軍事知識
広東省の珠海市で、航空ショーが開かれたそうで、中国のポータル・サイトの軍事情報ページは、ここ一週間ばかり、そのニュースで埋め尽くされています。 ちなみに、中国のポータル・サイトは、≪ネット新聞≫というべき役割を担っているのですが、大抵、≪軍事≫というニュース・カテゴリーが設けられていて、最新の情報が写真入りで、惜しげもなく公開されています。 日本だと、ネット上で軍事関連ニュースを読める所は、ちょっと思い当たりません。 ≪航空ファン≫とか、≪世界の艦船≫とか、そういった専門の雑誌を買わなければ、兵器の写真など拝めません。 単に軍事関連のコンテンツを出している個人サイトならありますが、ほぼ100%胡散臭いので、見るに値しません。
で、その≪珠海航空ショー≫ですが、ここ一二年の間に世に出て来た、中国軍の最新鋭機が登場して、世界中から集まった軍事関係者の目を釘付けにしている模様。 特に、戦闘機、≪殲10≫のデモ飛行は、想像されていた以上の運動性能を見せつけ、観客を驚かせたらしいです。 この≪殲10≫、開発の噂が流れてから、20年くらい経って漸く完成したという、相当な難産だったのですが、出来栄えは非常に良いようです。 開発者の談によると、「風洞実験を延々と繰り返した」そうで、コンピューター内のシミュレーションで設計したわけではない点は、実際の飛行では強味になるでしょう。
イスラエルが作りかけて、途中で計画を打ち切った、≪ラビ≫という試作機をベースにしていると言われていますが、≪ラビ≫自体が、アメリカの≪F16≫の胴体に、フランスの≪ミラージュ≫のデルタ翼を組み合わせた改良版ですから、「どこがオリジナルか」などという議論そのものが無意味です。 ≪F16≫と、≪殲10≫を見比べて、「似ている」と言う人がいたら、それは、戦闘機デザインについて、よく知らない人でしょう。 中国の航空機メーカーが、それまで経験が無かった、デルタ翼+カナード機を作り、しかも、その飛行性能が優れているという点こそが、注目すべき部分なのです。
他に、≪梟龍≫という戦闘機も出ましたが、これは、パキスタンと共同開発した物で、≪殲10≫よりは、性能が落ちるようです。 翼のレイアウトは、こちらの方が≪F16≫に似ています。 基本的に輸出専用らしく、中国軍で採用されるかどうかは微妙な所。 中国の空軍は、装備の質に関して厳しい考え方を持っていて、性能が要求基準より低いと、国産でも採用しません。 中ソ対立で、外国製機が手に入らなかった時期でも、≪没≫にされた国産機がかなりあったようです。 国産なら少々欠陥があっても採用してしまうどこかの国とは哲学が違っているようで興味深いですな。
もう一機、≪飛豹≫という戦闘爆撃機があって、これは海軍が採用しています。 英仏共同開発の≪ジャガー≫に似ていると言われていますが、水平尾翼には、≪ミグ21≫の面影があり、むしろ、ソ連デザインの流れを汲んでいると見受けられます。 中国海軍は、近い将来、空母を建造する計画を持っているようですが、≪飛豹≫は、翼面積が小さいので、艦上に降りるのは厳しいでしょうな。 もっとも、艦載機候補の機種は、ロシア製機が検討されているようですが。
飛行機以外にも、単体のジェット・エンジンが、出力別に何種類も展示されたそうで、中国が航空機開発に莫大なエネルギーを投じている事が分かります。 最初の出現から半世紀以上経った今でも、ジェット・エンジンの開発は難しくて、世界中に戦闘機を作っている国は数あれど、エンジンを自前で作れる国は指を折って数えるほどです。 台湾・日本・韓国など、アジア勢の≪国産機≫も、エンジンはアメリカ製なのが普通。 これまた、中国空軍は、「使えねーもんは、買わねー」主義なので、国産エンジンが大量に出て来たという事は、「これなら使える」というレベルに到達した証拠だと思われます。
そうそう、地対空、空対空など、ミサイル類もどかどか写真が出ていました。 一体何十種類、同時進行で開発しているか分からないほどです。 地上戦では、ミサイルの性能向上で、戦車が陳腐化してしまいましたが、空や海でも事情は同じでして、これからの戦闘は、ミサイルの性能がすべてを決めてしまうと思われます。 百億円以上する戦闘機が、一千万円のミサイルで、一瞬の内にスクラップに変わってしまうのですから、ミサイルの性能向上に力を注ぐ事が如何に効率的か分かろうというもの。
中国の兵器装備は、陸海空全方面で目まぐるしく刷新されつつあります。 現状の目標を推測すると、恐らく、質・量ともに、アメリカ軍と同じレベルを目指しているものと思われます。 海軍は最もその志向が強く、アメリカで言えば、イージス艦に相当する電子戦闘艦が、次々に登場しています。 一砲塔、垂直発射ミサイル、レーダー一体式自動迎撃機関砲、船尾にヘリポートと、アメリカ型のレイアウトを、ほぼそっくり取り入れていて、ソ連・ロシア型とは明らかに決別してしまいました。 アメリカの場合、イージス艦は、駆逐艦でも巡洋艦でも、それぞれ艦型が一種類に統一されていますが、中国の場合、複数の艦型を同時進行で作っており、これはたぶん、いろいろな艦型を試しているか、技術の進歩に建造が追い付かず、そのつど新設計しているかの、どちらかでしょう。
軍事アナリストがよく、中国軍と台湾軍を比較して、「どちらの方が優位」といった事を書いていますが、全く馬鹿馬鹿しい比較で、「頭は大丈夫か?」と訝ってしまいます。 中国軍が意識しているライバルは、アメリカ軍なのであって、規模からして、台湾軍と比べるなど、ナンセンス極まりないです。 象と犬を比べて、どちらが強いかと言っているようなものです。 実際に戦争にでもなったら、三日もしない内に、台湾軍は身動き取れなくなってしまうでしょう。 それを、「互角に戦える」だの、「台湾軍の方が航空戦力は優位」だの、冗談としか思えない見解を並べていますが、台湾人に誤まった自信を植えつけるような意見は控えるべきでしょう。 中国軍が全力を出したら、台湾どころか、西太平洋全域を制圧するくらいの力は充分にあります。 アメリカは、中国と戦うとなったら、核戦争を覚悟しなければなりませんが、そうなればアメリカも消えるのであり、そんな選択肢は無いのだと、よくよく認識すべきです。 日本や韓国など、その他の小国は尚の事。
日本の軍事雑誌や新聞などを見ていると、中国の軍事技術を、旧西側のそれより劣っていると見下した態度が、ちくちくと見受けられますが、途轍もない思い違いなので、鵜呑みにしてはいけません。 まず、日本で軍事知識があるような人間は、大抵、右寄りの思想傾向があり、中国やソ連・ロシアを忌み嫌って、「どうにかして馬鹿にしてやりたい」と機会を覗っています。 そんな偏った頭の持ち主に、客観分析などできるはずがないのです。 そういう連中の書く文章は、冒頭からして、悪意と侮蔑で装飾されていますから、すぐ分かります。 ちょっとでも客観性を欠いたような表現があったら、もうそれ以上は読まない方がいいですな。 時間と労力の無駄。 ただ嫌味を綴ってあるだけなのであって、そんなのは情報でも何でもないからです。
一方、新聞や一般の雑誌ですが、既に何度も指摘しているように、書いている人間がベタベタの文系ですから、科学技術全般に疎く、軍事知識も皆無に近いです。 大学で、純文学の人間性描写に耽溺していたような人々に、「ミサイルがどうの、ステルスがこうの」などと言っても、馬に念仏を聞かせるようなものでしょう。 軍事知識というのは、最低限、一時期でも兵器に興味を抱いていた者でなければ、頭に入ってこないのです。 嘘だと思ったら、そちらの方面に全く興味が無い友人を捕まえて、ロケット砲と無反動砲の原理の違いでも説明して御覧なさい。 そんな単純明白な事でも、何回繰り返しても、理解してくれないから。
恐ろしいのは、そういう天下御免の門外漢達が、全国紙の新聞で、軍事記事を書いたりしている事でして、一般の読者はもっと疎いですから、まるで頓珍漢な内容でも鵜呑みにしてしまいます。 たとえば、「現在、世界中で最も性能のいい戦闘機は何か」と聞かれたら、軍事知識がある人なら、かなりの割合が、「スホーイ27系列」と答えると思います。 しかし、新聞や一般雑誌からしか軍事知識を得ていない人は、「アメリカの、ほら、日本に売ってくれないあれ・・・・」と、≪F22ラプター≫を挙げるでしょう。 ≪スホーイ27系列≫を全く知らない人も、少なくないと思います。 そして、漠然と、「ソ連・ロシア機はアメリカ機に遠く及ばない。 中国機に至っては問題外」と、思い込んでいるのです。
こういう、認識はこの上なく危険だと思うのですよ。 「平和主義者で、兵器なんぞ見たくもない」というなら、それはそれで良いと思うのですが、兵器に興味が無い一方で、外国の軍事技術を見下しているような人が非常に多いのが感心しない所。 平和主義者であろうが、戦争主義者であろうが、認識は正しいに越した事はありますまい。 知らない事は正直に知らないと認めて、その事について公けの場であれこれ口にしたりしないのが正しい態度というものでしょう。
ちなみに、自衛隊の装備ですが、前にも書いたように、本当に大した事はないですから、ゆめゆめ活用しようなどと目論まないように。 そもそも、自衛隊というシステムは、単独で動かせるように作られていないのです。 アメリカ軍が、日本に直接関わる軍事行動を取る場合に、その一部分として機能するようにデザインされているんですな。 イージス艦などは、その典型で、もともと、アメリカの空母艦隊を護衛する為のシステムなのです。 イージス艦だけ一隻あっても、それはただの電子戦闘艦に過ぎません。 今時の駆逐艦・巡洋艦は、大抵、電子戦闘艦ですから、イージス艦だからといって、飛び抜けた実力があるわけではないのです。 だけど、こういう事を門外漢に理解させるのは、本当に大変なんですよ。 ほとんど、不可能ですな。
ところで、≪F22ラプター≫ですが、今の所、実績が少ないので、軽々に高い評価はしかねます。 ちなみに、戦闘機の実績を言う場合、戦争が無ければ本番はありませんから、航空ショーや公開演習で見せる性能を基準に判断する事になります。 飛行性能は見れば分かりますが、更に重要な性能である、レーダーの有効範囲やコンピューターの処理能力の高さなどは、公表される諸元データからしか推測できず、デビューから退役まで分からずじまいという事も珍しくありません。
そもそも、ステルス性能というのが、少々曲者でして、本当に有効なのか、怪しい所があります。 「レーダーには、鳥くらいの大きさにしか映らない」という表現がよく使われますが、鳥大だろうが拳大だろうが、とにもかくにもレーダーで捉えられるのであれば、時速500キロ以上で飛ぶ鳥などいないのですから、簡単に飛行機だと判断されてしまいそうです。 現にコソボ紛争の時、最初の実用ステルス機である≪F117≫という攻撃機が、セルビア軍のレーダーに捉えられて撃墜されており、どんな難しい方法を使うにせよ捉えられるのであれば、ステルス技術の価値は大幅に目減りすると言わざるを得ないでしょう。
≪F117≫の部隊は、僚機が撃墜された後もコソボ紛争期間を通じて出撃を続けましたが、アメリカ軍にしてみれば、ステルス技術を抑止力として位置づけている立場上、それ以上撃墜されてはたまらないわけで、たぶん戦場には行かず、地中海上空を一回りして帰って来ていただけだったんじゃないかと思います。 一旦「使えねー」と分かると、兵器に命を任せている軍人は一気に醒めるもので、≪F117≫は、異例の早さで退役させられてしまいました。 ≪F22ラプター≫は、飛行性能をよくする為に、ステルス性能は≪F117≫より劣っているとされ、ますますレーダーに捉えられている可能性が高いです。
大体、ステルス技術の原理を最初に理論化したのは、ソ連の学者ですが、ソ連軍では重要視されず、アメリカが拾ったという歴史的経緯があります。 ≪クリスティー戦車≫とは逆のパターンですな。 合理主義で有名だったソ連で没にされるには、それなりの理由があったはずで、やはり、「こんなん使えねー」と見做されたんでしょう。 飛行機にステルス性能を盛り込む為には、外形デザインに大幅な制約がかかるのを避けられませんが、そうまでして拘るほど有効な技術かどうか、軍事技術者の間では未だ意見が分かれているのです。 ステルスと聞いて、単純に「最新技術!」と大騒ぎしているのは、この種の裏事情を知らない門外漢だけです。
調子に乗って扱き下ろし続けますが、ステルス機は、その機能上、ミサイルや爆弾、使い捨て外部燃料タンクなどを機体や主翼の下に取り付ける事が出来ません。 開閉扉があって、機体の中に内蔵する形になります。 当然、搭載量が少なくなり、作戦行動に制約が出ます。 その点でも、「使えねー」のです。 一応、外部吊り下げもできるように、取り付け基部を設けてあるのですが、それをやるとステルス性能が損なわれて、普通の戦闘機と同じになってしまうんですな。 「使えねーなー」。
もっと書いたろか。 ≪F22ラプター≫は、「レーダーの有効範囲が広く、コンピューターの能力も高い為、自分のミサイルを使いきった後も、他の普通の戦闘機が運んで来たミサイルの誘導を引き継いで、長射程攻撃が出来る」とされていますが、そんな用途に使うなら、何も戦闘機の形をしている必要は無いわけで、早期警戒機のように大型レーダーを積んだ飛行機を高高度で飛ばしておいて、普通の戦闘機が運んできたミサイルを誘導させればいいんじゃないの? という気がします。 いやいや、それどころか、昨今の空戦では、機関砲は全くと言っていいほど使われず、ミサイル戦オンリーである事を考えれば、普通の戦闘機すら必要ないのであって、早期警戒機に直接ミサイルを積んでいけば、すべて事足りると思うのですが、どうしてどの国もやらないのか、非常に不思議です。
で、その≪珠海航空ショー≫ですが、ここ一二年の間に世に出て来た、中国軍の最新鋭機が登場して、世界中から集まった軍事関係者の目を釘付けにしている模様。 特に、戦闘機、≪殲10≫のデモ飛行は、想像されていた以上の運動性能を見せつけ、観客を驚かせたらしいです。 この≪殲10≫、開発の噂が流れてから、20年くらい経って漸く完成したという、相当な難産だったのですが、出来栄えは非常に良いようです。 開発者の談によると、「風洞実験を延々と繰り返した」そうで、コンピューター内のシミュレーションで設計したわけではない点は、実際の飛行では強味になるでしょう。
イスラエルが作りかけて、途中で計画を打ち切った、≪ラビ≫という試作機をベースにしていると言われていますが、≪ラビ≫自体が、アメリカの≪F16≫の胴体に、フランスの≪ミラージュ≫のデルタ翼を組み合わせた改良版ですから、「どこがオリジナルか」などという議論そのものが無意味です。 ≪F16≫と、≪殲10≫を見比べて、「似ている」と言う人がいたら、それは、戦闘機デザインについて、よく知らない人でしょう。 中国の航空機メーカーが、それまで経験が無かった、デルタ翼+カナード機を作り、しかも、その飛行性能が優れているという点こそが、注目すべき部分なのです。
他に、≪梟龍≫という戦闘機も出ましたが、これは、パキスタンと共同開発した物で、≪殲10≫よりは、性能が落ちるようです。 翼のレイアウトは、こちらの方が≪F16≫に似ています。 基本的に輸出専用らしく、中国軍で採用されるかどうかは微妙な所。 中国の空軍は、装備の質に関して厳しい考え方を持っていて、性能が要求基準より低いと、国産でも採用しません。 中ソ対立で、外国製機が手に入らなかった時期でも、≪没≫にされた国産機がかなりあったようです。 国産なら少々欠陥があっても採用してしまうどこかの国とは哲学が違っているようで興味深いですな。
もう一機、≪飛豹≫という戦闘爆撃機があって、これは海軍が採用しています。 英仏共同開発の≪ジャガー≫に似ていると言われていますが、水平尾翼には、≪ミグ21≫の面影があり、むしろ、ソ連デザインの流れを汲んでいると見受けられます。 中国海軍は、近い将来、空母を建造する計画を持っているようですが、≪飛豹≫は、翼面積が小さいので、艦上に降りるのは厳しいでしょうな。 もっとも、艦載機候補の機種は、ロシア製機が検討されているようですが。
飛行機以外にも、単体のジェット・エンジンが、出力別に何種類も展示されたそうで、中国が航空機開発に莫大なエネルギーを投じている事が分かります。 最初の出現から半世紀以上経った今でも、ジェット・エンジンの開発は難しくて、世界中に戦闘機を作っている国は数あれど、エンジンを自前で作れる国は指を折って数えるほどです。 台湾・日本・韓国など、アジア勢の≪国産機≫も、エンジンはアメリカ製なのが普通。 これまた、中国空軍は、「使えねーもんは、買わねー」主義なので、国産エンジンが大量に出て来たという事は、「これなら使える」というレベルに到達した証拠だと思われます。
そうそう、地対空、空対空など、ミサイル類もどかどか写真が出ていました。 一体何十種類、同時進行で開発しているか分からないほどです。 地上戦では、ミサイルの性能向上で、戦車が陳腐化してしまいましたが、空や海でも事情は同じでして、これからの戦闘は、ミサイルの性能がすべてを決めてしまうと思われます。 百億円以上する戦闘機が、一千万円のミサイルで、一瞬の内にスクラップに変わってしまうのですから、ミサイルの性能向上に力を注ぐ事が如何に効率的か分かろうというもの。
中国の兵器装備は、陸海空全方面で目まぐるしく刷新されつつあります。 現状の目標を推測すると、恐らく、質・量ともに、アメリカ軍と同じレベルを目指しているものと思われます。 海軍は最もその志向が強く、アメリカで言えば、イージス艦に相当する電子戦闘艦が、次々に登場しています。 一砲塔、垂直発射ミサイル、レーダー一体式自動迎撃機関砲、船尾にヘリポートと、アメリカ型のレイアウトを、ほぼそっくり取り入れていて、ソ連・ロシア型とは明らかに決別してしまいました。 アメリカの場合、イージス艦は、駆逐艦でも巡洋艦でも、それぞれ艦型が一種類に統一されていますが、中国の場合、複数の艦型を同時進行で作っており、これはたぶん、いろいろな艦型を試しているか、技術の進歩に建造が追い付かず、そのつど新設計しているかの、どちらかでしょう。
軍事アナリストがよく、中国軍と台湾軍を比較して、「どちらの方が優位」といった事を書いていますが、全く馬鹿馬鹿しい比較で、「頭は大丈夫か?」と訝ってしまいます。 中国軍が意識しているライバルは、アメリカ軍なのであって、規模からして、台湾軍と比べるなど、ナンセンス極まりないです。 象と犬を比べて、どちらが強いかと言っているようなものです。 実際に戦争にでもなったら、三日もしない内に、台湾軍は身動き取れなくなってしまうでしょう。 それを、「互角に戦える」だの、「台湾軍の方が航空戦力は優位」だの、冗談としか思えない見解を並べていますが、台湾人に誤まった自信を植えつけるような意見は控えるべきでしょう。 中国軍が全力を出したら、台湾どころか、西太平洋全域を制圧するくらいの力は充分にあります。 アメリカは、中国と戦うとなったら、核戦争を覚悟しなければなりませんが、そうなればアメリカも消えるのであり、そんな選択肢は無いのだと、よくよく認識すべきです。 日本や韓国など、その他の小国は尚の事。
日本の軍事雑誌や新聞などを見ていると、中国の軍事技術を、旧西側のそれより劣っていると見下した態度が、ちくちくと見受けられますが、途轍もない思い違いなので、鵜呑みにしてはいけません。 まず、日本で軍事知識があるような人間は、大抵、右寄りの思想傾向があり、中国やソ連・ロシアを忌み嫌って、「どうにかして馬鹿にしてやりたい」と機会を覗っています。 そんな偏った頭の持ち主に、客観分析などできるはずがないのです。 そういう連中の書く文章は、冒頭からして、悪意と侮蔑で装飾されていますから、すぐ分かります。 ちょっとでも客観性を欠いたような表現があったら、もうそれ以上は読まない方がいいですな。 時間と労力の無駄。 ただ嫌味を綴ってあるだけなのであって、そんなのは情報でも何でもないからです。
一方、新聞や一般の雑誌ですが、既に何度も指摘しているように、書いている人間がベタベタの文系ですから、科学技術全般に疎く、軍事知識も皆無に近いです。 大学で、純文学の人間性描写に耽溺していたような人々に、「ミサイルがどうの、ステルスがこうの」などと言っても、馬に念仏を聞かせるようなものでしょう。 軍事知識というのは、最低限、一時期でも兵器に興味を抱いていた者でなければ、頭に入ってこないのです。 嘘だと思ったら、そちらの方面に全く興味が無い友人を捕まえて、ロケット砲と無反動砲の原理の違いでも説明して御覧なさい。 そんな単純明白な事でも、何回繰り返しても、理解してくれないから。
恐ろしいのは、そういう天下御免の門外漢達が、全国紙の新聞で、軍事記事を書いたりしている事でして、一般の読者はもっと疎いですから、まるで頓珍漢な内容でも鵜呑みにしてしまいます。 たとえば、「現在、世界中で最も性能のいい戦闘機は何か」と聞かれたら、軍事知識がある人なら、かなりの割合が、「スホーイ27系列」と答えると思います。 しかし、新聞や一般雑誌からしか軍事知識を得ていない人は、「アメリカの、ほら、日本に売ってくれないあれ・・・・」と、≪F22ラプター≫を挙げるでしょう。 ≪スホーイ27系列≫を全く知らない人も、少なくないと思います。 そして、漠然と、「ソ連・ロシア機はアメリカ機に遠く及ばない。 中国機に至っては問題外」と、思い込んでいるのです。
こういう、認識はこの上なく危険だと思うのですよ。 「平和主義者で、兵器なんぞ見たくもない」というなら、それはそれで良いと思うのですが、兵器に興味が無い一方で、外国の軍事技術を見下しているような人が非常に多いのが感心しない所。 平和主義者であろうが、戦争主義者であろうが、認識は正しいに越した事はありますまい。 知らない事は正直に知らないと認めて、その事について公けの場であれこれ口にしたりしないのが正しい態度というものでしょう。
ちなみに、自衛隊の装備ですが、前にも書いたように、本当に大した事はないですから、ゆめゆめ活用しようなどと目論まないように。 そもそも、自衛隊というシステムは、単独で動かせるように作られていないのです。 アメリカ軍が、日本に直接関わる軍事行動を取る場合に、その一部分として機能するようにデザインされているんですな。 イージス艦などは、その典型で、もともと、アメリカの空母艦隊を護衛する為のシステムなのです。 イージス艦だけ一隻あっても、それはただの電子戦闘艦に過ぎません。 今時の駆逐艦・巡洋艦は、大抵、電子戦闘艦ですから、イージス艦だからといって、飛び抜けた実力があるわけではないのです。 だけど、こういう事を門外漢に理解させるのは、本当に大変なんですよ。 ほとんど、不可能ですな。
ところで、≪F22ラプター≫ですが、今の所、実績が少ないので、軽々に高い評価はしかねます。 ちなみに、戦闘機の実績を言う場合、戦争が無ければ本番はありませんから、航空ショーや公開演習で見せる性能を基準に判断する事になります。 飛行性能は見れば分かりますが、更に重要な性能である、レーダーの有効範囲やコンピューターの処理能力の高さなどは、公表される諸元データからしか推測できず、デビューから退役まで分からずじまいという事も珍しくありません。
そもそも、ステルス性能というのが、少々曲者でして、本当に有効なのか、怪しい所があります。 「レーダーには、鳥くらいの大きさにしか映らない」という表現がよく使われますが、鳥大だろうが拳大だろうが、とにもかくにもレーダーで捉えられるのであれば、時速500キロ以上で飛ぶ鳥などいないのですから、簡単に飛行機だと判断されてしまいそうです。 現にコソボ紛争の時、最初の実用ステルス機である≪F117≫という攻撃機が、セルビア軍のレーダーに捉えられて撃墜されており、どんな難しい方法を使うにせよ捉えられるのであれば、ステルス技術の価値は大幅に目減りすると言わざるを得ないでしょう。
≪F117≫の部隊は、僚機が撃墜された後もコソボ紛争期間を通じて出撃を続けましたが、アメリカ軍にしてみれば、ステルス技術を抑止力として位置づけている立場上、それ以上撃墜されてはたまらないわけで、たぶん戦場には行かず、地中海上空を一回りして帰って来ていただけだったんじゃないかと思います。 一旦「使えねー」と分かると、兵器に命を任せている軍人は一気に醒めるもので、≪F117≫は、異例の早さで退役させられてしまいました。 ≪F22ラプター≫は、飛行性能をよくする為に、ステルス性能は≪F117≫より劣っているとされ、ますますレーダーに捉えられている可能性が高いです。
大体、ステルス技術の原理を最初に理論化したのは、ソ連の学者ですが、ソ連軍では重要視されず、アメリカが拾ったという歴史的経緯があります。 ≪クリスティー戦車≫とは逆のパターンですな。 合理主義で有名だったソ連で没にされるには、それなりの理由があったはずで、やはり、「こんなん使えねー」と見做されたんでしょう。 飛行機にステルス性能を盛り込む為には、外形デザインに大幅な制約がかかるのを避けられませんが、そうまでして拘るほど有効な技術かどうか、軍事技術者の間では未だ意見が分かれているのです。 ステルスと聞いて、単純に「最新技術!」と大騒ぎしているのは、この種の裏事情を知らない門外漢だけです。
調子に乗って扱き下ろし続けますが、ステルス機は、その機能上、ミサイルや爆弾、使い捨て外部燃料タンクなどを機体や主翼の下に取り付ける事が出来ません。 開閉扉があって、機体の中に内蔵する形になります。 当然、搭載量が少なくなり、作戦行動に制約が出ます。 その点でも、「使えねー」のです。 一応、外部吊り下げもできるように、取り付け基部を設けてあるのですが、それをやるとステルス性能が損なわれて、普通の戦闘機と同じになってしまうんですな。 「使えねーなー」。
もっと書いたろか。 ≪F22ラプター≫は、「レーダーの有効範囲が広く、コンピューターの能力も高い為、自分のミサイルを使いきった後も、他の普通の戦闘機が運んで来たミサイルの誘導を引き継いで、長射程攻撃が出来る」とされていますが、そんな用途に使うなら、何も戦闘機の形をしている必要は無いわけで、早期警戒機のように大型レーダーを積んだ飛行機を高高度で飛ばしておいて、普通の戦闘機が運んできたミサイルを誘導させればいいんじゃないの? という気がします。 いやいや、それどころか、昨今の空戦では、機関砲は全くと言っていいほど使われず、ミサイル戦オンリーである事を考えれば、普通の戦闘機すら必要ないのであって、早期警戒機に直接ミサイルを積んでいけば、すべて事足りると思うのですが、どうしてどの国もやらないのか、非常に不思議です。
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