2010/04/25

クリスタル・セブン

  先日書いた、≪腕時計性胃炎≫の続きですが、さんざん、あれこれと悩んだ挙句、結局、労金ポイントの方はQUOカードを貰い、腕時計は自分で買いました。 まったく、胃が痛くなる前に、さっさとそうしとけば良かったんですよ。

  労金ポイントでギフト・カタログを選んだ場合、貰えるのは、2500円相当の品だったんですが、私が買ったのは、9500円の機械式時計です。 えらい、予算オーバーしたわけですが、葬儀の時にしか出番が無いのだから、電池が切れると交換しなければならないクオーツは駄目。 その点、機械式なら、しまいっ放しにしておいても、出番の前日に出して、ゼンマイを巻けば動き出すから好都合、という事情に勝てず、結局、機械式になったのです。

  値段的には、クオーツなら、2500円も出せば、金属ベルトの日常生活防水で、そこそこデザインがいい物が買えるんですよ。 また、精度も、機械式より断然良し。 なにせ、クオーツの精度は、100円時計でも、100万円のブランド物機械式より上ですからのう。 なので、クオーツにして、出番以外は電池を抜いておくというアイデアもあったんですが、ボタン電池という奴が、外しておきさえすれば、何年も放電しないものなのか、今一つ自信が持てず、いざ電池を入れたら動かなかった、では、却って高くつくのではないかと恐れ、断念したのです。

  機械式というと、自動巻きの≪セイコー5≫シリーズが一番安く、5000円からありますが、セイコー5は、裏蓋がスケルトンで、ステンレス裏蓋より、1.5ミリも厚くなり、腕から浮いたように見えてしまうため、私の好みではありません。 オリエントは、文字盤のデザインがどうも気に入らない。 白地の文字盤に、赤いブランド・マークとか入れられると、紅白になってしまって、葬式にして行けないではありませんか。 外国ブランドには、はっとするような美しい物もありますが、1万円以下だと玩具みたいな両面スケルトンばかりで、問題外。 一方、1万円以上だと、私の予算的に問題外。

  で、結局、シチズンの、≪クリスタル・セブン CVT66-0521≫を買いました。 もともとは、1965年に発売された時計で、当時としては最も薄型、且つ、世界初のクリスタル・ガラス採用で、一世を風靡したらしいのですが、さすがに古すぎる話で、私ですら、そんな事は知りませんでした。 私が買ったのは、3年くらい前にリデザインして復刻されたもの。 ネット上で、昔のクリスタル・セブンも見てみましたが、60年代テイスト全開で、あまりにも古めかしく、とてもじゃないが、身に着ける気になれません。 リデザインの効果は絶大ですな。

  3年前調べた時には、白、黒、青、金黒(ケース・ベルトが金色で、文字盤が黒)と四種類あったんですが、今は白と黒は完売して、青と金黒だけになっていました。 金黒は成金趣味そのまんまなので、残るは青だけ。 青は好きな色なので、構わないといえば構わないんですが、葬式用としては、白の方が相応しかったところです。 「3年前に買っておけばなあ・・・」と地団駄踏んだわけですが、後悔先に立ちません。 その代わりといってはなんですが、3年間売れ残ったためか値段が下がり、13500円だったのが、9500円になっていました。 ケチな私には、大変好都合。

  ネットで、送料・代引き手数料ゼロの店を見つけ、そこに注文したところ、テキパキと、受注確認、在庫確認、発送通知のメールが届き、2日後には、宅配便で無事到着しました。 手慣れてるな、この店。 長さ30センチもあるダンボール箱に入っていましたが、中身は普通サイズの腕時計の箱で、それ以外の部分には、緩衝材として、プチプチ・ビニールとくしゃくしゃにした紙が詰まっていました。 なるほど、腕時計を通販で買うと、こういう荷姿で届くわけだ。

  うーむ、こんな高い腕時計を買ったのは、生まれて初めてじゃのう。 今までに買った腕時計というと、最高で3000円くらいでした。 最低は105円。 高校に入る前に父に買ってもらった時計は、3万円くらいしましたが、買ってもらうのと、自分で買うのでは、感動がだいぶ違います。

  ちなみに、私が父に時計を買った貰ったのは、折しも、デジタル時代が幕を開けた年でして、新し物好きだった私は、シチズンから売り出されたばかりの、ソーラー・デジタルを選んだのですが、3万円もしたその時計は、やたらと分厚く、重く、それでいて、急激なデジタル技術の進歩で、あっという間に時代遅れになり、あまつさえ、ソーラー電池は2年もしない内に充電不能になり、時計自体が死んでしまいました。 まだ、持ってますけどね。

  とうわけで、今回私は初めて、機械式時計を買った事になります。 自動巻きという触れ込みでしたが、説明書を読むと、手巻きもできるとの事。 ただ、ネットで調べたところ、機械式時計は、手巻きをし過ぎると、ゼンマイが切れやすくなるらしいです。 そうと知ったら、手巻きは出来ませんな。 せっかく高いお金出して買ったのに、簡単に壊してたまるもんですか。

  驚いたのは、作動音が小さい事でして、父が持っていた昔の自動巻き時計は、カチカチとかなり大きな音がしていましたが、今回買った時計は、耳をよほど近づけても、作動音が聞こえません。 復刻版とはいうものの、ムーブメントには、最新の機械を使っているんでしょうな。 秒針の動きが細かいのにも、目を見張らされました。 さすが、無停止でスーッというわけではありませんが、3分の1秒くらいの間隔で、チチチチチと動くため、1秒刻みでチッチッと刻んでいくクオーツ時計より、ずっと繊細な感じがします。

  文字盤の色は、ネット上の写真では、明るめの青だったんですが、現物を見ると、紺に近く、だいぶ、イメージが違いました。 大人の時計という感じ。 少し暗すぎて、針の視認性が悪いのですが、普段、仕事で使うわけではないので、別に問題は無し。 むしろ、葬式装備としては、このくらい暗いイメージの方が好都合というものです。 不謹慎といえば、不謹慎な都合の良さですけど。

  曜日と日付が出るようになっています。 葬式用に買った私としては、使う前日に起動して、日時合わせをする事になるので、曜日・日付は、不要なばかりか、むしろ面倒なだけで邪魔なんですが、まあ、私みたいな用途のユーザーは確実に超少数派でしょうから、ついているのは仕方ないですな。 竜頭は二段式で、全部引き出すと時間合わせ、一段引き出すと曜日・日付合わせになります。 面白い事に、左に回すと日付が動き、右に回すと、曜日が動きます。 うーむ、よくできている! ちなみに、時間合わせをぐるぐる回して行っても、日付は変わります。

  説明書によると、午後9時から午前3時までの間は、曜日・日付のみの調整はできないとの事。 なぜというに、曜日・日付は時間をかけてゆっくり切り替わるので、切り替わり中に合わせると、ズレて行ってしまうかららしいです。 すなわち、合理的な日時合わせの順序としては、午後9時から午前3時までの時間帯を避けた上で、先に、時間を合わせます。 この時、日付が押し出されて変わるのを確認して、午前か午後かも合わせます。 時間合わせをする段階では、日付・曜日は、何日を示していても、気にしないで宜しい。 というより、気にしては駄目なのです。 時間と午前・午後を合わせた後で、日付と曜日を合わせます。 この順序を守らず、先に曜日・日付を合わせてしまうと、時間合わせの時に日付が進んでしまう危険性があるんですな。

  ネット上で読んだ経験談では、この日時合わせが自分でできずに、時計店に頼みに来るお客がいるらしいです。 さすがに、その程度では、工賃は取らないようですけど。 だけどねえ、この手順のややこしさは、ユーザーが自分でできるかできないかの微妙な線上にあると思いますよ。 家電製品の説明書を読みこなせないタイプの人は、たぶん、これも駄目でしょう。 「午後9時から午前3時までの調整は不可」というのは理解できても、午前と午後を合わせ間違えて、真昼間に日付・曜日が変わってしまい、お手上げになる人が多いのだとか。 いかにもありえる。

  デジタル時計などと違い、秒針のゼロ合わせはできないようです。 一日あたり、20秒から40秒くらい狂うらしいので、秒合わせなんぞしても無意味という事のよう。 なるほど、確かに、そりゃ、無意味だわ。 私に言わせてみれば、秒針そのものが要らないような気が・・・・、いや、秒を数える場合は必要か。 実生活では、息止めゲームでもせん限り、あまり数えないですけどね。 クオーツの場合、秒針が止まる位置と、文字盤の秒目盛りが合わない製品が多くあるそうですが、機械式は、もっと細かく刻むので、そういう問題は発生しません。

  どうでもいい事ですが、腕時計の箱は、厚紙製でした。 昔、父に買ってもらった3万円のソーラー・デジタルは、プラスチックの箱に入っていましたが、1万円台前半くらいの時計では、紙箱になるんですかねえ。 もっとも、どうせ箱なんて、しまっておくだけですから、紙でも充分といえば充分ですけど。 ところで、この箱、非常によくできていて、紙細工の芸術品という趣きがあります。 バラして、展開図を見てみたいもの。

  買ってから、十日くらいたちましたが、今のところ、ずっと動かし続けています。 日付・曜日をズラしたくないばっかりに。 でも、私の事ですから、その内飽きて、箱に入れて抽斗にしまう事になるでしょう。 ゼンマイのもちですが、腕に着けている限りは動き続けています。 外して、5時間くらい経つと、止まります。 会社に行って帰ってくると、止まっているので、振って起こし、時間を合わせる。 これの繰り返し。 手巻きで巻くと、十回くらい回しただけで、8時間くらいもつようです。 ただし、上述のように、手巻きはお薦めじゃないんですな。 ええい、もどかしい。 でも、自動巻きの時計というのは、こういう物なんでしょう。

  自動巻きの時計を、外した時にも止めないように、振動を与え続ける、≪ワインディング・マシーン≫というのが売っています。 以前は、「わざわざ電気を使って、機械式時計を巻くなんて、本末転倒! 馬鹿馬鹿しいにも程がある!」と思っていましたが、自分で自動巻きの時計をもってみると、あのマシーンを買う人の気持ちが何となく分かるようになります。 でも、やっぱり、馬鹿馬鹿しいので、私は買いませんけど。

  そうそう、機械式の時計は、使い続けていると、脂切れや、汚れ、磨耗で、精度が落ちて来ます。 そのために、定期的な分解掃除が必要になるのですが、私の場合、連続して使い続ける気が無いので、それはやる気がありません。 分解掃除は、素人ではできませんから、時計店を通して、時計職人に頼む事になるのですが、なんと、15000円以上はするらしいです。 9500円で買った時計をメンテするのに、15000円払う奴はいませんわな。 最低でも、3万円以上の製品でないと、分解掃除して、延命する価値は無いという事になりますか。

  まあ、使わなきゃいいんですよ。 葬式用ですから、五年に一度も出番は巡って来ますまい。 あまり、使わなくて、買ってある事を忘れてしまわなければいいんですがね。