2010/01/24

光化不幸か

  昨年の暮れ、12月20日の日曜日ですか、昼前に、NTT西日本の人間がやって来ました。 今までの経験からして、この種の人間が訪ねて来て、良い結果になった例しは無いのですが、来てしまったものは仕方がないです。 「インターネットに関わる話らしいから、ちょっと来い」と父が呼ぶので、しぶしぶ玄関へ行きました。 待っていたのは、30代半ばと思われる男性と、20代っぽい女性の二人。 ≪NTT西日本≫というロゴが入った青いジャンパー式のジャケットを着て、首には名札を下げていました。

  用向きは、「お宅の家の前を通っている光回線を新しくしたので、これを機会に電話とインターネットを、光にしませんか」というもの。 内心、「またか~!」と思いました。 実は我が家では、ここ一年ほど、「NTT西日本の代理店」と名乗る相手から、≪光勧誘≫の電話が、月に一度くらいペースで掛かり続けており、最初は胡散臭くて、後には執拗さが気に食わなくて、相手に話もさせぬ勢いで、すべて断っていたのです。 一般論として、向こうから電話を掛けて来たり、家に訪問して来たりする輩は、信用できぬと見做しておいて間違いありません。

  余談ですが、「~の代理店」というのが、そもそも怪しいのであって、契約変更を勧めるなら、NTT西日本の社員が直接来れば済む話。 わざわざ、代理店に依頼するような事とも思えません。 保険の勧誘でもそうですが、どうして、代理店を挟みたがるんでしょうかねえ? ほとんどの事務をコンピューターで処理する時代に、代理店が必要とは思えませんが。 ただ煩雑になるだけです。

  で、今回も、まず最初に疑ったのは、「こいつら、本物だろうか?」という点。 NTT西日本のジャケットや名札なんて、偽造しようと思えばわけないのであって、外見だけでは信用できません。 私が名札の辺りをじろじろ窺っていると、こちらの意を察したのか、向こうから先手を打って、「私は、市内にあるNTT西日本のビルから来ている者ですよ」と、釈明して来ました。 話によると、うち以外でも、この界隈では、「NTT西日本の代理店」を名乗る電話勧誘が相次いでおり、たくさんの苦情が来ているのだとの事。 そして、NTT西日本では電話勧誘は一切行なっていないとの事。 よっぽど、「しかし、そいつらが、うちの電話番号を知っているという事は、まだ光化していない家のリストを持っているのだろう。 そのリストは、お宅から流出したんじゃないのかい?」と訊き返してやろうと思いましたが、せっかくの日曜日に喧嘩をするのも嫌なので、黙っていました。

  そのNTT西日本の男、喋った喋った。 30分くらいですか、光化の利点について、喋くり捲くりました。 大方、「客に断る隙を与えたら終わりだ」という勧誘ノウハウでも信奉しているのでしょう。 しかし、内容的には相当お寒いもので、光化の利点を直接述べるのではなく、「光化しても、そんなに悪くはなりませんよ」という消極的なアピールに終始しました。 ≪フレッツADSL≫を、≪フレッツ光≫にすると、料金はどうしても高くなるんですよ。 その点は、どんなに美麗字句を並べたって覆る事は無いのであって、それを承知で売り込もうと思ったら、「割引を含めれば、それほど高くはなりません」という方向で話を進めるしかないんでしょうなあ。

  面白いのは、決して、「ADSLより、速くなる」とは言わなかった事です。 光化の利点といえば、速さ以外に無いような気がするのですが、こちらの方から、「ADSLで十分でしてね。 そんなに速くなくても、問題ないんですよ」と言っても、「ええ、まあ、みなさん、そうおっしゃるんですがね・・・」などと、ヘラヘラ曖昧に応えつつ、速さについて、自分の方から触れようとはしませんでした。 そのわけは、後々分かる事になります。

  で、私としては、一円でも負担が増えるのは気が進まなかったんですが、電話代の方を払っている父に訊くと、「いいや。 どうせ、いつかは変えなけりゃならないんだから、今変えちまえ」というので、切り替える事にしました。 他に、話の詳しさの程度から見て、99%くらい本物のNTT西日本社員だと思われたのと、「プロバイダーの方の料金が安くなる、と思う」言われたのも、主な承諾理由です。

  そうそう、回線引き込み工事の代金も、キャンペーン期間中なので、タダになると言っていました。 だけどねえ、本当に光がお得なら、別に工事代金が掛かったって、客の方から進んで申し出るって言うんですよ。 サービスの本質が分かっていないんじゃないですかねえ? 客の方から欲しがるものを提供するのが本当のサービスであって、客が欲しがっていないものを、オマケをつけて押し付けるのは、その反対の行為だと思うんですが。

  男は、その場で工事業者に電話を掛けて、工事日の予約をしました。 私は、すぐにでもやってもらえると思っていたんですが、年末は立て込んでいるので、年明けのしかも、17日になるとの話。 「なんだ、そんな先の話か・・・」。 先憂後楽型の性格で、何でも、厄介事は早めに片付けてしまいたい私としては、一ヶ月近くも心配の種を抱えて生きるのは、非常にきついのです。

  私のそれまでの契約は、≪フレッツADSL≫だったので、NTT西日本の他に、プロバイダーのau-oneにも料金を払っています。 男の話では、プロバイダー料金が安くなるとの事だったんですが、連中が帰った後で調べてみたら、あら、やだ、どうしましょ! とんだガセ情報だったのです。 安くなるどころか、300円も高くなるじゃありませんか! おのれ、いい加減な事を言いおって!

 「後で、気に入らなかったら、ADSLに戻せる」とも言っていましたが、1年3ヶ月以内に解約すると、光回線の引き込み工事代金をこちらで支払わなければならず、使わない物に金を払うような馬鹿馬鹿しい事をする私ではありませんから、実質的に、もはや取り消しが利きません。 うぬぬぬ! 本物の社員であっても、結局、客を丸め込んでナンボのセールスマンである事に変わりはないか。 いやだいやだ、まったく、人の営みというのは醜いものです。

  ちなみに、一緒に来ていた20代の女性は、男が喋り捲っている間、その斜め後ろで立っているだけで、最後まで、一言も発しませんでした。 たぶん、見習いとして、先輩の後をついて回っているだけなんでしょう。 それにしても、あれだけ、のべつ幕無しに喋り続ける先輩の技術を学び取るのは難儀ですな。 他人事ながら、同情に耐えません。


  と、ここまでが、去年の話。 ここからは、今年の話になります。


  1月16日の夜、工事業者から電話が入り、「明日の午前9時から始める予定だったが、8時から8時半までに変更できないか」と言うので、快くOKしました。 その週は6日出勤で、休みが日曜一日しかなかったので、工事が早く終わってくれる分には、否やは無かったのです。

  翌朝、予告通り、8時に業者のトラックが来たのですが、玄関を訪う前に、外で電信線の工事を始めたのには、いささか虚を突かれました。 普通、一声掛けてから始めると思うのですが・・・。 外は10分ほどで終わり、それから、「御免下さい」と訪ねて来て、中に取り掛かったのですが、光ケーブルを電話機のある部屋まで引き込むのに大いに手間取り、30分の予定がなんと1時間半もかかってしまいました。 でも、まあ、私は見ていただけですから、その点については、別に文句は無いのです。 むしろ、彼らの仕事ぶりに、感服したくらいでして。 作業員二人と、交通整理係一人のお三方でしたが、冬の朝で滅法寒いというのに、よくテキパキと頑張るものです。 うーむ、仕事とは本来、ああいう姿勢で取り組むものなんですねえ。

  と、そこまでは良かったんですが、工事の人が帰った後、ネットへの接続方法が分からず、七転八倒する事になりました。 昨年末に契約を取りに来たNTT西日本の男は、「CD-ROMを入れるだけで、簡単に接続できます」などと、涼しい顔でしゃあしゃあ言っていたのですが、とんでもねー! 難行苦行、天竺までお経を取りに行く方が、まだ楽なくらいでした。 一時は絶望のあまり、インターネットをやめようかとまで思いましたぜ。 どーして、セールスマンというのは、ああいう、いい加減な事を次から次へと口に出来るのか、不思議で不思議で夜も寝られません。

  まず、向こうが予め郵送したというフレッツ光用のIDとアクセスキーを求められたんですが、そんな郵便物は受け取っていません。 早速NTT西日本のサポート・センターに電話すると、「確かに送ったはずなんですが・・・」と、向こうも大いに狼狽している様子。 再郵送するとなると何日もかかるとか。 「とりあえず、担当の者と相談しますので・・・」というので、折り返しの電話を待っている間に、「もしや」と思って、父に尋ねてみたところ、なんと、それらしい郵便物が来ていたというのです。 すぐに出させると、確かにそれで、IDとアクセスキーが記されています。 まあ、私の顔色が青くなったのならないのって。 電話の方の契約は父名義で行われているので、郵便物もそっちへ行ってしまうんですな。 しかし、父も父で、光化の工事が入ると分かっていて、どうして、私にそれを知らせないかな? 折り返し電話をかけて来た向こうの担当者相手に、「すいません。 実は届いていました」と、平謝りですわ。

  とまあ、そこまでも、まだ良かったんですが、次の段階で、プロバイダーのアカウントを求められて、また滞りました。 ADSLコースから光コースへ契約変更をする前に工事をされてしまったので、光用のアカウントなんて持っているはずがないのです。 すでに、普通の電話回線は切られてしまっていますから、ネット上で契約変更するのは出来ぬ相談。 それも、去年、NTT西日本の男が、「工事の前に、プロバイダーのコース変更をしておいて下さい」と一言言ってくれていれば、ちゃんと済ませておいたのに。 どーして、セールスマンというのは・・・・、以下略。

  しょうがないので、プロバイダーのサポート・センターに電話して、契約変更を頼もうと思ったら、なんと、「00から始まる番号にはかかりません」と機械音に応えられてしまいました。 そう言われても、私の手許の資料には、プロバイダーのサポート・センターの番号は、00で始まるものしか載ってません。 この辺りが絶望の縁ですな。 「どうしろというのだ!」と机を叩き、ヤケクソ半分、八つ当たり半分で、NTT西日本の方のサポート・センターに、また電話してみました。 すると、「光回線では、00で始まる番号にはかかりません。 こちらで調べて、プロバイダーの0120でかかる電話番号をお教えします」と言われました。 もはや、首の皮一枚で繋がっている感じ。

  ところが、その番号でかけても、「ただいま、混み合っております」で、一向に通じません。 ここで、正午になったので、昼飯を食べましたが、不安で不安で、味なんかしやしません。 こういう時は、悪い予感ばかりが脳裏をよぎります。 インターネットには二度と繋がらず、それでいて、料金だけは取られ続けるとか・・・。 午後になってから、再度、電話したら、今度は通じて、割とすんなりと、契約変更の手続きをして貰えました。 向こうの物馴れた捌き振りから察すると、こういう事はよくあるような感じでした。 一時間ほどで、変更が済むという話。

  で、一時間後、接続に再挑戦したのですが、今度は、「メール設定のパスワードが違う」と表示されて、また頓挫しました。 忘れたよ、メールの設定なんて! 大昔にやった事だもの! どうしていいか分からないままに、アウトルックを開いて、設定が載っていそうな辺りを探していくと、パスワードの所が「****」となっています。 なるほど、四文字なわけだ。 私がこの種の設定に使う四文字といったら、二種類しかないので、一つずつ試していったら、二つ目でクリアできました。 やれやれ、ロールプレイングゲームかよ。 つくづく、どんな設定をした時でも、必ず記録をとっておくべきだと、痛感しましたっけ。

  で、午後3時頃に、ようやく、接続に成功! こりゃ、ロケット打ち上げ並みの嬉しさだね。 こんなに苦労したのは、9年前に、ダイヤルアップからADSLに変更した時以来です。 あの時も、やり方が全く分からず、産みの苦しみを味わいましたっけ。 ネットの接続作業というのは、電話会社、プロバイダー、パソコンという、それぞれ独立してシステムを構築している三つの要素が重なるので、一度、壁にぶつかると、一体どの要素が障碍になっているのかを突き止めなければ、サポート・センターに質問も出来ないんですな。 ああ、なんで、こんな苦難を乗り越えなければならないのか。 自分で望んだ変更ではないというのに。

  ところで、新しく設置された光回線用のルーターは、LANケーブルの差込口が四つあるので、今まで使っていた別付けのルーターは不要になりました。 で、私のパソコンからの接続には死ぬほど苦労したのに、父と母のパソコンの方は、何の設定もしないのに、今まで通り接続できるようになっていました。 つまり、私が悪戦苦闘していた相手は、パソコンの設定ではなく、ルーターの設定の方だったんでしょうな。 一度、設定が済んでしまえば、それ以外のパソコンを弄る必要は無いわけだ。

  というわけで、何とか半日程度の空白で、ネットに復帰できたわけですが、これだけ苦労させられたにも拘らず、光になっても、ちっとも速いと感じません。 せいぜい、「画像の取り込みが、少しスムースになったかなあ」と思うくらい。 そうか、だから、NTT西日本の男は、速さについて、何も言わなかったのだな。 料金が高くなるのに、スピードが上がらないとは、一体全体、何の為に光にしたのか、さっぱり分かりません。 なんだか、巧妙な詐欺にあったような気分です。

  以上、長々と書いてきましたが、これは、総合的に見れば、明らかに、≪失敗談≫です。 セールスマンの言葉に手も無く乗せられ、必要も無いのに、むしろ料金が高くなる光回線への変更を承諾してしまった私が馬鹿だったのです。 もし、現在、≪フレッツADSL≫を使っていて、≪フレッツ光≫への変更をしつこく勧められている方があったら、そのつど、しつこく断った方が無難だと思います。 光回線化の工事をすると、今までの電話回線を撤去されてしまいますから、戻すとなったら、また別に工事代金を取られると思われます。 「嫌だったら、また戻せばいい」という気軽なノリは通用しないのです。 そういや、あのNTT西日本の男、その点でも嘘つきやがったな。 まったく、セールスマンというのは・・・・、以下略。