映画批評⑩
≪ドクトル・ジバゴ≫は、何とか返却期限までに読み終えました。 いやあ、久しぶりに、手こずった小説だった。 今にして思えば、詩人の書いた長編小説というだけで、読む前に用心しなければいけなかったわけですが、そもそも、パステルナークが詩人だという事も知らなかったのですから、こりゃもう、仕方ありませんな。
で・・・、そこで懲りて、読書からは暫く遠ざかっておけば良かったものを、≪ジバゴ≫を返しに行った時、つい、ふらふらと、世界文学全集の書架を見に行ったら、ドストエフスキーの≪悪霊Ⅰ≫が戻ってるじゃありませんか。 今まで、1ヵ月以上、不在で、てっきり、借りパクされたものと思っていたのに。
「これは、今借りなければ、次は、いつ読めるか分からんぞ!」と、尻に火が点いた心境に陥り、ついつい、借りて来てしまいました。 今回は、二週間で読み終えられるように、≪Ⅰ≫だけに押さえておきました。 なーに、≪Ⅰ≫を借りてしまえば、≪Ⅱ≫から読み始める人は、皆無とは言えぬまでも、ほとんどおりますまい。
で、ですねー。 引き続き、読書中心の生活に入ってしまったので、またまた、ここの記事が書くゆとりが無いのですよ。 というわけで、またもや、映画批評です。 これだけは、出しきれぬほど、ストックがあるので・・・。
≪ストレンジャー・ザン・パラダイス≫ 1984年 アメリカ・西ドイツ
≪パーマネント・バケーション≫と同じ監督の作品で、相変わらず、何が言いたいのか分からないものの、こちらの方がまだ、ストーリーらしいものがあります。
ハンガリーからアメリカに来た従妹を、アパートに一週間泊めてやった男が、一年後、友人と二人で、クリーブランドの叔母の家まで、従妹に会いに行き、今度は三人で、フロリダへバカンスに向かう話。
車で旅行する場面が多いですが、ロード・ムービーというわけではなく、恋愛が匂わされるけれど、恋愛物でもなく、青春物というには、あまりにも退廃的雰囲気に満ちており、なんとも、ジャンル分けのしようがない映画です。 こういうのを見ると、映画にとって、いかにストーリーが大切かを痛感します。
もし、今後、見る機会があったとしても、わざわざ時間を割くような映画ではないのは、確か。 ただ、スカというわけではなく、独特の映像美が見られるのも、確か。
≪リオの嵐≫ 1965年 フランス
ほぼ、フランス版の≪007≫。 ただし、主人公を演じているのはアメリカ人俳優で、役柄は、CIAの情報員。 それでいて、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロが舞台なのに、全ての相手とフランス語で喋っているという、頭がキリキリして来るような複雑さ。
成分を注射すると、他人を自由に操る事ができる麻薬の出元をつきとめるため、ブラジルに飛んだCIAの腕利き情報員が、リオの街で秘密組織の殺し屋の襲撃を撃退した後、麻薬栽培の本拠地を潰そうと、アマゾンへ向かう話。
スパイ物は、大概、こんな感じですが、この映画は、≪007≫の完全なパクリです。 ≪ドクター・ノオ≫が62年、≪ロシアより愛をこめて≫が63年、≪ゴールドフィンガー≫が64年と、立て続けのヒットを横目に見て、類似作品を企画したのでしょう。
パクリと分かっていても、リオの街での殺し屋達との戦いは、洒落ていて面白いです。 アマゾンの秘密基地に行くと、急に子供っぽくなり、日本の変身ヒーロー物のレベルに落ちてしまいます。
≪クラッシュ≫ 2004年 アメリカ
人種差別をテーマにした群像劇。 主要登場人物は、10人くらい出て来ますが、誰が中心というわけではありません。 サンドラ・ブロックさんが出てますが、驚くほどのちょい役なので、要注意。 友情出演なんですかね?
舞台はロサンゼルスで、人種差別が原因の犯罪や、犯罪寸前のいざこざが、何件か起こります。 全てが一つの話に纏まって行くわけではありませんが、最低でも他の一つの事件とは関連しています。 もっと、緊密に絡め合う事もできると思うのですが、恐らく、ストーリー展開で、あっと驚かせるような、軽いノリの話にしたくなかったのでしょう。
テーマが重くて、しかも、ハッピーエンドばかりではないので、後味は悪いです。 最も印象に残るのは、ヨーロッパ系の警官が、セクハラまで加えて侮辱したアフリカ系女性を、後日、転倒した車の中から、命懸けで助け出す場面ですが、この警官を、どう評価すべきか、悩むところ。
「侮辱はしても、死にそうになっているのを見れば、助ける」と取るか、「命は助けるが、普段は侮辱して構わないと思っている」と取るか・・・。 侮辱もせずに、命も助ければ、それが一番だと思いますが。
≪ヴィクトリア女王 世紀の愛≫ 2009年 イギリス・アメリカ
大英帝国最盛期の女王、ビクトリアが、王位の筆頭継承者になってから、王位に着き、結婚して、最初の子供を産むまでを描いた映画。 原題の直訳は、≪若きビクトリア≫。 だから、それでいいってーのよ。
先代の王に子が無くて、弟の娘であるビクトリアが、筆頭になるのですが、その母は、ドイツの公爵家の出で、王位に着いた後、結婚する相手も、同じ公爵家の男。 つまり、ビクトリアの子供は、ドイツ人の血が4分の3という事になりますな。 濃いなあ。
歴史に興味がある人は、そこそこ楽しめると思いますが、映画としては、非常に平板なストーリーで、正直、退屈極まりないです。 王位に着くまでの間、ビクトリアは、母親の愛人の貴族と敵対しているのですが、互いに敵意むき出しで、一般家庭内のいがみ合いと、何の変わりもありません。 王家の話という感じがしないのですよ。
宮殿の中の様子も出て来ますが、フランスやロシアの宮殿に比べると、かなり地味なので、あまり期待しない方がいいです。 庭は綺麗。 だけど、あれは、フランス式庭園なんじゃないですかね?
≪コーチ・カーター≫ 2005年 アメリカ
サミュエル・L・ジャクソンさん主演のスポーツ物。 スポーツ物もスポーツ物、王道を行くような作品です。 駄目なチームが、ある事をきっかけに強くなるパターンの方ですが、これは、実話らしく、骨太な作りになっています。 同じ実話でも、≪おっぱいバレー≫とは、天地の差だね。
大学進学率よりも、犯罪者になる率の方が高い高校で、男子バスケット部の新しいコーチに就任した元名選手が、部員達に、猛練習と、猛勉強と、礼儀正しい態度を課す契約書を書かせ、若さゆえに脱線を繰り返す部員達を巧みに導きながら、州大会にまで進み、同時に、真っ当な人生を歩んで行く為の逞しさを授ける話。
部員の親や、高校バスケットのファン、地方のマスコミなどが、「バスケットさえ強ければ、他の事はどうでもいい」と見做しているのに対し、コーチは、「勉強ができなければ、大学に進めず、就職もできずに、犯罪者になってしまう」と、人生全体を考えているところが、好感が持てます。
「今が人生で一番輝かしい時、という子もいるのに」と言う校長に対し、「そういう考え方が、おかしいんじゃないですか?」と問い返すところが、実に小気味良い。 確かに、その通りで、高校時代に燃え尽きてしまったら、その後の人生が、残り滓みたいになってしまいます。
時間が長いせいで、後半、間延びが感じられますが、テーマがしっかりしているので、見終わった後には、清々しい印象だけが残ります。 それにしても、サミュエル・L・ジャクソンさんは、いい作品にばかり出ますねえ。 脚本を選ぶ眼力が優れているのでしょう。
≪オクテな僕のラブ・レッスン≫ 2012年 アメリカ
これは、≪Dlife≫で見たんですが、テレビ・ムービーだとの事。 だけど、俳優が有名な人なら、充分に、劇場用として通用する内容です。 なんだか、勿体無いねえ。
一度も女性にモテた事がない、真面目な会計士が、高校時代の女の同級生から、仕事として、デートの仕方のレッスンを受け、意中の女性と交際する事に成功するものの、やがて、師弟共に、自分にとって本当に大切なのは、誰なのかを知る話。
ウィル・スミスさん主演の2005年の映画に、≪最後の恋のはじめ方≫というのがあり、恋愛の仕方を教えるというアイデアは全く同じで、明らかに参考にしていると思うのですが、こちらは、男が男にではなく、女が男に教えるという形になっており、教えている内に、男が洗練されて行き、隠れた魅力にも気付いて、次第に惹かれて行くという流れが自然で、見事に換骨奪胎しています。
女の方が、高校時代は学校一の美女だったのに、社会人になってからはうまく行かず、姉の家に居候して、ウエイトレスのバイトで喰い繋いでいるという設定も、現実的で、宜しいです。 こういう、ちょっと惨めな状態からスタートさせれば、見る側は、「ああ、この人、成功して欲しいなあ」と、暖かい目で見てくれるのです。
≪ザ・ウォーカー≫ 2010年 アメリカ
デンゼル・ワシントンさん主演のSF。 文明が崩壊し、人類が激減した未来で、アメリカ大陸を西へ向かって歩く男が、ある本を持っていた事から、その本を手に入れて、勢力を広げようとする街のボスと、戦う羽目になる話。
世界設定としては、≪マッド・マックス2≫に近いです。 ただ、戦いは、素手、刀、自動小銃、手榴弾どまりで、それ以上、大掛かりにはなりません。 アクションも見せ場ですが、問題の本に纏わる謎というのが、話の肝でして・・・、いや、何の本かは、すぐに分かるのですが、ラストで、あっと驚くような仕掛けが施されていて、結構楽しめます。
SFとしては、格好だけという感じ。 問題の本が、ある特定の人達にしか価値が無いものなので、感慨も今一つというところ。 映像は、モノクロに見えるほど、濃いフィルターをかけてあって、独特の美があります。
≪ミュージック・オブ・ハート≫ 1999年 アメリカ
メリル・ストリーブさん主演。 亭主に逃げられて、息子二人を育てなければならなくなったバイオリン教師が、スラムの小学校で子供達にバイオリンを教えて、話題になり、10年後には、有名な大ホールで演奏会を開くようになる話。 実話のようですが、そういえば、似たような話を新聞記事で読んだような記憶があります。
スポーツ物と似たパターンの、音楽物というジャンルがありますが、≪天使にラブソングを≫辺りと比べると、えらく、しょぼい作りで、この映画を見ていても、バイオリンの素晴らしさに感じ入るような事はありません。 かなり安直な発想で企画した映画なんじゃないでしょうか。
主人公が、変な人で、亭主が浮気して逃げたのを非難しながら、自分はさっさと別の男を作っており、とても、よその子供に何かを教えられる資格がある人物とは思えません。 わざわざ、メリル・ストリーブさんを使うような役ではないと思うのですが、なんと、この映画で、アカデミー賞の主演女優賞を獲ったというから、笑ってしまいます。 アカデミー賞も、なかなか・・・。
≪フリーダム・ライターズ≫ 2007年 アメリカ
これは、骨太だな。 複数の人種を一つの学校に集める教育プログラムにより、荒れ放題になってしまった高校へ赴任して来た新人女教師が、身銭を切って、生徒に読ませる本を買ったり、ホロコーストを題材にして、人種間対立の原因を悟らせたりと、独特な手法でクラスを纏めて行く話。
人種間の対立が、子供の世界にまで浸透していて、高校生が銃を持ち歩いているばかりか、銃による襲撃が日常的に発生しており、正に戦争状態になっているのには驚かされます。 こんな状態で、よく生活してられますねえ。 といって、逃げ出したくても、みんな、そんなお金は無いんですが。
この、地獄のような境遇から、生徒を救い出し、立ち直らせようというのですから、教師・生徒共に、どえらい努力が必要なわけですが、本当にやってのけた人達がいるんですねえ。 これも、実話だそうです。
教師役は、≪ミリオンダラー・ベイビー≫の主人公をやった人。 しかし、この映画の主役は、生徒達というべきで、教師は仮の中心人物に過ぎません。 内容が充実している上に、後味も良いので、100点。
≪重力ピエロ≫ 2009年 日本
暗くて、重い話ですな。 加瀬亮さんと岡田将生さんが、兄弟役で、ダブル主演。 連続放火事件と、グラフィック・アート風の落書きの場所が連動している事に気づいた兄弟が、遺伝子を表す犯人のメッセージに気付き、元強姦魔の男が、弟の実の父親であると知った兄が、男の殺害計画を進める話。
こんな梗概では、わからんか・・・。 「連続放火は、どこへ行ってしまったのだ?」と思うでしょうが、いや、元々、連続放火事件は、話の枕に過ぎないので、どこかへ行ってしまってもいいんです。 この映画のテーマは、強姦魔の子供を堕胎せずに育てて生んだ両親と、当の子供、そして、その兄の心の葛藤を描く事にあります。
随分と重苦しいテーマで、見ていて、気分が沈んで来ます。 どーして、こういう話を、映画にしようと思うのか、そこが解せぬ。 こんなの、すっきりした結論なんて出るはずがないんですよ。 原作者や、映画の制作者が、胸糞悪くなるのは勝手ですが、映画を見る方にまで、その気分を押し付けるのは、やめて欲しいです。
普通の感覚なら、そういう事情で出来てしまった子供は、産まないでしょう。 一番、嫌な思いをさせられるのは、両親ではなく、当の子供なのであって、自分が存在する事を、自分で肯定できないというのは、正に、死ぬより苦しい責め苦だと思います。 しかも、死ぬまで終わりません。
両親にしてみれば、命の大切さを優先したと言うでしょうが、人生が地獄の苦しみになってしまう子供の立場に立って決断を下したとは、到底思えません。 両親の、ただの自己満足ではありませんか。 で、子供が、「それでも産んでくれて、良かった」と感謝したかというと、そんな事は無いのであって、案の定、死ぬより苦しい目に遭って、犯罪に走ってしまいます。
犯罪を見逃すような終わり方も、感心しません。 相手が人間のクズだからと言って、それを殺してしまったら、自分の罪が相手の罪を上回ってしまうではありませんか。 だからねー、映倫さんねー、こういう作品に、倫理上の問題点を指摘するのが、あなた方の仕事だとは思わんのかい?
≪めぐり逢えたら≫ 1993年 アメリカ
トム・ハンクスさん、メグ・ライアンさんのダブル主演。 一応、恋愛物なんですが、めぐり逢うところまでしか行かないので、厳密に言えば、恋愛きっかけ物とでもした方が、適切です。
妻に先立たれた悲しみを忘れる為に、幼い息子を連れて、シアトルに引っ越した男が、息子がラジオ番組に、父の再婚を願う相談電話をかけたために、全国から交際希望者が手紙を送りつけて来る厄介な事態になり、手っ取り早く、身近な知り合いと結婚してしまおうとするものの、息子は手紙をくれたニューヨークに住む女性が気に入っていて、何とか、父と引き合わせようと画策する話。
父と息子の思惑の違いから発生する騒動が、話の中心軸になっていて、恋愛物というよりは、親子物と言った方が、イメージはよく伝わると思います。 話の雰囲気が一番近いのは、≪クレーマー・クレーマー≫ですな。
ヒロインが、ラジオ番組を聴いただけで、相手の男に惹かれるというのが、かなり不自然な設定です。 しかも、このヒロイン、他の男と婚約したばかりで、親に紹介も済んでいるという状態でして、一体、どういうつもりなのか、首を傾げざるを得ません。
結局、その婚約は解消するのですが、そのタイミングが、婚約者が母親の指輪のサイズを直して贈ってくれた直後なのですから、こんなふざけた女も、珍しい。 「私はあなたに相応しくない女よ」などと言っていますが、こんないい加減な女は、世界中のどんな男にも相応しくないと思います。
男の方も男の方で、自分の方から声をかけて、デートして、いい雰囲気になっていた、インテリア・デザイナーの女性の方は、どうするつもりなんですかね? ついこないだまで、「死んだ妻以外の女性と暮らすなんて、考えられない」と言っていた男が、チャラいにも程があります。
主人公達の人格設定に失敗している為、「運命の出逢い」というテーマが、陳腐にしか聞こえません。 トム・ハンクスさんやメグ・ライアンさんを連れてくれば、どんな性格でも許されると思っているようですが、もちろん、そんな事は無いのであって、これはスカですな。
≪パニック・イン・ロンドン 人類SOS!襲いかかる肉食植物≫ 2009年 イギリス・カナダ
1962年の≪人類SOS!≫のリメイク。 ただし、劇場用ではなく、テレビ・ムービーだとの事。 186分もあるので、どーゆーこっちゃねん?と思っていたら、前後編に分かれていました。 たぶん、本国のテレビでは、二回に分けて放送したのでしょう。
宇宙から降り注ぐ光で、人類のほとんどが視力を失う中、人喰い植物のトリフィドが、飼育場から逃げ出し、僅かに残った、目が見える者達が、支配権を得ようとする男と戦いつつ、トリフィドを根絶する方法を探る話。
時間が長過ぎなのが致命的で、3時間以上、一つの話を続けて見させられたのでは、ダレるなという方が無理。 決して、手抜きはしていませんし、しょぼい映像も見られないのですが、残念ですな。 映画としては、≪人類SOS!≫の方が、ずっと、纏まりがいいです。
≪バグジー≫ 1991年 アメリカ
ラスベガスを作った男の実話。 第二次大戦中、ニューヨークから、勢力拡大のために、カリフォルニアに乗り込んできた、ギャングの小ボスが、砂漠以外何も無いラスベガスに目をつけ、合法カジノ付きのホテルを建設しようとする話。
こう書くと、事業家の話のように思えるかもしれませんが、主人公を始め、登場人物は、全てギャングで、完全なヤクザ映画です。 主人公一人だけでも、何人撃ち殺したか分かりませんが、こんな人間が罪に問われないというのですから、呆れた社会ですな。
すぐに怒り出す、怒ると簡単に人を殺す、妻子持ちのくせに、家を離れた途端に浮気して、悪い女に引っ掛かる、「ホテルは、100万ドルで出来る」と大口叩いておきながら、400万ドルも使って、まだ足りないなど、どーにもこーにもいい加減な男で、主人公なのに、共感できる所が一ヶ所もありません。 「凶暴な狂人」と評するのが、最も妥当。
そもそも、ラスベガスは、事業としては成功したかもしれませんが、破産者も無数に生んでいるのであって、人を迷わせ、世に害毒を垂れ流している悪の根城とも言えます。 そこを作った男を、プラス評価しろという方が無理ですな。
≪インクレディブル・ハルク≫ 2008年 アメリカ
≪ハルク≫の続編だそうですが、≪ハルク≫の方を見ていないので、比較はできません。 監督も主演も助演も変わっている様子。 この話、なんとなく、≪キングコング≫に似ていると感じたのは、私だけでしょうか・・・。
軍の研究で、ガンマ線を浴び、心拍数が一定値を超えると、緑色の肌をした巨人に変身する体質になってしまった科学者が、元の体に戻るため、彼を捕獲しようとする軍と戦いながら、治療方法を知っている学者の所へ向かう話。
ストーリーは、驚くほど単純で、とにかく、軍に捕まえられそうになった男が、怒ってハルクに変身し、軍を蹴散らすというパターンの繰り返しです。 怒らせなければ、変身しないのは分かっているのですから、居所を掴んだら、精神科医でも訪ねて行かせて、隙を見て麻酔弾で仕留めさせればよさそうなものですが、なぜか、武装兵士で襲いかかってばかりいます。 アホちゃうか?
一方的に強すぎるというのは、面白くないのですが、ハルクは、機関銃どころか、対戦車ロケットすらものともしないのですから、全く勝負にならず、ただ化け物が暴れているだけの単調な戦闘場面になっています。
≪華麗なるアリバイ≫ 2007年 フランス
アガサ・クリスティーの≪ホロー荘の殺人≫を、フランスで映像化したもの。 舞台はフランスに、登場人物はフランス人になり、出演者もフランスの俳優になっています。
上院議員の邸宅に招かれた、親戚・友人・知人達が、痴情絡みの複雑な人物相関を見せる中、色男の医者がプールサイドで射殺され、傍らで銃を持っていた妻が逮捕されるが、遺体から摘出された弾丸が、妻の持っていた銃と合わず、釈放されて、嫌疑が他の者へ移っていく話。
推理物なので、これ以上は書けません。 ポアロ物のドラマで、オリジナルを見ている人は、結構いるんじゃないでしょうか。 ただし、この映画では、ポワロに相当する探偵は出ておらず、事件は、なりゆきで解決されます。
見れないほど、つまらないわけではありませんが、人に薦めるほど、面白いとも言えず、クリスティーの作品を、わざわざ、フランス版にする必要があるのかどうか、そこからして解せないところです。
以上、15本まで。 最後のは、1月3日に書いた感想なので、ようやく、年を越した事になります。 まだまだ先は長い・・・。
で・・・、そこで懲りて、読書からは暫く遠ざかっておけば良かったものを、≪ジバゴ≫を返しに行った時、つい、ふらふらと、世界文学全集の書架を見に行ったら、ドストエフスキーの≪悪霊Ⅰ≫が戻ってるじゃありませんか。 今まで、1ヵ月以上、不在で、てっきり、借りパクされたものと思っていたのに。
「これは、今借りなければ、次は、いつ読めるか分からんぞ!」と、尻に火が点いた心境に陥り、ついつい、借りて来てしまいました。 今回は、二週間で読み終えられるように、≪Ⅰ≫だけに押さえておきました。 なーに、≪Ⅰ≫を借りてしまえば、≪Ⅱ≫から読み始める人は、皆無とは言えぬまでも、ほとんどおりますまい。
で、ですねー。 引き続き、読書中心の生活に入ってしまったので、またまた、ここの記事が書くゆとりが無いのですよ。 というわけで、またもや、映画批評です。 これだけは、出しきれぬほど、ストックがあるので・・・。
≪ストレンジャー・ザン・パラダイス≫ 1984年 アメリカ・西ドイツ
≪パーマネント・バケーション≫と同じ監督の作品で、相変わらず、何が言いたいのか分からないものの、こちらの方がまだ、ストーリーらしいものがあります。
ハンガリーからアメリカに来た従妹を、アパートに一週間泊めてやった男が、一年後、友人と二人で、クリーブランドの叔母の家まで、従妹に会いに行き、今度は三人で、フロリダへバカンスに向かう話。
車で旅行する場面が多いですが、ロード・ムービーというわけではなく、恋愛が匂わされるけれど、恋愛物でもなく、青春物というには、あまりにも退廃的雰囲気に満ちており、なんとも、ジャンル分けのしようがない映画です。 こういうのを見ると、映画にとって、いかにストーリーが大切かを痛感します。
もし、今後、見る機会があったとしても、わざわざ時間を割くような映画ではないのは、確か。 ただ、スカというわけではなく、独特の映像美が見られるのも、確か。
≪リオの嵐≫ 1965年 フランス
ほぼ、フランス版の≪007≫。 ただし、主人公を演じているのはアメリカ人俳優で、役柄は、CIAの情報員。 それでいて、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロが舞台なのに、全ての相手とフランス語で喋っているという、頭がキリキリして来るような複雑さ。
成分を注射すると、他人を自由に操る事ができる麻薬の出元をつきとめるため、ブラジルに飛んだCIAの腕利き情報員が、リオの街で秘密組織の殺し屋の襲撃を撃退した後、麻薬栽培の本拠地を潰そうと、アマゾンへ向かう話。
スパイ物は、大概、こんな感じですが、この映画は、≪007≫の完全なパクリです。 ≪ドクター・ノオ≫が62年、≪ロシアより愛をこめて≫が63年、≪ゴールドフィンガー≫が64年と、立て続けのヒットを横目に見て、類似作品を企画したのでしょう。
パクリと分かっていても、リオの街での殺し屋達との戦いは、洒落ていて面白いです。 アマゾンの秘密基地に行くと、急に子供っぽくなり、日本の変身ヒーロー物のレベルに落ちてしまいます。
≪クラッシュ≫ 2004年 アメリカ
人種差別をテーマにした群像劇。 主要登場人物は、10人くらい出て来ますが、誰が中心というわけではありません。 サンドラ・ブロックさんが出てますが、驚くほどのちょい役なので、要注意。 友情出演なんですかね?
舞台はロサンゼルスで、人種差別が原因の犯罪や、犯罪寸前のいざこざが、何件か起こります。 全てが一つの話に纏まって行くわけではありませんが、最低でも他の一つの事件とは関連しています。 もっと、緊密に絡め合う事もできると思うのですが、恐らく、ストーリー展開で、あっと驚かせるような、軽いノリの話にしたくなかったのでしょう。
テーマが重くて、しかも、ハッピーエンドばかりではないので、後味は悪いです。 最も印象に残るのは、ヨーロッパ系の警官が、セクハラまで加えて侮辱したアフリカ系女性を、後日、転倒した車の中から、命懸けで助け出す場面ですが、この警官を、どう評価すべきか、悩むところ。
「侮辱はしても、死にそうになっているのを見れば、助ける」と取るか、「命は助けるが、普段は侮辱して構わないと思っている」と取るか・・・。 侮辱もせずに、命も助ければ、それが一番だと思いますが。
≪ヴィクトリア女王 世紀の愛≫ 2009年 イギリス・アメリカ
大英帝国最盛期の女王、ビクトリアが、王位の筆頭継承者になってから、王位に着き、結婚して、最初の子供を産むまでを描いた映画。 原題の直訳は、≪若きビクトリア≫。 だから、それでいいってーのよ。
先代の王に子が無くて、弟の娘であるビクトリアが、筆頭になるのですが、その母は、ドイツの公爵家の出で、王位に着いた後、結婚する相手も、同じ公爵家の男。 つまり、ビクトリアの子供は、ドイツ人の血が4分の3という事になりますな。 濃いなあ。
歴史に興味がある人は、そこそこ楽しめると思いますが、映画としては、非常に平板なストーリーで、正直、退屈極まりないです。 王位に着くまでの間、ビクトリアは、母親の愛人の貴族と敵対しているのですが、互いに敵意むき出しで、一般家庭内のいがみ合いと、何の変わりもありません。 王家の話という感じがしないのですよ。
宮殿の中の様子も出て来ますが、フランスやロシアの宮殿に比べると、かなり地味なので、あまり期待しない方がいいです。 庭は綺麗。 だけど、あれは、フランス式庭園なんじゃないですかね?
≪コーチ・カーター≫ 2005年 アメリカ
サミュエル・L・ジャクソンさん主演のスポーツ物。 スポーツ物もスポーツ物、王道を行くような作品です。 駄目なチームが、ある事をきっかけに強くなるパターンの方ですが、これは、実話らしく、骨太な作りになっています。 同じ実話でも、≪おっぱいバレー≫とは、天地の差だね。
大学進学率よりも、犯罪者になる率の方が高い高校で、男子バスケット部の新しいコーチに就任した元名選手が、部員達に、猛練習と、猛勉強と、礼儀正しい態度を課す契約書を書かせ、若さゆえに脱線を繰り返す部員達を巧みに導きながら、州大会にまで進み、同時に、真っ当な人生を歩んで行く為の逞しさを授ける話。
部員の親や、高校バスケットのファン、地方のマスコミなどが、「バスケットさえ強ければ、他の事はどうでもいい」と見做しているのに対し、コーチは、「勉強ができなければ、大学に進めず、就職もできずに、犯罪者になってしまう」と、人生全体を考えているところが、好感が持てます。
「今が人生で一番輝かしい時、という子もいるのに」と言う校長に対し、「そういう考え方が、おかしいんじゃないですか?」と問い返すところが、実に小気味良い。 確かに、その通りで、高校時代に燃え尽きてしまったら、その後の人生が、残り滓みたいになってしまいます。
時間が長いせいで、後半、間延びが感じられますが、テーマがしっかりしているので、見終わった後には、清々しい印象だけが残ります。 それにしても、サミュエル・L・ジャクソンさんは、いい作品にばかり出ますねえ。 脚本を選ぶ眼力が優れているのでしょう。
≪オクテな僕のラブ・レッスン≫ 2012年 アメリカ
これは、≪Dlife≫で見たんですが、テレビ・ムービーだとの事。 だけど、俳優が有名な人なら、充分に、劇場用として通用する内容です。 なんだか、勿体無いねえ。
一度も女性にモテた事がない、真面目な会計士が、高校時代の女の同級生から、仕事として、デートの仕方のレッスンを受け、意中の女性と交際する事に成功するものの、やがて、師弟共に、自分にとって本当に大切なのは、誰なのかを知る話。
ウィル・スミスさん主演の2005年の映画に、≪最後の恋のはじめ方≫というのがあり、恋愛の仕方を教えるというアイデアは全く同じで、明らかに参考にしていると思うのですが、こちらは、男が男にではなく、女が男に教えるという形になっており、教えている内に、男が洗練されて行き、隠れた魅力にも気付いて、次第に惹かれて行くという流れが自然で、見事に換骨奪胎しています。
女の方が、高校時代は学校一の美女だったのに、社会人になってからはうまく行かず、姉の家に居候して、ウエイトレスのバイトで喰い繋いでいるという設定も、現実的で、宜しいです。 こういう、ちょっと惨めな状態からスタートさせれば、見る側は、「ああ、この人、成功して欲しいなあ」と、暖かい目で見てくれるのです。
≪ザ・ウォーカー≫ 2010年 アメリカ
デンゼル・ワシントンさん主演のSF。 文明が崩壊し、人類が激減した未来で、アメリカ大陸を西へ向かって歩く男が、ある本を持っていた事から、その本を手に入れて、勢力を広げようとする街のボスと、戦う羽目になる話。
世界設定としては、≪マッド・マックス2≫に近いです。 ただ、戦いは、素手、刀、自動小銃、手榴弾どまりで、それ以上、大掛かりにはなりません。 アクションも見せ場ですが、問題の本に纏わる謎というのが、話の肝でして・・・、いや、何の本かは、すぐに分かるのですが、ラストで、あっと驚くような仕掛けが施されていて、結構楽しめます。
SFとしては、格好だけという感じ。 問題の本が、ある特定の人達にしか価値が無いものなので、感慨も今一つというところ。 映像は、モノクロに見えるほど、濃いフィルターをかけてあって、独特の美があります。
≪ミュージック・オブ・ハート≫ 1999年 アメリカ
メリル・ストリーブさん主演。 亭主に逃げられて、息子二人を育てなければならなくなったバイオリン教師が、スラムの小学校で子供達にバイオリンを教えて、話題になり、10年後には、有名な大ホールで演奏会を開くようになる話。 実話のようですが、そういえば、似たような話を新聞記事で読んだような記憶があります。
スポーツ物と似たパターンの、音楽物というジャンルがありますが、≪天使にラブソングを≫辺りと比べると、えらく、しょぼい作りで、この映画を見ていても、バイオリンの素晴らしさに感じ入るような事はありません。 かなり安直な発想で企画した映画なんじゃないでしょうか。
主人公が、変な人で、亭主が浮気して逃げたのを非難しながら、自分はさっさと別の男を作っており、とても、よその子供に何かを教えられる資格がある人物とは思えません。 わざわざ、メリル・ストリーブさんを使うような役ではないと思うのですが、なんと、この映画で、アカデミー賞の主演女優賞を獲ったというから、笑ってしまいます。 アカデミー賞も、なかなか・・・。
≪フリーダム・ライターズ≫ 2007年 アメリカ
これは、骨太だな。 複数の人種を一つの学校に集める教育プログラムにより、荒れ放題になってしまった高校へ赴任して来た新人女教師が、身銭を切って、生徒に読ませる本を買ったり、ホロコーストを題材にして、人種間対立の原因を悟らせたりと、独特な手法でクラスを纏めて行く話。
人種間の対立が、子供の世界にまで浸透していて、高校生が銃を持ち歩いているばかりか、銃による襲撃が日常的に発生しており、正に戦争状態になっているのには驚かされます。 こんな状態で、よく生活してられますねえ。 といって、逃げ出したくても、みんな、そんなお金は無いんですが。
この、地獄のような境遇から、生徒を救い出し、立ち直らせようというのですから、教師・生徒共に、どえらい努力が必要なわけですが、本当にやってのけた人達がいるんですねえ。 これも、実話だそうです。
教師役は、≪ミリオンダラー・ベイビー≫の主人公をやった人。 しかし、この映画の主役は、生徒達というべきで、教師は仮の中心人物に過ぎません。 内容が充実している上に、後味も良いので、100点。
≪重力ピエロ≫ 2009年 日本
暗くて、重い話ですな。 加瀬亮さんと岡田将生さんが、兄弟役で、ダブル主演。 連続放火事件と、グラフィック・アート風の落書きの場所が連動している事に気づいた兄弟が、遺伝子を表す犯人のメッセージに気付き、元強姦魔の男が、弟の実の父親であると知った兄が、男の殺害計画を進める話。
こんな梗概では、わからんか・・・。 「連続放火は、どこへ行ってしまったのだ?」と思うでしょうが、いや、元々、連続放火事件は、話の枕に過ぎないので、どこかへ行ってしまってもいいんです。 この映画のテーマは、強姦魔の子供を堕胎せずに育てて生んだ両親と、当の子供、そして、その兄の心の葛藤を描く事にあります。
随分と重苦しいテーマで、見ていて、気分が沈んで来ます。 どーして、こういう話を、映画にしようと思うのか、そこが解せぬ。 こんなの、すっきりした結論なんて出るはずがないんですよ。 原作者や、映画の制作者が、胸糞悪くなるのは勝手ですが、映画を見る方にまで、その気分を押し付けるのは、やめて欲しいです。
普通の感覚なら、そういう事情で出来てしまった子供は、産まないでしょう。 一番、嫌な思いをさせられるのは、両親ではなく、当の子供なのであって、自分が存在する事を、自分で肯定できないというのは、正に、死ぬより苦しい責め苦だと思います。 しかも、死ぬまで終わりません。
両親にしてみれば、命の大切さを優先したと言うでしょうが、人生が地獄の苦しみになってしまう子供の立場に立って決断を下したとは、到底思えません。 両親の、ただの自己満足ではありませんか。 で、子供が、「それでも産んでくれて、良かった」と感謝したかというと、そんな事は無いのであって、案の定、死ぬより苦しい目に遭って、犯罪に走ってしまいます。
犯罪を見逃すような終わり方も、感心しません。 相手が人間のクズだからと言って、それを殺してしまったら、自分の罪が相手の罪を上回ってしまうではありませんか。 だからねー、映倫さんねー、こういう作品に、倫理上の問題点を指摘するのが、あなた方の仕事だとは思わんのかい?
≪めぐり逢えたら≫ 1993年 アメリカ
トム・ハンクスさん、メグ・ライアンさんのダブル主演。 一応、恋愛物なんですが、めぐり逢うところまでしか行かないので、厳密に言えば、恋愛きっかけ物とでもした方が、適切です。
妻に先立たれた悲しみを忘れる為に、幼い息子を連れて、シアトルに引っ越した男が、息子がラジオ番組に、父の再婚を願う相談電話をかけたために、全国から交際希望者が手紙を送りつけて来る厄介な事態になり、手っ取り早く、身近な知り合いと結婚してしまおうとするものの、息子は手紙をくれたニューヨークに住む女性が気に入っていて、何とか、父と引き合わせようと画策する話。
父と息子の思惑の違いから発生する騒動が、話の中心軸になっていて、恋愛物というよりは、親子物と言った方が、イメージはよく伝わると思います。 話の雰囲気が一番近いのは、≪クレーマー・クレーマー≫ですな。
ヒロインが、ラジオ番組を聴いただけで、相手の男に惹かれるというのが、かなり不自然な設定です。 しかも、このヒロイン、他の男と婚約したばかりで、親に紹介も済んでいるという状態でして、一体、どういうつもりなのか、首を傾げざるを得ません。
結局、その婚約は解消するのですが、そのタイミングが、婚約者が母親の指輪のサイズを直して贈ってくれた直後なのですから、こんなふざけた女も、珍しい。 「私はあなたに相応しくない女よ」などと言っていますが、こんないい加減な女は、世界中のどんな男にも相応しくないと思います。
男の方も男の方で、自分の方から声をかけて、デートして、いい雰囲気になっていた、インテリア・デザイナーの女性の方は、どうするつもりなんですかね? ついこないだまで、「死んだ妻以外の女性と暮らすなんて、考えられない」と言っていた男が、チャラいにも程があります。
主人公達の人格設定に失敗している為、「運命の出逢い」というテーマが、陳腐にしか聞こえません。 トム・ハンクスさんやメグ・ライアンさんを連れてくれば、どんな性格でも許されると思っているようですが、もちろん、そんな事は無いのであって、これはスカですな。
≪パニック・イン・ロンドン 人類SOS!襲いかかる肉食植物≫ 2009年 イギリス・カナダ
1962年の≪人類SOS!≫のリメイク。 ただし、劇場用ではなく、テレビ・ムービーだとの事。 186分もあるので、どーゆーこっちゃねん?と思っていたら、前後編に分かれていました。 たぶん、本国のテレビでは、二回に分けて放送したのでしょう。
宇宙から降り注ぐ光で、人類のほとんどが視力を失う中、人喰い植物のトリフィドが、飼育場から逃げ出し、僅かに残った、目が見える者達が、支配権を得ようとする男と戦いつつ、トリフィドを根絶する方法を探る話。
時間が長過ぎなのが致命的で、3時間以上、一つの話を続けて見させられたのでは、ダレるなという方が無理。 決して、手抜きはしていませんし、しょぼい映像も見られないのですが、残念ですな。 映画としては、≪人類SOS!≫の方が、ずっと、纏まりがいいです。
≪バグジー≫ 1991年 アメリカ
ラスベガスを作った男の実話。 第二次大戦中、ニューヨークから、勢力拡大のために、カリフォルニアに乗り込んできた、ギャングの小ボスが、砂漠以外何も無いラスベガスに目をつけ、合法カジノ付きのホテルを建設しようとする話。
こう書くと、事業家の話のように思えるかもしれませんが、主人公を始め、登場人物は、全てギャングで、完全なヤクザ映画です。 主人公一人だけでも、何人撃ち殺したか分かりませんが、こんな人間が罪に問われないというのですから、呆れた社会ですな。
すぐに怒り出す、怒ると簡単に人を殺す、妻子持ちのくせに、家を離れた途端に浮気して、悪い女に引っ掛かる、「ホテルは、100万ドルで出来る」と大口叩いておきながら、400万ドルも使って、まだ足りないなど、どーにもこーにもいい加減な男で、主人公なのに、共感できる所が一ヶ所もありません。 「凶暴な狂人」と評するのが、最も妥当。
そもそも、ラスベガスは、事業としては成功したかもしれませんが、破産者も無数に生んでいるのであって、人を迷わせ、世に害毒を垂れ流している悪の根城とも言えます。 そこを作った男を、プラス評価しろという方が無理ですな。
≪インクレディブル・ハルク≫ 2008年 アメリカ
≪ハルク≫の続編だそうですが、≪ハルク≫の方を見ていないので、比較はできません。 監督も主演も助演も変わっている様子。 この話、なんとなく、≪キングコング≫に似ていると感じたのは、私だけでしょうか・・・。
軍の研究で、ガンマ線を浴び、心拍数が一定値を超えると、緑色の肌をした巨人に変身する体質になってしまった科学者が、元の体に戻るため、彼を捕獲しようとする軍と戦いながら、治療方法を知っている学者の所へ向かう話。
ストーリーは、驚くほど単純で、とにかく、軍に捕まえられそうになった男が、怒ってハルクに変身し、軍を蹴散らすというパターンの繰り返しです。 怒らせなければ、変身しないのは分かっているのですから、居所を掴んだら、精神科医でも訪ねて行かせて、隙を見て麻酔弾で仕留めさせればよさそうなものですが、なぜか、武装兵士で襲いかかってばかりいます。 アホちゃうか?
一方的に強すぎるというのは、面白くないのですが、ハルクは、機関銃どころか、対戦車ロケットすらものともしないのですから、全く勝負にならず、ただ化け物が暴れているだけの単調な戦闘場面になっています。
≪華麗なるアリバイ≫ 2007年 フランス
アガサ・クリスティーの≪ホロー荘の殺人≫を、フランスで映像化したもの。 舞台はフランスに、登場人物はフランス人になり、出演者もフランスの俳優になっています。
上院議員の邸宅に招かれた、親戚・友人・知人達が、痴情絡みの複雑な人物相関を見せる中、色男の医者がプールサイドで射殺され、傍らで銃を持っていた妻が逮捕されるが、遺体から摘出された弾丸が、妻の持っていた銃と合わず、釈放されて、嫌疑が他の者へ移っていく話。
推理物なので、これ以上は書けません。 ポアロ物のドラマで、オリジナルを見ている人は、結構いるんじゃないでしょうか。 ただし、この映画では、ポワロに相当する探偵は出ておらず、事件は、なりゆきで解決されます。
見れないほど、つまらないわけではありませんが、人に薦めるほど、面白いとも言えず、クリスティーの作品を、わざわざ、フランス版にする必要があるのかどうか、そこからして解せないところです。
以上、15本まで。 最後のは、1月3日に書いた感想なので、ようやく、年を越した事になります。 まだまだ先は長い・・・。
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