2011/10/09

ガンダム話

  10月1日から、BSのチャンネルが増えたのですが、≪アニマックス≫の開局記念で、≪機動戦士ガンダム・ユニコーン≫の第1話を無料放送していたので、録画して、見てみました。 ガンダムと言うと、≪00≫を第5話まで見たところで、「つまらん! 頭ん中が、冷戦時代で止まってやがる!」とブチ切れ、それっきり見なくなって以来です。

  ≪ユニコーン≫の感想は、まだ一話しか見ていないので、評価の出しようがありませんが、≪シード≫や≪00≫と違って、オリジナルの作品世界をそのまま使っているので、入って行き易いのは確かです。 いやはや、オリジナルからは、30年以上、≪Z≫や、≪ZZ≫からも、四半世紀以上、≪F91≫から数えても、20年も経ってしまったというのに、結局、ガンダムは、オリジナルの世界設定が、一番面白いということになりますか。

  いや、≪シード≫あたりも、悪くはなかったと思うんですがね。 ≪デステニー≫は、蛇足だったと思いますが、≪シード≫だけなら、出来は良かったと思います。 話がよく考えられていて、「ああ、この監督、ストーリーを語るのがうまいんだなあ」と、感服した次第。 才能がある人っていうのは、いつの時代にもいるんですねえ。

  ただ、ガンダムではなく、独自作品にした方が、より印象の良い作品になったんじゃないかと思うのですよ。 更に昔の、≪W≫や≪X≫などにも、同じ事が言えます。 メカのデザインを変えて、「モビル・スーツ」とか、「ニュー・タイプ」といった、ガンダム用語を使わなければ、簡単に、別作品に出来たのですから。 ≪V≫は、富野さんが監督した作品ですが、やはり、オリジナルとは離れ過ぎていて、同シリーズというには、無理があると思います。 ・・・≪G≫? あれは、論外。 ロボット物とすら言えぬ。

  むむむ・・・、実は今回、全く違うテーマの事を書こうとして、その枕のつもりで、ガンダムの話題で書き出したのですが、書いている内に、興味がガンダムの方へ傾いてしまいました。 乗りかけた舟、書きかけた文という事で、この際、このまま、ガンダム話にしてしまいましょう。


  どうこう言っても、日本のアニメ史の中で、アニメ・ファンに最も大きな影響を与えたのは、やはり、ガンダムという事になると思います。 ガンダムに比べたら、≪エヴァンゲリオン≫のインパクトですら、10分の1にもなりますまい。 シリーズ化して、似たようなストーリーの話が何本も作られるのは、いかに、魅力が大きいかの証明ですな。

  シリーズ化しているといえば、≪マクロス≫も、5本くらい作られていますが、ガンダムと違って、それぞれのストーリーは、だいぶ、異なっています。 ガンダムの方は、焼き直しと言ってもいいくらい、似通っていて、さながら、現代の≪忠臣蔵≫となっている観あり。 オリジナルの影響力が強過ぎて、その呪縛から逃れられないんでしょうなあ。


  私は、オリジナルが放送された時には、中学生で、実は、最初の放送の時は、最終回しか見ませんでした。 SFアニメ史で言うと、ガンダムの前は、≪ヤマト≫なのですが、そのヤマト・シリーズが、あまりにもしつこくて、しかも、後へ行けば行くほどつまらなくなるので、うんざり辟易していました。 SFアニメ自体が嫌になっていたところへ、ガンダムが始まるとCMで知ったのですが、「なんだ、ロボット物か。 昔に戻ってしまったな」と、無視していたのです。 これが、一生の不覚。

  たまたま、最終回だけ見てみたら、無茶苦茶、面白いじゃありませんか。 「しまったーっ! とんでもない物を、見逃したーっ!」と地団駄踏んで悔しがりました。 まだ、家庭用のビデオも、レンタル屋も無い頃ですから、見逃したら、それまでだったんですな。 うーむ、よく、あんな時代に生きておったなあ。

  本屋で、ガンダムのアニメ・ブックなどを見るにつけ、「見たいなあ、見たいなあ」と、惨めさばかり募る始末。 ちなみに、アニメ・ブックというのは、アニメのセル・カットを漫画のコマように配置して、セリフを入れた本です。 今はあるのかどうか知りませんけど。 他に、富野さんが書いた、小説版ガンダムというのがあり、それも買って来て、読みました。 小説としては、スカでしたけど。 くどいんだよね、富野さんの文章は。

  それから、一年くらいして、再放送が始まり、それを、テレビにかぶりついて見たのは、言うまでもありません。 当時、アニメの再放送は、平日の夕方に、毎日連続で流すのが普通でしたが、ガンダムの再放送は、週一でして、「早く、来週にならんか!」と、そわそわして暮らしていたのを覚えています。

  その頃、中高生でガンダムを見たという人は、今はもう40代です。 オリジナルのガンダムは、内容を見ても分かるように、対象年齢が、高校・大学生くらいだったようですが、一番、衝撃を受けたのは、小学校高学年から中学生までの年代だったと思います。 成長期に、ああいう話を見せられると、強烈に心に刻まれるのです。 

  逆に、当時、すでに、学生ではなかった人、つまり、現在、50歳以上の人達ですが、その年代の人達は、ガンダムを見ていないので、話が通じません。 今は、オタクっぽい大人が幾らもいますが、昔は、社会人になってしまうと、大人の世界に入ってしまうので、アニメなんか、まるっきり見なくなってしまうのが普通でした。 ビデオが無いから、平日の夕方や、土日の昼間に家にいなければ見れなかったわけですが、大人は、その時間帯には、会社で働いていたり、外へ遊びに出たりして、見ようが無かったわけです。

  この、現在50歳くらいの所に、ガンダム世代と、非ガンダム世代の境目があるわけで、この事は、念頭に置いておいた方がいいです。 会社の先輩などと話す時に、子供の頃に見たアニメの話題というのは、結構、盛り上がり易いのですが、相手がその作品を見ていないのでは、文字通り、話になりません。

  ガンダム話に乗ってこない場合、ヤマトを出せば、見ている可能性が高いですが、困った事に、ヤマトは、その後、シリーズが途切れたので、現在、40歳以下だと、まったく知られていないのが普通です。 結局、話が通じねーわけだ。 ヤマト以前世代と、ガンダム以後世代の間には、大きな溝があるんですねえ。 両方知っている世代は、40代だけという事になりますか。

  そういや、去年、ヤマトの実写映画が作られましたが、どんな人間が見に行ったのやら、想像がつきません。 ヤマト世代の現在の年齢で、ああいう映画は見たいと思わないでしょう。 一方、非ヤマト世代は、ヤマトがどんな話かも知らないわけで、やはり、興味を持たないんじゃないでしょうか。 私は、CMで、しょぼいCGを見た時点で、「しょーもな・・・」という感想を漏らし、それで終わりました。 まあ、テレビで放送したら、見ますけど。


  話をガンダムに戻しますが、私が、一番嵌ったのは、オリジナルの5年後に作られた、≪Z≫です。 ストーリーは、オリジナルに劣ると思いますが、メカ・デザインや、描き込みの技術が上がり、オリジナルに見られた、古典的巨大ロボット物のしょぼさが払拭されたのが、新時代を感じさせ、新し物好きだった、当時の私の心を捉えたのです。

  そういえば、2年ほど前に、お台場に実物大のガンダムが登場して、話題になりましたが、あのガンダム、どう見ても、オリジナルのRX-78ではなく、マークⅡや他のガンダムと、チャンポンになっていましたな。 なんで、オリジナルそのままにしなかったのか、理由は簡単に想像できます。 RX-78が、カッコ悪いからです。 え? それは、禁句? いやあ、正直に言いましょうや。 カッコ悪いんですよ、RX-78は。

  ロボット・アニメを作る際、ロボットの形が単純なほど、コストが安く上がるのですが、オリジナルでは、予算や技術的な制約があって、あれ以上、細部を描き込めなかったのでしょう。 それが、5年の間に、技術が上がり、≪Z≫になると、「成功作、ガンダムの続編」という事で、予算も増え、複雑なデザインが許されるようになったわけですな。

  ちなみに、もし、モビル・スーツを、真面目に兵器として論じる場合、マークⅡ辺りのデザインが、最も実用的という事になります。 Zのような変形型は、機構が複雑になりすぎて、問題外。 RX-78の合体型も、実用品と言うよりは、玩具の発想です。 そもそも、コア・ファイターが入っていたのでは、腰も曲がりますまい。 RX-78が振り向きざまに、ビーム・ライフルを撃つ場面がありますが、どうやって、体を捻っているのか、考え始めると、夜も寝られません。 コア・ファイターは、ゴム製か?

  でねー、ガンダムのミーハー・ファンが、「オリジナルが最高!」とか言ってますが、それは、ストーリーの話でしょう? メカは、そんなにいいわけじゃありません。 ザクのコクピットなんて、≪タイムボカン≫のドクロ・メカの操縦席より、尚、古臭いです。 ちゃんと、見なさいよ。 ジオン軍の戦艦、ムサイのブリッジなんて、「いかにも、悪役側のメカです」と言った、すっごい、内装になってるから。 ジオン側のデザインが、多少、まともになるのは、グフからです。

  昨今、ガンダムというと、なんじゃない、決まって、RX-78が出て来ますが、RX-78をカッコいいと言っている人達というのは、その実、ガンダム・シリーズを見ていないんじゃないですかね? 見ているフリをしているだけで。 いや、いるんですよ、興味無いくせに、世間で騒いでいるからって、興味があるフリをする輩が。 ちょっと突っ込んだ話をすると、すぐに馬脚を現わしますけど。


  ≪Z≫の話に戻りますが、あの作品は、香港までは、「これから、どんな展開になるんだろう」と、ワクワクさせてくれて、非常に宜しいんですが、宇宙へ戻った辺りから、話の進捗が滞り始め、最後まで盛り上がらずに終わります。 ネオ・ジオンなんて出すから、力関係が煩雑になって、何が描きたいのか、よく分からない話になってしまったのです。 ティターンズとエウーゴの戦いに絞って、ゆとりが出た分を、人間ドラマに注げば、ずっと面白くなったと思うのですが。

  あと、宇宙空間での戦闘シーンが、背景に対象物が無いためか、スピード感が無くて、ちっとも面白くなかったのが、印象に残っています。 後半、とても、実用品とは思えないような、奇妙な形のモビル・スーツが、続々出て来たのも、興ざめ。 プラモデルを売るために、種類をたくさん出す事ばかり考えて、作品内での使い方にまで、配慮が回らないのは、オリジナルから、≪00≫まで、一貫した欠点になっています。

  そもそも、プラモデルでペイしようなんて、発想が間違っているのであって、明らかに、作品に悪影響を与えています。 ついでながら、ガンプラに人生を捧げている奴らというのも、理解しかねる。 ガンダムは、あくまで、アニメ作品なのであって、プラモは、添え物に過ぎないのですが、それが分かっていないらしい。

  中には、「アニメの方は、見ていないんですが・・・」などと平気で言っている、ただのモデラーも混じっていて、こういう連中が、ガンダム・ファンを名乗っているのを見ると、何だか、ムカムカして来ます。 ≪シード≫や≪デステニー≫の、異様にケバケバしいガンダムは、ガンプラを派手にするために、アニメ側で合わせたのが見え見えですが、モデラーに媚びて、肝腎のアニメの魅力を損なっていたのでは、本末転倒というものでしょう。

  どうも、脱線が激しいですな。 で、≪Z≫の次は、≪ZZ≫ですが、これは、ちょっと、変わった作品でして、前半は、コメディー・タッチの話でした。 当時の雑誌で、富野さんが、「明るい、楽しいガンダムを作ってみたい」というような事を語っていたのを覚えています。 と言っても、ガンダムですから、ギャグ・アニメになれるわけではなく、中盤以降は、深刻な話になって行くのですが。

  私は、≪Z≫の後半が期待外れだったので、「そのまま続けて作っても、面白い話にはならないんじゃないかなあ」と心配していたのですが、案の定、驚くような面白さはありませんでした。 主人公が、単純で、明るくて、正義感が強くて、前向きな性格だったので、戦争の暗さとのコントラストがよく出て、その点は良かったと思います。 ただ、二作連続で作って、さすがに、アイデアが枯渇したと思ったのか、その後、しばらく、ガンダムのテレビ・シリーズは作られなくなります。


  おっと、随分、長くなってしまいました。 今回は、このくらいにしておきましょう。 私は、別に、「寝ても起きても、ガンダム」というような、コアなファンではないのですが、それでも、書き出すと、こんなにズラズラと延びてしまうんですな。 ガンダムの魅力とは、恐ろしいものです。