2013/05/19

日本平・三保の松原



  前回の続きです。 5月3日、午前11時55分に、≪日本平動物園≫を後にした私は、静岡市街方面には戻らず、そのまま≪日本平≫へ登る事にしました。 ちなみに、「日本平」という名称は、本来は、≪有度山≫の頂上部分の事を指しているのですが、静岡県界隈では、あまりにも有名になってしまったため、山全体を呼ぶ時にも使います。 というか、正式名称の、「有度山」の方を、誰も知らんという事態になっているほどです。

  更に言いますと、今では、≪日本平≫よりも、≪日本平動物園≫の方が、観光スポットとして、遥かに知名度が高くなっているため、「日本平」という呼称を、動物園を指すのに使う人も多く、「日本平に行って来たよ」と言われたら、「え? 日本平って、日本平? それとも、動物園の方?」と訊き返す光景も、県内随所で見る事ができます。

  さて、バイクに乗って、≪日本平パークウェイ≫を、東に向かって登って行きます。 一本道なので、迷う心配はありません。 もう正午だというのに、動物園の駐車場に入る車が、まだ数珠繋ぎになっていました。 駐車場入り口は、動物園の入り口より、かなり上にあるので、そこまでは大渋滞。 よって、私は、路肩を走って行きました。

  他人事とは言うものの・・・、一体、この衆等、何時になったら、入園できるのかね? 家を出て来るのが遅すぎるんですよ。 観光地に行く時には、遅くても、開園時間には到着するように、逆算して、出発時間を決めるべきですな。 せっかくの休みなのに、何時間も車の中に缶詰めでは、勿体無いではありませんか。

  そういえば、日本平動物園では、午前10時までに駐車場を出たお客に、キャッシュ・バックだか、記念品だか、何だか忘れましたが、とにかく、何かしら優遇措置をするという旨の放送を流していましたが、それはそれで、忙しないですなあ。 9時開園で、10時退園では、1時間しか無いわけで、駆け足観覧になってしまいます。 せめて、11時にすれば、結構、乗って来るお客がいたと思うんですが。

  それはさておき、私は、さっさと、日本平へ。 頂上までは、20分くらいあれば、着きます。 ちなみに、この道、傾斜があまりきつくないワインディング・ロードなので、地元の走り屋が走りに来ている事があり、ちと、注意が必要です。 静岡市は、ずっと北の方へ行けば、山道がありますが、市街地に近いというと、ここしか無いんですな。 箱根に比べると、えらく、ささやかな「峠」ですけど。

  日本平の展望台には、前に来た時に寄ったので、今回はスルーするつもりだったのですが、時間もある事だし、天気もいい事だし、どんな景色に見えるかと思い、結局、バイクを停めて、展望台まで歩く事にしました。 日本平の駐車場は、山の上とは思えないほど広大で、停められないという事は、まずありません。 バイク置き場も、ほぼ決まっていて、来る度に、30台くらい屯ろしています。 バイク向きのスポットなのか。

  富士山は、少し雲を被っていましたが、ほぼ快晴で、気持ちのいい青空。 眺めは絶景でした。 もっとも、「絶景だねー」と言っていたのは、私の隣に立っていたおじさんで、私は、そう言われるまで、「絶景」という言葉が思いつかなかったのですがね。 子供の頃も含めると、三回は来ているので、感動が薄れているんですな。 しかし、客観的に見れば、確かに絶景だと思います。

  日本平の問題点は、この展望台の絶景以外、何も無いという事ですが、まあ、山の頂上なんて、どこも、そんなもんでしょう。 ここの場合、車で簡単に来られるために、景勝地というより、観光地と見做され、過度の期待を抱かれてしまう事情があるのだと思います。 もし、これが、自分の脚で、えっちらおっちら登って来るのであれば、「絶景だけしかないじゃないか」と文句を言う人はおりますまい。

  今回は、ロープウェイの発着場まで行って見ました。 このロープウェイは、日本平と、≪久能山東照宮≫を結んでいる物。 久能山東照宮は、徳川家康が、死後、最初に安置された場所で、有度山よりも、海側にある、久能山の頂にあります。 ちなみに、その後、遺体は、≪日光東照宮≫に移されます。

  久能山には、前に行っているので、今回はパス。 ロープウェイの往復料金が、結構高いから、動物園のついでに来た人間にとっては、ほいほい気軽に乗れんのです。 もっとも、家族連れで、動物園に来て、午前中に見終わってしまい、「午後は、どうしようか?」という場合、日本平から、ロープウェイで、久能山観光をすれば、一日潰すのには、ちょうど良い組み合わせだと思います。 家族一緒だと、財布の紐も緩み易いですし。


  日本平の展望台に寄ったのは、その場の思い付きでして、本来は、素通りして、近くにあるはずの、≪県立日本平自然公園≫の方に寄るつもりだったのですが、そこが見つけられず、≪清水日本平パークウェイ≫という道路に入ったら、それらしき場所が何も無いまま、清水まで下りてしまいました。

  家に帰ってから調べ直したら、どうやら、自然公園は、日本平の展望台から、歩いて行く所にある様子。 バイクで道路に出てはいけなかったんですな。 うーむ、調べ不足は、いつもながら、現地で祟るのう。 呆れた話ですが、私は、出かける前に、ネットで見つけた周辺地図を、デジカメで撮影して持って来ていたのです。 その場で、それを見りゃあ良かったのに、なぜ、見ない? 歳を取ったせいで、面倒臭い事は、すっとばすようになってしまったか・・・。


  清水側へは、すぐに下りてしまいました。 山と言っても、有度山は、標高が低いんですな。 やはり、箱根や伊豆の山とは、比べられません。 逆に言うと、徒歩で登る分には、ちょうどいい規模というべきか。 ハイキング・コースがあるのかどうか、分かりませんが。

  清水に下りて、今回の第三目標だった、≪三保の松原≫へ。 富士山が世界文化遺産に決まったばかりの今、三保の松原といえば、対象から除外された事で、全国的に知名度が上がっているさなかですから、どんな様子か、ちょっと覗いてみようと思った次第。 細かい道順は調べて来なかったのですが、前にも来ているし、半島の先の方なので、迷う事もなかろうと、テキトーに走って行ったら、案の定、迷わずに到着しました。

  ここも、駐車場に入る車が渋滞を起こしていました。 連休中だから、無理もないか。 駐車場は無料です。 というか、三保の松原は、≪羽衣の松≫という名前の、ただの松があるだけの、ただの海岸なので、駐車場でお金を取ったら、リピーターがいなくなってしまうと思われます。 無料で当然。

  これは、全国の景勝地に共通して言える事ですが、観光地として、お金をかけて整備し、事業運営しているわけでもないのに、ただ、景色が良いだけの場所で、駐車場料金を取ったり、入園料を取ったりしていると、その内、誰も近寄らなくなりますぜ。 肝に銘じておくこってすな。

  砂浜の方に出ると、そちらにも、人が大勢いました。 まあ、世界遺産になろうがなるまいが、三保の松原が、有名な景勝地である事に変わりはないという事なんでしょう。 単独で見ると、前述したように、本当に、≪羽衣の松≫しかない所なので、どうして、有名なのか、首を傾げてしまうのですが・・・。

  ≪天の羽衣≫の話というのは、どの程度、メジャーなんすかね? カテゴリー的に、≪昔話≫として認識されている話なので、場所を特定してしまうと、却って、興醒めする気がせんでもなし。 ≪桃太郎≫や≪浦島太郎≫も、ゆかりの地というのがあって、観光に利用されていますが、いずれも、歴史的に証明されているわけではない事ですから、何だか、えーかげんな感じがせんでもなし。

  羽衣の松は、割と最近、代替わりをした様子で、新旧二本が、並存していました。 ちなみに、代替わりと言っても、元の木から種を採って、子孫を育てたわけではなく、すでに存在していた別の松を、新たに、羽衣の松に認定したという事らしいです。 一体、初代から数えて何本目なのか知りませんが、今の松が、天女が羽衣を掛けた松でない事だけは確かなわけで、それを眺めて感慨に耽るのは、お門違いも甚だしいと思うのが、私だけかと思うと、猛烈な疎外感を覚えずにはいられません。

  海には、波打ち際近くに、延々と、≪赤潮≫が・・・。 初めて見ました。 鮮やかといえば鮮やかですが、あまり、気分のいいものでありませんな。 世界遺産から除外された理由の一つになった、テトラポッドですが、確かに、場所によっては、見える事は見えるものの、静岡県民の私としては、見慣れているので、それほど、目障りとは感じませんでした。 それよりも、肝心の富士山が、遠過ぎて、小さいのが、より問題なのでは? この日は、雲が懸かって、はっきり見えなかったんですが。

  ちょっと、脱線しますが・・・、富士山が世界文化遺産というのも、それ自体、あまり、ピンと来ませんな。 一度、自然遺産で申請して、「大して珍しい形じゃない」という理由で、没を喰らい、関係者一同、面食らったのは、有名な笑い話。 日本人は、富士山の形を、非常に特徴的だと思っていますが、その実、火山というのは、大抵、ああいう擂鉢形をしているのであって、似たような山は、日本中、世界中に、山ほどあります。 「○○富士」と呼ばれる山が、如何に多いかを考えれば、誰でも、「なるほど、確かに、そうだ」と思うはず。

  で、「信仰の山」という捉え方で、文化遺産の方に申請し直したわけですが、もし、信仰の対象という理由で世界遺産になれるのなら、そんな場所は、山でも川でも、無数に存在すると思われ、そういうのを選定の基準にするのは、まずいのではないかと思わぬでもなし。 とかく、世界遺産は、玉石混交で、えーかげんですわ。

  しかも、富士山を世界遺産にしようと運動していた人達の、最大の目的は、観光客誘致なのですから、熱が出て来ます。 もーう、お金が欲しくて、しょーがないんですなあ。 しかしねえ。 富士山は、世界遺産にならなくても、十二分に、国際的知名度は高いと思いますよ。 今でさえ、登山者が行列する山なのに、これ以上、人を増やして、どうすんねん? 申請が通った今になって、「入山規制の検討を」なんて言ってますが、本末転倒にも限度というものがあります。


  話を戻します。 三保の松原を後にした私は、清水の街を通って、国道一号に戻り、後は、ノンストップで、沼津へ帰って来ました。 3時20分くらいに、家に到着。 走行距離は、約140キロでした。 このくらいのツーリングなら、体力を使いきらなくて、宜しいです。

  この日は、日本平で炭酸飲料を飲んだ以外は、何も口に入れませんでした。 前に行った時には、動物園に入る前に、コンビニでパンを買って行って、園内で食べたんですが、時間が早過ぎて、腹も減っていないのに、無理に食べたような記憶があり、今回はそれを避けたら、昼飯を食べる機会を逸したという次第。 まあ、休日の事ですし、一食くらい抜いても、何の問題もありゃしません。


  以下、写真で、紹介。 動物園の方は、文章の中に写真を挟みましたが、あの方式は、改行の按配が複雑になって、えらい疲れるんですわ。 やはり、写真は写真で、後ろに纏めてしまった方が、楽です。


 ↑ ≪日本平≫の駐車場。 広すぎて、写し切れません。


 ↑ 駐車場の中にある石碑。 紛らわしいですが、ここは展望台ではなく、単に、「日本平に来たよ」という証拠写真を撮るための場所。


 ↑ 童謡、≪赤い靴≫の女の子の母子像。 なぜ、こんな所にあるかというと、モデルになった女の子が清水の出身だったから。


 ↑ 日本平に立つ、テレビ塔。 巨大です。 たぶん、我が家のテレビも、このアンテナのご厄介になっておるのでしょう。


 ↑ これが、日本平の展望台。 駐車場から、坂道を登って、8分くらいで着きます。


 ↑ 展望台から、東北東を見た景色。  清水区街と三保半島が見えます。 左上の雲が引っかかっているのが、富士山。 その右の山が、愛鷹山。


 ↑ 駐車場の自動販売機で買った、ダイドーの≪ミスティオ≫。 貧乏性のせいで、夏場、出先で、何か買って飲む時には、必ず、炭酸の500ccを選んでしまいます。


 ↑ ≪日本平パークセンター≫。 この建物の続きで、ロープウェイの発着場があります。


 ↑ ≪久能山東照宮≫と結ぶ、ロープウェイの箱。 三つ葉葵の御紋が・・・。


 ↑ ≪恋人の聖地 日本平 絆の鍵≫。 こういうの、あちこちにありますな。 こんな下らない事に使ったのでは、南京錠が勿体無いです。 恐らく、この内の9割は、その後、別れているでしょう。


 ↑ ≪三保の松原≫の売店。 駐車場は、ここよりも、手前にあります。 ここから先は、すぐに松原で、浜辺まで歩いても、5分程度。


 ↑ ≪新・羽衣の松≫。 大き過ぎて、縦でも横でも、画面に収まりきりません。 こんなに育ってから、代を譲られると、松も、こそばゆいでしょうなあ。


 ↑ 先代の≪羽衣の松≫。 なるほど、枯れてしまったんですな。 ロケーション的には、こちらの方が、絵になるポイントにあります。


 ↑ 先代、羽衣の松の近くにあった、≪羽車神社≫。 羽車? 羽衣ではないの?


 ↑ 初めて見た、赤潮。 生々しい色でした。 砂は、灰色で、沼津の海岸と同じような感じでした。 火山噴出物ですかね。


 ↑ 三保の松原から見る、富士山。 遠いのう。 こまいのう。 「富士山から、離れ過ぎている」と指摘されても、致し方ないですか。