2009/05/03

死ぬカメラ・蘇るカメラ

  3月の終わり頃に、それまで使っていたコンパクト・デジカメが壊れてしまいました。 キャノンの、≪PowerShot A60≫という機種で、2004年5月に買ったもの。 付属していた16メガのコンパクト・フラッシュだと30枚くらいしか撮れなかったので、当初は家の中だけで使っていたんですが、2007年の夏に、256メガのコンパクト・フラッシュを安く買えた為、それ以降、外へ持ち出すようになりました。 ところが、酷使が祟ったのか、2008年の夏頃からモニターの画像が抽象画のように歪むようになり、最初は起動時だけだったのが、だんだん悪化して、とうとう全く撮影できなくなってしまったのです。

  古いカメラですから、200万画素しかありませんが、当時はキャノンのコンパクト・デジカメの中級機で、撮影モードに絞り優先やシャッター・スピード優先などをフル装備しており、その気になりさえすれば、一眼デジカメに近い使い方が出来る、なかなかの優れ物でした。 ただ、私がその気になったのは、五年間を通じて、ほんの二三回でしたが…。 機能を使い切らない内にお釈迦にしてしまったわけで、慙愧の涙に耐えません。

  私が買ったキャノンのデジカメで、撮影不能に陥ったのは、これで二台目です。 やはり、2004年の春に、父に買ってやった、≪PowerShot A310≫も、2008年の秋に鬼籍に入っています。 モニターは点くけれど、撮影が出来ないという、何となく似た症状。 ただし、こちらの場合、父が三年以上、一枚も撮らずに、本棚にしまいっ放しにしていたという事情があり、同列には比べられません。 たぶん、回路が腐食してしまったのでしょう。 キャノンのカメラは、フィルム時代から一貫して、描写性能は抜群なのですが、壊れてしまえば、ただの置き物ですな。


  まあ、形あるものはいつか壊れるから、壊れてしまった事は致し方ないとして、問題は後継機をどうするかです。 私の場合、写真撮影は、数少ない、≪続いている趣味≫なので、カメラ無しではいられません。 すぐに新しいのを買おうと思いましたが、あいにく、仕事を干されて給料が激減している時期に重なり、最低でも1万円以上になる出費に、ためらわないわけにはいきませんでした。 ≪PowerShot A60≫の前に、外出用に使っていた、日立の、≪HDC-2≫というカメラがまだ健在なのですが、固定焦点方式なので、マクロ撮影に自由が利かず、それに戻るというのも、気が進みません。

  ちなみに、≪PowerShot A60≫も、≪PowerShot A310≫も、保証期間はとっくに過ぎていたため、修理に出す事は考えませんでした。 片や15000円、片や20000円で買った商品ですから、自費修理で一万円以上取られたりした日には、割に合いません。 それに、昨今の電気製品は、部品の在庫を置いていないので、修理に出しても、直らない場合が多いと聞きます。 保証期間内ですら、すでに生産中止になっていると、部品が無くて直らない事があるらしく、そういう場合は、ほぼ同一性能の現行製品が送られてくるのだとか。 「その方がいいなあ・・・」と涎を垂らしても、保証期間終了後では、もちろん叶わぬ夢です。 とにかく、修理という選択肢は、最初から念頭にありませんでした。

  ふと、思いついたのが、2001年秋から2004年の春まで、家の中専用で使っていた、オリンパスの、≪C2≫というカメラです。 私がパソコンを買い、インターネットを始めて半年後、ペット・サイトを作るために、どうしてもデジカメが入用になり、ケチだというのに34500円も出して、初めて買ったデジカメです。 当時は、どのメーカーも、今ほどラインナップが多くなくて、≪C2≫はオリンパスの中ではボトム機でしたが、値段を見ても分かるように機能・性能的には中級機でした。 

  これは、壊れたわけではないのですが、母がデジカメが欲しいと言うので、譲ってしまったのです。 ≪C2≫を譲る事になった為に、その代わりとして、≪PowerShot A60≫を買ったわけですな。 ところが、母はデジカメの使い方を覚える事が出来ず、父のカメラ同様、箪笥の抽斗の奥にしまいっ放しになりました。 撮らないんなら、最初から欲しがるなっつーのよ。 こちらも、放置し過ぎで、壊れているのではないかと恐れましたが、引っ張り出して、電池を換装してみると、何とか正常に動くようです。 どうせ、母は使っていないので、私が返して貰っても、問題ないでしょう。 これでいいじゃん、あはははは!

  と、笑ったまでは良かったんですが、いざ、≪C2≫を持って、外へ撮りに出てみると、いろいろと不都合が出て来ました。 昔使っていた頃には、家の中でベットや小物を撮っていただけだったので、気付かなかった欠点が、ちらほら出て来たのです。

  まず、撮影枚数が少ない。 付属のメモリーカードが16メガしかないので、最大画像サイズだと、30枚くらいしか撮れません。 そこで、容量が多いカードに買い直そうと思ったんですが、取り出してみたら、何と、スマート・メディアだったのです。 そんなの、とっくの昔に生産中止になって、今時どこの店を探しても置いちゃいません。 これは推測ではなく、実際に8軒くらい回って確認しました。 ネット上ではまだ売ってますが、最大容量の128メガだと、4000円近くするという、人を馬鹿にした値段。 どうやら、プレミアがついてしまっている模様です。

  そもそも、スマート・メディアという規格自体が宜しくない。 最大でも128メガしかないというのは、どういう了見やねんな? まあ、曲げれば片手の指で折れるくらい薄っぺらいですから、無理もないといえば無理も無いですがのう。 登場した時点で、すでに、デジカメ・データが大容量化するのは分かっていたのですから、こんな限界の低い規格を世に出した事自体に問題があります。

  オリンパスも無責任な話で、スマート・メディアしか使えないカメラを売ったんだから、利用者の為にカードの供給は続けるべきでしょう。 なに、メーカー通販で売っている? げっ、そうだったんすか? これは、知らぬ事とはいえ、とんだ失礼を致しやした。 で、おいくらでお譲りしていただけるんでげしょうかね? なに、128メガで、9000円? ふざけんな! 今謝ったのは取り消す! 9000円もあったら、特売のコンパクト・デジカメが新品で買えるではないか! しかも、1ギガのSDカード付きでだ! どういう価格設定をしとるんじゃい! なめとんのか?

  そういえば、オリンパスはその後、XDピクチャー・カードの規格化に携わり、今でも同カードを使うカメラを売っていますが、スマート・メディアの例を見るに、XDピクチャー・カードの将来も明るいとは言えませんな。 もっとも、こちらは、SDカードと併用できるようにしてあるカメラが多いようですが。 オリンパス絡みで注意すべきは、この会社、目先が利くという点では、他を圧倒しているんですが、独占的に儲けようとして、独自規格に拘り過ぎる傾向があり、大概それで失敗しています。 オリンパスの先見性を信じて製品を購入した利用者は、結果的に割を喰う事になるのであって、懲りてしまった人も多いのではありますまいか。

  ≪C2≫の問題点の二番目は、描写性能が低い事です。 今まで、キャノン製品を使っていた為に、比較すると、どうしても落ちます。 「200万画素だから、しょうがない」という問題ではないのであって、画素数を言うなら、≪PowerShot A60≫も同じ200万画素だったわけですが、撮った写真を見ると、その精彩さには、はっきりした違いが見られます。 やはり、キャノンは、理由無くしてトップ・メーカーにのし上がったわけではなかったんですな。 デジカメの描写性能は、撮像素子の能力、映像処理技術の他に、レンズの出来も大きく響いてきますが、≪C2≫は、レンズも宜しくない様子。 逆光で撮ると、乱反射してしまって、作品どころではありません。 これに比べれば、≪HDC-2≫のレンズの方がまだ逆光に強いです。

  三番目に、電池消耗が早いのも厳しいところです。 もっとも、これは、2001年頃のデジカメは、みんなそうだったので、オリンパス製品だけの問題とは言えません。 特に、モニターを点けておくと、みるみる減っていくようで、新品のアルカリ電池を入れても、50枚も撮らない内に、バッテリー警告マークがチカチカ光り始めます。 幸い、ファインダーがついているので、モニターを消してファインダーを覗いて撮る事で、電池を長持ちさせようとしているのですが、撮るたびに、こういう配慮をしなければならないのは鬱陶しい限りです。 また、マクロ撮影では、いやでもモニターを点けねばならず、早く撮って早く消そうと焦るため、冷や汗がダクダク流れて来ます。


  とまあ、三つの問題点があるわけです。 そこで、少しでも撮影時のストレスを減らそうと、画像サイズを小さくして、撮影枚数を増やしてみました。 80万画素程度のサイズにすると、70枚くらい撮れるようになり、これなら、半日の撮影行には、充分間に合います。 ちなみに、印刷せずに、パソコンの画面上でだけ見る場合、画素数サイズを小さくしても、画質が落ちるわけではありません。

  これを勘違いしている人は無数にいると思いますが、たとえば、パソコン・モニター上でハガキ大の大きさの写真を見る場合、1000万画素で撮った写真でも、80万画素で撮った写真でも、結局縮小する事になるので、最終的な画質は同じになります。 ただ、画像の中の一部を切り取って使うという場合にのみ、元の画素数が多い方が有利になり、画質を落さずに済みます。 「縮小したら、画質が落ちた」というのは、専ら、縮小に使った画像加工ソフトの能力の差によって引き起こされる現象でして、元の画素数の多少には関係ありません。

  画素数が多ければ多いほど、精細な写真になるというわけではないですから、もし今、1000万画素のカメラを持っている方も、画素数サイズを小さくして撮った方がいいかもしれません。 展覧会に出品する勝負写真を撮るのでもなければ、結局みんな縮小してしまうのですから、元画像は200万画素程度で充分です。 データ量が、5分の1で済みますからのう。 現実問題として、データ量が多いと、保存場所がすぐに無くなってしまいます。 どーでもいーよーなクズ写真を1000万画素で撮って、それを律儀に全て保存する為に、ブルー・レイ・ドライブなんぞ買っている人を見ると、アホとしか思えませんな。 撮った当人ですら、二度と見ないような写真では、30万画素でも惜しい。


  ただねえ、花は寄って撮ればいいとして、動物の場合、近寄れない対象が多いので、どうしても大きく撮って、その中から一部を切り取る事になります。 80万画素だと、それがきつい。 それに、70枚撮れるようになったとしても、一日予定で、観光地などに出かけた場合、絶対的に枚数が足りなくなるのです。 つい一昨日も、静岡市の、≪日本平動物園≫に行って来たのですが、カメラは、≪C2≫と、≪HDC-2≫の二台を持っていって、撮った写真の合計枚数は、300枚を超えていました。

  「たった一日で、そんなに撮るのー!」と思った方、あなたは写真趣味が分かっていない。 写真とは、撮り手の腕の良し悪しに関係なく、「数撃ちゃあたる」ものなのです。 特に、動物園や水族館に行ったら、展示されている動物を全部撮って来るのは、カメラ使いの使命のようなものです。 その際、何という名前の動物を撮ったかを忘れないように、名前と解説が書かれたプレートも一緒に撮ります。 これだけで、枚数が倍になるというわけ。 ちなみに、動物以外でも、園内の風景・光景、ちょっとした説明板、変わった形のゴミ箱まで、目に付いた物は、全部撮ります。 人様に見せる写真が、その中の10枚くらいしかなくても、300分の10なら、かなり質のいいものになるという算段です。

  「数撃ちゃあたる」は、フィルム時代に、プロの写真家が使っていた方法でして、その頃は、フィルム代・現プリ代、ともに高価だったので、素人には真似が出来ませんでした。 デジカメ時代になって、一般人が得られた最大の福音は、お金を気にせずに、大量の写真を撮れるようになった事なのです。 だからねー、1000万画素で、保存場所の容量を気にしてチマチマ撮っている方々、すぐにそんな考え方は捨てて、カメラの設定を、200万画素にしてしまいなさいって。 枚数を5倍撮れば、1枚の時より、絶対いい作品が手に入るから。 腕じゃないのよ、確率の問題なのよ。

  おっと、薀蓄を垂れていたら、当初の予定より、長くなってしまいました。 実は、≪C2≫に満足できないので、新しいカメラを買おうと、あれこれ悩んでいる現状について書きたかったんですが、前置きだけでこんなに長引いたのでは、とてもじゃないが、もう無理ですな。 次回に回しましょう。