時代を語る車達 ⑫

≪日産・NV350キャラバン (5代目・キャラバン)≫
「キャラバン」という名前の車種は、昔からありましたが、2012年6月のフル・モデル・チェンジで、5代目になった時に、日産の他の商用車種との、シリーズ名の共通化から、「NV350キャラバン」に改名されていたのが、2021年10月のマイナー・チェンジで、ガソリン車が、「キャラバン」に戻り、2022年2月には、ディーゼル車も戻って、「NV350キャラバン」という名前は消滅したという、大変、ややこしい経緯があります。 写真の車は、「NV350キャラバン」時代のもの。
他のメーカーにも見られる傾向ですが、特に日産は、「車の名前を変えれば、売れ行きが良くなる」と、途轍もない思い違いをしている様子が濃厚に覗えます。 90年代まで使っていた車種名で、今 残っているのは、「スカイライン」と、「フェアレディZ」だけになってしまいましたが、名前を変えて売れ行きが伸びたかどうか、現在の日産の有様を見れば、明々白々。 「キャラバン」と言われれば、誰でも、どんな車か分かりますが、「NV350」なんて言われても、商用車だろうという事しか分かりません。
で、車そのものですが、私は、運転した事がなく、乗せてもらった事もなく、デザインしか分からないのですが、悪くはないですな。 日産の、より小さい商用車、「NV200バネット」や、「AD」に比べると、遥かに常識的なデザインで、好感がもてます。 しかし、ライバルの、トヨタ・ハイエースに比べると、話は変わって来て、ハイエースに、似過ぎています。 「サイズ一杯だから、全体のフォルムが似てしまうのは、やむをえない」という考え方もあるでしょうが、窓の切り方や、ライト類のデザインなどで、もう少し、独自性を出して欲しかったものです。 もっとも、ADのような非常識な個性なら、要りませんけど。
デザインから離れますが、こういう、仕事に使う車を買い、フルに活用している様子を見ると、いかにも、「働く自動車」という感じで、車にも、人にも、カッコ良さを感じますねえ。 遊びでスポーツ・カーに乗っている人間が馬鹿に見えてしまうのとは、対照的です。 畢竟、車は道具なのであって、使ってナンボのものなんですな。 「NV350キャラバン」時代の、「こっちは、プロ仕様」というテレビCMのコピーを覚えていますが、なかなか巧みに、顧客の心理を突いていたと思います。
≪トヨタ・プロボックス / トヨタ・5代目ハイエース≫
手前の黒い車は、トヨタの商用バン、「プロボックス」。 前期型は、2002年7月に登場し、2014年8月に、マイナー・チェンジして、このフロント・デザインになりました。 「プロボックス」と書きましたが、名前を確認して来ませんでした。 「サクシード」の可能性もあります。 マイナー・チェンジ後は、両車種の違いが、ほとんど、なくなったからです。
色が黒ですが、マイナー・チェンジ後の型には、乗用ワゴンの設定がないらしいので、商用バンなのでしょう。 ホイールが、シルバー塗装の鉄製なのも、それで頷けます。 履かせられるアルミ・ホイールは、いくらでもあると思いますが、この車は、鉄ホイールの方が、カッコよく見えます。
絶賛に値する、素晴らしいデザインだと思うのですが、どうして、この車を使って、タクシーをやらんかなあ。 わざわざ、セダン・ボディーを作る必要はないのであって、このまま、タクシー仕様に改造してしまえばいいのです。 大は小を兼ねるように、バンはセダンを兼ねられます。 ちなみに、かつて、トヨタで作っていた、タクシー専用セダンの、「コンフォート」と、車幅は同じです。 元が商用車だから、維持費も安いと思うのですがね。
とにかく、ジャパンタクシーは、勘弁してくれ。 見るに耐えん。 どうして、日本で、ロンドン・タクシーのパクリやねん? 憧れて真似るような、カッコいいもんかいな? ダサダサとしかとしか思えませんが。 ロンドン・タクシーをカッコいいと思う人が多ければ、とっくから、世界中で導入してますって。 運転手さんも、切り替えの時は、抵抗感が大きいだろうなあ。 仕事で乗る車だから、仕方ないと割り切るしかないのか・・・。
奥のハイエースは、2004年から売られている、5代目・現行車型。 21年間も作っているんですな。 もう、このサイズのワン・ボックス・カーとしては、独擅場でして、モデル・チェンジする必要がないのでしょう。 今後、変えたとしても、変わり映えがしないか、悪くなるだけなのでは?
全く古さを感じさせませんが、そもそも、ワン・ボックス・カーは、形に、時代の変化が出難くて、古くならないのです。 その上に、この型は、完成度が高いデザインだと思います。
モータリゼーション初期の、「国民車構想」ではありませんが、この手の車は、一サイズにつき、一車種あれば、充分な感じがしますねえ。 もはや、ハイエースがいいの、キャラバンがいいのと、拘る人もいないでしょう。 車に対する見方は、確実に変わりました。 本来、道具として作られた機械を、社会的身分を表そうとしたり、個性を表現したりする為に車種を選んでいたのが、間違っていたのです。 社会全体で起こしていた、錯覚だったのです。 畢竟、道具なんですよ、車というものの本質は。
≪ダイハツ・2代目ミライース≫
2017年5月から、現行で売っている車。 割と珍しいですが、白いのもあるんですな。 今、売られている軽自動車で、私が唯一、評価している車。 角ばった車は、過去にもありましたが、多面体デザインという点で、この車の独自性は、強烈です。 軽に限らず、今の日本車の中で、最も優れていると言ってもいいでしょう。
ライバルは、スズキの、「アルト」という事になりますが、巷で見かける数が段違いでして、こちらの方が、圧勝しています。 アルトと比べると、背を高くしたり、室内容積を大きく取ったりという考え方を、最初から捨てている点が、優れています。 スズキは、勘違いをしていると思うのですが、みんながみんな、室内が広い車を求めているわけじゃないんだわ。
天井が高くても、広い感じがするだけで、天井まで荷物を積む利用者は、ほとんど、いますまい。 背が高くなると、シートの座面も高くなるので、高齢者は、乗り下りがし難くなります。 低い方が、お尻を載せてから、足を入れるという乗り方ができるから、逆に好都合なのです。
ワン・ボックスは言うに及ばず、ハイト・ワゴンでも、トール・ワゴンでも、背が高過ぎ。 あんな、バーのスツールみたいなシートに座って、運転の楽しさなんて、感じられるものですか。 買う方も買う方で、車を、部屋だと思っているから、広い方がいいなどと考えるのです。 車は、乗り物だというのよ。
おっと、イースの批評から離れてしまいましたな。 このデザインには、もう一つ、優れた点があります。 それは、性別を選ばない事です。 男性が乗っていても、ちっとも、おかしくありません。 もちろん、女性にも似合います。 この車を選んでいる事で、運転者を、知性的に見せてくれます。
≪マツダ・4代目デミオ(MAZDA 2)≫
2014年9月から、現行車。 2019年7月から、日本国内での名前を、「MAZDA 2」に変更。 海外では、それ以前から、「MAZDA 2」で売られていました。 私としては、「デミオ」の方がいいと思うんですが。 どうこう言っても、記号の名前というのは、覚え難いものです。
この写真の車が、「デミオ」なのか、「MAZDA 2」なのかは、後ろを見なかったので、エンブレムを確かめて来ませんでした。 私は、デザインしか見ないので、どっちでも、同じですから。 ちなみに、この車は前期型で、今は、後期型に、マイナー・チェンジされています。 10年以上作っていても、古くなったと感じられないのは、元から、デザインが古風だからでしょう。
いいデザインだと思うのですが、新しい感じは、全くしません。 むしろ、レトロを感じます。 50年くらい前の、イギリス人が好みそうなデザインですな。 車のデザインというのは、モデル・チェンジを重ねて行く関係上、何かしら、新時代を感じさせるものが求められるのですが、それを、真っ向から否定しているのは、興味深い。 マツダ単独の戦略に過ぎないのか、はたまた、時代が変わって、車に新しさが求められなくなったから、こういう考え方が出て来たのか。
スズキから供給されている軽自動車を除けば、マツダの最小車種ですが、サイズも、排気量も、とっくから、リッター・カーのカテゴリーから食み出していて、かつての、「ファミリア」と変わらなくなっています。 一般的な家族で使うには、この車で充分。 誰でも、そう思うからか、この上の車種、「MAZDA 3」は、滅多に目にしません。
今回は、以上、5台まで。
いずれも、今年になってから、撮影したもの。 現行車の割合が多いのは、型落ちの車を見かける事が少なくなったからです。 どこでも、かしこでも、新しい車ばっかり。 どうしてそう、ポンポンと買い換えるかな? 私のセルボ・モードなんて、27年目ですが、まだ充分 走りますよ。 そこまで粘らないとしても、15年くらいは、無理なく乗れると思うのですがねえ。
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