2019/01/06

木目病

  「木目病」なんて病気はありません。 私が作った言葉です。 「車の内装部品を、次々に木目調部品に交換したくなる」という、心の病を指します。 私自身、一時期、かなり重篤な症状が出ていたのですが、今は、だいぶ、良くなりました。 時間が経つと良くなるという事は、精神的中毒の一種なんですかねえ。




  そもそも、なぜ、木目調部品に換えたくなるのか? 私の場合、「エアコン吹き出し口にキズがついていて、同じ部品が安く手に入らないから、ヤフオクで出回っている木目調部品に換えてしまおう」というものでしたが、それは、あくまで、きっかけに過ぎず、一度、換えたいと思ってからは、「木目調でなければ、換える意味がない」と思うようになりました。

  「自分の乗っている車種の高級グレードに、木目調部品が使われていて、そのグレードに見せかけたいから」というのは、特殊なケースで、普通は、もっと漠然と、「高級な雰囲気か欲しいから」というのが、最大の動機だと思います。 大まかに言って、2000年以前の車は、ダッシュボードやパネルの色が暗くて、気が滅入るところがあり、木目調部品を入れれば、それが、随分と和らぐというのが、第二の理由では?

  ところがだ。 木目調部品の種類が、幾つかある場合、どこまで換えるかが、大きな問題になります。 その前に、ちょっと、参考までに、どのくらいの木目調部品があるのか、例を挙げておきましょう。 セルボ・モード(含クラシック)の場合、私が調べた限り、以下の種類があります。

○ エアコン吹き出し口 中央
○ エアコン吹き出し口 左右
× ハンドル・ホーン・パッド
○ メーター枠
△ オーディオ枠
△ セレクト・レバー・ベース・カバー
× アナログ時計
× パワー・ウインドウ・スイッチ・ベース
× ドア・ベゼル

  ○は、すでに交換したもの。 △は、今後、ヤフオクに出てきたら、買って、交換するかも知れないもの。 ×は、交換したいと思っていないものです。 「パワー・ウインドウ・スイッチ・ベース」や、「ドア・ベゼル」は、頻繁に手が触れる所なので、木目調部品にしても、使っている内に、塗装が剥がれてしまうと思うのですが、そんな所のもあるんですねえ。

  これら、存在する木目調部品を、全て手に入れて、付け換えたという人もいるのですが、その写真を見ても、どうにもこうにも、良いと思えません。 高級感が盛り上がるどころか、バラバラという感じで、逆に、寄せ集めの貧乏臭さが漂う始末。

  高級グレードに、標準装備で木目調部品が使われている車種の場合、内装担当のデザイナーが、バランスを考えて、どの部品を木目調にするか決めているから、あまり、おかしくはなりません。 一方、木目調部品が、オプションで用意されている車種の場合、内装担当デザイナーと、オプション担当デザイナーが違っていて、そもそも、木目調部品を使う事を前提とせずに、デザインされている内装に、無理やり、付ける格好になるから、バランスが崩れるのだと思うのです。

  私自身が、木目病に罹っていたので、木目調部品を増やしたいという人の気持ちは、痛いほど良く分かるのですが、実際、木目調部品フル装備の写真を見て、全く良いと思わないのだから、困ったものです。 何か、違うんですわ。 本来、木目調が合わない所に、木目調部品を付けてしまっている観あり。 増やせば増やすほど、高級感が上がるというわけではないのです。

  恐らく、それをやった人達も、同じように感じていたのでは? 初めは、一点か二点だったのが、他にも木目調部品があると知り、増やしてみたら、何となく、合わない。 「まだ、足りないからだろう」だろうと思って、土壺に嵌まる格好で、もっと増やして行ったら、高級感が出るどころか、どんどん、おかしくなってしまった。 そんなところだったのでは?

  「高級感を出す」という目標は追わない事にして、「ダッシュ・ボードの暗さを和らげる」という目標だけに絞るなら、一点、木目調部品にするだけでも、その効果はあります。 木目調でなくても、少し明るめの色に塗り替えるだけで、だいぶ、違って来ると思います。 元が黒づくめの場合、ほんの一部でも、外し易そうな部品を、グレーで塗れば、パッと明るい雰囲気になるんじゃないでしょうか。

  プラスチック部品に塗装する場合、紙鑢か布鑢をかけないと、塗料が乗らないと言われていますが、私が灰皿の前面板を塗った経験から言いますと、プラサフを吹いてから塗れば、割と普通に塗れます。 普段、触らない部品なら、剥がれて来るような事はなさそうです。  もちろん、内装部品を塗る場合、下塗りも、上塗りも、スプレーを使います。 手塗りじゃ、ボコボコよ。


  塗装の話になったので、ついでに書きますと、元から木目調になっている部品を買わなくても、今、車に付いている部品を外して、木目調に塗装するという手もあります。 塗料やニスなど、塗装用具は必要ですが、新たに部品を買わなくても済むから、安く上がるのは、確実なところ。

  しかし、一旦、そんな事を始めたら、どんな部品でも、木目調に出来るわけで、本当に、キリがなくなります。 一ヵ所うまく出来ると、味を占めてしまい、手段の目的化が起こって、デザインが合う合わないなど無関係に、片っ端から、木目調にして行くわけだ。

  ネットで検索すると、自分で木目調塗装をしたという車の写真を、いくらでも見る事ができますが、病膏肓、丸出しです。 そして、大概、出来がよくないです。 「どう見ても、木目に見えない」なんていうのは、まだマシな方で、模様も色も選択ミスで、高級感どころか、汚物にしか見えないという、ひどいのもありました。

  そういえば、実際の木から、木目を転写したという例も見ましたが、お世辞にも、綺麗な仕上がりとは言えず、本物の模様に拘った手間が、100パーセント、無駄になっただけという感じでした。

  「簡単ですよ。 あなたも気軽にやってみませんか」と書いておきながら、その人がやって見せている作例が、見るに耐えないというのは、どうにもこうにも、参考になりませんなあ。 つまるところ、やり方は簡単だけれど、巧く仕上げるには、相当な場数を踏まなければならない、そういうタイプの技能なんでしょう。


  あと、至って、根本的な問題として、「木目」と言いながら、実は、木目になっていない柄というのが、大変、多いです。 木目というのは、年輪の事で、切り方によって、いろんな形になるわけですが、どう見ても、年輪とは思えない柄があるのです。 というか、その方が多い。 では、何なのかと考えたら、大理石(マーブル)模様か、もしくは、琥珀(アンバー)模様が近いです。

  琥珀は元々、茶色っぽいですが、大理石模様であっても、薄い部分が茶色ならば、大抵の人は、木目模様として、認識します。 これは、概念レベルの勘違いで、不規則な模様で、茶色っぽければ、みんな、木目だと思ってしまうんですな。 年輪なんて、ありゃしないのに。 錯覚というのは、面白いものです。 それならば、最初から、木目を描こうなどと思わず、不規則な模様だけ、つけてやればいいんじゃないでしょうか。


  ところで・・・。 兵器系プラモデルの趣味がある人だと思うのですが、車の内装部品を迷彩に塗ったものを、ヤフオクに出品している人があり、驚いてしまいました。 内装を迷彩にしても、意味がないでしょうに。 そんなの、本物の軍用車両でも、やってませんぜ。 まあ、自分の車なら、何をやっても勝手ですけど、他人に売るとなると、話は変わって来ます。 全く同じ趣味の入札者が現れない限り、売れないと思いますが、それは、宝くじ並みの確率の低さだと思います。


  で、私の場合ですが、今のところ、「エアコン吹き出し口 中央・左・右」と、「メーター枠」の、4点で、とまっています。 前文で書いたように、「もっと、欲しい」という気持ちが薄くなっているのが現状。 しかし、その理由は、「オーディオ枠」と、「セレクト・レバー・ベース・カバー」が、ヤフオクに出て来ないからであって、もし、出て来たら、いとも容易に再発する恐れがあります。

  去年の10月22日に、メーター枠を交換し終わってからこっち、毎日、チェックしているのに、全く出て来ないのだから、出回っている数が、とことん、少ないんでしょうなあ。 セルボ・クラシックのオプションでは、無理もないか。 ところで、毎日、木目調部品をチェックしていると、何ヵ月も、全然売れる気配がない品を、毎日、リスト上のサムネイルで見る事になります。 セルボ・モードも、クラシックも、それだけ、車の数が減って、部品の買い手もなくなっているんでしょうねえ。