デジカメ購入の勘所
で、前回の続きで、新しいカメラを買うか買わぬか、悩んでいるわけです。 注意していただきたいのは、私が悩んでいるのは、≪買うか、買わぬか≫であって、≪どの機種を買うか≫ではないという点です。 ひとたび買う事に決めてしまえば、自他共に認める吝嗇家である私は、許容限度予算額を手掛かりに、割と簡単に機種を決める事が出来ます。 難所は、それ以前の段階にあるわけですよ。
前回書いたように、私の手元には、オリンパスの、≪C2≫というカメラが存在し、古いながらも、一応の撮影は可能です。 新しくカメラを買うとなれば、≪C2≫は再びお蔵入りになるわけで、≪C2≫を使い続けるのよりも大きなメリットが無ければ、ゴー・サインは出せません。
私が、コンパクト・デジカメの性能を吟味する時に、真っ先に見るのは、最短撮影距離です。 おっと、全然分かっていない人もいると思うので、念の為に申しておきますと、その種の情報は、各メーカーのネット・カタログの、≪仕様≫、もしくは、≪諸元≫というページに載っています。 カメラを選ぶ時には、≪仕様≫と、≪サンプル写真≫のページが最も重要でして、絶対に確認しなければなりません。 ≪特長≫だの、≪外観≫だのは、見なくても宜しい。
そもそも、カメラは、外観などどうでもいいのであって、機能・性能が命です。 「私は、デザインで選ぶ」という人がいたら、そりゃ、肝心の写真をあまり撮らない人でしょう。 大体、昨今のコンパクト・デジカメは、みーんな似たような形をしているのであって、外観で選びたくても、沈胴レンズ型か、内部ズーム型かの二種類しかありますまい。 ≪特長≫のページに至っては、単に宣伝文句を並べてあるだけです。 カメラに詳しくない人ほど、宣伝文句に騙され易いですから、真に受けないよう気をつけなければなりません。
話を戻しますが、最も重視すべきは、最短撮影距離です。 ピンボケを起こさずに最も近寄れる、レンズ面から被写体までの距離の事ですな。 これが短いのが、コンパクト・デジカメの最大の利点でして、優れたコンパクト・デジカメの接写性能は、一眼デジカメにマクロ・レンズを装着したものの性能を凌ぎます。 何でも、一眼レフが優れていると思ったら、大間違い。 そういう事も、≪仕様≫を読めば、ちゃんと載っています。
相場から言うと、最短撮影距離が、5センチなら、まずまず充分な性能です。 10センチだと、少し制約があり、15センチ以上だと、かなり苦しくなります。 一方、3センチとか、1センチとか、物によっては、0センチなどというものまでありますが、これらは文句のつけようが無い高性能と言えます。 「そんなに近寄って、何を撮るんだ?」と訊かれれば、「花を撮るに決まっている」と答えるに決まっています。 「私は花なんか撮らない」という人がいたら、それは、写真趣味を持っていないか、まだ始めたばかりでケツが青いかのどちらかと見做すべきで、そのくらい、花というのは重要な被写体なのです。
実際問題、カメラを持って出かけ、ネット上で人様に見せられるレベルの写真を撮ろうと思ったら、風景・花・動物の三対象だけで、全体の9割以上を占める事になります。 素人カメラマンの場合、他に撮れる物が無いんですよ。 これは、始めて見れば、すぐにわかります。 「写真趣味を始めよう!」と思い立って、カメラは買ったものの、いざ出掛けてみると、何を撮っていいか分からない。 カメラを持っている自分の存在を持て余すという、何ともカッコ悪い状況に陥ります。 自分流に拘ろうとして、クズ写真の山を築いたり、いやしくも芸術の一ジャンルだというのに、臆面も無く他人の猿真似をしたりと、悪戦苦闘の末、やめてしまうか、続けられるかのどちらかに至りますが、続けられた人が最終的に撮っているのは、風景・花・動物だけなんですな。
風景でも、観光地・景勝地、山・海・湖・川などでなら問題ないですが、街なかはちょっと危険で、田園でも、近くに人がいる場合は注意が必要です。 とにかく、他人が画面に入ったらまずいので、場所を選ぶんですな。 その点、花や動物の撮影は、傍から見た時、「ああ、花や動物を撮っているんだな」と、一目で分かるので、危険が少ないです。 ただし、綺麗な花が咲いていようが、可愛い犬や猫がいようが、それが他人の家の敷地内だったら、やはり撮れません。
何度も言っているように、人間を撮るのは、非常に困難が伴います。 自分に小さい子供でもいれば話は別ですが、そうでなければ、家族ですら、撮影を許可してくれないのが普通です。 だって、嫌でしょ、年柄年中、「ポーズをとれ」だの、「そのまま動かないで」だの、「ここは光の具合がよくないから、ちょっと庭へ出てきて」だのと言われたのでは。 友人や彼氏・彼女も、快くつきあってくれるのは記念撮影までで、モデルを頼んだりすると、最初の内は笑っているものの、度重なるに連れ、段々疎遠になって行きます。 そして、他人を撮るのは、お祭・公的行事・観光地などでの撮影を除いて、基本的に厳禁です。 怒らせて、何されても知らんぞ。
人間に比べると、風景・花・動物は、制約があるとはいえ、割と思いのままに撮る事が出来ます。 そして、この三つの中で、最も作品レベルの写真をゲットし易いのが、花なのです。 風景は、俗に、≪撮影スポット≫と呼ばれる場所に行かないと、なかなかいい物が撮れませんし、動物は、遭遇する機会が少ないです。 それに対し、花は街中・村中・町内中、至る所に咲いているのであって、しかも季節ごとに変わるので、被写体を探すのに苦労する事がありません。 「半日使って、動物を撮って来い」と言われると、5枚撮るのもきついですが、花なら、そんなに苦労しなくても、20枚くらいは誰にでも撮れると思います。
また、写真を撮っているとつくづく感じるのですが、「やはり、写真には華やかさが必要だ」と思うわけですよ。 風景や動物だと、鮮やかな色合いの写真はなかなか撮れません。 その点でも、花は本質的に華やかですから、大変ありがたいです。 誰でも若い頃は、「花なんて、年寄りが撮るものだ」と馬鹿にしているわけですが、実際に自分自身が歳を取ってみると、花が最も写真の被写体に相応しい事に気付くわけですな。
そういえば、若い女の子を撮りたい一心で、モデルを雇った撮影会だの、コンパニオン撮り放題のモーター・ショーだのに押し寄せて、天体望遠鏡と見紛う長大ズーム・レンズの砲列を並べている人達がいますが、そんな半ば変態オヤジどもに比べれば、路傍の花を撮って回る趣味がいかに高尚なものか、お分かり頂けると思います。 まったく、馬鹿だねー。 いい歳こいて、若い娘なんて撮ったって、誰が評価してくれるものかね。 そんなのはプロの仕事であって、素人が手を出す事ではないよ。 性欲の発露なのが、見え見えじゃん。 己の醜さが分からぬか?
で、その、花を撮るために是非とも必要なのが、短い最短撮影距離というわけです。 10センチだと、花全体しか撮れませんが、5センチなら、花蕊を撮れます。 それよりも更に短ければ、花蕊のクローズ・アップが撮れます。 ぶっちゃけた話、写真に関して、何の心得も無い人であっても、花に肉薄して、マクロ撮影をすれば、それだけで大抵、見れる写真を撮る事が出来ます。 暗い内から早起きして、はるばる遠くの撮影スポットまで出かけて撮った、光の死んだ風景写真よりも、散歩がてら、近所の児童公園で撮った花のマクロ写真の方が、遥かに魅力が高いのだから、何とも皮肉な話です。
そうそう、マクロ性能が高ければ、花にとまる虫もついでに撮れますが、虫の場合、見る人によっては、おぞましいとしか感じない事があるので、ネット上で公開する場合には配慮が必要ですな。 どんなに、くっきりはっきり細密な写真が撮れても、蛾や蝿の顔のアップでは、決して作品写真にならないので、ご注意あれ。 ただし、生物学方面での用になら、問題なく使えます。
さて、最短撮影距離の次に着目すべき点ですが、やはり、重量でしょうな。 本体サイズも同じくらい大切ですが、サイズはたいてい、重量に比例しているので、重量だけ見れば自動的に分かるのです。 もちろん、軽ければ軽いほど宜しい。 カメラが重いと、持って出かける気を無くします。 一眼デジカメを買った人の大半が、半年で押入れにしまい込む事になる最大の理由は、やはり、重さなんですな。 冗談じゃないですよ、たかが写真を撮るためだけに、一キロ近いカメラなんて持って歩けるかってーのよ。 交換レンズなんぞ持って行った日には、カメラ・バッグ込みで、二キロ・三キロになる場合もざらで、想像しただけでも、肩・腰・膝が痛くなってきます。
コンパクト・デジカメであっても、重さにはピンからキリまであり、「本体のみで、400グラム」などという、人を馬鹿にした物もあるので要注意。 「重さは、我慢すれば何とかなるさ」なんて甘く見ていると、すぐ押入れ行きになります。 心は嘘つきだけど、体は正直ですから。 目安にするラインは、本体のみで、150グラム前後ですな。 現行機種では、120グラムあたりが一番軽いと思いますが、厄介な事に、軽さとマクロ性能は反比例する傾向があり、120グラム台のカメラは、最短撮影距離が15センチ以上になっています。 これでは、肝心の花が撮れぬ。 そこで、少し重さに目をつぶっても、マクロ性能を優先しようというわけ。 150グラム前後まで妥協すれば、選択範囲が相当広がります。
本体重量はそれでいいとして、バッテリーの種類も重要です。 乾電池か、リチウム・イオン充電池か。 もちろん、乾電池の方が重いです。 単三一本で、30グラム。 普通は二本使うので、本体重量に、60グラム加算される事になります。 リチウム・イオン充電池は物によって違いますが、軽いのは25グラムくらいからあるようです。 ただし、軽ければ軽いほど、充電量が少ないのは、理の当然。
ここで、第三の要素、電池寿命が絡んで来ます。 こっれがねー、軽視していると、後々、泣きを見るんですわ。 フィルム・カメラ時代、最も懐が痛いのは現像代でしたが、デジカメ時代の癌は、バッテリー寿命なのです。 これさえ解決すれば、ぐーっと楽になるんですがねえ。
そういえば、ほんの数年前まで、ニッケル水素充電池というのがありましたが、およそ使えねー代物でした。 ≪メモリー効果≫という、生まれながらの致命的欠陥を備えており、「千回充電可能」と謳っているくせに、実際には、「三回しか充電できなかった」などという、開いた口が塞がらないインチキ商品が横行していました。 よくあんな物が、白昼堂々、疚し気も無く、まっとうな店で売られていたものです。 ほっとほと、呆れ果てる! 私は、≪C2≫で使っていましたが、あまりにも早くお迎えが来るので、三セット目を境に引導を渡してしまい、以降、100円ショップの四本入り単三アルカリ乾電池に切り替えました。 それで、ようやく、まともにカメラが使えるようになり、心から清々したものです。
リチウム・イオン充電池は、≪メモリー効果≫が起こらないという触れ込みで登場して来たバッテリーで、「途中から継ぎ足し充電しても、充電容量が減らない」という事になっています。 私は使った事が無いので、確かな事は何も言えませんが、人の話を聞く限りでは、事実のようですな。 しかし、やはり寿命はあるようで、「バッテリーを買い直した」という話もよく聞きます。 そして、その値段が、冷や汗出るほど高いと来たもんだ。 一つ4000円などという価格が普通らしいですが、100円ショップの四本入り単三アルカリ乾電池に換算すると、約80回分・・・。 私の撮影ペースだと、乾電池で80回分あれば、二年くらいもつ計算になります。 一方、リチウム・イオン充電池が、二年もつかどうかは、大いに怪しい所です。
乾電池なら、新品に換えるたびに、カメラは最良の状態に復帰するわけですが、充電池の場合、弱ってくると、何枚も撮らない内に撮影不能に陥ってしまうような事もあります。 それが何回も続くと、撮影自体が嫌になってしまうんですなあ。 出先で簡単に手に入らないのも厳しいです。 旅行先なら尚の事、近隣市町村での撮影行でも、バッテリーが死んだからといって、その足で家電量販店に入って買うという人はおらんでしょう。 第一、充電しなければ使えませんし。 軽さを重視してリチウム・イオン充電池を取るか、少々重くなっても、乾電池の便利さを取るかは、悩む所ですな。
コンパクト・デジカメを選ぶ上で大事なのは、この三つ性能と、後は、サンプル写真です。 大抵のメーカーは、ネット・カタログ上で、一機種につき、二・三枚のサンプル写真を出しているので、それらは、必ず見るようにします。 サンプル写真は、プロが最も良い条件で撮影した物なので、基本的に、そのカメラでは、サンプル写真以上の写真は撮れないと思って宜しいです。 「サンプル写真なんて、みんな似たようなもんだろう」と思うかもしれませんが、どうしてどうして、見れば、差が歴然と分かります。
よく使われる対象は、風景・人物・花・静物などですが、どんな写真を載せているかで、メーカーがそのカメラの性能についてどう考えているかが分かります。 晴天の日に風景を撮ると、ラチチュードが足りずに、白っぽい所が飛んでしまうので、サンプル写真としては宜しくありません。 そこで最近は、風景写真を載せないというメーカーが増えています。 室内で地味~な色の静物を撮った写真を一枚だけ載せているようなケースもありますが、そんな条件なら、極初期のデジカメでも同じような写真になるのであって、サンプルの用を為していません。 風景はもちろん、人物にも自信がないので、逃げを打っているんですな。
一見、顧客を騙しているように見えますが、ニセのサンプルを載せていないだけ正直だとも言えます。 特定条件のサンプル写真を載せていないという事は、「そっちの性能には、自信ないよ」と、暗に告白しているわけです。 カメラを買ってしまった後で、「写真の色がくすんでいる」と感じても、サンプル写真もくすんでいたのであれば、それを承知で買ったという事になり、メーカーに文句を言うのは筋違いという事になります。 サンプル写真は、原寸大にして、目を皿のようにして精査するべし。
さて、カメラ店や家電量販店のカメラ・コーナーへ行くと、店員さんが商品を売り込むのに、ズームの倍数や、画素数の多さを強調すると思います。 私自身も、頼みもしないのに、そういう説明を受けた経験があります。 「こちらは1000万画素で、あちらは800万画素ですが、その差は気にしなくてもいいと思うんですよ」などと、勝手に説明を繰り広げますが、おら、そんなこと訊いてねえっつーのよ。 そもそも、私は、どんなカメラであっても、200万画素に設定して撮るつもりでいるので、800も1000も関係ないわいな。
ズームも然り。 「ほーら、こんなに、ズーム出来ますよーっ!」などと、実演してくれますが、おら、そんなこと頼んでねえっつーのよ。 そもそも、私は、ズームで望遠して撮る事がほとんどありません。 なぜというに、望遠にすると、覿面にブレボケしてしまうからです。 これも、サンプル写真を見れば分かるのですが、望遠ズームで撮った写真は、みんなボケているはずです。 ああいうのは、当然、プロが三脚に据えて撮っているわけですが、それでもボケます。 まして、素人が手持ちで撮る写真が、ボケないわけがないではありませんか。
望遠にするとブレが大きくなるのは、原理上避けられない事で、≪手ブレ軽減機構≫くらいでは、焼け石に水です。 倍率が高くなればなるほど、ブレが大きくなるので、10倍ズームや20倍ズームとなると、勇ましいのは数字ばかりで、撮れた写真は見るに耐えない代物になります。 使えない写真では、最初から撮らない方がマシというわけ。
しかし、どの店へ行っても必ず、店員さんがズーム倍率と画素数の説明をするという事は、つまり、そんなどーでもいーような性能を気にするお客が多いという事なんでしょうな。 うーむ、無知ほど怖いものはない。 店に来るお客を見ていると、家族連れなのに、高倍率ズーム機や、一眼デジカメを買おうとしている人が大変多いですが、「よしゃあいいのに・・・」と、いつも思います。 そういう機種は、写真趣味があって、しかも腕に覚えがある人が買うものであって、一般人向けではないのですよ。 高いカメラを買えば、いい写真が撮れると思っているのか、写真なんかどうでもよくて、ただ高いカメラを持ってカッコつけたいだけなのか、いずれにせよ、愚かの極みですな。
おっと、一般論を並べている内に、私個人の悩みについて何も書かないまま、こんなに長くなってしまいましたな。 疲れたので、また来週に続きます。
前回書いたように、私の手元には、オリンパスの、≪C2≫というカメラが存在し、古いながらも、一応の撮影は可能です。 新しくカメラを買うとなれば、≪C2≫は再びお蔵入りになるわけで、≪C2≫を使い続けるのよりも大きなメリットが無ければ、ゴー・サインは出せません。
私が、コンパクト・デジカメの性能を吟味する時に、真っ先に見るのは、最短撮影距離です。 おっと、全然分かっていない人もいると思うので、念の為に申しておきますと、その種の情報は、各メーカーのネット・カタログの、≪仕様≫、もしくは、≪諸元≫というページに載っています。 カメラを選ぶ時には、≪仕様≫と、≪サンプル写真≫のページが最も重要でして、絶対に確認しなければなりません。 ≪特長≫だの、≪外観≫だのは、見なくても宜しい。
そもそも、カメラは、外観などどうでもいいのであって、機能・性能が命です。 「私は、デザインで選ぶ」という人がいたら、そりゃ、肝心の写真をあまり撮らない人でしょう。 大体、昨今のコンパクト・デジカメは、みーんな似たような形をしているのであって、外観で選びたくても、沈胴レンズ型か、内部ズーム型かの二種類しかありますまい。 ≪特長≫のページに至っては、単に宣伝文句を並べてあるだけです。 カメラに詳しくない人ほど、宣伝文句に騙され易いですから、真に受けないよう気をつけなければなりません。
話を戻しますが、最も重視すべきは、最短撮影距離です。 ピンボケを起こさずに最も近寄れる、レンズ面から被写体までの距離の事ですな。 これが短いのが、コンパクト・デジカメの最大の利点でして、優れたコンパクト・デジカメの接写性能は、一眼デジカメにマクロ・レンズを装着したものの性能を凌ぎます。 何でも、一眼レフが優れていると思ったら、大間違い。 そういう事も、≪仕様≫を読めば、ちゃんと載っています。
相場から言うと、最短撮影距離が、5センチなら、まずまず充分な性能です。 10センチだと、少し制約があり、15センチ以上だと、かなり苦しくなります。 一方、3センチとか、1センチとか、物によっては、0センチなどというものまでありますが、これらは文句のつけようが無い高性能と言えます。 「そんなに近寄って、何を撮るんだ?」と訊かれれば、「花を撮るに決まっている」と答えるに決まっています。 「私は花なんか撮らない」という人がいたら、それは、写真趣味を持っていないか、まだ始めたばかりでケツが青いかのどちらかと見做すべきで、そのくらい、花というのは重要な被写体なのです。
実際問題、カメラを持って出かけ、ネット上で人様に見せられるレベルの写真を撮ろうと思ったら、風景・花・動物の三対象だけで、全体の9割以上を占める事になります。 素人カメラマンの場合、他に撮れる物が無いんですよ。 これは、始めて見れば、すぐにわかります。 「写真趣味を始めよう!」と思い立って、カメラは買ったものの、いざ出掛けてみると、何を撮っていいか分からない。 カメラを持っている自分の存在を持て余すという、何ともカッコ悪い状況に陥ります。 自分流に拘ろうとして、クズ写真の山を築いたり、いやしくも芸術の一ジャンルだというのに、臆面も無く他人の猿真似をしたりと、悪戦苦闘の末、やめてしまうか、続けられるかのどちらかに至りますが、続けられた人が最終的に撮っているのは、風景・花・動物だけなんですな。
風景でも、観光地・景勝地、山・海・湖・川などでなら問題ないですが、街なかはちょっと危険で、田園でも、近くに人がいる場合は注意が必要です。 とにかく、他人が画面に入ったらまずいので、場所を選ぶんですな。 その点、花や動物の撮影は、傍から見た時、「ああ、花や動物を撮っているんだな」と、一目で分かるので、危険が少ないです。 ただし、綺麗な花が咲いていようが、可愛い犬や猫がいようが、それが他人の家の敷地内だったら、やはり撮れません。
何度も言っているように、人間を撮るのは、非常に困難が伴います。 自分に小さい子供でもいれば話は別ですが、そうでなければ、家族ですら、撮影を許可してくれないのが普通です。 だって、嫌でしょ、年柄年中、「ポーズをとれ」だの、「そのまま動かないで」だの、「ここは光の具合がよくないから、ちょっと庭へ出てきて」だのと言われたのでは。 友人や彼氏・彼女も、快くつきあってくれるのは記念撮影までで、モデルを頼んだりすると、最初の内は笑っているものの、度重なるに連れ、段々疎遠になって行きます。 そして、他人を撮るのは、お祭・公的行事・観光地などでの撮影を除いて、基本的に厳禁です。 怒らせて、何されても知らんぞ。
人間に比べると、風景・花・動物は、制約があるとはいえ、割と思いのままに撮る事が出来ます。 そして、この三つの中で、最も作品レベルの写真をゲットし易いのが、花なのです。 風景は、俗に、≪撮影スポット≫と呼ばれる場所に行かないと、なかなかいい物が撮れませんし、動物は、遭遇する機会が少ないです。 それに対し、花は街中・村中・町内中、至る所に咲いているのであって、しかも季節ごとに変わるので、被写体を探すのに苦労する事がありません。 「半日使って、動物を撮って来い」と言われると、5枚撮るのもきついですが、花なら、そんなに苦労しなくても、20枚くらいは誰にでも撮れると思います。
また、写真を撮っているとつくづく感じるのですが、「やはり、写真には華やかさが必要だ」と思うわけですよ。 風景や動物だと、鮮やかな色合いの写真はなかなか撮れません。 その点でも、花は本質的に華やかですから、大変ありがたいです。 誰でも若い頃は、「花なんて、年寄りが撮るものだ」と馬鹿にしているわけですが、実際に自分自身が歳を取ってみると、花が最も写真の被写体に相応しい事に気付くわけですな。
そういえば、若い女の子を撮りたい一心で、モデルを雇った撮影会だの、コンパニオン撮り放題のモーター・ショーだのに押し寄せて、天体望遠鏡と見紛う長大ズーム・レンズの砲列を並べている人達がいますが、そんな半ば変態オヤジどもに比べれば、路傍の花を撮って回る趣味がいかに高尚なものか、お分かり頂けると思います。 まったく、馬鹿だねー。 いい歳こいて、若い娘なんて撮ったって、誰が評価してくれるものかね。 そんなのはプロの仕事であって、素人が手を出す事ではないよ。 性欲の発露なのが、見え見えじゃん。 己の醜さが分からぬか?
で、その、花を撮るために是非とも必要なのが、短い最短撮影距離というわけです。 10センチだと、花全体しか撮れませんが、5センチなら、花蕊を撮れます。 それよりも更に短ければ、花蕊のクローズ・アップが撮れます。 ぶっちゃけた話、写真に関して、何の心得も無い人であっても、花に肉薄して、マクロ撮影をすれば、それだけで大抵、見れる写真を撮る事が出来ます。 暗い内から早起きして、はるばる遠くの撮影スポットまで出かけて撮った、光の死んだ風景写真よりも、散歩がてら、近所の児童公園で撮った花のマクロ写真の方が、遥かに魅力が高いのだから、何とも皮肉な話です。
そうそう、マクロ性能が高ければ、花にとまる虫もついでに撮れますが、虫の場合、見る人によっては、おぞましいとしか感じない事があるので、ネット上で公開する場合には配慮が必要ですな。 どんなに、くっきりはっきり細密な写真が撮れても、蛾や蝿の顔のアップでは、決して作品写真にならないので、ご注意あれ。 ただし、生物学方面での用になら、問題なく使えます。
さて、最短撮影距離の次に着目すべき点ですが、やはり、重量でしょうな。 本体サイズも同じくらい大切ですが、サイズはたいてい、重量に比例しているので、重量だけ見れば自動的に分かるのです。 もちろん、軽ければ軽いほど宜しい。 カメラが重いと、持って出かける気を無くします。 一眼デジカメを買った人の大半が、半年で押入れにしまい込む事になる最大の理由は、やはり、重さなんですな。 冗談じゃないですよ、たかが写真を撮るためだけに、一キロ近いカメラなんて持って歩けるかってーのよ。 交換レンズなんぞ持って行った日には、カメラ・バッグ込みで、二キロ・三キロになる場合もざらで、想像しただけでも、肩・腰・膝が痛くなってきます。
コンパクト・デジカメであっても、重さにはピンからキリまであり、「本体のみで、400グラム」などという、人を馬鹿にした物もあるので要注意。 「重さは、我慢すれば何とかなるさ」なんて甘く見ていると、すぐ押入れ行きになります。 心は嘘つきだけど、体は正直ですから。 目安にするラインは、本体のみで、150グラム前後ですな。 現行機種では、120グラムあたりが一番軽いと思いますが、厄介な事に、軽さとマクロ性能は反比例する傾向があり、120グラム台のカメラは、最短撮影距離が15センチ以上になっています。 これでは、肝心の花が撮れぬ。 そこで、少し重さに目をつぶっても、マクロ性能を優先しようというわけ。 150グラム前後まで妥協すれば、選択範囲が相当広がります。
本体重量はそれでいいとして、バッテリーの種類も重要です。 乾電池か、リチウム・イオン充電池か。 もちろん、乾電池の方が重いです。 単三一本で、30グラム。 普通は二本使うので、本体重量に、60グラム加算される事になります。 リチウム・イオン充電池は物によって違いますが、軽いのは25グラムくらいからあるようです。 ただし、軽ければ軽いほど、充電量が少ないのは、理の当然。
ここで、第三の要素、電池寿命が絡んで来ます。 こっれがねー、軽視していると、後々、泣きを見るんですわ。 フィルム・カメラ時代、最も懐が痛いのは現像代でしたが、デジカメ時代の癌は、バッテリー寿命なのです。 これさえ解決すれば、ぐーっと楽になるんですがねえ。
そういえば、ほんの数年前まで、ニッケル水素充電池というのがありましたが、およそ使えねー代物でした。 ≪メモリー効果≫という、生まれながらの致命的欠陥を備えており、「千回充電可能」と謳っているくせに、実際には、「三回しか充電できなかった」などという、開いた口が塞がらないインチキ商品が横行していました。 よくあんな物が、白昼堂々、疚し気も無く、まっとうな店で売られていたものです。 ほっとほと、呆れ果てる! 私は、≪C2≫で使っていましたが、あまりにも早くお迎えが来るので、三セット目を境に引導を渡してしまい、以降、100円ショップの四本入り単三アルカリ乾電池に切り替えました。 それで、ようやく、まともにカメラが使えるようになり、心から清々したものです。
リチウム・イオン充電池は、≪メモリー効果≫が起こらないという触れ込みで登場して来たバッテリーで、「途中から継ぎ足し充電しても、充電容量が減らない」という事になっています。 私は使った事が無いので、確かな事は何も言えませんが、人の話を聞く限りでは、事実のようですな。 しかし、やはり寿命はあるようで、「バッテリーを買い直した」という話もよく聞きます。 そして、その値段が、冷や汗出るほど高いと来たもんだ。 一つ4000円などという価格が普通らしいですが、100円ショップの四本入り単三アルカリ乾電池に換算すると、約80回分・・・。 私の撮影ペースだと、乾電池で80回分あれば、二年くらいもつ計算になります。 一方、リチウム・イオン充電池が、二年もつかどうかは、大いに怪しい所です。
乾電池なら、新品に換えるたびに、カメラは最良の状態に復帰するわけですが、充電池の場合、弱ってくると、何枚も撮らない内に撮影不能に陥ってしまうような事もあります。 それが何回も続くと、撮影自体が嫌になってしまうんですなあ。 出先で簡単に手に入らないのも厳しいです。 旅行先なら尚の事、近隣市町村での撮影行でも、バッテリーが死んだからといって、その足で家電量販店に入って買うという人はおらんでしょう。 第一、充電しなければ使えませんし。 軽さを重視してリチウム・イオン充電池を取るか、少々重くなっても、乾電池の便利さを取るかは、悩む所ですな。
コンパクト・デジカメを選ぶ上で大事なのは、この三つ性能と、後は、サンプル写真です。 大抵のメーカーは、ネット・カタログ上で、一機種につき、二・三枚のサンプル写真を出しているので、それらは、必ず見るようにします。 サンプル写真は、プロが最も良い条件で撮影した物なので、基本的に、そのカメラでは、サンプル写真以上の写真は撮れないと思って宜しいです。 「サンプル写真なんて、みんな似たようなもんだろう」と思うかもしれませんが、どうしてどうして、見れば、差が歴然と分かります。
よく使われる対象は、風景・人物・花・静物などですが、どんな写真を載せているかで、メーカーがそのカメラの性能についてどう考えているかが分かります。 晴天の日に風景を撮ると、ラチチュードが足りずに、白っぽい所が飛んでしまうので、サンプル写真としては宜しくありません。 そこで最近は、風景写真を載せないというメーカーが増えています。 室内で地味~な色の静物を撮った写真を一枚だけ載せているようなケースもありますが、そんな条件なら、極初期のデジカメでも同じような写真になるのであって、サンプルの用を為していません。 風景はもちろん、人物にも自信がないので、逃げを打っているんですな。
一見、顧客を騙しているように見えますが、ニセのサンプルを載せていないだけ正直だとも言えます。 特定条件のサンプル写真を載せていないという事は、「そっちの性能には、自信ないよ」と、暗に告白しているわけです。 カメラを買ってしまった後で、「写真の色がくすんでいる」と感じても、サンプル写真もくすんでいたのであれば、それを承知で買ったという事になり、メーカーに文句を言うのは筋違いという事になります。 サンプル写真は、原寸大にして、目を皿のようにして精査するべし。
さて、カメラ店や家電量販店のカメラ・コーナーへ行くと、店員さんが商品を売り込むのに、ズームの倍数や、画素数の多さを強調すると思います。 私自身も、頼みもしないのに、そういう説明を受けた経験があります。 「こちらは1000万画素で、あちらは800万画素ですが、その差は気にしなくてもいいと思うんですよ」などと、勝手に説明を繰り広げますが、おら、そんなこと訊いてねえっつーのよ。 そもそも、私は、どんなカメラであっても、200万画素に設定して撮るつもりでいるので、800も1000も関係ないわいな。
ズームも然り。 「ほーら、こんなに、ズーム出来ますよーっ!」などと、実演してくれますが、おら、そんなこと頼んでねえっつーのよ。 そもそも、私は、ズームで望遠して撮る事がほとんどありません。 なぜというに、望遠にすると、覿面にブレボケしてしまうからです。 これも、サンプル写真を見れば分かるのですが、望遠ズームで撮った写真は、みんなボケているはずです。 ああいうのは、当然、プロが三脚に据えて撮っているわけですが、それでもボケます。 まして、素人が手持ちで撮る写真が、ボケないわけがないではありませんか。
望遠にするとブレが大きくなるのは、原理上避けられない事で、≪手ブレ軽減機構≫くらいでは、焼け石に水です。 倍率が高くなればなるほど、ブレが大きくなるので、10倍ズームや20倍ズームとなると、勇ましいのは数字ばかりで、撮れた写真は見るに耐えない代物になります。 使えない写真では、最初から撮らない方がマシというわけ。
しかし、どの店へ行っても必ず、店員さんがズーム倍率と画素数の説明をするという事は、つまり、そんなどーでもいーような性能を気にするお客が多いという事なんでしょうな。 うーむ、無知ほど怖いものはない。 店に来るお客を見ていると、家族連れなのに、高倍率ズーム機や、一眼デジカメを買おうとしている人が大変多いですが、「よしゃあいいのに・・・」と、いつも思います。 そういう機種は、写真趣味があって、しかも腕に覚えがある人が買うものであって、一般人向けではないのですよ。 高いカメラを買えば、いい写真が撮れると思っているのか、写真なんかどうでもよくて、ただ高いカメラを持ってカッコつけたいだけなのか、いずれにせよ、愚かの極みですな。
おっと、一般論を並べている内に、私個人の悩みについて何も書かないまま、こんなに長くなってしまいましたな。 疲れたので、また来週に続きます。
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