2009/05/17

挫折する欲望

  で、ここ一ヶ月ばかりの間、私を悩ませた、≪新デジカメ購入計画≫ですが、結局、買わずに終わりました。 「よく我慢した」と言うより、「どうしても買いたい!」という気持ちが、今ひとつ盛り上がらなかったのです。

  ゴールデン・ウイーク商戦中はもとより、毎週、週末になると、新聞の折り込み広告の中から家電量販店やカメラ店の特売情報を集め、実際にあちこちの店に足を運んで、現物確認もしたのですよ。 前回デジカメを買った2004年の頃に比べると、遥かに性能のいいカメラが、ずっと安く手に入る時代になっていました。 2004年には、1万円以下のデジカメといったら、固定焦点式しかありませんでしたが、今は同じ値段で、移動焦点式+3倍ズームの製品が買えるのですから、隔世の感があり! 些か欺瞞的ながらも技術の進歩と、デジカメ不況による価格破壊に、思わず知らず感謝の念を抱いたものです。

  でも、結局、買わなかったのです。 ちなみに、最後に残った候補は、キャノンの、≪PowerShot A480≫でした。 とある家電量販店で、12000円で特売されていたもので、スーパー・マクロで、1センチまで接写が出来るというのが魅力でした。 しかし、その他の性能は、≪オリンパス C2≫と大差なく、わざわざ12000円出すほどの説得力ある理由が、自分に対して用意できなかったというわけです。

  一番気にかかったのは、やはり電池寿命です。 現在所有している、≪オリンパス C2≫と≪日立 HDC-2≫を持って、ゴールデン・ウイーク中に幾つかの観光地へ出向き、新品の電池がどれだけもつか、調べてみたんですが、その結果、分かった事は、≪C2≫では、モニターを使わずにファインダーを覗いて撮影しても、電池一回分で90枚しか撮れない事でした。 アルカリ2本ですから、金額的には大した事ありませんが、頻繁に電池を換えていると、何だか凄い無駄遣いをしているような気分になります。

  一方、固定焦点方式の≪HDC-2≫の方は、ファインダーレスのモニター・オンリー機であるにも拘らず、同じアルカリ2本で、350枚くらいは楽に撮れました。 固定焦点方式は、レンズ内に可動部分が無いため、レンズ関係の電力を全く使わないんですな。 逆に言うと、移動焦点式カメラに於いて、レンズ・モーターが消費する電力がいかに多いかが分かります。 しかし、この≪HDC-2≫は、カラー・バランスが悪くて、よほど鮮やかな対象物でない限り、モノクロと見まがうような潰れた色合いになるのが欠点です。 うーむ、一長一短あり。

  さりとて、新しいカメラを買えば、問題点がすべて解決するわけではありません。 最終候補に残った≪PowerShot A480≫は、モニター・オンリー機ですから、撮影枚数はそれほど多くはなく、アルカリ2本で、200枚です。 昔に比べれば消費電力が少なくなっているとはいえ、移動焦点式である上に、沈胴式レンズですから、電源を入れるたびにレンズが迫り出して来るわけで、それだけでも、電力を浪費するのです。 ズームなんかした日には、更に電気を使うわけで、瞬く間に電池が空になります。

  200枚だから、≪C2≫の倍以上撮れるといえば、多いようですが、その為には、カメラの代金、12000円を払わなければならないわけで、アルカリ電池を12000円分買う場合と比較すると、≪C2≫を使い続ける方がお得になってしまうのです。 計算してみたら、≪PowerShot A480≫を買った場合、9年以上使わないと、元が取れない事が分かりました。 だけど、カメラ本体がそんなに長持ちしないと思うのですよ。 もちろん、カメラが壊れる可能性は、≪C2≫にもあるわけですが、それはそれで、壊れてから考えた方がいいような気がするのです。

  ああだこうだと考えて、煮詰まっていた頃、「いっそ、根本的に発想を転換して、もっとデカいカメラを買ってしまってはどうか?」と考えた事もありました。 具体的にいうと、コンパクト・デジカメの高倍率ズーム機や、一眼デジカメですな。 私は稀代のケチですが、「これは、是非とも必要な出費だ!」と思い切れば、金離れがよくなる事も無いわけでは無いです。 特売で1万円前後の品に拘るから煮詰まるのであって、予算の枠を外し、選択範囲を広げれば、新しい展開が開けるのではないかと、一瞬思ったわけです。

  だけど、このコロンブスの卵は、茹でる前に割れました。 大きなカメラを買ったところで、結局、電池寿命の制約から逃れる事は出来ない事に気付いたからです。 むしろ、大きい方が大飯喰らいだと考える方が常識的でしょう。 「大きなカメラを三脚に据え、絞り優先やプログラム・オートにして、あれこれ設定を変えながら、一枚一枚を大切に撮る」 そういう撮影スタイルを、フィルム時代には、私も実行していました。 しかし、それは、露出計以外に全く電気を使わないマニュアルのフィルム・カメラだからこそ出来た芸当でして、オール電化のデジカメで、そんな撮り方をしていたのでは、一枚撮るだけで電池がなくなってしまいます。 いや、マジ、マジ! フィルム一眼だと、一枚撮るのに、30分くらいかける事も珍しくありませんが、デジカメで30分間モニター・オンしてたら、どんな機種でも電池無くなるでしょうが。

  昨今は、モニターのインチ数が大きければ大きいほど良いという傾向があるようですが、大きければ大きいほど電気を喰うわけですから、とてもじゃないが歓迎できる性能ではありません。 大体、モニターが大きいといっても、撮れる写真のサイズと比較すれば、遥かに小さいわけで、細部の撮れ具合を確認するためには、結局、拡大しなければならないのですから、本質的な利点とは言えますまい。 私に言わせれば、モニターなんて、大雑把な撮影範囲と色が分かれば充分なのであって、1.5インチくらいでも、一向に構いません。 そんな事より、電池を長持ちさせてくれんかのう。

  それと、上にもちょっと書きましたが、沈胴式レンズがスタンバイする時の迫り出しや、ズーム時の電力使用も、どうにかなりませんかねえ。 スタンバイでレンズが出てくること自体は仕方ないとしても、出た状態のままで、電源を完全に切れるようにしてくれれば、カメラを手に持ったまま移動している間は、レンズの出入りに電気を使わなくて済むんですよ。 モニター・オフという機能はありますが、その状態だと、待機電力を使っているような気がして、安心してそのままにしておけません。 一定時間が経つと、勝手に引っ込みやがるから、ギョッとするわ、頭に来るわ。

  ズームもねえ・・・・。 いや、私としては、ズーム、いらないんですけどねえ。 だから、ズームなんて、オモチャなんですって。 自分で、望遠ズームして撮った写真を、広角一杯で撮った写真と、比べて御覧なさいな。 絶対、ボケてるから。 ブレを止められっこねーのよ。 何回言ったら、分かってくれるかなあ。 ズームの高倍率をありがたがるのは、ただのアホやで。 遠くの物を大きく撮りたかったら、大画素数で撮っておいて、後でトリミングしても、同じ事です。 むしろ、そちらの方がボケが少なくなるかもしれません。 ズーム機能を省けば、レンズ構成が単純になりますし、可動部分が減って、精度もより向上するでしょう。

  今のカメラで、唯一、手放しで賞賛できるのは、記録枚数の多さですな。 とにかく、SDカードが安くなったのは、画期的な慶事です。 広告を見ていると、「4ギガで千円」なんてのもザラですが、これは凄い! ほぼ、枚数無制限で撮れるようなものです。 あまり急激に容量当たり価格が低くなった為に、リサイクル・ショップに並んでいたメモリー・カードの中古価格が、一気に陳腐化してしまいました。 「512メガで千円」なんて値札がまだ貼ってありますが、どういうつもりなんだか・・・、新品を差し置いて、中古品に8倍の金を出す馬鹿はいないでしょうに。

  ちなみに、リサイクル・ショップでも、ネット・オークションでも、電子製品の中古品には手を出さない方が無難だと思います。 常識的に考えて、何の問題もなく使える物を手放す人はいないわけで、中古品として売られたという事は、何かしら問題があると考えるべきでしょう。 機械製品と違って、買ってから直すというような技が使えませんから、最初から買わない以外に対策が無いのです。 たとえ安くても、手に入れた物がすぐに壊れてしまうのは、嫌なもんですぜ。 保証も、引き取り保証があればいい方で、修理保証はありませんし。


  とまあ、こんな事をあれこれ考えている内に、ゴールデン・ウイークは過ぎ去り、特売期間も終わってしまったんですな。 本来、買物の計画は楽しくあるべきものなんですが、あまりあれこれ考えすぎると、楽しいというより苦痛になります。 特売期間が過ぎてくれて、正直言って、ほっとしました。 何せ、筋金入りのケチなので、特売価格でなければ、絶対に買う気にならないからです。

  何で、今ひとつ、「買いたい!」という気にならなかったのかというと、新しいカメラを買っても、生活が変わらないのが分かっているからじゃないかと思います。 今までも、カメラを使い続けてきたわけで、それが新品に代わったとしても、別に撮影スタイルが変わるわけではありませんわな。 つまり、12000円出費しても、それが新たな楽しみを齎す事は無いわけです。 単に、≪C2≫よりも使いやすいカメラを手に入れられるというだけのエサでは、12000円の壁を超えられないのですよ。

  これは、車の買い替えなどでも、同じ事が言えると思います。 新車を買ったとしても、結局、移動の道具に過ぎない点は変わらないのであって、生活に変化が起こるわけではないでしょう。 生活の質の向上に繋がらないのであれば、それは、つまらない出費ではありませんか。

  私の人生そのものが袋小路に入ってしまった感があり、何を買っても生活が変化しないような気がするのです。 かといって、今まで全くやった事が無いような趣味に手を出しても、自己満足を得られるレベルまで達する事が出来ず、すぐに飽きて、結局、無駄な出費になってしまいます。 「何かを買わなければいけない」と焦る、その衝動からして間違っているんですかねえ? 別に、買わなくても、生きている分には、何の支障も無いわけですが・・・。