2009/08/09

はったり・リーダー

  ようやく夏休みに入りました。 ここ数ヶ月というもの、仕事は毎日、定時間で終わっているので、会社にいても、家にいても、体力的負担に大差は無いのですが、それでも休みは楽しみなものです。 そういえば、報告をすっかり忘れていましたが、≪あぶれ組≫で書いたように、4月初旬にラインから外され、≪品質改善部門・汚れ班≫で冷や飯を食っていた私ですが、6月1日から、ラインに戻る事ができました。 しかも、前にやっていたのと同じ工程で、何ら新たな作業訓練を受ける事もなく、すんなり現場復帰できたのは、大変な幸運でした。

  私の個人的な幸運はさておき、相変わらず、生産数は少なく、リーマン・ショック以前の3分の1まで落ちた状態から、ちっとも上向きません。 新聞には、「景気は底打ちした」と、毎日のように書いてありますが、「毎日底打ち」というのは、おかしいでしょうが。 ちいっと、表現に整合性を持たせろっつーのよ。 大体、アルマゲドンでも到来しない限り、底打ちは必ず起こる事であって、別に大騒ぎするような事ではないです。 必要なのは、回復の方なのですが、そちらはかなり長い将来に渡って、望みが薄い事に変わりはありません。

  性懲りもなく、「アメリカ経済は、早期に回復に向かう」と言っているエコノミストが多いですが、論理的に考えて、そんな事、ありえんでしょうが。 アメリカがリーマン・ショック以前の景気に戻るという事は、もう一回、サブプライム・ローンが花開くって事ですぜ。 いくら、民主国家の国民が揃いも揃ってパッパラプーでも、大損こいた記憶が冷めやらぬ内に、またぞろ、バブルに踊ったりしないでしょうに。

  「オバマ政権の景気浮揚政策が効を奏した」なんて言ってる輩も多いですが、財政出動なんて、最低にアホな政治家でも簡単に出来ます。 その財源が、すべて借金である点に着目すれば、アメリカ経済が、健全化どころか、火達磨化の一途を辿っている事が分かりそうなものです。 日本経済も同じ、というか、もっと悪いですが、GDPより大きな借金を、一体、どうやって返すつもりなのか、つくづく訊いてみたいです。 GDPだよ。 国家予算じゃないよ。 分かってる?

  だからねー、借金で経済規模を膨らませたって、返す当てが無い事がバレて、信用を失えば、こういう事になっちゃうんだって。 経済が何とか回っているのは、貸し手が借り手の懐具合の悪化に気付かない間だけなんですよ。 「アメリカ経済は、早期に回復する」と言っている人達に訊きたいんですが、落ちぶれて、借金して食い繋いでいるような人間が、ホイホイと豪遊してた頃に戻れると思うかい? アメリカが再び豪勢な生活に戻るためには、更に借金するしかありませんが、誰がそんな危なっかしい奴に金を貸すのだね?


  エコノミストに限らず、あらゆるジャンルの人達に共通した傾向ですが、オバマ政権に期待し過ぎだと思うんですよ。 明らかに、幻想を抱いていると思いますよ。 私の観察では、オバマという人物は、単なる、≪はったり屋≫に過ぎず、経済も、外交も、実力ゼロだと思いますぜ。 経済危機対策に関しては、常識的にやれる事をやっているだけで、たとえ共和党政権であったとしても、ほとんど同じような事をやっていたと思います。 だって、恐慌状態に入ったら、財政出動するしか手が無いでしょうが。 「オバマ氏だからこそ、できた」なんて対策は、一つも見当たりません。

  外交は、もっとひどくて、たった半年で、あれよあれよという間に、ブッシュ政権末期より悪化させてしまいました。 隔世の感あり。 これには、呆れ返らざるを得ません。 経済危機対策に忙殺されていて、外交に割く余力が無かったのでしょうが、実力があれば、現状維持くらいはできたはずで、あからさまに無能ぶりを曝け出しています。 「無能なのは、国務長官なのではないか?」とも考えられますが、たとえ、ヒラリー氏が無能だったとしても、彼女はあくまで、大統領の部下ですから、大統領の指示が的確なら、こうまでひどくはならないでしょう。

  とりわけ、対朝政策はひどく、政策などという言葉を使うのも憚られ、ただ、威勢のいい事を言って、ブッシュ政権末期の融和ムードをぶち壊しただけです。 なにせ、「チェインジ!」で、大統領に当選した人ですから、前政権の遺産など、すべて葬りたかったんでしょうが、難敵の朝鮮外交部を相手に、ヒル氏やライス氏が、こつこつ積み上げてきた石の塔を、大統領に就任するなり蹴り崩したのですから、何とも考え足らずな事をしたものです。 振り出しに戻るどころの話ではなく、ブッシュ政権に於ける米朝関係最悪期よりも、更に悪化してしまいました。

  ことによると、オバマという人物、イランや朝鮮がどんな国なのか、知識も興味もまるで無い点で、ブッシュ氏と同レベルか、それ以上なんじゃないでしょうか。 大方、頭の中にあるのは、アメリカの栄光だけであって、外国なんて、どーでもいいんでしょう。 そういえば、小浜市の面々、大統領に就任したら、すぐにでも訪問してくれると期待していたのが、物の見事にスカされて、すっかり脱力している事でしょう。 だーからよー、興味ねーのよ、朝鮮にも日本にも、アメリカ以外の全ての国によー。 ましてや、日本語のダジャレなんぞ、どうでもいいのであって、ただ、選挙運動中に、外国の自治体から支持された事で、有権者へのイメージがよくなると思って、ノって見せただけなんだって。

  笑っちゃうのが、「核無き世界を目指す」だよねえ。 案の定、核兵器批判で自国の戦争責任をごまかしたい日本人が、尻馬に乗って絶賛してますが、馬鹿だねー、あんな、はったりを真に受けて、興奮してんじゃないよ。 ちょっと想像力を働かせてみれば、分かりそうなものです。 はったり屋というのは、考えられる限り、一番大きな嘘をつくものなのですよ。 絶対に実行できそうにない事を、「やります!」と言っておけば、言葉に惑わされ易い馬鹿な連中が、「この人になら、未来を託せる!」と心酔して、熱狂的に支持してくれます。 そこが狙いなわけです。

  ところがぎっちょん、最初からできないと分かっている事を、口先で、「やる」と言っているだけですから、逆立ちしたって、ヨガを組んだって、結局できっこありません。 また、熱狂的に支持した連中も、心の隅で、「やると言っても、大変な事だから、できなくても不思議は無いな」と思っているものだから、最終的に実現できなくても、責めたりしません。 むしろ、「希望を持たせてくれた」などといって、更に誉めます。 もう、はったり屋の思う壺! 「できそうな事を口にすると、できなかった時に批判されるが、できそうに無い夢のような目標を掲げれば、できなくても批判されない」という事を、よーく承知しているのですよ、オバマという人は。

  実際、保険もかけていて、「私の任期中には、実現しないかもしれない」と言い添えるのも忘れていません。 これまた、言葉のマジックでして、聞かされた方としては、「たとえ、オバマ氏の任期中に実現しなくても、方向性が示されるだけでも画期的」などと、大甘、甘々の評価をしている人が、さぞや多い事でしょう。 しかし、アメリカ政府の方針が、大統領の交代で、180度引っ繰り返る事が珍しくない事を知っていれば、≪方向性≫などというあやふやな物に何の期待も掛けられない事は、容易に分かりそうなものです。

  そもそも、核軍縮は、オバマ氏が言い出した事ではなく、冷戦時代から絶え間なく提案され続けている事ではありませんか。 アメリカでも、「無くす」とまでは言いませんが、「減らす」なら、歴代政権が、ずっと取り組んで来た事です。 過去の大統領達が、なぜ、「無くす」と言わなかったかといえば、無くせない事が分かっていたからです。 あまりにも見え見え過ぎて、嘘がつけなかったのでしょう。

  「核無き世界」に熱狂している人達に訊きたいのですが、核兵器を無くしたら、どういう状況になるのか、分かってるんでしょうねえ? 核による報復の危険性が無くなりますから、通常兵器による戦争が起こし易くなります。 冷戦時代や現在よりも、戦争で死ぬ人間は確実に増えます。 第二次大戦終了後、核兵器は一発も使われていない事を、忘れてるんじゃないの? 今現在ドカドカ使われていて、「被害が大き過ぎるから、核兵器を無くそう」というのなら、なるほど、有意義な提案ですが、使われていない物を無くして、却って戦争を増やしていては、馬鹿丸出しです。

  いいや、この点に関しては、一切、引く気が無いので、はっきり言質をいただきたい。 「核兵器を無くしても、通常兵器による戦争が増える事は、絶対に無い」と保証していただきたい。 あなたの命を賭けられても、そんなものではとても追いつかない。 一家一族全員の命を賭けて、断言していただきたい。 国全体で支持するというのなら、国民全員の命を賭けていただきたい。 増えないんだな、絶対に! ええ、どうなんだ? 「断言はできないが、核廃絶は正しい方向性であって・・・」なんて、脳足りんな言い訳じゃ、納得せんぞ。 実際に、核兵器を無くして、通常兵器による戦争が増えたら、あんたらにゃ、責任とって、腹切るか、喉突くかしてもらうからな。

  核兵器を全廃した場合、通常兵器による世界最大の軍事力を持っているのはアメリカですから、アメリカ第一のオバマ氏にしてみれば、もし予想外に核廃絶が実現してしまったとしても、損は無いわけです。 いいじゃん、好き勝手に戦争仕掛けられるじゃん。 まあ、あと20年くらいは、どこにも負けないでしょう。 その先は、中国やインドに圧倒されると思いますが、そうなったら、アメリカが真っ先に核兵器の再配備を始めると思います。 もっとも、その頃には、オバマ氏はどう転んでも大統領の座にはいないわけで、責任を問われる事は無いわけだ。 うまく、考えてあるのう。


  こんなに分かり易い、はったり屋の正体も見抜けずに、国際情勢をあれこれ分析しようなど、センスの欠落も甚だしい。 現代においては、一般平均より遥かに秀でた、≪スーパー・リーダー≫などというものは、存在しないのだという事を肝に銘じるべですな。 学門が専門化して、専門馬鹿な学者しかいなくなったのと同じ理由で、社会も複雑化しすぎて、一人の政治家が何にでも対応できる時代ではなくなってしまったのです。