2011/10/02

旅番組たるもの

  テレビ神奈川で、月曜深夜に放送していたアニメ、≪日常≫が終わってしまいました。 残念至極! 子供向けでなく、尚且つ、ファミリー向けでもないコメディー・アニメは珍しく、しかも、時折、爆笑できるような部分も出て来る、秀逸な作品だったんですがねえ。

  2クールやったようですが、こういう作品は、原作のエピソードが尽きるまで、無期限で続けるべきだと思います。 もしかしたら、何年かしてから、また続きが作られるかもしれませんが、その時、放送が始まった事に、私が気付く事ができるかどうかは、神のみぞ知ります。 番組改変期だけに限るとしても、数年に渡って、新番組を全てチェックし続けるのは、結構きついです。 主要局のゴールデン帯なら、予告で気づく可能性もありますが、テレビ神奈川の深夜じゃねえ。 普段は、TVK見てませんから。


  テレビ神奈川と言えば・・・、いや、少々繋がり具合が弱いですけど、テレビ神奈川と言えば、二週間ばかり前に、BSの番組表を見てたら、BS12・トゥエルビで、≪勝手に観光協会≫をやっているのを、偶然発見し、ぴょんと跳ね起きて、取る物も取り敢えず、録画予約を入れました。 ≪勝手に観光協会≫は、2008年の夏頃に、テレビ神奈川で見ていたのです。 秋に入ったら、突然、終わってしまい、それっきりになっていたもの。

  元は、関西テレビの番組で、そちらでは、ずっと続いていたようなのですが、私が住んでいる静岡県東部では、寝ても起きても逆立ちしても、関西テレビは映りません。 当時、テレビ神奈川で、≪勝手に観光協会≫の後に始まったのが、大泉洋さんが出て来る、低予算バラエティーでしたが、どんな内容だったかは忘れてしまいました。 覚えているのは、「つまらん! こんな番組のために、≪勝手に観光協会≫を終わらせるなど、許し難い! TVKの見識を疑う!」という、激昂の記憶だけ。


  で、≪勝手に観光協会≫ですが、どんな番組かというと、みうらじゅんさんと、安齋肇さんのお二方が、都道府県ごとに旅行に出かけて行って、ああだこうだとコメントを発しながら、観光するというもの。 こう書くと、「ただの旅番組やんけ」と思われそうですが、それが、違うんですよ。 ちょっと違う、どころの話ではなく、全然違うのです。 「なんで、こんなに面白いのか・・・」と、逆に首を捻ってしまうくらい、面白いんですねえ。

  普通の旅番組は、まず、≪紹介したい場所≫があって、それを紹介するための、≪旅人≫を、後からテキトーに見繕って、派遣するわけですが、≪勝手に観光協会≫では、まず第一に、みうらさんと安齋さんのコンビが存在し、彼らが、行った先の観光地で、どんな反応をするかが、見所となっています。 行く先は決まっていますが、台本や進行表のようなものは無く、会話は全て、アドリブ。 お二方とも、50代で、いいオッサンなのですが、オッサンなればこそ、世間を知り尽くしたオッサンならではの、凝りに凝ったディープなやり取りが、実に面白いんですな。

  行く先は、必ずしも、≪穴場≫ではなく、各地の観光案内に堂々と載っているような、真っ当な観光地がほとんどなのですが、お二方の対応能力が極めて高いために、どこへ行っても、必ず、面白い部分を探し出し、笑いのネタにしてくれます。 お約束で、鍾乳洞や風穴など、自然に出来た洞窟に潜る企画が、必ず含まれるのですが、洞窟なんて、みな同じようなものなのに、毎回、違ったコメントが出るところには、感服します。

  これが、売れない芸人コンビが、渋々引き受けた地方テレビ局の番組だったりすると、冗談と侮蔑の区別がつかないため、地方を小馬鹿にしたような暴言を吐いて、視聴者の顰蹙を買うところですが、みうら・安齋の御両名は、サブカル系文化人なので、知性の輝き具合が違います。 観察の角度が違うと言うか、分析の切り口が違うと言うか、「どこにでも、何にでも、面白い要素は必ずあるはず」という、基本スタンスが、しっかりしているんですな。

  ≪観光協会≫を名乗っているのは、観光地を見て回るだけでなく、視察の後、≪観光ポスター≫、≪御当地マスコット≫、≪御当地ソング≫などを、お二方で分担して作るからなのですが、そちらは、オマケのようなもので、製作者の労が多いと思われる割に、視聴者には、それほど面白くありません。

  ≪御当地ソング≫は、みうらさんが作曲しているのですが、番組の企画で、2週に1曲のペースで作っているとは思えないほど、完成度が高いです。 10年以上続いている番組のため、すでに、47都道府県を一巡しており、全曲揃っているので、二巡目からは、同じ曲を流していますが、作曲の負担が無くなった分、気楽になって、より、観光を楽しめているんじゃないかと思います。


  でねー、≪勝手に観光協会≫の紹介だけでは、コラムにならんので、結論らしきものを付け加えますと、他の旅番組も、≪勝手に観光協会≫を見習うべきだと思うのですよ。 穴場スポットとか、知る人ぞ知るグルメの店とか、目先の変わった取材先を探すのに投じるエネルギーがあったら、まず、≪旅人≫の人選に心を砕いた方がいいです。 つまらん旅人が、どんなに面白い所に行っても、決して、面白くはなりませんが、面白い旅人なら、どんなにつまらない所に行っても、面白くしてくれるのです。

  サブカル系文化人は、他にもたくさんいるので、好奇心旺盛で、ギャグ好きで、旅が好きそうな人に、片っ端から声を掛けて見れば、すぐに見つかるでしょう。 その際、必ず、コンビにする事。 俳優やタレントを一人で旅させて、独り言だか、カメラさんに話し掛けているんだか分からない呟きを拾っても、盛り上がりようがありません。 まして、ナレーション任せで、終始無言など、以ての外。 放送事故か、おまえは?

  旅人を旅先ごとに変えるのもよくないです。 変えるべきは、目的地であって、人ではありません。 「出演者のスケジュールの都合があって・・・」などという言い訳は聞きませんよ。 話題性を狙って、他の仕事で忙しい人を連れてくるから、そんな問題が起こるのです。 時間に余裕があって、定期的に旅に出かけられる人を探せば、いいではありませんか。


  以下、オマケ。

  まーあ、とにかく、つまらんのは、テレビ東京の、≪土曜スペシャル≫ですなあ。 私が挙げた問題点だけを、全部盛り込んだような番組ですが、どーにもこーにもねつまらない。 すぐに、チャンネルを変えてしまいます。 「じゃあ、最初から見なければいいだろう」と思うでしょう。 ところがねえ、何ヶ月かに一度のペースで、面白い企画があって、それだけは見たいので、一応、毎週、確認しているのです。

  太川陽介さんと、蛭子能収さん、それと、もう一人、女性タレントがトリオになって、路線バスを乗り継いで、目的地に向かう企画ですが、これが、滅茶苦茶に面白いのです。 目的地に辿り着くのが最優先なので、観光地もグルメ・スポットも、すっ飛ばして進みますが、そこがまた、妙にリアルで、まるで、自分がバスに乗って旅しているような感覚を味わえます。

  同じ番組で、3人の旅人が、二日間ずつ、徒歩で旅をし、リレー式に引き継いで、目的地を目指す企画がありますが、そちらは、出演者が毎回変わるので、面白い時とつまらない時が、はっきり分かれます。 こういう企画に向かない人に当った時には、つまらんを通り越して、不愉快にさえなります。 たとえば、やたら、寄り道ばかりして、距離を稼げない人とか、「電話で宿の予約をしてはいけない」というルールがあるのに、平気で破る人とか。


  そういえば、フジの≪もしもツアーズ≫なども、一時期、時間潰しに見ていましたが、最近は、時間潰しですら見なくなりました。 この番組、メンバーは、ほぼ固定されているんですが、人数が多過ぎて、会話になりません。 てんでんばらばらに、短いコメントを発しているだけ。 それでも、目的地が観光名所なら、まだいいんですが、下準備がし易いためか、グルメ・スポットの比重が多くなり、よーく、つまらなくなってしまったのです。 タレントが飯を喰っているだけの映像なんて、何が面白いのか、さっぱり分かりません。