に外交的・軍事的に圧迫を受けていますし、ロシアや中国のように、敵に回る可能性が少しでもある国は、常に警戒され、事あるごとに難癖をつけられています。
アメリカにとって外国とは、自国と同じ立場の≪他者≫ではなく、≪味方≫か、≪味方でない者≫か、≪敵か≫に三分類される、≪夷狄≫に過ぎないのです。 これは、別にアメリカに限った事ではなく、過去の歴史を見てみれば、その時代その地域で最大の国力を誇った国は、押し並べて、この種の自己中心的な世界観を持っていました。 日本も例外ではなく、大日本帝国時代には、今のアメリカ以上に自己中心的な考え方に毒され、極端な事に、外国をすべて敵と見做していました。 もっとも、大日本帝国は実際には軍事部門だけ肥大化した小国だったわけですが、現在のアメリカは軍事的にも経済的にも、世界を押さえ込めるだけの実力を持っているという点が、決定的に違います。
現在のアメリカが、こういう方針を持ち続ける限り、世界から戦争・紛争が無くなる事など、ありえません。 第二次世界大戦後に世界で起こった争い事には、必ずと言っていいほどアメリカの情報機関が絡んでいますが、戦争があればどちらかに加担し、戦争が無ければわざわざ戦争が起こるように情勢を持って行く事を仕事にしているのですから、呆れ返る話です。 アメリカ情報機関の仕事は、この地球上から、≪敵≫と、≪敵に回る可能性がある国≫が一掃され、≪同盟国≫だけで満たされるようになるまで、途切れる事無く続くのでしょう。
今後、ロシアや中国との軍事的緊張は強まる事はあっても、解消される事など考えられません。 朝鮮との交渉は、少しずつ進んでいるように見えますが、アメリカの最終目標を考えれば、核兵器を持った非同盟国をそのまま存続させる事はありえないので、これも、完全な解決など考えられません。 米朝交渉は、どちらかが亡びるまで延々と続くと思われます。 ただ、交渉が半永久的に続く事に対する覚悟の度合いは、朝鮮外交部の方が、アメリカ国務省よりも、上を行っていると思います。 アメリカ側は、「いずれ、朝鮮も、韓国や日本同様に、同盟国として取り込んでしまえば、交渉は終る」と考えているのに対し、朝鮮側には、アメリカに屈するという選択肢は無く、アメリカがこの世から消え去る事も考えられないですから、無限の交渉を覚悟せざるを得ないわけです。
アメリカは原子力協定などで、インドに接近しています。 中国を牽制する為だと言われていますが、そんな単純な話ではないのであって、アメリカがインドに関して恐れているのは、昨今、インドとロシアが、兵器購入で、極めて親密な関係を構築しつつあるからです。 インド軍は、イギリスの植民地だった関係で、独立後しばらく、イギリス製の兵器を使っていましたが、ソ連時代末期から、ぽつぽつソ連製の兵器を買い始め、今はソ連・ロシア製兵器が主力装備になっています。 ちなみにインド軍は、100万人以上の兵員と、ロシア製・自国製の最新兵器、オマケに大型空母まで持っている大軍隊です。
アメリカとしては、インドとロシアというビッグ・パワー同士が、自分の知らない所で関係を深めるのは、甚だ困るわけです。 それで、原子力協定で恩を売って、インドを繋ぎとめておこうという算段。 しかし、アメリカのインドに対する研究は、かなりレベルが低いようですな。 インドを、「将来、成長が見込まれるが、まだまだ純真な心を持った青年」のように見做しているようですが、とんだ間違いです。 あれだけ、ソフト産業をかっさらわれていながら、未だに、「インド人の方が、アメリカ人より知能が高い」事に気付いていないとは、敢えて指摘するも愚かなり。 上から見下せるような相手ではないのは歴然です。 そして、どの国でも、強大な力を持てば、力の劣る外国の言う事など聞く耳持たなくなるのであって、インドだけが例外であるはずがありません。
アメリカには、「中国とインドを争わせて、漁夫の利を」という目論みも当然あるわけですが、≪夷を以て夷を制す≫という政策は、大昔から必ず失敗に終わると決まっています。 一時的に有効なだけで、その内、夷同士で勝負が決まると、その勝者が強大化して、利用しようとした方まで滅ぼされてしまうのです。 中国の王朝は、そのパターンで何回滅びたか分かりませんし、ローマ帝国の衰退も、ゲルマン人を利用しようとした事が原因でした。 アメリカも同じなのであって、インドと中国が熾烈にぶつかり合う頃には、両国の経済力・軍事力は、それぞれアメリカを遥かに追い越していると思われますから、アメリカが何かできるような立場ではなくなっているでしょう。 この点、アメリカが先を読めないのは、些か不思議な感じがします。 行く行く、インドを盟主にして、その同盟国になるつもりなら、まだ分かりますが。
ちなみに、核拡散防止条約ですが、インドが早期に加盟しないとしたら、アメリカにとって悪夢のような結果を招くかもしれませんな。 インドの核兵器保有量が増えて、中国のそれを超えれば、中国はもはや、NPTなどという不平等条約に付き合ってはいられないのであって、さっさと脱退するでしょう。 一旦枷が外れれば、中国とインドが競争で増やし始め、アメリカ・ロシアの保有量とほぼ同じか、それ以上の数まで鰻登りしていくのは、疑いありません。 NPT非加盟のインドと原子力協定を結んでしまった事は、将来、アメリカの痛恨事になる可能性が大きいです。
中国の伝統的世界観に当て嵌めて考えた時、現代は、≪治世≫か、≪乱世≫かと問われれば、明らかに、≪乱世≫の内です。 もっと細かく言うと、春秋戦国時代の前半である、春秋時代によく似ています。 諸国乱立し、群雄割拠しているが、まだ戦国時代には入っていない、嵐の前の静けさに覆われている頃合ですな。 今現在を生きている人々は、こういう幾つもの国が共存する状態が、いつまでも続くと思っているわけですが、歴史を見れば、そういう事はありえないのが分かります。 必ず、戦国時代は訪れ、その先には、天下統一が待っているのです。 文明が発達しておらず、地球が広かった昔なら、ポツンポツンと離れた所に多くの国が存在しても不思議は無かったわけですが、こうと狭くなった現代では、幾つも国が並存している方が奇妙だと見るべきです。
天下統一を成し遂げるのは一国ですが、では、それ以降、その国の文化だけが残るのかというと、そんな事は無いのであって、ごたまぜになって融合していくのが普通です。 また、統一に成功した国は、すぐに滅びてしまうというパターンも存在します。 春秋戦国時代を終わらせた秦は漢に滅ぼされ、三国時代を制した魏は晋に乗っ取られ、五胡十六国時代を統一した隋は僅か二代で滅んで、唐が取って代わりました。 ≪狡兎死して走狗煮らる≫という言葉がありますが、乱世が終わって無用になるのは、武将だけではなく、乱世型に作られた国そのものも、時代に適合できず、治世型の国に滅ぼされてしまうんですな。
もし、アメリカが、新興大国を押さえ込んで、天下統一に成功したとしても、長続きしない可能性は極めて高いです。 常に外部に敵を持っていなければ、国内の意思統一ができないというような悪い癖がある限り、それは全人類を統一する国としては相応しくないでしょう。 軍事力に秀で、侵略を是とする国が、治世に無用なのは、理屈で考えても分かる事です。
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