自転車の本
実は、先週の日曜に、折り畳み自転車で出掛けたら、一山越した所で、後輪がパンクしまして・・・。 見ると、ただのパンクではなく、タイヤが磨り減って、繊維が見えている状態。 こんなになるまで気付かないとは、何たる不覚! 当然、ポタリングは中止となり、下りて、押して、ひいこら言いつつ、一山越えて帰って来たわけですが、まあ、それはもう、先週の事だから、どうでも宜しい。
問題は、今週です。 土曜日、つまり、昨日ですが、自転車の後輪を外し、ホイールからタイヤを外し、それから、新しいタイヤとパンク修理セットを買いに行き、チューブのパンクを直し、新しいタイヤをホイールにつけ、後輪を車体に戻し・・・・、といった事をやっていたら、一日潰れてしまいました。 疲れた疲れた。
で、何が言いたいのかというと、土曜をまるまる、自転車修理に取られた結果、ここの記事を書く時間が全く無くなってしまったわけです。 というわけで、こういう時の頼みの綱、読書感想文を載せて、お茶を濁そうと思います。
≪自転車入門≫
紛らわしい書名でして、自転車は自転車でも、この著者が薦めているのは、スポーツ・バイクと呼ばれる種類、更に限定すれば、ロード・バイクの事です。 ≪ツール・ド・フランス≫のような公道での自転車レースで使う、前傾姿勢の強い、あの自転車ですな。 著者は、スポーツ・バイクを始めて3年、ロード・バイクに至っては、2年しか乗っていない人で、「初心者の体験記」という趣旨で、この本を書く事になったのだそうです。 本来なら、≪スポーツ自転車入門≫とすべきですな。
スポーツ・バイクには、舗装路を走る≪ロード・バイク≫、オフロードを走る≪マウンテン・バイク(MTB)≫、その二つの特長を合体させた≪クロス・バイク≫、折畳み自転車のような≪小径車≫などがあり、著者は、まず、クロス・バイクから始め、より本格的なロード性能を求めて、ロード・バイクに進みます。 勢いで、小径車も買ったようですが、そちらに関する話はほとんど出て来ません。
「どんな経緯でスポーツ・バイクの世界に興味を持ったか」、「どうやって車種を選び、買い揃えて行ったか」、「普段、どんな所を走っているか」、などは詳しく書いてありますが、それ以外は、他の人の著作や、メーカーのカタログなどから引用した文が多く、あまりオリジナリティーの高い本とは言えません。 ≪自転車と健康≫の章では、医学データが多く出て来ますが、これも他の本で調べたものでしょう。 車種名、メーカー名、ブランド名、部品名などが、ごっちゃに出て来て、門外漢には、意味を読み取るのが難しいような部分もあります。
ちなみに、著者の本業は金融関係で、過去に年金をテーマにした新書を何冊か出した縁で、この本を書く事になったのだとか。 つまり、自転車に関しては、始めたばかりの普通の人なのです。 できれば、新書の著者は専門家にして貰いたいのですがねえ。 ≪自転車入門≫という書名は、「これから入門する人向け」という意味だけでなく、「自分自身が入門した」という意味でもあるのでしょう。 二重に紛らわしい。 更に修正して、≪スポーツ自転車入門記≫とするのが妥当でしょうか。
スポーツ・バイクに傾倒するあまり、≪軽快車≫、もしくは、≪ママチャリ≫と呼ばれる一般の自転車を小馬鹿にしている点が気になります。 「ロード・バイクで歩道を走っていたら、軽快車にぶつけられた」などと書いてありますが、ロード・バイクのように低速安定性が悪い代物で、歩道に入って来る方が間違っているのであって、軽快車の方がびっくりしたでしょう。
私の経験では、歩道を走っているロード・バイクというのは、見た事がありません。 あれは本来、車道を走る物なのではありますまいか。 車道を走っていれば走っていたで、車から見ると、非常に邪魔で、危険なのですが。 日本では、自転車専用道路が、ごく一部にしか無いので、交通量が多い平地の車道を、ロード・バイクで走るのは、無理があるんですな。 山の中なら、車と事故を起こす危険性は低くなりますが、漕ぐのが大変でしょう。
でねー、この本、書物としては、全く感心しないんですが、ロード・バイクに興味を抱かせるという点では、充分に成功しています。 読んでいると、無性に、「自分も乗ってみたい」という気になって来るのです。 ハードなスポーツである割には始める年齢を選ばないし、一人でも楽しめるという点も魅力です。
≪こぐこぐ自転車≫
代表作は知らないけれど、名前だけは知っている、伊藤整さんの次男に、伊藤礼さんという、翻訳家・随筆家がいるのですが、その方が、定年間際に嵌った自転車道楽について書いたエッセイ集。 翻訳家・随筆家という肩書きよりも、いまや、自転車生活啓蒙家としての方が有名な人です。
随分前に、この人が新聞に寄稿した文を読んだのですが、それが、「最近、自転車で勤務先に通うようになった」 という内容で、「昔に比べると、道が格段に良くなり、自転車が使い易くなった」 とか、「満員電車で通勤する時間と負担を考えれば、自転車の方が遥かに快適だ」 といった意見が書かれていて、「ふーん、そういうものか」 と思った記憶があります。
なんで、「ふーん」 程度の感想しか出なかったかというと、私は通勤こそしないものの、自転車には日常的に乗り続けており、数十年ぶりに再開したような人に教えられる事は無いと感じたからです。 いわゆる、≪老いらく趣味≫であって、老いらく趣味に取り付かれた人は、必ずと言っていいほど、他人にもその趣味を薦めようとしますが、その内、自分の方が飽きてしまって、およそ格好がつかない結末になります。 この方も、そうならなければいいのですが。
さて、この本ですが、自転車に関する部分はそこそこ面白いのですが、半分以上は旅行記が占めており、そちらが月並みで、読む気力を失わせます。 全て文章で埋められていますが、今時の紀行文は、写真が無いと、興味を維持するのが厳しいです。 北海道へツーリングに行く話が二回出て来ますが、地名も地形もピンと来ないので、なかなか話に入って行けません。
面白かったのは、どこぞのビジネス・ホテルで、駐車場に自転車を停めて食事に出かけていたら、後からやって来た高級車を入れるために、自転車を草原に放り投げられていて、ホテル側に猛然と抗議したという件り。 しっかし、そのホテルも、自分の所の駐車場に停めてある自転車が、客のものだと気づかなかったんですかね。 アホちゃうか?
他に、新しい自転車を買おうと思い、車種を決めて店に行ったのに、店員と話をする内に、全く違う車種を薦められて、結局そちらを買ってしまったという話も興味深いです。 このパターン、カメラ屋、釣具屋、ゴルフ・ショップなどで、非常によく発生していますが、自転車屋も例外ではない様子。 その後の店との付き合いを考慮して、「この場は、向こうの薦めに従っておこう」と判断するんでしょうが、店の側は、売りたいものを売りつけるのであって、客の事なんか親身に考えているはずがありません。 欲しい物が決まっているのなら、最初にズバッと言ってしまって、向こうの薦めは聞かないようにすべきでしょう。
「東京近郊で自転車を楽しむ場合、川に沿って走れば、車が通らない快適な道を探す事ができる」 という指摘は参考になりました。 基本的に、どの街でも、川沿いには自転車で走るのに都合が良い道路があると思うので、積極的に探してみれば、穴場が見つかるかもしれません。
≪自転車三昧≫
≪ダーティー・ペア≫や、≪クラッシャー・ジョウ≫で有名なSF作家、高千穂遥さんの自転車体験記。 50歳になってからスポーツ自転車に目覚め、そのおかげで健康になったという、割とよくあるパターンの本です。
この種の本は大変多いのですが、内容も互いに似通っていて、何冊も読んでいると、どのエピソードが、誰の本だったか、分からなくなるほどです。 自転車にまつわる体験というのは、結局みんな同じになってしまうのでしょうなあ。 それにしても、自転車の本を書く人というのは、なぜみんな、判で押したように、歳を取ってから自転車を始め、だんだんスポーツ性の強いタイプに乗り換えていくというパターンをなぞるんでしょう? 不思議です。
また、初心者と言っても過言ではない時期に、本を書いてしまうのも、老いらく自転車派に共通した特徴ですな。 この著者も、始めて5年目で、この本を書いたようですが、若い頃から乗り続けている専門家に比べると、道に聴いて途に説いている印象が拭えません。 5年間で、様々なタイプの自転車を乗り継いで、最後には、ピスト・バイクを買って、競輪のバンクまで走ったそうですが、楽しんでいるというより、すぐに飽きてしまって、次から次へと新しい物に手を出しているだけのように思えます。
「スーパーで売っているような数千円の自転車は、危険だから買ってはいけない」という事も書いていますが、なぜそう思うかというと、雑誌でそういう自転車を分解している記事を読んだからだそうです。 だけどねえ、そういう事は、自分で体験した上で言うべきだと思いますよ。 ちなみに、うちには、母が7800円で買った自転車がありますが、何の問題も無く10年以上経過しています。 安くても、穏やかに使えば、いくらでも長持ちしますし、高くても、荒っぽく使えば、すぐ壊れます。 値段の問題ではないでしょう。
やたらと日本製品を誉めていますが、自転車業界では、日本の完成車メーカーは、ほとんど世界シェアを持っていないので、何を根拠に誉めているのか分かりません。 単なる身贔屓でしょうか。 自分の国のメーカーを誉めても、別に何の得があるとも思えませんが。 ちなみに、日本の会社で気を吐いているのは、変速機やブレーキを作っている、シマノだけです。
繰り言が多く、どうにも年寄り臭い本なので、かつて、著者の小説のファンだったという人達は、読まない方がいいかもしれません。 「そうだそうだ、おっしゃる通り!」 と、全面的に賛同できるのなら構いませんが、「何だか、勝手な事ばかり書いてるな」 と感じてしまうと、幻滅してしまいますから。 私も、読まなければ良かったと思っています。
≪大人のための自転車入門≫
ここのところ、自転車関係の本を読み倒していますが、これは、その中で、最も堅いと思われる本。 大人がスポーツ自転車に乗る目的を、健康増進のためと捉えて、まず、自転車と健康の関係を医学面から解説し、スポーツ自転車の種類や選択方法に関する説明を挟んだ後、20キロ、50キロ、100キロと、移動距離別に、必要な知識・情報を紹介していきます。
写真は、白黒のものが適宜挿入されていますが、ほとんどは文章。 個人的なツーリング体験記の類を入れずに、200ページあまりを埋めているのは、資料性が高い証拠と言えるでしょう。 これからスポーツ自転車を始める人は、この本に目を通しておいて、損は無いと思います。
有酸素運動を保つためには、一定の回転数でクランクを回し続ける事が大切で、最大30段にもなるギアが用意されているのは、そのためなのだそうです。 ギアの選び方を解説してある本に出会ったのは、これが初めて。 重くなったギアで、力任せに漕ぐよりも、軽いギアを選んで、くるくる回した方が良いのだとか。
この本、見た目は地味なんですが、内容は濃いので、自分で買って、後々まで参考にしても良いと思います。 「何の為に自転車に乗るか」という精神面の目標をはっきり決めて、そこから説き起こしている点に好感が持てます。 至って穏当で、決して極論に走らない執筆者達の姿勢も、内容の信頼性を増すのに寄与しています。
以上、四冊まで。 実は、これらの本は、昨年の夏に読んだものです。 感想文も、その頃に書いてあったもの。 ですから、感想の内容に出て来る、私の自転車に対する考え方は、一年以上前のものでして、「今なら、こうは書かないだろう」というものも含まれています。
問題は、今週です。 土曜日、つまり、昨日ですが、自転車の後輪を外し、ホイールからタイヤを外し、それから、新しいタイヤとパンク修理セットを買いに行き、チューブのパンクを直し、新しいタイヤをホイールにつけ、後輪を車体に戻し・・・・、といった事をやっていたら、一日潰れてしまいました。 疲れた疲れた。
で、何が言いたいのかというと、土曜をまるまる、自転車修理に取られた結果、ここの記事を書く時間が全く無くなってしまったわけです。 というわけで、こういう時の頼みの綱、読書感想文を載せて、お茶を濁そうと思います。
≪自転車入門≫
紛らわしい書名でして、自転車は自転車でも、この著者が薦めているのは、スポーツ・バイクと呼ばれる種類、更に限定すれば、ロード・バイクの事です。 ≪ツール・ド・フランス≫のような公道での自転車レースで使う、前傾姿勢の強い、あの自転車ですな。 著者は、スポーツ・バイクを始めて3年、ロード・バイクに至っては、2年しか乗っていない人で、「初心者の体験記」という趣旨で、この本を書く事になったのだそうです。 本来なら、≪スポーツ自転車入門≫とすべきですな。
スポーツ・バイクには、舗装路を走る≪ロード・バイク≫、オフロードを走る≪マウンテン・バイク(MTB)≫、その二つの特長を合体させた≪クロス・バイク≫、折畳み自転車のような≪小径車≫などがあり、著者は、まず、クロス・バイクから始め、より本格的なロード性能を求めて、ロード・バイクに進みます。 勢いで、小径車も買ったようですが、そちらに関する話はほとんど出て来ません。
「どんな経緯でスポーツ・バイクの世界に興味を持ったか」、「どうやって車種を選び、買い揃えて行ったか」、「普段、どんな所を走っているか」、などは詳しく書いてありますが、それ以外は、他の人の著作や、メーカーのカタログなどから引用した文が多く、あまりオリジナリティーの高い本とは言えません。 ≪自転車と健康≫の章では、医学データが多く出て来ますが、これも他の本で調べたものでしょう。 車種名、メーカー名、ブランド名、部品名などが、ごっちゃに出て来て、門外漢には、意味を読み取るのが難しいような部分もあります。
ちなみに、著者の本業は金融関係で、過去に年金をテーマにした新書を何冊か出した縁で、この本を書く事になったのだとか。 つまり、自転車に関しては、始めたばかりの普通の人なのです。 できれば、新書の著者は専門家にして貰いたいのですがねえ。 ≪自転車入門≫という書名は、「これから入門する人向け」という意味だけでなく、「自分自身が入門した」という意味でもあるのでしょう。 二重に紛らわしい。 更に修正して、≪スポーツ自転車入門記≫とするのが妥当でしょうか。
スポーツ・バイクに傾倒するあまり、≪軽快車≫、もしくは、≪ママチャリ≫と呼ばれる一般の自転車を小馬鹿にしている点が気になります。 「ロード・バイクで歩道を走っていたら、軽快車にぶつけられた」などと書いてありますが、ロード・バイクのように低速安定性が悪い代物で、歩道に入って来る方が間違っているのであって、軽快車の方がびっくりしたでしょう。
私の経験では、歩道を走っているロード・バイクというのは、見た事がありません。 あれは本来、車道を走る物なのではありますまいか。 車道を走っていれば走っていたで、車から見ると、非常に邪魔で、危険なのですが。 日本では、自転車専用道路が、ごく一部にしか無いので、交通量が多い平地の車道を、ロード・バイクで走るのは、無理があるんですな。 山の中なら、車と事故を起こす危険性は低くなりますが、漕ぐのが大変でしょう。
でねー、この本、書物としては、全く感心しないんですが、ロード・バイクに興味を抱かせるという点では、充分に成功しています。 読んでいると、無性に、「自分も乗ってみたい」という気になって来るのです。 ハードなスポーツである割には始める年齢を選ばないし、一人でも楽しめるという点も魅力です。
≪こぐこぐ自転車≫
代表作は知らないけれど、名前だけは知っている、伊藤整さんの次男に、伊藤礼さんという、翻訳家・随筆家がいるのですが、その方が、定年間際に嵌った自転車道楽について書いたエッセイ集。 翻訳家・随筆家という肩書きよりも、いまや、自転車生活啓蒙家としての方が有名な人です。
随分前に、この人が新聞に寄稿した文を読んだのですが、それが、「最近、自転車で勤務先に通うようになった」 という内容で、「昔に比べると、道が格段に良くなり、自転車が使い易くなった」 とか、「満員電車で通勤する時間と負担を考えれば、自転車の方が遥かに快適だ」 といった意見が書かれていて、「ふーん、そういうものか」 と思った記憶があります。
なんで、「ふーん」 程度の感想しか出なかったかというと、私は通勤こそしないものの、自転車には日常的に乗り続けており、数十年ぶりに再開したような人に教えられる事は無いと感じたからです。 いわゆる、≪老いらく趣味≫であって、老いらく趣味に取り付かれた人は、必ずと言っていいほど、他人にもその趣味を薦めようとしますが、その内、自分の方が飽きてしまって、およそ格好がつかない結末になります。 この方も、そうならなければいいのですが。
さて、この本ですが、自転車に関する部分はそこそこ面白いのですが、半分以上は旅行記が占めており、そちらが月並みで、読む気力を失わせます。 全て文章で埋められていますが、今時の紀行文は、写真が無いと、興味を維持するのが厳しいです。 北海道へツーリングに行く話が二回出て来ますが、地名も地形もピンと来ないので、なかなか話に入って行けません。
面白かったのは、どこぞのビジネス・ホテルで、駐車場に自転車を停めて食事に出かけていたら、後からやって来た高級車を入れるために、自転車を草原に放り投げられていて、ホテル側に猛然と抗議したという件り。 しっかし、そのホテルも、自分の所の駐車場に停めてある自転車が、客のものだと気づかなかったんですかね。 アホちゃうか?
他に、新しい自転車を買おうと思い、車種を決めて店に行ったのに、店員と話をする内に、全く違う車種を薦められて、結局そちらを買ってしまったという話も興味深いです。 このパターン、カメラ屋、釣具屋、ゴルフ・ショップなどで、非常によく発生していますが、自転車屋も例外ではない様子。 その後の店との付き合いを考慮して、「この場は、向こうの薦めに従っておこう」と判断するんでしょうが、店の側は、売りたいものを売りつけるのであって、客の事なんか親身に考えているはずがありません。 欲しい物が決まっているのなら、最初にズバッと言ってしまって、向こうの薦めは聞かないようにすべきでしょう。
「東京近郊で自転車を楽しむ場合、川に沿って走れば、車が通らない快適な道を探す事ができる」 という指摘は参考になりました。 基本的に、どの街でも、川沿いには自転車で走るのに都合が良い道路があると思うので、積極的に探してみれば、穴場が見つかるかもしれません。
≪自転車三昧≫
≪ダーティー・ペア≫や、≪クラッシャー・ジョウ≫で有名なSF作家、高千穂遥さんの自転車体験記。 50歳になってからスポーツ自転車に目覚め、そのおかげで健康になったという、割とよくあるパターンの本です。
この種の本は大変多いのですが、内容も互いに似通っていて、何冊も読んでいると、どのエピソードが、誰の本だったか、分からなくなるほどです。 自転車にまつわる体験というのは、結局みんな同じになってしまうのでしょうなあ。 それにしても、自転車の本を書く人というのは、なぜみんな、判で押したように、歳を取ってから自転車を始め、だんだんスポーツ性の強いタイプに乗り換えていくというパターンをなぞるんでしょう? 不思議です。
また、初心者と言っても過言ではない時期に、本を書いてしまうのも、老いらく自転車派に共通した特徴ですな。 この著者も、始めて5年目で、この本を書いたようですが、若い頃から乗り続けている専門家に比べると、道に聴いて途に説いている印象が拭えません。 5年間で、様々なタイプの自転車を乗り継いで、最後には、ピスト・バイクを買って、競輪のバンクまで走ったそうですが、楽しんでいるというより、すぐに飽きてしまって、次から次へと新しい物に手を出しているだけのように思えます。
「スーパーで売っているような数千円の自転車は、危険だから買ってはいけない」という事も書いていますが、なぜそう思うかというと、雑誌でそういう自転車を分解している記事を読んだからだそうです。 だけどねえ、そういう事は、自分で体験した上で言うべきだと思いますよ。 ちなみに、うちには、母が7800円で買った自転車がありますが、何の問題も無く10年以上経過しています。 安くても、穏やかに使えば、いくらでも長持ちしますし、高くても、荒っぽく使えば、すぐ壊れます。 値段の問題ではないでしょう。
やたらと日本製品を誉めていますが、自転車業界では、日本の完成車メーカーは、ほとんど世界シェアを持っていないので、何を根拠に誉めているのか分かりません。 単なる身贔屓でしょうか。 自分の国のメーカーを誉めても、別に何の得があるとも思えませんが。 ちなみに、日本の会社で気を吐いているのは、変速機やブレーキを作っている、シマノだけです。
繰り言が多く、どうにも年寄り臭い本なので、かつて、著者の小説のファンだったという人達は、読まない方がいいかもしれません。 「そうだそうだ、おっしゃる通り!」 と、全面的に賛同できるのなら構いませんが、「何だか、勝手な事ばかり書いてるな」 と感じてしまうと、幻滅してしまいますから。 私も、読まなければ良かったと思っています。
≪大人のための自転車入門≫
ここのところ、自転車関係の本を読み倒していますが、これは、その中で、最も堅いと思われる本。 大人がスポーツ自転車に乗る目的を、健康増進のためと捉えて、まず、自転車と健康の関係を医学面から解説し、スポーツ自転車の種類や選択方法に関する説明を挟んだ後、20キロ、50キロ、100キロと、移動距離別に、必要な知識・情報を紹介していきます。
写真は、白黒のものが適宜挿入されていますが、ほとんどは文章。 個人的なツーリング体験記の類を入れずに、200ページあまりを埋めているのは、資料性が高い証拠と言えるでしょう。 これからスポーツ自転車を始める人は、この本に目を通しておいて、損は無いと思います。
有酸素運動を保つためには、一定の回転数でクランクを回し続ける事が大切で、最大30段にもなるギアが用意されているのは、そのためなのだそうです。 ギアの選び方を解説してある本に出会ったのは、これが初めて。 重くなったギアで、力任せに漕ぐよりも、軽いギアを選んで、くるくる回した方が良いのだとか。
この本、見た目は地味なんですが、内容は濃いので、自分で買って、後々まで参考にしても良いと思います。 「何の為に自転車に乗るか」という精神面の目標をはっきり決めて、そこから説き起こしている点に好感が持てます。 至って穏当で、決して極論に走らない執筆者達の姿勢も、内容の信頼性を増すのに寄与しています。
以上、四冊まで。 実は、これらの本は、昨年の夏に読んだものです。 感想文も、その頃に書いてあったもの。 ですから、感想の内容に出て来る、私の自転車に対する考え方は、一年以上前のものでして、「今なら、こうは書かないだろう」というものも含まれています。
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