2007/01/21

物欲輪廻

  折り畳み自転車を買うべきか買わぬべきか、悩み続けてかれこれ一ヶ月。 候補は幾つか決まり、お金を持って店まで出向いた事もあるのですが、どうにも最後の思い切りがつきません。 最近は、何が私をこんなに苦しめるのか、そちらの方が気になってきました。 どうも私は、折り畳み自転車そのものが欲しいわけではないようです。

  私は吝嗇家なので、値段は大きな要素ですが、こと折り畳み自転車に関しては、値段をあまり気にしていない事に気付きました。 候補の三車種の内、鉄製二台は一万円弱、アルミ一台は二万円弱で、ほぼ二倍の開きがありますが、それが理由でアルミを候補から外した事はありません。 アルミには軽いという決定的な利点があり、腰痛持ちの私としては、お金には代えられない魅力があるからです。 ではアルミにすればいいではないかと思うでしょうが、他の障碍が私を思い止まらせるのです。 そのアルミの車種は、スポーツ系のデザインが施されていて、サドルはスプリング無しの細身タイプ、前後泥除け無し、それでいて6段ギア付きという、およそ中年男が乗るには似つかわしくないイメージを纏っているのです。

  では、鉄製にすればいいではないかと思うでしょうが、奇妙な事に、様々な条件が最もよく揃っている車種があるにも拘らず、買う気になりません。 そんな物を買ってもつまらないと思ってしまうのです。 前にも書いたように、折り畳み自転車はサイズが小さい事から、普通自転車と比較すると確実に乗りにくい代物です。 いかに条件に適合していても、普通自転車よりは乗りにくいわけですから、満足が得られるとは思えません。 道具としてつまらないんですな。

  もし必要性があってどうしても買わなければいけないというのなら、一も二もなくそれにしますが、私の使用目的は「写真撮影の足にしたい」という遊びにあるので、重さを我慢してまで安い物を選ぶ切迫した理由が無いのです。 遊び目的なのに、我慢しなければならないなんて、なんか変でしょう?

  ではアルミにすればいいではないかと思うでしょうが・・・・う、これはさっき書いたな。 だから、こんな具合に堂々巡りしているわけですよ。

  一番すっきりするのは、やめてしまう事です。 必要ないんだから買わなければいいんです。 でも、それはそれでつまらないんですな。 現在私には他に欲しい物が無いので、折り畳み自転車を断念してしまうと、宇宙空間に放り出されたような不安な精神状態になります。 それを解消する為に、他に欲しいものが出てきて、また悩み始めるに違いありません。 同じ事が延々と繰り返されるわけです。 物欲の輪廻。 人間というのは奇妙なもので、何かしら欲しい物があった方が、生きる張り合いが出るんですな。 「週末になったら、○○を買おう」と思っていると、一週間がワクワク気分で過ぎていきますよね。

  つまりね、私が欲しがっているのは折り畳み自転車という具体的な物ではなく、何かを欲しいと思う心理的状態なのですよ。 それが証拠に、折り畳み自転車を買う所まではワクワク感が続くと思うのですが、買ってしまった後もワクワクし続けるかというと、そんな気は全くしません。 すぐに飽きると思います。 子供の頃、プラモデルを買ったはいいが、作る気が起こらなくて、箱のまま放置していた経験がある人は多いと思いますが、あれと同じです。 いわゆる、≪手段の目的化≫という奴ですな。 手に入れる事が目的になってしまっているので、使う段になると持て余してしまうのです。

  これはどうすべきか、またまた悩まなければなりませんな。 どこかで物欲輪廻を断ち切れればいいんですがね。 精神医学では、こういう時、目標を別のものに置き換えさせる事で治療しますが、物欲を他のものに置き換えるとしたら、何があるんでしょうね? インドア方面はもうあらかたやりつくしたから、スポーツでもやるか。 お金がかかるのは嫌だから、散歩でもしようか。 しかし、徒歩だと帰りが疲れるから、自転車の方がいいか。 自転車だと遠出が出来ないから、車も使おうか。 車だと細かい所が見て回れないから、折り畳み自転車を車に積んで・・・・。

  うーむ、重傷だ・・・・。