デジビノ
夏休みが九日間もあると、あれこれ雑用で取り紛れるのは最初のうちだけで、瞬く間にやる事がなくなり、やがて、よからぬ事ばかり考えるようになります。 とりわけ有害なのが、「必要ない物を買いたがる」衝動ですな。 この衝動、常にスタンバイして、心の舞台袖で出番を待っているようで、ほんのちょっとでも何か新しい事に興味が向くと、「それをやるなら、まず、これを買わなきゃ!」と、しゃしゃり出て来ます。 で、その衝動に従って買ったりすると、半年も・・・、いや、3か月も・・・、いやいや、場合によっては一週間もしない内に飽きて使わなくなったりするのです。
というわけで、今私を悩ませているのが、望遠撮影ができるカメラです。 ここでいう望遠とは、バード・ウオッチングに耐えられる程度の倍率の事で、コンパクト・デジカメでいえば、大体、10倍ズーム以上、一眼レフの交換レンズでいえば、300ミリ以上を指します。 双眼鏡の倍率で言うと、7倍以上くらい。
どうして、そんな事に引っ掛かってしまったかというと、事の起こりは、図書館で借りて来た、≪カモメ観察ノート≫という写真図説本にあります。 これ↓
書名の通り、国内で観察可能なカモメの種類を、写真に解説を付ける形で紹介している本です。 著者は、鳥マニアのミュージシャンの方でして、素人学術書であると同時に、タレント本でもあるという、かなり変わったカテゴリーに属します。 紹介早々、欠点を論って恐縮ですが、この本、以前紹介した、≪やっぱりペンギンは飛んでいる≫とは別の意味で問題がありまして、どうも、記述内容や写真の同定性に誤謬が含まれているらしいのです。
アドバイザーとして一文を寄せている専門家の人から、「著者はカモメの観察を始めてからまだ年数が浅いこともあり、初めに見せていただいたゲラでは問題点がたいへん多く、かなり初歩的な間違いも見受けられ・・・」と、知識不足を指摘されてしまったばかりでなく、あからさまに、「私の校閲後に追加した写真や解説文は、原則として関知するところではありません」などと突き放されてしまっていて、学術書としては、出版する前から失格しているようなものです。
本来なら、≪監修者≫として名前が載るはずの人物が、わざわざ、≪アドバイザー≫と称しているのは、「監修したとは言えないから、内容に責任は持てない」という意思表示なのでしょう。 なぜ、最終的に本にする内容が揃ってから校閲を頼まなかったのか、それが不可解ですが、それより何より、素人が学術書を作ろうとした事自体に問題がある上に、そういう本を世に出そうとした出版社にも責任があると思います。
ところがですねえ、この本、学術的には問題があるものの、他人の受け売りで本を作ってしまった≪やっぱりペンギンは飛んでいる≫などと違って、どうにも憎めない所があるのです。 とにかく、写真が多い。 しかも、そのほとんどを、著者が自分で撮りに行ったというから、大変な労作です。 そして、一枚一枚の写真の質が、相当高いのです。 カモメの撮影技術に関しては、プロのカメラマンに引けを取らないレベルだと思います。 学術書としては使えないけれど、カモメの写真集として見れば、2500円では安い本でしょう。 返す返すも、最終段階で専門家の監修を受けていない点が惜しまれます。
で、ですね、えらく前説が長くなりましたが、この本の著者が、カモメの撮影で使ったのが、≪デジスコ≫という器材だったらしいのです。 ≪デジスコ≫というのは、≪デジカメ+スコープ≫の略語でして、このスコープというのは、望遠鏡の事です。 ≪デジスコ≫とは、望遠鏡の接眼部にデジカメをくっつけて、望遠写真を撮るシステムの事で、天体写真や野鳥写真を撮る人達の必須アイテムになっているらしいのです。
もし、それだけだったら、興味を持たずにスルーしたかも知れませんが、この本を読んでいる間に、たまたま、ある野鳥サイトを訪問しまして、あっと驚くような写真を見せられたのですが、そこでも、≪デジスコ≫という言葉に出合ったため、印象が強くなってしまったんですな。 また、≪デジスコ≫という聞き慣れない言葉の響きが、記憶に残り易いんだわ。
最初の内は、「望遠鏡にデジカメって、ピントなんかはどうなるんだろう?」と、盛んに疑問符を飛ばしておったわけですが、「考えるより、実際にやってみよう」と思い立ち、望遠鏡が無いから、「似たようなもんだろう」と、双眼鏡で試してみました。 最初は、室内で撮ったんですが、あらやだ、どうしましょ。 撮れるんですよ、これが! マクロ・モードにするとか、そんな小細工は不要で、そのまんまカメラのレンズを双眼鏡の接眼部に近づけ、ピントは双眼鏡の方で合わせれば、それでOK。 これにゃ、ビックリしましたね。 できるんですねえ、デジスコ・・・、いや、望遠鏡ではなく、双眼鏡だから、≪デジカメ+ビノキュラス≫で、≪デジビノ≫。
で、8月11日の事ですが、地震の後で、崖崩れの恐れがあるというのに、近所の山に登って、下界の景色を撮ってみました。 普通に撮ると、↓こんなですが、
デジビノで撮ると、↓このくらいになります。
ちなみに、カメラは、オリンパスの≪C-2≫なので、35ミリ判換算で、36ミリの単焦点レンズ。 双眼鏡は、15年くらい前に会社の記念品で貰ったニコンの≪Libino 7×20 CF≫。 36ミリ×7倍ですから、252ミリくらいになりますな。 デジスコに比べれば、ささやかな倍率ですが、今まで望遠系のレンズを一回も使った事が無い私を仰天させるには充分でした。
で、次は、野鳥を撮ってみようと思って、近所の川の河口に行って、ウミネコを狙ったんですが・・・・、↓ものの見事にしくじりました。
ウミネコは300羽くらい、うじゃうじゃいたんですが、遠くにいるので、252ミリ程度では追いつかないのです。 それに、小さな物を撮って、はっきり分かったんですが、ブレは激しいわ、収差は出るわ、白っぽく霞むわで、とても、人様に見せられる写真になりません。 この白っぽい霞みは、画面の周辺部がケラレているために、カメラが自動的に露出を上げているんでしょう。 補正は可能ですが、デジビノをやるたびに、露出設定を変えるのは、煩瑣この上無し。
その上、モニター点けっ放しで、双眼鏡とカメラの光軸を合わせなければならないので、ほんの数枚で電池が無くなってしまいます。 ケチな私には、これが一番痛い。 カメラと双眼鏡を嵌め込むだけで、光軸がきちっと合うようなアタッチメントを作れば、モニターを点けなくても撮れるかもしれませんが、双眼鏡の方のピントは、そのつど合わせなければならないので、片方で覗いて、片方でカメラと合体させるとなると、かなり変な形になります。
「いい歳した大人が、そんなみっともない物を、外で使えるか」と思い、「いっその事、高倍率ズーム機を買ってしまえ」と、恐ろしい考えが脳裏をよぎったのですが、「待てよ、高倍率ズーム機のファインダーは液晶式で、電池消耗の速さは、モニター点けっ放しと大して変わらないはずだ。 そんなの使えん」と思い止まりました。 ところが、魔が差すとは恐ろしいもので、「一眼デジカメなら、ファインダーは光学式だから、いくら覗いていても、電池は食わないぞ」などと、もっと恐ろしい事を企み出す始末。
飽きっぽい私の事だから、本格的な野鳥観察など、続くわけがないのであって、せいぜい100枚も撮れば、「こんな重いカメラは持ち歩けん」と、押入れ行きになるのは疑いないところです。 その100枚の為に、5万も10万も払おうというのかい? 費用対効果が、完全にマイナスです。 いかんいかん、小人閑居して不善を為すとは、よく言ったもの。 無駄遣いしないように欲望を抑えこんで、休みが終わるのを待つしかありませんな。
そういや、どこぞの野鳥サイトの掲示板で、今盛んにCMをやっているオリンパスの≪PEN EP-1≫が話題になっていましたが、「小さくていいですよね」と、さんざん誉めそやした後で、「ファインダーを覗こうとして、『あれ、無い』と戸惑い、『やっぱり、ファインダーはあった方がいいかなあ』と思いました」などと呑気な事を書いている人がいました。 どうやら、カメラの種類の違いがはっきり分かっていない様子で、大変おめでたい。
≪PEN EP-1≫は、≪マイクロ一眼≫と称しているものの、実際には、ミラーもペンタプリズムも無い、ただのレンズ交換式デジカメに過ぎず、本体部分の機能は、ファインダーレスのコンパクト・デジカメと変わりがありません。 構図やピントを決めている間は、ずっとモニターを点け放しにしなければならないのであって、マニュアル操作で撮る事が多い野鳥撮影には、とても使えますまい。 飛行中の姿を撮る為に、飛び立つのを待つという状況が頻繁にあるらしいですが、待っている間に、バッテリーが切れるのは必定。
ファインダーが付いているコンパクト・デジカメでも、ズーム倍率やピントが、レンズと同調していなければ、単に大体の方向を決めるのにしか役立ちません。 高倍率ズーム機のファインダーなら同調しますが、その代わり液晶ファインダーですから、電池消耗はモニターと同じという事は、すでに書きました。 つまり、野鳥撮影に於いては、光学式ファインダーを持つ一眼デジカメの存在理由が、ちゃんとあるというわけです。 ただ単に、重くて大きくて、ミラーブレが避けられないだけのガラクタではないわけだ。 もっとも、一眼レフで300ミリ以上の望遠レンズとなると、軒並み、大き過ぎの重過ぎである事は否めず、持ち歩く方法を考えるだけでも、頭がくらくらしてきます。
私も、フィルム時代は、一眼レフを持っていましたから、あの、いかにも本格的に見えるカメラに魅力を感じないわけではないのです。 しかし、腰が悪い事もあり、重い大きいは、本当に困るのですよ。 参ってしまうのですよ。 私だけでなく、カッコつけて、一眼レフ買って、すぐに撮らなくなってしまった人は、無数にいると思います。 あれを持ち歩くには、最低でもウエスト・バックが必要ですが、たかが写真撮影の為に、そんな不恰好な物をつけて出掛けられるかってーんですよ。 カッコつけようとして、逆に格好悪くなっていたのでは、元の木阿弥以下ではありませんか。
レンズは交換できなくてもいいから、高倍率ズーム機で、ミラーとペンタプリズムを備えた機種が出ないものですかね。 今の高倍率ズーム機は倍率が凄くて、1200万画素で20倍、200万画素サイズにしぼれば50倍ズームが可能などという、とてつもないスペックを誇っています。 35ミリ判換算すると、1500ミリくらいになる機種もあり、もはや、超望遠ですな。 しかも、一眼デジカメ+望遠レンズより遥かに軽く、カメラ・ケースでベルトに提げても、持ち歩けます。 ただ、こういうズーム倍率が大きいレンズは、設計のどこかで、何かを犠牲にしている可能性が高いので、実際に望遠で撮った時、画質がどうなるかは、試してみなければ分かりません。 ま、ブレが凄いのは、予測できますが。
それにしても、望遠レンズのような扱い難いものを使いこなして、野鳥を撮る人というのは、凄いですな。 特に飛んでいる姿を撮れるというのは、極めて高い撮影技術だと思います。 野鳥サイトの作者も、腕はピンキリで、飛行中のショットが多いほど、腕が高いようです。 また、同じ飛行中でも、気流に乗れる大型の鳥と、羽ばたき続けなければならない小型の鳥とでは難易度が違い、後者の方が格段に難しいとの事。
ああだこうだと偉そうな事を書いていても、フィルム時代からやっている年配者は、飛んでいる鳥を撮れません。 フィルムでは、シャッター・スピードが速くできなかった上に、フィルムが勿体なくて、プロでもなければ、連写などできませんでしたから、飛行中の鳥を捉えられなかったんですな。 勢い、とまっている姿が多くなり、その癖がデジカメ時代になっても抜けないのです。
それでも、とまっている姿を見つけられるだけでも大したもので、私なんざ、そもそも、野鳥を見つけられません。 せいぜい、ハト、カラス、スズメ、ハクセキレイ、ムクドリ、ウミネコ、トビ、シラサギ、といったところ。 それ以外の鳥を目にしていても、名前を知らないものだから、脳が認識しない始末。
そういえば、鳥というのは、写真に撮れなくても、双眼鏡で見ているだけでも、結構楽しいものだという事に、今頃気付きました。 ウミネコやトビは、気流に乗って空中に浮いているのですが、時々、こっちを見るから、ギョッとします。 飛んで来て、街灯の上にとまったウミネコが、生きた蝉を咥えていて、バタバタ暴れるのを、二回くらい咥え直して、パクっと呑み込んでしまったのには、見ていて呆然としました。 自然は厳しいのう。
というわけで、今私を悩ませているのが、望遠撮影ができるカメラです。 ここでいう望遠とは、バード・ウオッチングに耐えられる程度の倍率の事で、コンパクト・デジカメでいえば、大体、10倍ズーム以上、一眼レフの交換レンズでいえば、300ミリ以上を指します。 双眼鏡の倍率で言うと、7倍以上くらい。
どうして、そんな事に引っ掛かってしまったかというと、事の起こりは、図書館で借りて来た、≪カモメ観察ノート≫という写真図説本にあります。 これ↓
書名の通り、国内で観察可能なカモメの種類を、写真に解説を付ける形で紹介している本です。 著者は、鳥マニアのミュージシャンの方でして、素人学術書であると同時に、タレント本でもあるという、かなり変わったカテゴリーに属します。 紹介早々、欠点を論って恐縮ですが、この本、以前紹介した、≪やっぱりペンギンは飛んでいる≫とは別の意味で問題がありまして、どうも、記述内容や写真の同定性に誤謬が含まれているらしいのです。
アドバイザーとして一文を寄せている専門家の人から、「著者はカモメの観察を始めてからまだ年数が浅いこともあり、初めに見せていただいたゲラでは問題点がたいへん多く、かなり初歩的な間違いも見受けられ・・・」と、知識不足を指摘されてしまったばかりでなく、あからさまに、「私の校閲後に追加した写真や解説文は、原則として関知するところではありません」などと突き放されてしまっていて、学術書としては、出版する前から失格しているようなものです。
本来なら、≪監修者≫として名前が載るはずの人物が、わざわざ、≪アドバイザー≫と称しているのは、「監修したとは言えないから、内容に責任は持てない」という意思表示なのでしょう。 なぜ、最終的に本にする内容が揃ってから校閲を頼まなかったのか、それが不可解ですが、それより何より、素人が学術書を作ろうとした事自体に問題がある上に、そういう本を世に出そうとした出版社にも責任があると思います。
ところがですねえ、この本、学術的には問題があるものの、他人の受け売りで本を作ってしまった≪やっぱりペンギンは飛んでいる≫などと違って、どうにも憎めない所があるのです。 とにかく、写真が多い。 しかも、そのほとんどを、著者が自分で撮りに行ったというから、大変な労作です。 そして、一枚一枚の写真の質が、相当高いのです。 カモメの撮影技術に関しては、プロのカメラマンに引けを取らないレベルだと思います。 学術書としては使えないけれど、カモメの写真集として見れば、2500円では安い本でしょう。 返す返すも、最終段階で専門家の監修を受けていない点が惜しまれます。
で、ですね、えらく前説が長くなりましたが、この本の著者が、カモメの撮影で使ったのが、≪デジスコ≫という器材だったらしいのです。 ≪デジスコ≫というのは、≪デジカメ+スコープ≫の略語でして、このスコープというのは、望遠鏡の事です。 ≪デジスコ≫とは、望遠鏡の接眼部にデジカメをくっつけて、望遠写真を撮るシステムの事で、天体写真や野鳥写真を撮る人達の必須アイテムになっているらしいのです。
もし、それだけだったら、興味を持たずにスルーしたかも知れませんが、この本を読んでいる間に、たまたま、ある野鳥サイトを訪問しまして、あっと驚くような写真を見せられたのですが、そこでも、≪デジスコ≫という言葉に出合ったため、印象が強くなってしまったんですな。 また、≪デジスコ≫という聞き慣れない言葉の響きが、記憶に残り易いんだわ。
最初の内は、「望遠鏡にデジカメって、ピントなんかはどうなるんだろう?」と、盛んに疑問符を飛ばしておったわけですが、「考えるより、実際にやってみよう」と思い立ち、望遠鏡が無いから、「似たようなもんだろう」と、双眼鏡で試してみました。 最初は、室内で撮ったんですが、あらやだ、どうしましょ。 撮れるんですよ、これが! マクロ・モードにするとか、そんな小細工は不要で、そのまんまカメラのレンズを双眼鏡の接眼部に近づけ、ピントは双眼鏡の方で合わせれば、それでOK。 これにゃ、ビックリしましたね。 できるんですねえ、デジスコ・・・、いや、望遠鏡ではなく、双眼鏡だから、≪デジカメ+ビノキュラス≫で、≪デジビノ≫。
で、8月11日の事ですが、地震の後で、崖崩れの恐れがあるというのに、近所の山に登って、下界の景色を撮ってみました。 普通に撮ると、↓こんなですが、
デジビノで撮ると、↓このくらいになります。
ちなみに、カメラは、オリンパスの≪C-2≫なので、35ミリ判換算で、36ミリの単焦点レンズ。 双眼鏡は、15年くらい前に会社の記念品で貰ったニコンの≪Libino 7×20 CF≫。 36ミリ×7倍ですから、252ミリくらいになりますな。 デジスコに比べれば、ささやかな倍率ですが、今まで望遠系のレンズを一回も使った事が無い私を仰天させるには充分でした。
で、次は、野鳥を撮ってみようと思って、近所の川の河口に行って、ウミネコを狙ったんですが・・・・、↓ものの見事にしくじりました。
ウミネコは300羽くらい、うじゃうじゃいたんですが、遠くにいるので、252ミリ程度では追いつかないのです。 それに、小さな物を撮って、はっきり分かったんですが、ブレは激しいわ、収差は出るわ、白っぽく霞むわで、とても、人様に見せられる写真になりません。 この白っぽい霞みは、画面の周辺部がケラレているために、カメラが自動的に露出を上げているんでしょう。 補正は可能ですが、デジビノをやるたびに、露出設定を変えるのは、煩瑣この上無し。
その上、モニター点けっ放しで、双眼鏡とカメラの光軸を合わせなければならないので、ほんの数枚で電池が無くなってしまいます。 ケチな私には、これが一番痛い。 カメラと双眼鏡を嵌め込むだけで、光軸がきちっと合うようなアタッチメントを作れば、モニターを点けなくても撮れるかもしれませんが、双眼鏡の方のピントは、そのつど合わせなければならないので、片方で覗いて、片方でカメラと合体させるとなると、かなり変な形になります。
「いい歳した大人が、そんなみっともない物を、外で使えるか」と思い、「いっその事、高倍率ズーム機を買ってしまえ」と、恐ろしい考えが脳裏をよぎったのですが、「待てよ、高倍率ズーム機のファインダーは液晶式で、電池消耗の速さは、モニター点けっ放しと大して変わらないはずだ。 そんなの使えん」と思い止まりました。 ところが、魔が差すとは恐ろしいもので、「一眼デジカメなら、ファインダーは光学式だから、いくら覗いていても、電池は食わないぞ」などと、もっと恐ろしい事を企み出す始末。
飽きっぽい私の事だから、本格的な野鳥観察など、続くわけがないのであって、せいぜい100枚も撮れば、「こんな重いカメラは持ち歩けん」と、押入れ行きになるのは疑いないところです。 その100枚の為に、5万も10万も払おうというのかい? 費用対効果が、完全にマイナスです。 いかんいかん、小人閑居して不善を為すとは、よく言ったもの。 無駄遣いしないように欲望を抑えこんで、休みが終わるのを待つしかありませんな。
そういや、どこぞの野鳥サイトの掲示板で、今盛んにCMをやっているオリンパスの≪PEN EP-1≫が話題になっていましたが、「小さくていいですよね」と、さんざん誉めそやした後で、「ファインダーを覗こうとして、『あれ、無い』と戸惑い、『やっぱり、ファインダーはあった方がいいかなあ』と思いました」などと呑気な事を書いている人がいました。 どうやら、カメラの種類の違いがはっきり分かっていない様子で、大変おめでたい。
≪PEN EP-1≫は、≪マイクロ一眼≫と称しているものの、実際には、ミラーもペンタプリズムも無い、ただのレンズ交換式デジカメに過ぎず、本体部分の機能は、ファインダーレスのコンパクト・デジカメと変わりがありません。 構図やピントを決めている間は、ずっとモニターを点け放しにしなければならないのであって、マニュアル操作で撮る事が多い野鳥撮影には、とても使えますまい。 飛行中の姿を撮る為に、飛び立つのを待つという状況が頻繁にあるらしいですが、待っている間に、バッテリーが切れるのは必定。
ファインダーが付いているコンパクト・デジカメでも、ズーム倍率やピントが、レンズと同調していなければ、単に大体の方向を決めるのにしか役立ちません。 高倍率ズーム機のファインダーなら同調しますが、その代わり液晶ファインダーですから、電池消耗はモニターと同じという事は、すでに書きました。 つまり、野鳥撮影に於いては、光学式ファインダーを持つ一眼デジカメの存在理由が、ちゃんとあるというわけです。 ただ単に、重くて大きくて、ミラーブレが避けられないだけのガラクタではないわけだ。 もっとも、一眼レフで300ミリ以上の望遠レンズとなると、軒並み、大き過ぎの重過ぎである事は否めず、持ち歩く方法を考えるだけでも、頭がくらくらしてきます。
私も、フィルム時代は、一眼レフを持っていましたから、あの、いかにも本格的に見えるカメラに魅力を感じないわけではないのです。 しかし、腰が悪い事もあり、重い大きいは、本当に困るのですよ。 参ってしまうのですよ。 私だけでなく、カッコつけて、一眼レフ買って、すぐに撮らなくなってしまった人は、無数にいると思います。 あれを持ち歩くには、最低でもウエスト・バックが必要ですが、たかが写真撮影の為に、そんな不恰好な物をつけて出掛けられるかってーんですよ。 カッコつけようとして、逆に格好悪くなっていたのでは、元の木阿弥以下ではありませんか。
レンズは交換できなくてもいいから、高倍率ズーム機で、ミラーとペンタプリズムを備えた機種が出ないものですかね。 今の高倍率ズーム機は倍率が凄くて、1200万画素で20倍、200万画素サイズにしぼれば50倍ズームが可能などという、とてつもないスペックを誇っています。 35ミリ判換算すると、1500ミリくらいになる機種もあり、もはや、超望遠ですな。 しかも、一眼デジカメ+望遠レンズより遥かに軽く、カメラ・ケースでベルトに提げても、持ち歩けます。 ただ、こういうズーム倍率が大きいレンズは、設計のどこかで、何かを犠牲にしている可能性が高いので、実際に望遠で撮った時、画質がどうなるかは、試してみなければ分かりません。 ま、ブレが凄いのは、予測できますが。
それにしても、望遠レンズのような扱い難いものを使いこなして、野鳥を撮る人というのは、凄いですな。 特に飛んでいる姿を撮れるというのは、極めて高い撮影技術だと思います。 野鳥サイトの作者も、腕はピンキリで、飛行中のショットが多いほど、腕が高いようです。 また、同じ飛行中でも、気流に乗れる大型の鳥と、羽ばたき続けなければならない小型の鳥とでは難易度が違い、後者の方が格段に難しいとの事。
ああだこうだと偉そうな事を書いていても、フィルム時代からやっている年配者は、飛んでいる鳥を撮れません。 フィルムでは、シャッター・スピードが速くできなかった上に、フィルムが勿体なくて、プロでもなければ、連写などできませんでしたから、飛行中の鳥を捉えられなかったんですな。 勢い、とまっている姿が多くなり、その癖がデジカメ時代になっても抜けないのです。
それでも、とまっている姿を見つけられるだけでも大したもので、私なんざ、そもそも、野鳥を見つけられません。 せいぜい、ハト、カラス、スズメ、ハクセキレイ、ムクドリ、ウミネコ、トビ、シラサギ、といったところ。 それ以外の鳥を目にしていても、名前を知らないものだから、脳が認識しない始末。
そういえば、鳥というのは、写真に撮れなくても、双眼鏡で見ているだけでも、結構楽しいものだという事に、今頃気付きました。 ウミネコやトビは、気流に乗って空中に浮いているのですが、時々、こっちを見るから、ギョッとします。 飛んで来て、街灯の上にとまったウミネコが、生きた蝉を咥えていて、バタバタ暴れるのを、二回くらい咥え直して、パクっと呑み込んでしまったのには、見ていて呆然としました。 自然は厳しいのう。
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