2013/07/07

小松左京文庫

  小松左京さんの文庫本買い揃え計画ですが、ネットで2冊買った後、古本屋に行ったら、持っていない本を7冊発見しました。 いずれも、105円だったので、即買い。 その内、4冊は、他の出版社から刊行された物を持っていたのですが、安かったので、とりあえず、買っておきました。

  状態は、いずれも、ネットで買った2冊より、ずっと上です。 これは、どうした事か? ネット買いは、欲しい本がピン・ポイントで手に入る点で優れていますが、本自体の値段は1円なので、状態が悪くなるのは、致し方ないんでしょうか。 前回も書きましたが、たぶん、ネットの1円本レベルの本が、古本屋に持ち込まれた場合、買い取り拒否されているものと思われます。

  これは、ネットでの購入を進める前に、行ける範囲の古本屋を、片っ端から覗いてみる必要がありますな。 わざわざ、2倍以上のお金を出して、より状態の悪い本を買うのも、馬鹿な話ですけんのう。


  現時点で、持っている本は、以下の通り。

≪新潮文庫≫
地球になった男 (中)
アダムの裔
戦争はなかった
闇の中の子供
時間エージェント (ネ 13.06.23)
夢からの脱走 (中)
物体O  (中)
春の軍隊
おしゃべりな訪問者
はみだし生物学
空から墜ちてきた歴史


≪角川文庫≫
ウインク
果しなき流れの果に (古 06.08.13)
牙の時代
最後の隠密
復活の日 (古 06.08.13)
怨霊の国
時の顔
鏡の中の世界
神への長い道
旅する女
三本腕の男 (古 11.04.13)
結晶星団
明日の明日の夢の果て (古 11.04.13)
ゴルディアスの結び目
氷の下の暗い顔


≪ハルキ文庫≫
エスパイ (古 11.04.13)


  ≪文春文庫≫
夜が明けたら
日本沈没(上)
日本沈没(下)
流れる女 (古 13.06.29)
題未定
虚空の足音
アメリカの壁
華やかな兵器


≪集英社文庫≫
サテライト・オペレーション (古 07.03.04)
夜の声
一生に一度の月 (古 13.06.29)
猫の首
一宇宙人のみた太平洋戦争 (ネ 13.06.27)
遷(せんと)都
偉大なる存在
五月の晴れた日に


≪徳間文庫≫
飢えなかった男
さよならジュピター≪上巻≫
さよならジュピター≪下巻≫
シナリオ版さよならジュピター
ハイネックの女  (古 13.07.06)
本邦東西朝縁起覚書
首都消失[上] (古 13.07.06)
首都消失[下] (古 13.06.29)


≪ケイブンシャ文庫≫
機械の花嫁


≪小学館文庫≫
日本沈没(上) (古 13.06.29)
日本沈没(下) (古 13.06.29)


  全部で、54冊ですな。 後ろの( )内に、「中」とあるは、中学生の頃に買った三冊。 「古」は、割と最近になってから、古本屋で買ったもので、後ろの数字は、買った年月日。 「ネ」は、ネット通販で買ったもの。 何も書いていないのは、高校から、20歳前後にかけて、本屋で普通に買ったもの。

  小松さんの作品は、あちこちの出版社から、ダブって出されており、コレクションするとなると、無駄が多くなるのは、痛いところ。 それでも、長編は、まだ分かり易い方でして、短編やショートショートに至っては、表題作が違っているだけで、いくつもの本に重録されている作品が、うじゃうじゃある始末・・・。


  ≪新潮文庫≫は、前回書いたように、もう全て揃えました。 新潮の収録作品は、第二次世界大戦に関するものや、日常の異変を題材にしたものが多いです。 中学の時に買った三冊は、印象が強過ぎるのか、あまり読み返す事がありませんが、個別作品ごとに見ると、【紙か髪か】、【痩せがまんの系譜】、【フラフラ国始末記】、【物体O】などは、珠玉の名編ですな。

  ≪アダムの裔≫や、≪戦争はなかった≫、≪闇の中の子供≫は、本を丸ごと何度も読み返しました。 個別作品では、【人類裁判】、【アダムの裔】、【生きている穴】、【木静かならんと欲すれど】、【くだんのはは】、【第二日本国誕生】、【養子大作戦】、【長生きの秘訣】、【闇の中の子供】などが、素晴らしい。 ≪春の軍隊≫に入っている、【藪の花】もいいです。


  ≪角川文庫≫は、一番数が多くて、私が持っているのは、たぶん、半分くらいでしょう。 第二次・小松左京ブームの頃は、本屋に行くと、角川文庫のコーナーに、緑色の背表紙がズラリと並んでいて壮観でしたが、数が多いだけに、貧乏な私には、「全部買う」という発想が出て来なかったんですな。

  角川の収録作品は、≪日本アパッチ族≫、≪果しなき流れの果に≫や、≪継ぐのは誰か?≫、≪復活の日≫など、初期・前期の代表的長編が含まれており、短編集の方では、宇宙物やハードSFが多いです。 ≪ゴルディアスの結び目≫は、誰もが認める、小松作品の最高峰。 ちなみに、≪日本アパッチ族≫は、今では、ネット上でも手に入りませんが、第二次・小松左京ブームの当時も、本屋で目にした記憶がありません。


  ≪ハルキ文庫≫は、角川春樹事務所が出している文庫ですが、角川文庫の復刻版が中心になっています。 まだ、新しい文庫なので、本の状態がいいのは宜しいんですが、元の値段が、800円くらいするものばかりなので、古本になっても、500円前後にしか安くならず、揃えるべきか悩むところ。 ≪日本アパッチ族≫や、≪虚無回廊≫など、ハルキ文庫でしか手に入らないものだけ、先に買っておいて、後は追い追い集める事にしようかと思っています。


  ≪文春文庫≫は、あと三冊で全部揃いますが、ネットで探さなければ、これ以上は、手に入らないと思います。 先日、≪流れる女≫を古本屋で見つけられたのは、僥倖に近い出来事。 文春の本は、新潮の本と並んで、今までに、最もよく読み返しました。 とりわけ、大杉探偵シリーズの【長い部屋】と、【幽霊屋敷】は好きでねえ。 何回読んだか分かりません。

  【お糸】、【虚空の足音】、【アメリカの壁】、【眠りと旅と夢】、【とりなおし】、【華やかな兵器】なども、実に素晴らしい。 珠玉ですなあ。 これだけ多様な作品を、一人の人間が書いたというのが、すでに、奇跡と言えます。


  ≪集英社文庫≫は、まだ3分の2くらい。 この出版社の担当者は、どうやら、落穂拾いに徹したようで、他の社が収録しなかった、初期のショートショートなどを丹念に集めています。 コレクターの立場から見ると、最もありがたい仕事をしてくれたわけですが、前回書いたように、小松さんのショートショートは、あまり面白くないので、本を手に取る機会が少なくなるのは、致し方ないところ。

  ≪遷(せんと)都≫は、異色作で、平安時代以前が舞台になった三作が収められていますが、どれも、面白いです。 短編の【袋小路】、【偉大なる存在】、【比丘尼の死】、【五月の晴れた日に】なども、宜しいです。 【宗国屋敷】は、とりわけ、良い。 この作品は、思春期の男なら、誰でも、どっぷり嵌まるのでは?


  ≪徳間文庫≫は、半分くらい。 この社は、第二次・小松左京ブームが始まってから、参入して来たところで、映画の方に出資していた関係で、≪さよならジュピター≫や≪首都消失≫など、長編の割と新しい作品が入っている一方、後発の弱味で、短編集は、他社の文庫に既収のものを再編成したものが多いです。


  ≪ケイブンシャ文庫≫は、昔、たまたま本屋で見つけた、≪機械の花嫁≫一冊だけしか持っていないのですが、調べてみると、20冊くらい存在するらしく、「おっ」とビックリですな。 しかし、他社とダブっているものが多く、これも、全部揃えるべきかどうか、悩むところ。


  ≪小学館文庫≫は、今回、初めて、小松作品がある事を知りました。 ただ、≪日本沈没≫の上下と、≪日本沈没 第二部≫の上下だけのようなので、これ以上、買う必要はありますまい。


  この他に、徳間書店の新書サイズのペーパー・バック、トクマノベルズ版で、≪首都消失≫の上下巻を持っていますが、これは、1985年に発行された直後、文庫になるのを待ちきれなくて、初刷を買ったもの。

  小松左京さんの代表的長編、≪日本沈没≫や、≪日本アパッチ族≫などは、最初の単行本がハード・カバーではなく、新書サイズのペーパー・バックで出て、価格が安い事も手伝って、大量に売れたのですが、≪首都消失≫に関しては、そんなに売れたという話は聞きませんでした。

  ぶっちゃけてしまうと、内容があまり面白くないのですよ。 短編、≪物体O≫のアイデアを増幅して、長編に仕立てたものですが、統治機構の再構築の様子よりも、外交戦の方に多くのページが割かれていて、SFというより、スパイ小説のようになってしまっているのです。 特に、後半にクライマックスらしい盛り上がりが欠けていて、尻窄みな話になってしまっているのが、最大の難点。

  前回も書きましたが、この話を映画にしようと思いついた人達の気が知れません。 小松さんのネーム・バリューに頼るばかりで、映画には、どんな要素が必要かが、まるっきり分かっていないんですな。 むしろ、≪物体O≫を、そのまんま、映画化した方が、小気味良い作品になったと思います。


  ちなみに、2006年の≪日本沈没 第二部≫は、ハード・カバーで出版され、本屋に平積みされていましたが、もっと売れませんでした。 そもそも、小松さんは名前を貸しているだけで、実際の執筆は別人であり、内容も、仮想戦記物のしょーもなさ丸出しで、とても、「正式の続編」と言えるような代物ではなかったのです。 その上、値段は高い、大きくて、場所を取るとなっては、売れようがありますまい。

  この作品は、映画≪日本沈没≫のリメイク版の公開に合わせ、第三次・小松左京ブームを狙って、出されたものですが、全く無力、というか、逆に、古い小松左京ファンを白けさせ、落胆させる効果しか及ぼしませんでした。 詳しくは、このブログの≪小松作品に非ず≫を参照の事。 私は、この作品を、小松作品と認めていないので、文庫買い揃え計画でも、買うつもりはありません。


  こう並べて来ると、コレクション趣味がない方々は、「そんなに買い揃えて、どないすんねん?」と思うかも知れませんが、この計画は、単なる蒐集欲求から出たものではなく、深謀遠慮が動機に加わっています。

  まだ先の話ですが、両親が二人とも死ぬか、一人が死んで、兄夫婦が家に戻って来て、私が家を出ざるを得なくなるかして、独り暮らしをするようになったら、仕事を辞めるつもりでいます。 最遅でも、定年になったら、延長なんかせず、働くのは辞めます。

  そうなったら、毎日、読書、食料の買い出し、ポタリングなどで過ごす事になるわけですが、体がいつまで動くか分からないので、図書館に通うのが難しくなる危険性がある。 そこで、いつでも読める手持ちの本を、少し増やしておこうかな、と考えているのです。

  なぜ、小松左京さんのなのかというと、やはり、青年期に耽溺した本というのは、その後の精神構造の形成に大きな影響を与えるのであって、私の世代の場合、小松左京さんや筒井康隆さんを除いては、読書の楽しみは考えられのですわ。 他の作家の、新しい本や、より古い本も、読めば、もちろん、読めますが、なかなか、惑溺というところまでは行きません。

   小松さんを揃え終わったら、筒井さんの文庫も揃える予定。 もっとも、そちらは、数がずっと多そうですが・・・。 今思うと、このお二方がいた事は、世代的に、大変な幸運でした。 私より、歳が上過ぎても、SFに馴染めずに駄目。 SFが衰退した後に、青年期を迎えた人達も、やはり駄目。 ほんとに、ちょうどよい頃合いに生まれ合わせたというわけ。