2007/06/24

サブ・カルチャー

  漫画とアニメが、日本文化の世界発信として持ち上げられるようになってから、二十年くらいたちますかねえ。 未だに同じような論調で、「日本はサブカルチャーで世界を制した」などと解説していている文章を見かけますが、そんな事今更言われなくても、誰でも知ってるって。 こういう事を書く連中は、十人中十人が自国文化に自己陶酔しているわけですが、それでいて自分自身が漫画やアニメの製作に関わっているわけではなく、他人の褌で相撲を取っているわけですな。 何とも、恥かしい奴ら。

  私は、漫画の方はもう二十年も前に読むのをやめてしまいましたが、アニメはずっと見続けてきたので、人並みより詳しいつもりです。 私がアニメを見続けてきた最大の理由は、純粋に、「面白かったから」です。 実際には、アニメの質は時代によって激しい浮き沈みがあり、見るに値する作品が全然無い時期もあったのですが、そんな有様でも、実写映画・ドラマよりはマシだったので、今に至るまで見続けて来たわけです。 すなわち、アニメが優れていたというより、実写映画・ドラマがつまらなかったので、自動的にアニメを見ざるを得なかったんですな。

  見続けてきたからこそ言える事ですが、「日本のアニメはすべて良い」といった雑な括り方をする輩がいると、カチンと来ます。 実際には、十本放送されていれば、九本はスカなのであって、本当にアニメを見て楽しんでいる者は、絶対にそんな雑な事は言わないからです。 日本アニメをべた誉めする連中は、「外国作品と比べれば、日本のアニメの方が優れている」という言い方をするわけですが、この≪外国≫というのが、どこを指しているのかはっきりしません。 比較する場合には、条件を合わせなければなりませんが、日本と比較できるほどのアニメ業界が存在する国というとアメリカだけです。 そしてアメリカのアニメは、日本のアニメに劣るという事はありません。

  アメリカのアニメは、キャラクター・デザインこそ見るに耐えないほど下手なものの、ストーリーの構成は素晴らしく、私の評価点で90点以下をつけた作品は一本もありません。 実写映画で培った脚本のノウハウがアニメにも応用されているので、つまらなくなりようがないんですな。 実写映画がスカばかりで、脚本といえば個人の才能に頼っているような日本では到底真似が出来ない高水準です。 たとえば、宮崎駿作品なども、「もののけ姫」や「紅の豚」などはひどくお粗末なストーリー展開ですが、脚本の段階でディズニーの脚本チームに見せれば、ジブリのスタッフが「えっ!」と驚くような、まとまりのいいストーリーに修正してくれたんじゃないでしょうか。 脚本に関する日米の実力差は、幼稚園児と大学教授くらいの開きがあると思います。

  他に業界が成立するような規模でアニメを作っている国というと、ちょっと思いつきません。 フランスやロシアなどヨーロッパ諸国にもアニメはありますが、業界ではなく、専ら個人が中心になって映像作品の一ジャンルとして作っています。 韓国アニメは近年高水準なものが増えましたが、日本のようにアニメがうじゃうじゃ作られるという環境ではありません。 韓国のアニメ業界は、日本の下請けとして発達したもので、言わば輸出産業でした。 そのシステムを利用して、韓国製のアニメも作られるようになったわけですが、韓国では実写で出来るものは実写で作ってしまうので、アニメはあくまでマイナーに存在です。 この事情は中国でも同様。 そもそも、これらの国やアメリカでは、アニメは大人が見る物とは思われていません。

  「アニメは子供向け」というのは、実は日本にも当て嵌まります。 「日本のアニメは大人の鑑賞に耐える」などと言う人も多いですが、昨今、歳はとっても頭の中が大人になれない日本人が増えた為に、錯覚を起こしているのです。 それが証拠に現在40歳以上の人にアンケートを取ってみれば、日常的にアニメを見ている人の割合は1パーセントにも満たないはずです。 日本アニメを正確に言い表すなら、「日本のアニメは、学生以上の鑑賞に耐える」というべきでしょう。 この場合の≪学生以上≫とは、中学生から20代後半くらいまでを指します。 ちょっと脱線しますが、「アニメに夢中」という人間を結婚相手に選ばない方がいいです。 大人になっていないというよりも、現実世界から逃避する傾向が見られるので、何か重大な問題が起こった時に、対処できない可能性が高いからです。

  私は、外国人相手に日本のアニメをあまり誇り過ぎない方がいいと思っています。 先に述べた「全体の九割はスカ」だからという事もありますが、そういうこちらの事情ではなく、日本のアニメに夢中になる外国人側に些か問題があるからです。 フランスは日本アニメの人気が高い国ですが、私がネット上で話をしたフランス人達の印象から言うと、アニメに夢中になっているようなフランス人は、軒並み知能レベルが低い連中でした。 「日本のアニメが好きです」と日本語で書いてきたり、具体的な作品名を出して誉めたりするわけですが、文章の書き方にしても、批評の内容にしても、稚拙なレベルに留まっており、とてもまともに話が出来る相手ではありませんでした。 一言で言うと、≪子供≫なのです。 フランスに限らず、日本のアニメを誉めている外国人というのは、大抵こういう手合いだと思うのですよ。

  今度、新聞やテレビで、「○○国で、日本のアニメが大人気!」といった内容の記事や特集があったら、一体その国の≪どんな連中に≫大人気なのか、注意して見てみるのが良いと思います。 対象は一般的な大人では絶対ありえないと思います。 レンタル・ショップに来ている青少年にインタビューしていたら、「ああ、つまり、こういうガキどもに受けてるんだな」くらいに思って、軽く捉えておくのがよいでしょう。 サブ・カルチャーは所詮サブ・カルチャーだという事を忘れてしまうと、とんだ大恥を掻く事になります。

  私が心配しているのは、漫画、アニメ、ゲームなど、日本発のサブ・カルチャーが、人類全体の知能レベルを下げる方向に働いているのではないかという事です。 日本人は、思想・哲学方面で全く適合性が無く、人類文明の進歩に何の寄与もしていないのですが、単に寄与しないばかりでなく、足を引っ張っているのではないかと懸念しているわけです。 ゲームは典型的ですが、漫画でもアニメでも、耽溺して知能が上がるという事はまずありえませんから。 そういえば、もう一つ、日本発で世界的に評価されているジャンルに、アダルト・ビデオがありますが、あれに至っては、サブ・カルチャーとすら言えず、害毒を垂れ流しているとしか思えません。 何だか、そんなのばっかりだねえ。