2013/06/23

映画批評⑭

  うーむ、気が滅入る・・・。 連日の雨のせいか、仕事のパターンの変更が近付いていて、その不安があるせいか、原因は定かでありませんが、何もする気になりません。 というわけで、今週も、映画批評でやっつけさせていただきます。

  バイク通勤なので、雨が続くと、マジ、げんなりして来るのですよ。 合羽の乾く暇が無く、また雨に濡れるものだから、防水能力が落ちて、下に来ている上着まで、水がしみ通って、不快だったらありゃしない。 私は、透湿繊維の合羽を使っているのですが、そろそろ、寿命なのかもしれません。 ゴアなら、かなり長持ちするんですが、透湿繊維は、一度大雨を喰らって、突破されると、次からは、ガクンと防水性が落ちて、回復しない傾向があります。

  仕事の内容が変わるのが、また、憂鬱な話で・・・。 ご存知の通り、製造業は、国内工場が軒並み赤字を垂れ流しておるせいで、派遣社員や期間社員をクビにしたり、正社員でも、、他工場へ応援に出したり、2直のところを1直にしたりと、どこも苦しいわけですが、私の勤め先も例外ではなく、人のやりくりの関係で、ライン・タクトの変更が頻繁にあり、そのつど、作業が増えたり減ったり、部品棚の作り直しをしたりせねばならんので、大変なのです。

  ちょっと考えてみれば、タクト変更が、一番、費用がかかるのであって、やればやるほど、赤字が膨らむのですが、上の方が馬鹿なので、そんな計算も出来ない有様。 いや、計算以前に、感覚で分かりそうなもの。 仕事が減ったら、定時前で終わりにして、その分、給料を減らせばいいのですが、なぜやらぬ? 自分達は、どうせ、ラインと関係なく、好きなだけ遊び残業して帰るのだから、いいではないか。 ほんま、アホちゃうか?

  まあ、愚痴はこのくらいにして、映画批評を・・・。



≪グラスハウス2≫ 2006年 アメリカ
  ≪グラスハウス≫の続編みたいな名前ですが、登場人物も制作スタッフも、全く違う映画です。 ≪グラスハウス≫は、ガラスが多用された家で起こるサスペンスでしたが、こちらでは、ガラスの家ではなくなっていて、タイトルを継ぐ理由は、尚の事、希薄。

  両親を事故で亡くした姉弟が、同じく子供を事故で亡くした夫婦の家に、養子として引き取られるが、外出は禁じる、変な物は喰わせる、逆らうと殴るといった、養母の異常さに耐えかねた姉が、弟を連れて、脱出を試みる話。

  パート2で、出演者が総入れ替えされると、大抵、二流映画に落ちるものですが、これは例外。 ガラスの家ではないけれど、十二分に怖いです。 とりわけ、養母の怖さが無類。 目つきからして、狂っているのは明らかで、≪ミザリー≫並みに、背筋を凍らせてくれます。


≪グランド・ホテル≫ 1932年 アメリカ
  ベルリンの高級ホテルで、偶然出逢った泊り客達が見せる群像劇。 有名どころというと、グレタ・ガルボさんが、バレエのプリ・マドンナ役で出ています。

  合併交渉がうまく行かないと、お先真っ暗な繊維会社の社長。 その会社の従業員で、余命幾許も無いと宣告され、全財産を使ってしまおうとする男。 社長に雇われたタイピストの女。 落ち目のバレリーナ。 そのバレリーナから、真珠のネックレスを盗んで、借金を返そうとする自称男爵などが、登場人物。

  誰が中心というわけではありませんが、強いて言うなら、余命幾許もない男と、泥棒男爵の交友が軸になって、話が進んで行きます。 群像劇の教科書と言ってもいいくらい、それぞれのエピソードが、巧みに絡められています。

  1932年で、こういうレベルの高い作品が作られているというのは、驚き。 グレタ・ガルボさんが一応出ているものの、スターに頼らなくても、充分、見応えがある映画です。


≪ゴー・ファースト 潜入捜査官≫ 2008年 フランス
  ≪この愛のために撃て≫で、殺し屋役をやった、ロシュディ・ゼムさんが主演の刑事物。 この人、異様なほどに人相が悪いのですが、刑事と言われれば、刑事に見えてくるから不思議。

  潜入捜査官であるため、張り込みから外されていた男が、現場に出ていた上司や同僚を殺されてしまうが、その後、潜入した麻薬密売組織の中で、その犯人に出会い、復讐心を燃やす話。

  ドンパチもありますが、主な見せ場は、カー・アクションです。 ただし、カー・チェイスではなく、スペインからフランスへ麻薬を運んで走るだけ。 今や、カー・チェイスですら見飽きられているのに、ただ走るだけで面白くなるはずがなく、どーにも、盛り上がらない映画になっています。

  最先端の追跡システムを使い、狙撃チームやヘリまで繰り出す大掛かりな操作網を敷いているのに、なぜ、潜入捜査官が必要なのか、首を傾げたくなるところがあります。 クライマックスで、容疑者達を、あっさり撃ち殺してしまうのも、奇妙。 せっかく張った網の意味が無くなってしまうでしょうに。


≪第十七捕虜収容所≫ 1953年 アメリカ
  ビリー・ワイルダーさんが、監督・脚本・制作。 第二次世界大戦中のドイツの捕虜収容所を舞台にした群像劇ですが、ウィリアム・ホールデンさんが、一応、主演。

  連合軍の軍曹ばかりを集めた収容所の、ある営舎で、脱走計画がバレて、犠牲者が出たのをきっかけに、スパイ狩りが始まるが、捕虜や看守の間を器用に立ち回って、物資を溜め込んでいた男が疑われ、濡れ衣を晴らすために、本当のスパイを密かに捜す話。

  前半、コメディー調で進むのですが、ギャグ担当の二人組がしつこくて、些かうんざりします。 ところが、後半になって、スパイ捜しに軸が移ると、俄然、面白くなって来ます。 コメディー部分は、尺を伸ばすために入れたのだと思いますが、もうちょっと、洒落ていればねえ・・・。

  「全員が軍曹」というのが、味噌でして、階級差が無いので、学校の同級生同士のつきあいのような、気安い雰囲気が醸し出されています。 それが原因で、喧嘩も起こるのですが、喧嘩は、この話には無くてはならないので、実に好都合。

  捕虜収容所物というと、≪大脱走≫が、真っ先に思い浮かびますが、この映画は、その10年前に作られたもの。 たぶん、相当な影響を及ぼしたものと思われます。


≪ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ≫ 2009年 日本
  太宰治原作。 浅野忠信さんが、太宰自身がモデルの、夫役。 松たか子さんが、その妻役。 「ヴィヨン」というのは、フランスの放蕩詩人の名前そうですが、作品の内容とは、ほとんど関係無し。

  人気作家のくせに、素行不良の夫が、さんざんツケを溜めている飲み屋から、金を盗むが、それを弁済するために、その飲み屋で働き出した妻を尻目に、夫は他の女と心中未遂をしでかし、いよいよ夫婦の危機に直面する話。

  ・・・暗いです。 話も暗ければ、映像も暗い。 戦後間もない頃の時代ですが、こうまで暗くする必要があるのか、疑問を感じずにいられません。 極端な事を言うと、映像無しで、真っ黒な画面に音声だけ流しても、イメージ的に大差無い感じ。

  話も古臭くてねえ・・・。 夫婦の危機というのは、普遍的テーマのようでいて、その実、最もつまらん題材でもあり、「そんなに嫌なら、別れなよ」の一言で突き放したくなるところがあります。 これがもし、原作が書かれた当時に映画化されたのなら、それなりに意味はあったのでしょうが、21世紀になって作るような映画でもありますまい。

  セリフのセンスが古くて、貧乏人のくせに、妙に丁寧な言葉を使っており、明らかに不自然です。 原作に従わなくても、手を入れてしまって良かったと思うんですがね。 松たか子さんが、魅力的な事だけが、この映画の救い。


≪刑務所の中≫ 2002年 日本
  崔洋一さん監督、山崎努さん主演の、刑務所物。 刑務所物と言ったら、≪塀の中の懲りない面々≫が有名ですが、こちらは、原作者が別の人です。 当人の受刑経験を元に書いた点では同じ。 ただし、映画の出来は、こちらの方が、かなり上です。

  ミリタリー・マニアで、モデルガンを違法改造して懲役刑を受けた老人が、日高刑務所で過ごした日々を、刑務所内での決まりや、受刑者の生態を細々と紹介しながら、語る話。

  ≪塀の中・・・≫と違って、看守との対立や、暴力沙汰の喧嘩は起きず、劇的な展開は一切無いのですが、刑務所の実態そのものが興味深いために、十二分に面白いです。 主人公が、ポツポツと呟くように、女性的に語るナレーションが、雰囲気を柔らかくしていて、大変好ましい。

  刑務所生活は、食べ物も、娯楽も適度に用意されていて、ホームレスに比べたら、天国のようなものですし、その日暮らしのニートなどと比べても、まだずっと上に見えます。 特に食生活は、健康的、且つ、美味で、大変充実している様子。

  五人同室の雑居房より、懲罰用の独居房の方が、生活環境は落ち着いていているわ、仕事は単純作業で楽だわで、暮らし易いというのは、私もそうではないかと想像していたので、「やっぱりね」と納得した次第。 他人と雑居して、何の得があるのか、そちらの方が分かりません。

  唯一、娑婆より悪いのは、看守の命令は絶対で、しかも、軍隊調の厳しい管理を受ける事ですかね。 作業場で、床に落とした消しゴムを拾うのにも、独居房の中で、トイレを使うのにも、許可がいると言うから、度が過ぎています。


≪ハリウッドランド≫ 2006年 アメリカ
  テレビでスーパーマンを演じて人気スターになり、1959年に自殺したとされる、ジョージ・リーブスの死の真相を探る、探偵サスペンス。 リーブス役が、ベン・アフレックさん。 実質的主役の探偵役が、≪戦場のピアニスト≫の、エイドリアン・ブロディーさん。

  殺人ではないかという疑問を抱いて、捜査を進めていく探偵の話が主軸ですが、ジョージ・リーブスが、スーパーマンに出演し、辞める事になった経緯がもう一本の軸として、回想形式で挟み込まれます。 この構成が、ちと厄介で、ベン・アフレックさんも、エイドリアン・ブロディーさんも、誰もが知っている顔というわけではないので、どの場面が、どちらの話なのか混乱して、ストーリーを追うのに疲れを感じます。

  ラストも、大山鳴動鼠一匹という終わり方で、これまた、どっと疲れが・・・。 そもそも、いくら往年の人気スターとはいえ、もう半世紀も前の人物を取り上げて、死の真相がどうのこうのと言っても、見る方の興味を掻き立てられないでしょう。


≪パッセンジャーズ≫ 2008年 アメリカ
  アン・ハサウェイさん主演。 旅客機の墜落事故の生存者達を集め、話を訊いていたセラピストが、患者の一人と恋仲になる一方、他の患者達が一人ずつ姿を消し始め、事故の真相を隠蔽しようとする航空会社の仕業ではないかと疑うが、実は・・・という話。

  厳密に言えば、ホラーという事になるんでしょうが、見せ所は、サスペンス。 クライマックスが、サプライズになっていますが、ある映画と同じ仕掛けと言うと、全てバレてしまうので、書けません。 同類の映画は、他にも幾つか作られましたが、それらと同様、この映画も、あまりいい出来とは言えませんな。

  アン・ハサウェイさんの顔は、土砂崩れ進行中で、「君は美人だ」というセリフが出て来るにも拘らず、どう見ても、美人に見えないのが、厳しいところ。 中盤、恋愛展開の辺りで、えらく間延びしているのですが、恐らく、監督としては、主人公の美女としての魅力でもたせるつもりだったのでしょう。 目算狂いも甚だしい有様になっています。


≪シンプル・プラン≫ 1998年 アメリカ
  これは、凄い話だな。 異色作が多い、サム・ライミ監督の映画ですが、俗悪なところは全く無くて、ストーリー展開の妙で勝負している、真っ当な内容です。

  兄と、その友人と共に、森の中に入った男が、雪に埋もれた小型飛行機の中から、大量の札束を見つけ、ネコババして、山分けしようという話になるが、三人が三人とも、勝手な行動をとったため、互いに疑心暗鬼に陥り、悲惨な結果を招く話。

  兄は、ちょっと頭が足りず、その友人は、ろくでなし、というだけなら、主人公に共感できるのですが、この主人公も、結構いい加減、且つ、腹の黒い男で、割と早い段階で、三人全員を突き放して見る事ができるようになります。 話がどんどん、まずい方向へエスカレートしていくので、主人公の立場で見ていると、不安メーターの針が振り切ってしまいます。

  もしかしたら、こういうのを、本当のサスペンス映画と言うのかもしれませんな。 見る者の心を揺らしまくって、最後の最後まで、気を抜かせません。 ラストも皮肉で、善悪バランスも取れています。 たぶん、傑作。


≪トイレット≫ 2010年 日本・カナダ
  監督・脚本は日本人。 スタッフは、混合。 出演者は、もたいまさこさん以外は、カナダ人。 舞台は、カナダの町。 全編、英語で、日本語は、「ばーちゃん」くらいしか出て来ません。 もたいまさこさんは、クライマックスで、「モーリー! クール」と言う以外、一言も喋りません。

  三人の子供が、母親の死後、実家に戻って暮らす事になったものの、実家には、母親が日本から連れて来た、英語を全く解しない祖母がおり、始めは戸惑う三人だったが、次第に、祖母と意思疎通ができるようになり、家族として纏まって行く話。

  間に入る母親は一度も出てこないので、もろ日本人面の祖母と、もろカナダ人面の孫達に、血の繋がりがあるとはとても思えないのですが、それはまあいいとして、祖母があまりにも無愛想なため、「この人、居心地が悪いなら、どうして、日本に帰らないのかな?」と、首を傾げてしまいます。 国に関係なく、祖母というのは、孫に対して無愛想なものだと言ってしまえば、それはそうですが・・・。

  家族の絆が次第に深まって行く話なので、大概の人は、「いい映画だ」と感じると思いますが、日本人と外国人とでは、そう感じる程度に差が出ると思われます。 日本人には分かっても、外国人には、「???」なところが、相当あるのではないでしょうか。

  カナダの家に≪ウォシュレット≫が付いていない事で、祖母が不便をしているという設定があるのですが、孫の同僚のインド人青年の口を借りて、ウォシュレットを、「日本の誇るハイテク」と絶賛させているのには、赤面せざるを得ません。 これが、純然たる外国映画なら、問題はありませんが、監督・脚本は日本人なのであって、自分の国の習慣を自慢したいだけなのです。 こういう事を、合作映画でやるもんじゃありません。

  孫の内、次男が、ロボットのプラモデル・オタクというのも、違和感濃厚な設定です。 日本の文化常識が、カナダでも通用すると誤解している可能性あり。 向こうで、オタクと言ったら、普通、パソコンやインターネット系でしょう。 モデラーはいると思いますが、ロボットのプラモは作らないのでは?


≪エレジー≫ 2008年 アメリカ
  恋愛を身体的快楽としか考えていなかった年寄りの大学教授が、30歳も若い女子学生と関係を持ってから、恋愛観が変わりそうになるが、結婚を迫られる事を恐れて別れてしまい、二年後に再会した彼女は、癌を患っていて・・・、という話、

  一見、情感深い恋愛物のように見えますが、私に言わせると、「いい歳こいて、何をやってるんだ、この馬鹿ジジイは?」と、呆れてしまいます。 若い女を引っ掛けるジジイも醜ければ、そんなジジイに引っ掛けられる若い女も、同じくらい醜い。

  前半、ベッド・シーンが何度も出て来ますが、映像そのものよりも、こういう場面を見せ場にしようと考える制作者の感性に、吐き気がします。 どういうつもりなんでしょう? 自分が、若い女と、こういう事がしたいんでしょうかね? 何とも、下司な企画。 恥を知るべし。


≪ダンケルク≫ 1964年 フランス・イタリア
  ジャン・ポール・ベルモンドさん主演の戦争物。 些か分かり難いですが、たぶん、反戦のメッセージを込めるために作ったのだと思います。

  第二次大戦の初頭、ドイツ軍に追い詰められたフランス軍とイギリス軍が屯ろするダンケルクの海岸で、所属部隊からはぐれた兵士が、所在無いままに、自宅から逃げようとしない地元の娘を助けたり、船で脱出しようとしたりしつつ、戦争の理不尽さに打ちのめされて行く話。

  ベルモンドさんというと、アウトロー的なイメージがあるので、こういう真面目な役をやっていると、どこかで、とんでもない事をしでかすのではないかと思ってしまうのですが、この映画では、真面目なまま、最後まで行きます。

  ダンケルクの海岸と、そのちょっと沖合いまでが舞台の全てで、そこから逃げられずに、同じ所を行ったり来たりしている主人公の姿には、シュールな雰囲気が漂います。 まるで、悪夢でも見ているかのよう。

  ドイツ軍の砲撃・爆撃・機銃掃射が、何度も何度も繰り返されるのですが、全て、火薬爆発なので、大変な迫力。 こんなに爆発ばかりさせていたのでは、破片は飛び散らなくても、衝撃波でやられて、俳優やエキストラに、怪我人が出たのではありますまいか。

  エキストラの数が半端ではなく、ちょっとした場面なのに、背景の海岸を、何十人何百人という兵隊達が、ぞろぞろ移動していく様は、圧巻です。 一体、いくら金をかけたんでしょう。 傑作かどうかは別として、大作である事は確か。 ただし、反戦映画としては、主張が弱すぎるような気もします。


≪ピッチ・ブラック≫ 2000年 アメリカ
  ビン・ディーゼルさんが助演。 主演は、知らない女優さん。 宇宙物SF。 舞台は、どこかの恒星系の惑星で、まあ、≪エイリアン2≫と同じような趣向だと思えばいいです。

  航行中の事故で、砂漠の惑星に不時着した宇宙貨客船のパイロットと、生き残った乗客達が、22年に一度起こる日蝕の時だけ地上に出て来る肉食生物の襲撃をかわしつつ、救命艇で脱出を図ろうとする話。

  大きな惑星だというのに、宇宙船が不時着した場所と、22年前に地質調査に来ていた一行の宿営地が、歩いて行ける距離にあるというのは、随分なご都合主義です。 22年間、放置されていた救命艇が、バッテリーを入れ替えただけで、動くというのもねえ・・・。

  ビン・ディーゼルさんは、護送中の囚人の役で、ワルだけと、頼りになる男という設定。 しかし、この人が出ると、何となく、二流映画っぽくなってしまうのは、私の偏見でしょうか。

  闇の中を襲って来る生物は、明らかに、エイリアンとイメージがダブっていますが、あまりにも強過ぎて、怖さを通り過ぎており、ホラーとしては成立していません。 やはり、二流映画か・・・。


≪レア 魔性の肉体≫ 1998年 アメリカ
  ポルノみたいなタイトルですが、この映画、日本では公開されなかったそうで、ビデオ用の邦題のようです。 原題は、≪パルメット≫で、これは、そういう名前の椰子の事だそうですが、サウスカロライナ州の別名でもあるとかで、たぶん、そっちの意味でしょう。

  刑務所から突然、釈放された元記者が、金と美女に釣られて、偽装誘拐の片棒を担ぐ事になるが、誘拐した金持ちの娘が、何者かに殺されてしまい、罠にかけられたと気づくものの、主犯に死体の始末をさせたと思ったら、それもまた罠で、どんどんまずい立場に追い込まれて行く話。

  出演俳優が知名度に欠ける点を除けば、「なぜ、これを公開しなかった?」と驚くほど、よく出来たストーリーです。 サスペンスだなあ、これは。 主人公を騙す役で、色っぽい女が出て来ますが、エロ・シーンはほんのちょっとで、邦題は、完全に的外れです。 いつものこってすが・・・・。

  主人公の男は、元記者とは思えないくらい、軽薄で、自ら墓穴を掘り続けているように見えるのですが、あまりのアホさに呆れて、突き放したくなる前に、話がグイグイ動いて、クライマックスまで、一気に連れて行かれてしまいます。

  後半のサプライズが二段構えになっていて、一発目で、「おっと、危ない。 騙されるところだったぜ」と思って、体勢を立て直そうとしている矢先に、二発目を喰らって、絶句させられます。 見ている方がこの様では、主人公だけをアホ扱いするわけにも行きません。


≪嘆きのテレーズ≫ 1952年 フランス
  原作は、エミール・ゾラの小説。 しかし、映画の方も、もはや古典的名作と化していますな。 原作が書かれたのは、1867年ですが、映画は、1952年現在の話に変えられています。 それでも、今から見ると、古過ぎるくらいに古いですけど。

  両親を早く失い、リヨンで生地屋を営む叔母に引き取られて、その息子と結婚し、不遇な生活を送っていた女が、ある時現れたトラック運転手と恋に落ち、離婚を承知しない夫とパリに旅行に行く事になるが、その列車に、トラック運転手も乗り込んできて、揉めた弾みで、夫を・・・、という話。 後半は、サスペンスになるので、これ以上、書けません。

  原作は読んでいないのですが、映画を見る限りでは、大変、よく出来た話で、名作の殿堂入りするのも、充分に頷けます。 特に、皮肉なラストが、どうにもならない虚しさの余韻を残していて、素晴らしいです。 似たようなラストは、松本清張さんの作品にもありましたが、もちろん、こちらが本家でしょう。

  しかし、話の出来はそれとして、不倫物には、素直に主人公に共感できないところが、どうしてもありますねえ。 こんな亭主、こんな姑では、嫌になるのも当然ですが、それなら、結婚する前に、断ってしまえばよかったのに。 主人公の内向きな性格が招いた境遇であり、不倫以降の悲劇も、起こるべくして起こったという気がします。



   以上、15本まで。 1月24日から、2月1日までに見た分です。 あれ? また、進みが遅くなったかな? うぬぬぬ、結局、全部、紹介するのは無理なのか。 3月以降になれば、ロシア文学を読み始めるので、映画の本数は減るのですがね。