2011/11/20

馬鹿は死ななきゃ…

  ここのところ、急激に、自転車に対する世間の風当たりが厳しくなって来ました。 きっかけになったのは、ピスト・バイクの流行です。 ピスト・バイクというのは、競輪などのトラック競技に使う、固定ギア一枚、ブレーキ無しの自転車の事ですが、そのピストで、ブレーキを付けずに街なかを暴走し、歩行者や他の自転車に激突する事故が頻発したため、≪自転車=凶器≫という認識が、一気に高まってしまったのです。

  ピストに限らず、自転車ブームの到来で、ロード・バイクやクロス・バイクなど、高速を出せる自転車が増えた結果、レースの練習を一般公道でやらかす考え無しな連中が出て来て、そいつらが平気で信号無視などするものだから、これが世間の批判を受けないわけが無く、自転車全体が、白い目で見られる羽目になってしまったんですな。

  以前から、高校生が通学時に自転車で起こす事故は多くあり、問題にはなっていたのですが、対応は各地の警察署に任されていました。 ところが、今回は違います。 警察庁本体が、法規を変えて、走行場所を制限したり、取り締まりを強化するなど、積極的に自転車使用の規制に乗り出して来たのです。

  これは、大変、由々しき事態です。 自転車のいいところは、車やバイクと違って、道であれば、どこを走っても、警察の取り締まりを受けずに済む点にあったのですが、その自由が奪われてしまうわけです。 買い物や通勤で、自転車を生活の足して使っている人達にとっては、とんだとばっちりというものでしょう。

  今までは、≪自転車通行可≫の標識があれば、歩道を走っても問題なかったわけですが、これからは、「自転車は、原則、車道を走らせる」方針に切り替えるのだそうです。 しっかし、車道の路側帯に、自転車が走る余地がほとんど無い現状を考えると、相当無茶な話ではありますまいか? 大方、歩行者と自転車の事故が減る代わりに、車と自転車の事故が増えて、また、見直しになるんじゃないでしょうかねえ。

  「左側通行の徹底」も、かなり、痛いです。 自転車が左側通行だというのは、今までもそうだったわけですが、右側を走っていても、それで、警察の取り締まりを受けるという事はありませんでした。 一般人も、「自転車は、どこを走ってもよい」と思っている人が圧倒的に多いので、右側通行している自転車がいても、その風景に違和感を覚えないのが普通でした。

  ちなみに、この≪左側通行≫というのは、車道を走る場合でして、歩道を走る場合は、その歩道が、車道に対して、右側であっても左側であっても、≪車道寄り≫を走れば、問題ありません。 しかし、今後、自転車が歩道から締め出されるとなると、まず、車道の左側へ渡ってから、走り始めねばならず、手間が大幅に増える事になります。

  たとえば、車道の右側にある店に入りたいといった場合、今までは、最初から右側を走って行けば良かったわけですが、これからは、左側を走って、横断歩道のある場所まで行き、そこで道を渡って、引き返して入らなければならなくなります。 どうしても、右側を進みたい場合は、下りて押すしか無いわけだ。 

  まったく、面倒な事になったものです。 ただ、断っておきますが、別に警察が悪いわけではありません。 知っての通り、警察自身も、自転車は使っているのであって、法規を厳しくすれば、自分達も不利益を被るわけですから、本来なら、そんな事はしたくないのです。 自転車を取り締まって、彼らに得があるのなら、もう、半世紀も前からやっていてるでしょう。

  こんな事態を招いてしまったのは、ひとえに、スポーツ自転車を暴走させた、大馬鹿者どもに責任があります。 なんで、そんなに馬鹿なのだ? みんながみんな、右も左も分からないガキではなく、車やバイクの免許を持っていて、交通法規を習っている大人も多いというのに、「自転車なら、どこをどんなに暴走しても構わない」などと、どうして思ったのか、その理由を聞きたいです。 馬鹿過ぎて、そんな事、考えた事も無いか・・・。

  こういう連中は、自転車の楽しみ方に対する概念が、そもそも間違っています。 「ひたすら、速く走ればいい」などというのは、興奮した動物の衝動と変わらないのであって、人間の目指す事ではありません。 自転車の利点は、「徒歩に比べて、移動のエネルギー効率が良い」というところにあるのであって、「スピードを出さなければ、自転車を楽しめない」などという事は、金輪際ありません。

  実際問題、スポ自に乗っている人なら、高速で走行していて、危険な思いをした経験が、少なからずあると思いますが、「こんな事をしていたら、死んでしまうかもしれない・・・」と、一度でも恐怖を感じた事があるのなら、早々に方針転換し、楽しみ方をポタリングに切り変えるべきでしょう。

  自転車に乗る事だけを目的にするから、いけないのです。 ゆとりある計画を立てて、景勝地に向かうなり、景色を見ながら、散策するなり、目的を別のところにおいて、自転車は移動の手段に留めれば、しゃにむにペダルを漕ぎ捲るような、馬鹿な真似はしなくなるはずです。

  「健康の為に、自転車を・・・」という発想が、また良くない。 「健康のため」を、もっと具体的に言うと、「痩せるため」なわけでして、自転車を漕ぐ事で、カロリーを消費させようというのですが、そういう目的を持って自転車に乗っていると、「今日は何キロ走った」とか、「どこそこの坂を、何分何秒で登りきった」とか、そんな事ばかり頭に充満して、周囲の事など、眼中に入らなくなってしまいます。

  そういう人達は、家の中で、サイクル・マシンを漕げばいいのであって、外に出て来るべきではないと思います。 自分が公道上にいるという事に対し、あまりにも、自覚が薄い。 そういう目的で自転車に乗るのなら、せめて、自転車専用道か、堤防道路に限ったらどうでしょうか。 その方が、自分にとっても、他人にとっても、有益無害でしょう。


  ちょっと、脱線しますが、自転車ブームを陰で後押ししたアイテムに、≪サイクル・メーター≫という製品があります。 前輪スポークと、フォークにセンサーを取り付け、車輪のサイズを入力すると、速度と走行距離が、デジタル表示される機器です。 出始めの頃は、1万円くらいして、ホイホイ買える物では無かったようですが、今では、千円くらいのものもあり、子供の小遣いでも手に入る値段になっています。

  電子機器としては、万歩計と大差無い単純な機構ですから、最初、一万円も取っていたというのが、ぼったくりだったと思うのですが、まあ、それはどうでも宜しい。 問題は、この、サイクル・メーターを取り付けたばかりに、最高速度の追求や、走行距離を延ばす事に取り憑かれてしまい、病的に自転車にばかり乗っている人間が激増した事です。

  「ロード・バイクなら、一日、200キロくらい走るのは、当たり前。 クロス・バイクでも、100キロは行けるでしょう」などと、本に書いてあるのを読んで、「そうか、そのくらい走らなければ、スポ自を買った甲斐が無いわけだな」と、すっかり真に受けて、雨が降ろうが槍が降ろうが、休みのたびに、日も出ぬ内から家で出て、走るわ走るわ。 距離を稼ぐために、幹線道路を選び、車に追い立てられながら、必死に、躍起に、釈迦力にペダルを漕いでいる、その醜く歪んだ顔を見ると、思わず知らず、涙を誘い、「誰かー、精神科へ連れてってやってー」と、叫びたくなります。

  馬鹿だねー。 「楽しんでいるのか、苦しんでいるのか、分からない」とは、自分の趣味を自嘲して言う時に、よく使う表現ですが、この場合には当て嵌まりません。 傍目に見ても、当人の疲労度から見ても、確実に、「苦しんでいる」だけだからです。 サイクル・メーターに踊らされている事に気付いていないんですな。 自分で買って来たチンケな装備に、いいように振り回されてるんですよ。 そんな物つけていなければ、自分のペースで、自転車を楽しめるものを・・・。


  「レースに出る」というのも、猫も杓子も目指すような目標ではないと思うんですよ。 「優勝する気など毛頭無いが、自分に目標を課すために、定期的に参加している」などと言われると、一聞、分別ある大人の態度のように感じられますが、その実、出るからには少しでもいい成績を残そうと、日頃練習に余念が無く、歩行者や他の自転車を、どけどけ顔で蹴散らして、暴走ぶっこいているのであって、どこが大人だ、ガキより悪いのであって、これまた、道を踏み外しているとしか思えないのです。

  スポ自を買うところまでは、問題無いと思うのですが、「レースに出なければいけない」と、思い込んでしまうのがいけない。 スポ自を買った店で、常連客に誘われた? 断りなさいよ。 あなた、大人でしょう? 誘われたら、何でもやるんかい? テロでも、銀行強盗でも、誘われたら、やるんかい?

  それでなくても、スポ自専門店の常連などというのは、自転車を漕ぐ以外に能が無い、パッパラパーの若造とか、定年退職後、自転車に乗る以外、暇が潰せない濡れ落ち葉とか、そんな連中ばかりなのですから、そんなやつらの揶揄半分の口車に乗っていて、何とする。


  公道で、赤の他人相手に、「抜いた、抜かれた」などと、ブログに書いて悦に入っている連中は枚挙に暇がありませんが、そんなのは、幼稚園児がオモチャを取り合う争いと、何の違いもありません。 頭の中が、園児レベルだから、そんな事にしか、満足を感じられないのでしょう。

  どうしても、そういう性癖が抜けないという輩には、いっそ、早く事故って死んでもらいたいものです。 いなくなれば、他の自転車乗りが迷惑を被る事も無くなりますから。 その際は、くれぐれも、自爆でお願いします。 もう、おまえらにゃ、うんざりだよ。