夜更け前
私の勤め先ですが、世間様の流れに従い、着々と人員削減が進んでいます。 派遣社員は11月末までにほとんどいなくなり、期間工も期間終了で延長しない事になり、三月末までには姿を消す予定だそうです。 テレビ・ニュースでは、寮から追い出された失業者が公園に集まったり、激怒指数が高まった一部の連中が経団連の会合に押しかけたりと、派手な事をしていますが、現場で見ていると、失職に抗議して騒ぐような人は一人もいません。 解雇が決まってしまった以上、文句を言うだけ時間の無駄、エネルギーの浪費であって、さっさと次の仕事を探さなければ生きて行けなくなる事を、承知しているからでしょう。
非常に興味深いのは、解雇されて行く派遣社員や期間工を間近に見ていながら、正社員達が、「明日は我が身」と感じていない点です。 完全に他人事だと思っていて、去って行く者に向かって、「しっかりやれよ」だの、「次は正社員で就職しろよ」などと、お気楽な言葉をかけています。 だけどねえ、正社員なら安泰なんて事は、ありえないですぜ。 業績が悪化すれば、派遣社員→期間工→正社員と削減対象が移って行くのは、自然な流れでしょう。
生産量が減り続ければ、社内で仕事が無くなる人間はどんどん増えるわけで、会社にしてみれば、正社員だからといって残す理由はありません。 いれば、それだけで給料を払わなければならないのですから、クビにするのが理の当然というものでしょう。 もう、いられるだけでも困るのです。 会社に一円の利益も齎さず、休憩所でタバコ吸ってるだけの奴に、どうして給料払わねばならんのよ?
正社員というのは、≪正≫の一文字が付いているだけで、特権を与えられているかのように思い込んでいて、単に解雇されないと信じ込んでいるばかりでなく、「残業が無いと、給料が足りないんだよな」などと、不満まで漏らしています。 私も同じ正社員ながら、こういう事を平気で言っている奴らが恐ろしくて仕方ありません。 この御時世に、仕事があるだけでもありがたいというのに、金が足らんだと? 考え方が逆でしょうが。 収入が少ないなら、生活の方を切り詰めなさいな。 酒・煙草はやめない、ゴルフもやめない、ギャンブルもやめない、子供は予定通り大学へやる。 この大不況に、そんな生活が続けられるわけがないでしょうに。
自分を取り巻く社会の状況、引いては世界の潮流が読めない為に、自分の生活は揺るぎない地盤の上に立脚していて、どんな事があっても、自分の方から生き方を変更する必要など無いと思っておるのでしょう。 こういう正社員達が、リストラや倒産で、わらわら世の中に溢れ出した日には、派遣社員や期間工とは比較にならないくらい世間知らずですから、一気にホームレスまで転落していくと思います。 しかも、正社員の多くは家族持ちと来たもんだ。 一家路頭に迷い、夫婦別居、親子離別、目を背けたくなるような惨状が現出するのではありますまいか。
とまあ、私の勤め先の話はこれくらいにして、ここからは、巷の雇用情勢について、思いついた事を書こうと思います。
失業して住む所もなくなった人達を、一部の企業や自治体が救済するというニュースが多いですが、もし、人気取りのパフォーマンスでないとするなら、一体いつまで続けられると思っているんですかねえ。 分かってないようだから、念を押しますが、この不況は、そう簡単には回復しませんぜ。 国内市場だけの冷え込みで、輸出は生きていた、日本のバブル崩壊でさえ、10年も不況が続いたんですよ。 今回は、国内も輸出も死んでいるのです。 これから更に悪くなる見通しはあっても、良くなる兆しなど全くありません。 現在地は不況の入口で、本番はこれからだと考えるべきでしょう。
「三月末日まで、臨時職員として採用する」という自治体の責任者に聞きたいのですが、四月からは、どうするんですか? 放り出せば、今度はあなた方が、≪社会の敵≫にされますよ。 さりとて、必要もない人員を雇い続けていれば、自治体の財政はことごとく破綻していくでしょう。 公営住宅の空きだって、無限にあるわけではありません。 無料の場合、家賃を払っている他の住民が黙っていませんし、無料でない場合、家賃を払えない住人を大量に抱え込む事になります。 追い出せば、即あなた方が、「血も涙もない人非人」呼ばわれされますよ。
本当に失業者が溢れ出すのは、むしろ、四月以降でしょう。 三月から四月にかけて、事態が好転する要素など、何もありません。 日本という国全体が、輸出産業で暮らして来たのですから、輸出がコケれば、国民の暮らしそのものがコケるのは当然の成り行きです。 こういう事態は戦後初であって、正に未曾有の危機です。 誰も、どうすれば良いのか知りません。 前述の、呑気で自己中心的な正社員達のように、自分の住んでいる社会に何が起こっているのかすら分からない人達も多いです。 失業者を臨時雇いしたり、公営住宅に一時収容するなどの対策は、典型的な対処療法であって、事態の根本解決からは遠く離れています。 そして、根本的な解決方法など、誰も知らないのです。
失業者を臨時雇いする自治体が、やらせたがっている仕事というのが、また問題です。 ゴミの収集、公園の清掃、トイレ掃除、森林の伐採などですが、いずれも、きついか、汚いか、危険か、その全てかであって、恩着せがましく世話してもらっても、喜べるような仕事ではありません。 大体、3K仕事ならば、わざわざ役所に斡旋してもらわなくても、ハロー・ワークに行けば、必ず余っているでしょう。 公園の清掃なんて、一見楽そうに思えるでしょうが、仕事となれば、一定時間内は掃除をし続けなければならないのであって、この寒空に一日8時間も屋外にいるなど、拷問と大差がありません。
「食えないよりはいいだろう」というスタンスで、こういう仕事をやらせようと思いつくのでしょうが、続けられないほどきつい仕事を紹介されても、却って困惑するばかりでしょう。 現在発生している失業者の大半は、元工場勤務者だったわけで、冬は最低限、暖房のある場所で働いていたわけです。 屋外仕事に耐えられる人は、全体の一割もいないんじゃないでしょうか。 それほどきついです。 ちなみに、私は若い頃に植木屋の見習いをしていたので、これは実体験で言っています。 トイレ掃除もねえ・・・、あれは、見ているだけでも嫌なものですよ。 看護士と同じで、「大変な仕事をしているなあ」と感謝しこそすれ、自分でやりたいとは思いません。 森林の伐採に至っては、実際問題として、危険でしょう。 素人が踏み込めるような職場ではないです。
「食えないよりはいいだろう」という割り切りには、自動的に、職業選択の自由を奪ってしまう怖さがあります。 「そんな贅沢行っている場合か!」 なるほど、その通り。 そんな贅沢を言っている場合ではないです。 しかし、出来ない仕事を無理にやっていれば、覿面に体を壊します。 心を病みます。 先に待っているのは、やはり≪死≫です。 なんでも、やらせればいいというものではないんですよ。
この不況に、失業者を積極的に求人しようという企業もありますが、殊勝な方針というよりは、渡りに舟の人員補充と見るべきでしょう。 仕事がきつい為に、雇っても雇っても、次々に辞めて行って、慢性的に人手不足という会社は、よくあるのです。 「住み込みOKです」って? まあ、すぐに想像がつくのは、タコ部屋ですな。 職場に仮眠室が設けてあって、そこで寝泊りしつつ、延々と働かされるんじゃないでしょうか? それほどひどくないかもしれませんが、常識的に考えて、今のご時世で、人を欲しがっている企業といったら、そんな所くらいのものだと思いますよ。
確かに、こういう情勢の時に、「うちは人を雇います」と手を挙げれば、世の中の注目を集めるのには大変良い手です。 失業者を助けようというのだから、世間の受けも良い。 だけどねえ、きつい職場で、雇われた人達がバタバタ辞めてしまったら、とんだ逆効果になりますぜ。 注目が集まっている分、悪い評判も一気に広まります。 雇われる方にも言っておきたいのですが、飲食業チェーンの場合、正社員の募集は、どんなに不況になっても、恒常的に続けているのが普通です。 別にありがたがるような職場ではありませんから、ご注意あれ。 ちなみに、私は若い頃、ファミレスでも働いていたので、これも実体験として言っています。 飲食業は、やるなら、バイトに限ります。
テレビや新聞など、マスコミでああだこうだ騒いでいる人達にも言いたいのですが、安直に、≪弱者の味方≫を気取って、社会の混乱に拍車をかけるような真似は慎むべきでしょう。 人員削減している企業を、≪社会の敵≫扱いして吊るし上げていますが、今まで、その企業のおかげで豊かな生活をさせてもらって来たんでしょうが。 輸出産業が外貨を稼いで来たから、あなた方は人類平均以上の生活をして来られたんですよ。 あなた方の仕事では、逆立ちしたって、一円の外貨も稼げますまい。 他人の稼ぎにぶらさがって生きて来たくせに、よくも輸出産業を口汚く罵れたものです。
「クビを切るな」
だって、クビを切らなきゃ、企業の方が潰れるんですよ。 別に、気紛れや我侭で切っているわけではありません。 生まれる前から資本主義社会に住んでいるんだから、そんな事分かってるでしょうに。
「社内プール金があるだろう」
仕事が無い従業員に給料を払う為に、社内プール金を使ってしまったら、それが底をついた次の日には、不渡りを出す事になるじゃないですか。 何の為にプールしてあると思ってるのよ?
「株主に配当金を払っているではないか」
利益が出ていた時の分を払っているだけでしょうが。 利益が出なくなれば、払おうにも払えません。
「株主と従業員の、どっちが大事だ」
株主は企業の持ち主です。 一方、従業員は雇用契約を結んでいるだけで、企業の主体ではありません。 会社が労働力を購入する契約ですから、言わば、取引先と同じような関係です。 「親と知人の、どっちが大事だ」と訊いているようなものですが、まあ普通は、「親」と答える人が多いと思いますよ。
「役員にボーナスを支払っている」
これも、タイム・ラグに過ぎません。 利益が出なくなれば、ボーナスは当然無くなります。 企業は、今現在、金がないから人員削減するのではなく、これから金が無くなるのが分かるから、それを防ぐ為に人員削減するのです。 金が無くなった状態を、≪倒産≫と言います。 そうなってからでは、遅いのです。
「企業経営にも倫理が必要だ」
戯言ですな。 資本主義社会にあるのは、企業活動を制約する法律だけであって、倫理など出る幕はありません。 そんなあやふやな物に縛られて、自由競争が出来るかってんだ。
以上のような事は、資本主義社会に生きている者なら、アホでも分かる理屈です。 アホでも分かる! もう一度言いましょうか。 ア・ホ・で・も・分・か・る!
んじゃ、いっそ、あなた方に経営を一任しましょうか? やってもらおうじゃないですか。 大口叩くからには、一人の解雇者も出さず、これから何年続くか分からない大不況を乗り切れるんでしょうな。 露店商売の経験すら無いくせに、何十万人も食わせている企業経営者を批判するなど、分を弁えぬにも程があります。 自分を何様だと思っているのかな?
ただ、その場その場で立場を変えて、≪善意の人≫ぶっているだけでしょう。 今後、人件費負担に耐え切れず、倒産する企業が続々と出てきたら、今度は企業側の味方について、労働組合の吊るし上げでもするんじゃないでしょうか。 もしかすると、何かな? 失業者の怒りを煽って、暴動でも起こさせたいのかな? 確かに、暴動になれば、大事件だ。 報道番組の視聴率は上がるし、新聞・雑誌も大いに売れます。 コメンテーターも引っ張り凧の大繁盛だ。 けどねえ、本気でそんな事狙っているようなら、もう、人間やめた方がいいで。 もはや、ゲスどころの話じゃないすよ。 それこそ、人非人ですわ。
現在の不況自体が未曾有の大事件なわけですから、マスコミにはマスコミで、担うべき役割があるはずなんですが、企業や政治家を批判するばかりで、前向きな事を何もしようとしないのは、実に不思議です。 企業経営者はもちろんですが、政治家でさえ、マスコミ関係者よりは桁違いに重い危機感を抱いていると思いますよ。 選挙がかかってるからね。 その点、マスコミは気楽だわ。 誰が失業しようが、どの会社が潰れようが、自分達は安泰なわけだから。 奥田さんじゃないけれど、本当に勝手な事ばかり言っているマスコミからは、広告引き上げた方がいいかもしれませんな。 敵に資金援助してやるのも馬鹿な話ではありませんか。
オマケ。 今回の雇用危機を、「人災だ」などと言って、政治のせいにしている人がいますが、何をわけの分からん事を! 全く関係ないです。 原因は100%アメリカの金融危機であって、派遣法なんて、金輪際、無関係です。 製造業派遣がなければ、日本の製造業はとうの昔に国内の工場を引き払っていたはずで、雇用危機はもっと前に起こっていたに違いありません。 製造業派遣のおかげで、一度逃げ出したメーカーが、戻って来ていたくらいです。 政策は雇用危機の原因ではありませんから、政策を変更しても、それで危機が解消するという事はありません。 製造業派遣を続けようが、禁止しようが、不況は続きますし、不況が続く限り、雇用情勢が好転する事はありえないのです。
非常に興味深いのは、解雇されて行く派遣社員や期間工を間近に見ていながら、正社員達が、「明日は我が身」と感じていない点です。 完全に他人事だと思っていて、去って行く者に向かって、「しっかりやれよ」だの、「次は正社員で就職しろよ」などと、お気楽な言葉をかけています。 だけどねえ、正社員なら安泰なんて事は、ありえないですぜ。 業績が悪化すれば、派遣社員→期間工→正社員と削減対象が移って行くのは、自然な流れでしょう。
生産量が減り続ければ、社内で仕事が無くなる人間はどんどん増えるわけで、会社にしてみれば、正社員だからといって残す理由はありません。 いれば、それだけで給料を払わなければならないのですから、クビにするのが理の当然というものでしょう。 もう、いられるだけでも困るのです。 会社に一円の利益も齎さず、休憩所でタバコ吸ってるだけの奴に、どうして給料払わねばならんのよ?
正社員というのは、≪正≫の一文字が付いているだけで、特権を与えられているかのように思い込んでいて、単に解雇されないと信じ込んでいるばかりでなく、「残業が無いと、給料が足りないんだよな」などと、不満まで漏らしています。 私も同じ正社員ながら、こういう事を平気で言っている奴らが恐ろしくて仕方ありません。 この御時世に、仕事があるだけでもありがたいというのに、金が足らんだと? 考え方が逆でしょうが。 収入が少ないなら、生活の方を切り詰めなさいな。 酒・煙草はやめない、ゴルフもやめない、ギャンブルもやめない、子供は予定通り大学へやる。 この大不況に、そんな生活が続けられるわけがないでしょうに。
自分を取り巻く社会の状況、引いては世界の潮流が読めない為に、自分の生活は揺るぎない地盤の上に立脚していて、どんな事があっても、自分の方から生き方を変更する必要など無いと思っておるのでしょう。 こういう正社員達が、リストラや倒産で、わらわら世の中に溢れ出した日には、派遣社員や期間工とは比較にならないくらい世間知らずですから、一気にホームレスまで転落していくと思います。 しかも、正社員の多くは家族持ちと来たもんだ。 一家路頭に迷い、夫婦別居、親子離別、目を背けたくなるような惨状が現出するのではありますまいか。
とまあ、私の勤め先の話はこれくらいにして、ここからは、巷の雇用情勢について、思いついた事を書こうと思います。
失業して住む所もなくなった人達を、一部の企業や自治体が救済するというニュースが多いですが、もし、人気取りのパフォーマンスでないとするなら、一体いつまで続けられると思っているんですかねえ。 分かってないようだから、念を押しますが、この不況は、そう簡単には回復しませんぜ。 国内市場だけの冷え込みで、輸出は生きていた、日本のバブル崩壊でさえ、10年も不況が続いたんですよ。 今回は、国内も輸出も死んでいるのです。 これから更に悪くなる見通しはあっても、良くなる兆しなど全くありません。 現在地は不況の入口で、本番はこれからだと考えるべきでしょう。
「三月末日まで、臨時職員として採用する」という自治体の責任者に聞きたいのですが、四月からは、どうするんですか? 放り出せば、今度はあなた方が、≪社会の敵≫にされますよ。 さりとて、必要もない人員を雇い続けていれば、自治体の財政はことごとく破綻していくでしょう。 公営住宅の空きだって、無限にあるわけではありません。 無料の場合、家賃を払っている他の住民が黙っていませんし、無料でない場合、家賃を払えない住人を大量に抱え込む事になります。 追い出せば、即あなた方が、「血も涙もない人非人」呼ばわれされますよ。
本当に失業者が溢れ出すのは、むしろ、四月以降でしょう。 三月から四月にかけて、事態が好転する要素など、何もありません。 日本という国全体が、輸出産業で暮らして来たのですから、輸出がコケれば、国民の暮らしそのものがコケるのは当然の成り行きです。 こういう事態は戦後初であって、正に未曾有の危機です。 誰も、どうすれば良いのか知りません。 前述の、呑気で自己中心的な正社員達のように、自分の住んでいる社会に何が起こっているのかすら分からない人達も多いです。 失業者を臨時雇いしたり、公営住宅に一時収容するなどの対策は、典型的な対処療法であって、事態の根本解決からは遠く離れています。 そして、根本的な解決方法など、誰も知らないのです。
失業者を臨時雇いする自治体が、やらせたがっている仕事というのが、また問題です。 ゴミの収集、公園の清掃、トイレ掃除、森林の伐採などですが、いずれも、きついか、汚いか、危険か、その全てかであって、恩着せがましく世話してもらっても、喜べるような仕事ではありません。 大体、3K仕事ならば、わざわざ役所に斡旋してもらわなくても、ハロー・ワークに行けば、必ず余っているでしょう。 公園の清掃なんて、一見楽そうに思えるでしょうが、仕事となれば、一定時間内は掃除をし続けなければならないのであって、この寒空に一日8時間も屋外にいるなど、拷問と大差がありません。
「食えないよりはいいだろう」というスタンスで、こういう仕事をやらせようと思いつくのでしょうが、続けられないほどきつい仕事を紹介されても、却って困惑するばかりでしょう。 現在発生している失業者の大半は、元工場勤務者だったわけで、冬は最低限、暖房のある場所で働いていたわけです。 屋外仕事に耐えられる人は、全体の一割もいないんじゃないでしょうか。 それほどきついです。 ちなみに、私は若い頃に植木屋の見習いをしていたので、これは実体験で言っています。 トイレ掃除もねえ・・・、あれは、見ているだけでも嫌なものですよ。 看護士と同じで、「大変な仕事をしているなあ」と感謝しこそすれ、自分でやりたいとは思いません。 森林の伐採に至っては、実際問題として、危険でしょう。 素人が踏み込めるような職場ではないです。
「食えないよりはいいだろう」という割り切りには、自動的に、職業選択の自由を奪ってしまう怖さがあります。 「そんな贅沢行っている場合か!」 なるほど、その通り。 そんな贅沢を言っている場合ではないです。 しかし、出来ない仕事を無理にやっていれば、覿面に体を壊します。 心を病みます。 先に待っているのは、やはり≪死≫です。 なんでも、やらせればいいというものではないんですよ。
この不況に、失業者を積極的に求人しようという企業もありますが、殊勝な方針というよりは、渡りに舟の人員補充と見るべきでしょう。 仕事がきつい為に、雇っても雇っても、次々に辞めて行って、慢性的に人手不足という会社は、よくあるのです。 「住み込みOKです」って? まあ、すぐに想像がつくのは、タコ部屋ですな。 職場に仮眠室が設けてあって、そこで寝泊りしつつ、延々と働かされるんじゃないでしょうか? それほどひどくないかもしれませんが、常識的に考えて、今のご時世で、人を欲しがっている企業といったら、そんな所くらいのものだと思いますよ。
確かに、こういう情勢の時に、「うちは人を雇います」と手を挙げれば、世の中の注目を集めるのには大変良い手です。 失業者を助けようというのだから、世間の受けも良い。 だけどねえ、きつい職場で、雇われた人達がバタバタ辞めてしまったら、とんだ逆効果になりますぜ。 注目が集まっている分、悪い評判も一気に広まります。 雇われる方にも言っておきたいのですが、飲食業チェーンの場合、正社員の募集は、どんなに不況になっても、恒常的に続けているのが普通です。 別にありがたがるような職場ではありませんから、ご注意あれ。 ちなみに、私は若い頃、ファミレスでも働いていたので、これも実体験として言っています。 飲食業は、やるなら、バイトに限ります。
テレビや新聞など、マスコミでああだこうだ騒いでいる人達にも言いたいのですが、安直に、≪弱者の味方≫を気取って、社会の混乱に拍車をかけるような真似は慎むべきでしょう。 人員削減している企業を、≪社会の敵≫扱いして吊るし上げていますが、今まで、その企業のおかげで豊かな生活をさせてもらって来たんでしょうが。 輸出産業が外貨を稼いで来たから、あなた方は人類平均以上の生活をして来られたんですよ。 あなた方の仕事では、逆立ちしたって、一円の外貨も稼げますまい。 他人の稼ぎにぶらさがって生きて来たくせに、よくも輸出産業を口汚く罵れたものです。
「クビを切るな」
だって、クビを切らなきゃ、企業の方が潰れるんですよ。 別に、気紛れや我侭で切っているわけではありません。 生まれる前から資本主義社会に住んでいるんだから、そんな事分かってるでしょうに。
「社内プール金があるだろう」
仕事が無い従業員に給料を払う為に、社内プール金を使ってしまったら、それが底をついた次の日には、不渡りを出す事になるじゃないですか。 何の為にプールしてあると思ってるのよ?
「株主に配当金を払っているではないか」
利益が出ていた時の分を払っているだけでしょうが。 利益が出なくなれば、払おうにも払えません。
「株主と従業員の、どっちが大事だ」
株主は企業の持ち主です。 一方、従業員は雇用契約を結んでいるだけで、企業の主体ではありません。 会社が労働力を購入する契約ですから、言わば、取引先と同じような関係です。 「親と知人の、どっちが大事だ」と訊いているようなものですが、まあ普通は、「親」と答える人が多いと思いますよ。
「役員にボーナスを支払っている」
これも、タイム・ラグに過ぎません。 利益が出なくなれば、ボーナスは当然無くなります。 企業は、今現在、金がないから人員削減するのではなく、これから金が無くなるのが分かるから、それを防ぐ為に人員削減するのです。 金が無くなった状態を、≪倒産≫と言います。 そうなってからでは、遅いのです。
「企業経営にも倫理が必要だ」
戯言ですな。 資本主義社会にあるのは、企業活動を制約する法律だけであって、倫理など出る幕はありません。 そんなあやふやな物に縛られて、自由競争が出来るかってんだ。
以上のような事は、資本主義社会に生きている者なら、アホでも分かる理屈です。 アホでも分かる! もう一度言いましょうか。 ア・ホ・で・も・分・か・る!
んじゃ、いっそ、あなた方に経営を一任しましょうか? やってもらおうじゃないですか。 大口叩くからには、一人の解雇者も出さず、これから何年続くか分からない大不況を乗り切れるんでしょうな。 露店商売の経験すら無いくせに、何十万人も食わせている企業経営者を批判するなど、分を弁えぬにも程があります。 自分を何様だと思っているのかな?
ただ、その場その場で立場を変えて、≪善意の人≫ぶっているだけでしょう。 今後、人件費負担に耐え切れず、倒産する企業が続々と出てきたら、今度は企業側の味方について、労働組合の吊るし上げでもするんじゃないでしょうか。 もしかすると、何かな? 失業者の怒りを煽って、暴動でも起こさせたいのかな? 確かに、暴動になれば、大事件だ。 報道番組の視聴率は上がるし、新聞・雑誌も大いに売れます。 コメンテーターも引っ張り凧の大繁盛だ。 けどねえ、本気でそんな事狙っているようなら、もう、人間やめた方がいいで。 もはや、ゲスどころの話じゃないすよ。 それこそ、人非人ですわ。
現在の不況自体が未曾有の大事件なわけですから、マスコミにはマスコミで、担うべき役割があるはずなんですが、企業や政治家を批判するばかりで、前向きな事を何もしようとしないのは、実に不思議です。 企業経営者はもちろんですが、政治家でさえ、マスコミ関係者よりは桁違いに重い危機感を抱いていると思いますよ。 選挙がかかってるからね。 その点、マスコミは気楽だわ。 誰が失業しようが、どの会社が潰れようが、自分達は安泰なわけだから。 奥田さんじゃないけれど、本当に勝手な事ばかり言っているマスコミからは、広告引き上げた方がいいかもしれませんな。 敵に資金援助してやるのも馬鹿な話ではありませんか。
オマケ。 今回の雇用危機を、「人災だ」などと言って、政治のせいにしている人がいますが、何をわけの分からん事を! 全く関係ないです。 原因は100%アメリカの金融危機であって、派遣法なんて、金輪際、無関係です。 製造業派遣がなければ、日本の製造業はとうの昔に国内の工場を引き払っていたはずで、雇用危機はもっと前に起こっていたに違いありません。 製造業派遣のおかげで、一度逃げ出したメーカーが、戻って来ていたくらいです。 政策は雇用危機の原因ではありませんから、政策を変更しても、それで危機が解消するという事はありません。 製造業派遣を続けようが、禁止しようが、不況は続きますし、不況が続く限り、雇用情勢が好転する事はありえないのです。
<< Home