2012/05/13

バイク・ブレーキ・ディスク交換


  ゴールデン・ウイークの後半、ようやく雨が上がった5月4日に、伊東の≪大室山≫に、バイクで、ツーリングに行って来ました。 好天に恵まれた見事な眺望を堪能して来たんですが、沼津から伊東では、あまりにも近過ぎて、連休明けに職場で話題にするには、些か、インパクトが足りません。

  遠出するとしたら、最後のチャンスになる翌5日に、どこかへ行くべきか、迷うこと一晩。 とりあえず、前々から行ってみたいと思っていた、群馬県の≪鬼押出し≫が候補に挙がっていたものの、ポータブル・カーナビで調べると、往復450キロ以上、所要時間9時間もかかり、行けば、ぐったり疲れきるに決まっています。

  どうしようか、決め兼ねたまま、5日の朝を迎えたのですが、予想よりも遥かに早く目覚めてしまいました。 前日、伊東まで出掛けて、そこそこ疲労していたにも拘らず、時計を見ると、まだ、5時半ではありませんか。 これは、天の意思としか思えません。 行かずばなるまい、≪鬼押出し≫へ。

  朝6時に家を出て、1時間毎に5分ずつ休憩を取った以外は、走りづめに走り、≪鬼押出し≫に到着したのが、11時30分。 急ぎ足で、1時間、見て回り、12時半に向こうを立って、また走り続け、家に着いたのは、夜の7時10分。 走行距離は、往復で、440キロ、走っていた時間は、11時間30分くらいでした。

  カーナビの予想より、距離は短く、時間は長かったわけですが、これは、富士市の≪西富士道路≫が、最近、無料化されたため、そこを通って、距離を節約できた一方で、連休追い込みの5日の事とて、車の出が半端じゃなく多く、帰りに大渋滞に捉まって、時間を喰ったからです。

  日が暮れかけた時間に、精進湖から、富士市内まで、ずーーーっと車の列が続いていましたが、あの人達は、一体どこへ何しに行こうとしてたのやら、皆目、見当がつきません。 夕方5時過ぎに、道沿いにある観光牧場に入っていく車を何台も見ましたが、もう閉園時間でしょうに。 まったく、何を考えているのやら。

  予想以上に時間が掛かったせいもあり、予想通り、げんなり疲れました。 もう、一日ツーリングができる年齢ではないんですな。 カメラを下げていた首と、曲げっぱなしだった右足の膝が痛くなり、帰ってから、一週間以上、苦しむ事になりました。 特に、膝は重症で、左と比べると、一回り大きく膨らんでいます。 治るのか、これ?


  と、長々、書いて来ましたが、ここまでは前置きです。 確かに、≪鬼押出し≫には行きました。 ≪浅間山≫も、ばっちり見た。 しかし、今回のテーマは、旅行記ではありません。 いや、旅行記にしてもいいんですが、そうなると、写真を用意せねばならず、面倒至極。 勘弁して下さいな。 以下、本文。


  ≪鬼押出し≫から帰って以来、バイクのブレーキをかけると、「シュルシュル」という音がするようになりました。 パッドは、去年の夏に替えたばかりなので、まだ、そんなに減っているわけはないんですが、どうした事でしょう?

  見てみたら、フロント・ブレーキのディスクが、ペラッペラに薄くなり、肉抜き孔にバリが出て、それがパッドと擦れて、音が鳴っていると判明しました。 肉抜き孔の部分の厚さを見てみると、0.5ミリも残っていないように見えます。 手でディスクを掴んで、ぐっと押すと、曲がってしまいそうな感触が・・・。 こいつぁー、いけねー。 一刻も早く、交換せねば。

  で、5月9日、有給休暇で体が空いていたので、前にスピード・メーター・ケーブルを取り寄せてもらった、バイク用品店に行って来ました。 店に置いていないのは分かっていますが、取り寄せてもらえば、一週間以内には届くはずです。 以下、店員とのやり取り。

「ヤマハ・セローの、フロント・ブレーキ・パッドが欲しいんですけど」と切り出すと、
「あ・・・」と言って、一瞬、表情を凝固させ、「置いてませんね」と続けました。

  ここまでは、予想通り。 その後が、予想外。

「取り寄せてもらえますか」と訊くと、
「純正部品は、取り扱っていません」と、にべもない返事。

  えっ! 何それ! スピード・メーター・ケーブルだって、純正部品だったじゃないか。 どうして、急に駄目になったのよ?  しかし、取り扱っていないというものを、無理やり、取り寄せさせる術はありませんから、狐に抓まれたような顔をして、引き下がるしかありませんでした。

  他の店にも行きましたが、やはり、同じ返事。 そもそも、沼津市内のバイク用品店は、みんな同じ系列ですから、一軒が駄目なら、全て駄目なのは、当然といえば当然です。 最後に行った店で、「今年の2月には、純正品でも取り寄せてもらえたんですが、それ以降、何か、制度が変わったんですか?」と訊いてみましたが、業界内事情は漏らさない方針なのか、詳しい事を教えてくれません。

  ちなみに、ネット上では、以前から、純正品は買えないようになっていました。 たぶん、バイク・メーカーが正規ディーラーの儲けを確保するために、ネット・ショップにかけていた規制が、更に強まって、実店舗の部品屋にも卸さなくなったのではないでしょうか。

  バイクを買ったディーラーには、店員の一人に遺恨があって、行きたくなかったので、「まずい事になったな・・・」と、渋い顔で引き上げて来ました。 まったく、骨折り損のくたびれもうけ。 せっかくの休みだというのに、ろくな事が無い。

  しかし、捨てる神あれば、拾う神あるもの。 試しに、ネットで、ディスクの互換品を探してみたら、私のバイクに着けられる品が見つかったのです。 しかも、送料を入れても、純正品の半額以下です。 他に選ぶ道はないので、即、注文。 いやあ、店で純正品を買えなくて良かった。 禍転じて福となったわけです。

  ついでに、送料を節約するため、消耗品であるブレーキ・パッドも注文しておきました。 こちらは、純正品の6分の1という、破格値です。 ただし、パッドは、品によって、効きが悪い物もあるので、使ってみないと、良し悪しは分かりません。


  9日の昼過ぎに注文して、届いたのが、11日の夜です。 もっとも、例によって、私が在宅している時に届けてもらうよう、時間指定で夜を選んだので、何も指定しなければ、もっと早く着いたのかもしれません。 ディスクが2300円、パッドが750円、送料が700円で、合計3750円。 純正品で、ディスクとパッドを買うと、合わせて、11000円くらいしますから、無茶苦茶な安さです。


  縦横高、30×20×20センチくらいのダンボール箱を開梱して行きます。 ディスクは、全くの平板。 今は見る影もなく抉れていますが、純正品も、最初はこんなものだったんでしょうか。 ビニールに入っているだけで、メーカー名や商品名は無し。 ちなみに、ネット・ショップでの商品名は、≪ブレーキディスクローター 15号 ヤマハ TW225 セロー225 他 新品≫というものでした。

  パッドは、台紙にビニールで、ぴっちり真空パックされていました。 見たところ、質は良さそうです。 台湾製で、≪SOK Lih Dan Brake Lining Industrial≫と書いてあります。 そもそもは、予備のつもりで買ったのですが、新しいディスクには、新しいパッドを組み合わせた方が良い事に気づき、「これに着け換えても、いいかな」と、思い始めました。


  で、12日の土曜日、朝から、交換作業に取り掛かりました。 なに、タイヤの交換に比べたら、ディスクの交換なんぞ、物の数ではありません。 車輪は外さなければなりませんが、タイヤ交換の時のノウハウがあるので、全く、恐るるに足らず。

  まず。服装を整えます。 上は、普段着のシャツですが、下は、会社で使っている作業ズボンを穿きました。 汚れ防止のためです。 同じ理由で、軍手も装着。 特別汚れている所に触れる時だけでも、手袋をしていれば、手を洗わなければならない回数が、随分減ります。 切り傷など、怪我もし難くなります。

  作業場所は、タイヤ交換をした時と同じ、カー・ポートの下。 庭からブロックを二個運び、バイクの下に置きます。 一つを寝かせ、一つをその上に立て、物置から持って来た木片で、高さを調整します。 その上に、バイクのフレームの前下端を載せて、前輪を浮かせました。 スレスレ程度に浮けば良し。 相変わらず、車軸のシャフトは、ナットを取るだけで、簡単に抜けます。 ディスクは、減らずに残っている外縁部が引っかかって、パッドの間から抜き出すのに苦労しました。 力任せに無理やり引き抜いて、先へ進みます。

  車輪を地面にじか置きすると、ハブを傷つけてしまいます。 タイヤ交換の時には、新タイヤや旧タイヤを下敷きにできたのですが、今度は何もありません。 そこで、厚めの板を三方に置き、その上にウエスやダンボールを敷いてから、車輪を横に倒して、載せました。 三点で支えると、板の高さが違っていても、安定していて、ガタつきが起こりません。

  ディスクは、6本の10ミリ・ボルトで止まっていました。 コンビネーション・レンチでは緩まなかったので、ストロークを長くしようと、パイプを持って来ましたが、レンチの後ろ側がパイプに入らず、使えませんでした。 物置の工具箱を漁ったところ、10ミリの長いメガネ・レンチがあったので、それを持ってきたら、パイプで延長するまでもなく、そのままで緩みました。

  元着いていた孔に戻せるように、地面にボルトを並べて置きます。 別に、他の孔でも入るんですが、念の為です。 ボルトを外した時の注意点は、ネジの部分を地面につけない事です。 ついうっかり、踏んでしまったりすると、ネジが潰れて、入らなくなる事があります。 ネジの汚れを取ろうとして、ウエスで拭いたりするのも、よくありません。 綺麗にするつもりで、逆に、ゴミをつけてしまう危険性あり。 異物が挟まると、途中で回らなくなってしまう事もあります。

  古いディスクを外し、新しいディスクと重ねてみると、締め付け孔の6ヵ所は、ぴったり合いましたが、締め付け孔を合わせると、肉抜き孔の位置は、ズレます。 鋳造品ではなく、鋼板を打ち抜いて作ってあるのでしょう。 使用上は、何の問題も無いです。

  締め過ぎないよう、短いコンビネーション・レンチの方で、ボルトを締めました。 ボルトにせよ、ナットにせよ、緩める時には、どんなにストロークの長いレンチを使っても平気ですが、閉める時には、緩めた時と同じレンチは使えません。 締め過ぎになってしまうからです。 車載工具がある場合、それを使って、力いっぱい締めれば、大体、トルクの許容範囲内にはいると思います。

  車輪を外したついでに、タイヤの空気圧を測ったら、規定125kpaのところ、90kpaしかなかったので、車輪を着ける前に、補給しておきました。 タイヤ交換してから、半年弱、経過していますが、一度も補給していませんから、この程度の減りは、気にせんでも良いでしょう。 リヤ・タイヤも測りましたが、そちらは、より、減りが少なかったです。

  外したディスクを観察すると、平らな部分が無いくらい、抉れています。 よくもここまで、減ったものです。 パッドも、ディスクに合わせて、偏った減り方をしていて、とてもじゃないけど、新品のディスクには、組み合わせたくない状態です。 この時点で、パッドも新品を使う事に決定しました。 ついでに、買っておいて、正解だった。

  ところが、パッドとパッドの隙間に、マイナス・ドライバーを挿して、こじ開けようとしても、ディスクが入るほどの幅が開きません。 力任せにやると、パッドのゴムの端が削れてしまいます。 あーあー、新品なのにー。 まったく、パッドの隙間を簡単に広げる道具というのは、開発されないものでしょうか。

  一旦、パッドを外し、車載工具のクラッチ・ナット・レンチを板代わりにして、ブレーキのピストンに宛がい、シリンダーに押し込んでみます。 油圧を下げるため、ブレーキ・オイルのリザーバー・タンクの蓋を取る事にします。 厄介な事に、持ち上げた車体が左に傾いている関係で、ハンドルが左に切れて、リザーバー・タンクも傾いており、そのまま蓋を開けると、オイルが零れてしまいそうです。 そこで、近くにあった自転車から、荷紐を取り、右ミラーの支柱と荷台の間にかけて、ハンドルを水平にしました。 ええい、面倒臭い。

  クラッチ・ナット・レンチや、ブレーキ・パッドを当てて、力任せに押し込むと、ようやく、パッド二枚と、ディスク一枚が入るだけの隙間が開きました。 スピード・メーターの端末を通し忘れないように注意しつつ、車輪を入れて行きます。 パッドの隙間が閉じてしまって、何回かやり直しましたが、あれこれ按配している内に、どうにか収める事に成功しました。

  家の前の道路で、押しては止め、押しては止めを繰り返して、ブレーキの効き具合を調べます。 まずまずの効き方ですな。 もしかしたら、純正品より、いいのでは? とっくに、互換品を試してみるべきでした。 今まで、どれだけ、無駄金捨てて来た事か。 もっと速い場合、どうなのかと思い、エンジンをかけて、ノーヘルで試し乗り。 家の前の道路を、1ブロック分だけ、往復します。 やはり、問題無し。

  外したディスクやパッドを洗い、工具類を片付けていた時、ふと思い出して、リヤ・ブレーキのパッドを調べてみました。 もうだいぶ、減っているはずです。 外してみると、交換目安の溝は、とっくに出てしまっています。 こちらも、換えた方がいいか。

  リヤのパッドは買わなかったのですが、前のバイクの時に買って、効きが悪いので、すぐに外してしまった、≪RK≫というメーカーのパッドがあったので、押入れから出して来て、着けてみました。 このまま、ずっと、死蔵していても、仕方が無い。

  また、試し乗り。 リヤ・ブレーキは、どうせ効かないから、エンジンをかけて、スピードを出して試すまでもないのですが、押していたのでは、右側にあるリヤ・ブレーキ・ペダルが踏めなので、致し方ありません。 案の定、効きは悪かったですが、まあ、こんなもんでしょう。 よし、これで暫くの間、ブレーキ関係の心配はしなくて済むぞ。

  片づけが終わってから、外したディスクを仔細に見てみると、なんと、回転方向に、円弧状の亀裂が入っていました。 親指で押すと、「パキッ!」という感じで、見事に隙間が開き、向こうが見えるではありませんか。 口あんぐりです。 これで、よく、≪鬼押出し≫なんか、行って来たな。 ほとんど、自殺行為だ。 父にも見せましたが、驚くより、呆れていました。