野宿ツーリングの準備
さて、夏休みの前半は、≪天城山≫へ行って来たわけですが、この休みは、もう一ヵ所、バイクで野宿ツーリングに出かけようと、半月ほど前から決めていました。 きっかけは、一ヶ月くらい前に、職場で、キャンプの経験に関する話題が出て、私が昔、バイクで野宿ツーリングをした事を話すと、「非常に、意外!」という反応があった事でした。
仕事の休み時間に、よく読書をしていたので、「本の虫」のイメージがあり、そんなワイルドな経験の持ち主とは、思われていなかった様子。 最後に野宿ツーリングに行ったのは、13年前で、その頃の同僚は皆、それを知っていたわけですが、この間に、人の入れ替わりが繰り返され、いつしか、私の過去を知る者が、一人もいなくなっていたんですな。 光陰矢の如し。
で、その時は、単に、思い出話をしただけだったのですが、暫く経ってから、ふと思ったのが、「今はもう、昔のように、野宿ツーリングはできなくなってしまったのだろうか?」という、自問でした。 体力的には、目立って衰えたところは無いので、「その気になりさえすれば、まだ、できるのではないか?」と思い始めたのです。
目的地に関しては、随分前から、候補が決まっていました。 昔のツーリングでは、本州・九州・四国の海岸線を回ったのですが、房総半島から鹿島灘にかけてと、長崎県だけは、走り残していたのです。 長崎県は遠過ぎますが、房総半島・鹿島灘なら、2泊3日もあれば、充分に回って来れるはずです。 よし、決定だな。
ちなみに、バイクではなく、電車でなら、どちらにも行った事はあります。 長崎は、高校の修学旅行で行きましたし、房総半島と鹿嶋神宮には、高校2年の時、家族旅行で行きました。 また、専門学校に行っていた頃、九十九里浜のどこかで、1泊2日の合宿をした事もありました。 ただし、この合宿の時には、電車で行ったのか、バスで行ったのか、交通手段について、全く記憶が残っていません。
行った事はあるものの、連れて行ってもらったのと、自力で走ったのとでは、大違いなわけでして、バイクで行っていない事に、長い間、心残りがあったのです。 それが、この度、行く気になったわけで、思い立ったが吉日、億劫にならない内に、実行してしまうに限ります。
ルートで、いの一番に思い浮かんだのが、≪東京湾アクアライン≫です。 ≪海ほたる≫がある、例の海底トンネルですな。 名前が覚え難くていけない。 ≪東京湾トンネル≫にすれば、痴呆老人でさえ、一度聞いたら忘れないものを。
静岡県沼津市から房総半島を目指そうとした場合、道路網が煩雑な上に渋滞が予想される、東京の都心を避けるのは常識ですから、自然に、「東京湾を渡ってしまえ」という発想になるのです。 ところが、サイトで料金を調べてみると、2400円くらいする様子。 なぜ、「くらい」などと、曖昧に書くかと言うと、二輪車が車型分類に載っていないから。 たぶん、「軽自動車等」に入ると思うのですが、定かな事は分かりません。
2400円は、強ち高いとは言えませんが、私の感覚的には、特段安くもなく、微妙なところ。 海底トンネルだから、景色は全く見れませんし、≪海ほたる≫にも、どうしても行きたいというわけではありません。 それに、高速道路は、高架でもトンネルでも怖いです。 どーしたもんでしょーか・・・。
ふと、「フェリーは無いかな?」と思いつき、調べてみたら、海底トンネルより、かなり南になりますが、≪東京湾フェリー≫というのが、神奈川県横須賀市の久里浜港から、千葉県富津市の金谷港の間を結んでいるのを発見しました。 料金は、二輪で、1600円くらい。 おお、安いじゃん。 さすが、船便じゃん。
金谷港は、房総半島の下端から3分の1くらいの所に位置していて、そこに上陸するという事は、半島の東京湾側を上3分の2、端折る事になりますが、まあ、ケチな私の事ですから、安値の魅力には抗えません。 かくして、フェリーに決定。
実は私、水に入るのが嫌いでして、沈没の恐れがある船には、滅多に乗りません。 フェリーなんか、自力では、一度も乗った事が無い。 当然、乗り方も知らないわけですが、歳を取って来ると、世の中をナメてかかる傾向が深まるようで、「まー、行きゃー、どーにかなるだろー」という事で、深い事は考えないようにしました。
さて、ルート選定と平行して、荷物の準備をしなければなりません。 昔使っていた野宿ツーリング用の装備を、押入れの天袋から下ろして来ました。 登山用のリュックなのですが、確か、ホーム・センターで、3000円くらいで買った品。 今の登山リュックは、縦長ですが、私のは、両脇にサイド・ポケットがついた、横長型です。 いやいやいや、流行なんて、どうでもいいんです。 使えさえすれば。 第一、登山じゃなくて、ツーリングだし。
テントは、リュックのサイド・ポケットの片側に収まる大きさになっています。 ビニールで自作したものだからこそ、できる芸当。 骨が無く、前後を紐で吊る、簡易テントですが、こんな物でも充分です。 市販品は、骨があったり、防水布が別に付いていたりで、どうしても大きく重くなります。 実は、最初の頃は、3人用の市販テントを使っていたのですが、張るのも畳むのも時間がかかってしまって、うんざりして、やめたという経緯があります。
他に、リュックの中に入っているのは、テントの下に敷くビニール、合羽上下、洗面用具、タオル、水が入った500ccのペット・ボトルが3本。 洗面用具の内訳は、旅行用の歯磨きセット、プラスチックのコップ、小型の鏡、電気髭剃り、濡れティッシュ。 水は、飲料と洗面用と兼用です。 野宿場所には、水道の蛇口が無いので、それに対応するため。
髭を剃ったら、濡れティッシュで顔を拭き、歯を磨いたら、コップに水を移して、口を漱ぎます。 ペット・ボトルに直接口をつけてしまうと、飲み口に歯磨き粉がついて、飲用にできなくなってしまうので、わざわざ、コップを持って行っている次第。 当然以前の事のようでも、最初に、このスタイルに辿り着くまでには、さんざん頭を使いました。
装備を括りつける為には、バイクに荷台が無ければならず、昔は、ツーリングに出かける前に、取り付けていたものですが、今は、通勤にも荷台を使っているため、わざわざ取り付ける必要はありません。 楽なもんだ。
登山用リュックの他に、ナップ・ザックも、背負って行くのですが、中は、日記用のノートが入っているだけです。 コンビニで食料を買った後だけ、パンやおにぎりが入りますが、すぐに食べてしまうので、普段は、ほとんど、重量を感じません。 背中でも腰でも、体に直接、重い物を着けてしまうと、長距離ツーリングでは、駄目なのです。 肩が凝ったり、腰が重くなったりで、さんざんな目に遭います。
服装は、通勤と、ほぼ同じで、下はチノ・パン、上は、半袖シャツと、春物のジャンパーを着て行きますが、今回は、ポケット・ベストを間に挟みました。 ポケットが四つ付いているので、財布やら、免許入れやらを収めるのに便利。 靴は、通勤に使っているスニーカーです。 バイクのシフトをするので、紐式ではなく、ファスナー式の奴。
問題だったのは、カメラです。 普段使っている、ペンタックスの≪X70≫は、大き過ぎて、バイクで持ち歩くのには、甚だ不便です。 今回、野宿するとなると、雨で濡らしたり、衝撃で壊したりする危険性もあり、とても、持って行く気になりません。
≪天城山≫に持って行った、日立の≪HDC-2≫は、もう古くて、惜し気が無いし、乾電池式ながら、300枚くらいは楽に撮れるので、旅行には打って付けなんですが、≪天城山≫の写真が、あまりにもひどかったのと、この春買い換えたパソコンに非対応で、画像を取り込む方法が、メモリー・カードを差し替えるしかなく、そうすると、写真の順番が狂ってしまうという、致命的欠陥が露呈してしまったため、これまた、持って行く気になりませんでした。
というか、≪HDC-2≫は、これだけ使用条件が悪化したら、もう引退させるしかありませんな。 家電量販店で、一万円ポッキリで買ったのが、2004年の4月。 固定焦点で、マクロはほとんど利かず、露出はテキトー、画像の記録に時間がかかる等々、最初は、しょーもないカメラだと思いましたが、とにかく、電池の持ちがよく、シャツの胸ポケットに入るぎりぎりの大きさ・重さである上、一応、200万画素で、天気が良ければ、そこそこ、まともな写真が撮れるという事で、8年間、常に使える状態で、手の届く所に置いていました。 岩手にも持って行ったし。
とはいうものの、マクロが使えないのと、曇りの日の、葬式めいた暗い写真には、前々から困ったものだと思っていて、その内、買い換えようと検討していたのも事実。 今は、1万円以下で、遥かに高性能なのが、ゴロゴロ売ってますし。 で、野宿ツーリングに行くのを機会に、買ってしまう事にしました。 というか、こんなきっかけでも無いと、買えないのです。 ケチだから。
≪天城山≫へ行ったのが、8月13日。 翌14日の午前中には、≪HDC-2≫がパソコンに非対応である事が判明し、その日の午後から、新しいカメラを吟味し始めました。 新聞の折り込みチラシを調べたり、家電量販店に値段を見に行ったり。 ネットでも調べましたが、aigoの≪T1458≫など、面白そうな品もあったものの、16日には出発するので、通販では間に合いそうにありません。
そういや、ネット・ショップの中に、「お盆なので、休みます」という店がありましたが、稼ぎ時に休むとは、商人の末席にも加えられぬ、甚だしい不心得。 一般人が休んでいる時に働かなくて、銭を儲けられると思ったら、大間違いですぜ。
結局、14日には決まりませんでした。 15日になって、沼津の家電量販店、ノジマへ行ったら、フジの≪FINEPIX JX550≫というのが、6980円で売っていて、ぐっと興味を惹かれました。 光学5倍ズームで、≪X70≫の24倍ズームには遠く及ばないものの、1600万画素なので、後でトリミングすれば、もっと拡大できるはず。
撮影性能よりも、注目すべきは、重さです。 本体に、バッテリーとカードを含めて、113グラムですから、シャツの胸ポケットに入れても、下に引っ張られる重さを感じません。 コンパクト・カメラは、持ち運び方法が重大でして、ポケットにいれられるか、専用ケースを腰に吊るすか、鞄に入れなければならないかで、使い勝手が全く違って来ます。 もちろん、軽ければ軽いほど良くて、特に、胸ポケットに入る重さは、極めて貴重と言えます。
余談ながら、「今、女性に、ミラーレス一眼が人気」などと聞くと、他人事ながら、熱が出て来ます。 愚かな者どもよ・・・。 そんな重いの、使い物にならんわ。 「高いカメラなら、いい写真が撮れるはず」という、低次元な思い込みが命取り。 あまりにも不便なので、すぐに使わなくなります。 高かったのにねえ。
そもそも、ミラーレス一眼は、機構的には、一眼レフでも何でもなく、単なる交換レンズ式のコンパクト・デジカメに過ぎないのですが、交換レンズまで持ち運ぶとなれば、鞄に入れるか、カメラ・バッグを肩にかけるしかなく、そんな大掛かりになるのでは、写真撮影が目的の時にしか、持ち出せません。 旅行のお供なんて、とても無理無理。
交換レンズの持ち運びを断念し、その日の撮影目的に合わせて、一本だけに絞るとしても、一番薄いレンズでも、本体に着けた状態で、専用ケースに入らんでしょう。 というか、そもそも、腰に吊る専用ケースなど、用意されていないのでは?
大体、「一眼」という、ただの言葉に踊らされているのが情けない。 まず、意味を調べなさいよ。 一時間もあれば、理解できる事なんだから。 ミラーレス一眼が、一眼レフでない事も、一眼レフ機構自体が、デジカメでは、ほとんど意味が無い事も、すぐに分かります。
厄介なのは、写真が巧い人でも、一眼を使っている人が多い事です。 そういう人は、一眼でなくても、いい写真を撮れるのですが、カメラ欲しい病を患っているために、新型が次々と出る一眼を買わずにはいられないのです。 そんな人達を真似ても、無意味でしょうが。
おっと、つい熱くなってしまいました。 話を戻します。 とりあえず、≪FINEPIX JX550 ≫を最有力候補にしておいて、他の店にも回ります。 ≪X70≫を買った、キタムラへ行きましたが、カメラ・コーナーが大幅に縮小されていて、びっくりしました。 ああ、たぶん、家電量販店や、ネット通販との価格競争に負けて、売れなくなってしまったんでしょうなあ。 カメラ専門店で買ったからといって、何か特典があるわけじゃないものねえ。
次に、コジマへ。 ここには、キャノンの≪PowerShot A2300≫が、6980円で売っていました。 写真の写りを優先すれば、キャノンが一番だと思うのですが、キャノンの・コンパクト・デジカメは、過去に2台買って、2台とも3年くらいで壊れているので、ちと二の足を踏むところ。 ついでながら、イメージ・キャラクターが、吉高某なのも、マイナス要因。 いや、別に、私が個人的に、好きになれないというだけの話なんですが。
で、結局、ノジマへ戻り、≪FINEPIX JX550≫を買う事にしました。 高い買い物をする時には、さんざん悩むのが私の癖なのですが、今回は、ツーリングの出発が翌日に迫っていた為、存分に悩む時間が無かったのです。 6980円のところ、ポイントを使って、6886円。 大して変わらんか。 カメラを買ったのは、2年半ぶりです。
家に帰り、すぐに開梱。 大急ぎで、説明書を読みます。 まあ、コンパクト・デジカメの使い方なんて、似たようなものですけど。 びっくりしたのは、最小画像サイズが、2304×1728になっていた事です。 約400万画素くらいですか。 普段、≪X70≫で使っているのは、1024×768で、約80万画素なので、5倍も大きいっす。 いーや、参ったな、おい。 こういう時代か。
どうせ、ネット上でしか使いませんから、100万画素以下で充分。 それより大きいと、データ量が多くなり過ぎて、取り込みには時間がかかるわ、保存場所は喰うわで、いい事無し。 しかし、すでに買ってしまった以上、後悔先に立ちません。 最小サイズに設定して、持って行く事にしました。
バッテリーの充電方式は、ちょっと変わっていて、独立した充電器ではなく、バッテリーをカメラ本体に入れたまま、USBケーブルで、コンセント・プラグを大きくしたような形のアダプターと繋ぐようになっていました。 進化と言うべきか、そのつど、パソコンからUSBケーブルを外さなければいけないので、不便と言うべきか。
まあ、カメラの件は、それで片付きました。 後は、細かいルートの書き出しです。 ポケットに入れられるように、小さなメモ用紙に、通る道路の、国道・県道番号と、曲がる交差点名、通過する市町村名などを書き込んで行きます。 ポータブル・カーナビも参考にしましたが、ナビそのものは持って行けません。 そもそも、父の物なので、水濡れや衝撃で壊したくないからです。
書き込みながら、どこへ寄るかを決めて行ったので、かなりの泥縄式。 1号線で箱根を越え、神奈川県は、相模湾の海岸線を1号と134号で抜け、逗子からは、県道で三浦半島を横切って、横須賀の久里浜港へ。 フェリーで房総半島に渡ったら、金谷港から東京湾岸を南下し、海岸線をなぞって、洲崎灯台、野島崎灯台を見ます。
それから、太平洋岸を北東へ上り、九十九里浜を通過。 犬吠埼を回り、鹿島灘を北上。 有名な大洗海水浴場を拝み、そこから内陸へ。 6号で東京方面へ進み、途中、県道で、霞ヶ浦を見に行き、また6号へ戻って、千葉県の柏市で、16号に乗り換えます。 16号は、東京を環状に迂回しているので、ぐるっと大回りして、神奈川へ入り、246号に乗り換えれば、後は、沼津まで、道に迷う事はありません。
野宿ツーリングなので、眠る場所がどこになるかは、行ってみなければ分かりません。 距離を計算したわけではないのですが、過去の経験と照らし合わせて、このくらいのコースなら、遅くとも、2泊3日くらいで帰ってこれるはず。 三日かかっても、夏休みは、まだ一日残っているので、後片付けには充分です。
さて、準備はここまで。 いよいよ、翌日には、13年ぶりの野宿ツーリングに出発します。
↑ フジフィルムの、≪FINEPIX JX550≫。 ごくごくありふれた、沈胴式ズームの、コンパクト・デジカメです。 外寸は、94.0×56.6×21.3ミリ。 重量は、113グラム。 突起部をなだらかに丸めてあって、角張ってないので、胸ポケットに、スルリと入って行きます。
↑ 充電器。 というより、充電タップ。 バッテリーをカメラに入れたまま、USBケーブルで、このタップとカメラを繋ぎ、コンセントに挿せば、充電されます。 旅先に持って行くには、この大きさは便利です。 もっとも、コンセントがある部屋に泊まる場合に限りますが。
↑ パッケージ。 ≪FINEPIX JX550≫は、本来、海岸向けの製品らしく、箱の外面には、日本語の表記は一切ありませんでした。 フジのサイトにも、ページがありません。 取扱説明書は日本語ですが、他の幾つかの機種と兼用でした。 独立した充電器が入っていないため、箱は小さいです。
仕事の休み時間に、よく読書をしていたので、「本の虫」のイメージがあり、そんなワイルドな経験の持ち主とは、思われていなかった様子。 最後に野宿ツーリングに行ったのは、13年前で、その頃の同僚は皆、それを知っていたわけですが、この間に、人の入れ替わりが繰り返され、いつしか、私の過去を知る者が、一人もいなくなっていたんですな。 光陰矢の如し。
で、その時は、単に、思い出話をしただけだったのですが、暫く経ってから、ふと思ったのが、「今はもう、昔のように、野宿ツーリングはできなくなってしまったのだろうか?」という、自問でした。 体力的には、目立って衰えたところは無いので、「その気になりさえすれば、まだ、できるのではないか?」と思い始めたのです。
目的地に関しては、随分前から、候補が決まっていました。 昔のツーリングでは、本州・九州・四国の海岸線を回ったのですが、房総半島から鹿島灘にかけてと、長崎県だけは、走り残していたのです。 長崎県は遠過ぎますが、房総半島・鹿島灘なら、2泊3日もあれば、充分に回って来れるはずです。 よし、決定だな。
ちなみに、バイクではなく、電車でなら、どちらにも行った事はあります。 長崎は、高校の修学旅行で行きましたし、房総半島と鹿嶋神宮には、高校2年の時、家族旅行で行きました。 また、専門学校に行っていた頃、九十九里浜のどこかで、1泊2日の合宿をした事もありました。 ただし、この合宿の時には、電車で行ったのか、バスで行ったのか、交通手段について、全く記憶が残っていません。
行った事はあるものの、連れて行ってもらったのと、自力で走ったのとでは、大違いなわけでして、バイクで行っていない事に、長い間、心残りがあったのです。 それが、この度、行く気になったわけで、思い立ったが吉日、億劫にならない内に、実行してしまうに限ります。
ルートで、いの一番に思い浮かんだのが、≪東京湾アクアライン≫です。 ≪海ほたる≫がある、例の海底トンネルですな。 名前が覚え難くていけない。 ≪東京湾トンネル≫にすれば、痴呆老人でさえ、一度聞いたら忘れないものを。
静岡県沼津市から房総半島を目指そうとした場合、道路網が煩雑な上に渋滞が予想される、東京の都心を避けるのは常識ですから、自然に、「東京湾を渡ってしまえ」という発想になるのです。 ところが、サイトで料金を調べてみると、2400円くらいする様子。 なぜ、「くらい」などと、曖昧に書くかと言うと、二輪車が車型分類に載っていないから。 たぶん、「軽自動車等」に入ると思うのですが、定かな事は分かりません。
2400円は、強ち高いとは言えませんが、私の感覚的には、特段安くもなく、微妙なところ。 海底トンネルだから、景色は全く見れませんし、≪海ほたる≫にも、どうしても行きたいというわけではありません。 それに、高速道路は、高架でもトンネルでも怖いです。 どーしたもんでしょーか・・・。
ふと、「フェリーは無いかな?」と思いつき、調べてみたら、海底トンネルより、かなり南になりますが、≪東京湾フェリー≫というのが、神奈川県横須賀市の久里浜港から、千葉県富津市の金谷港の間を結んでいるのを発見しました。 料金は、二輪で、1600円くらい。 おお、安いじゃん。 さすが、船便じゃん。
金谷港は、房総半島の下端から3分の1くらいの所に位置していて、そこに上陸するという事は、半島の東京湾側を上3分の2、端折る事になりますが、まあ、ケチな私の事ですから、安値の魅力には抗えません。 かくして、フェリーに決定。
実は私、水に入るのが嫌いでして、沈没の恐れがある船には、滅多に乗りません。 フェリーなんか、自力では、一度も乗った事が無い。 当然、乗り方も知らないわけですが、歳を取って来ると、世の中をナメてかかる傾向が深まるようで、「まー、行きゃー、どーにかなるだろー」という事で、深い事は考えないようにしました。
さて、ルート選定と平行して、荷物の準備をしなければなりません。 昔使っていた野宿ツーリング用の装備を、押入れの天袋から下ろして来ました。 登山用のリュックなのですが、確か、ホーム・センターで、3000円くらいで買った品。 今の登山リュックは、縦長ですが、私のは、両脇にサイド・ポケットがついた、横長型です。 いやいやいや、流行なんて、どうでもいいんです。 使えさえすれば。 第一、登山じゃなくて、ツーリングだし。
テントは、リュックのサイド・ポケットの片側に収まる大きさになっています。 ビニールで自作したものだからこそ、できる芸当。 骨が無く、前後を紐で吊る、簡易テントですが、こんな物でも充分です。 市販品は、骨があったり、防水布が別に付いていたりで、どうしても大きく重くなります。 実は、最初の頃は、3人用の市販テントを使っていたのですが、張るのも畳むのも時間がかかってしまって、うんざりして、やめたという経緯があります。
他に、リュックの中に入っているのは、テントの下に敷くビニール、合羽上下、洗面用具、タオル、水が入った500ccのペット・ボトルが3本。 洗面用具の内訳は、旅行用の歯磨きセット、プラスチックのコップ、小型の鏡、電気髭剃り、濡れティッシュ。 水は、飲料と洗面用と兼用です。 野宿場所には、水道の蛇口が無いので、それに対応するため。
髭を剃ったら、濡れティッシュで顔を拭き、歯を磨いたら、コップに水を移して、口を漱ぎます。 ペット・ボトルに直接口をつけてしまうと、飲み口に歯磨き粉がついて、飲用にできなくなってしまうので、わざわざ、コップを持って行っている次第。 当然以前の事のようでも、最初に、このスタイルに辿り着くまでには、さんざん頭を使いました。
装備を括りつける為には、バイクに荷台が無ければならず、昔は、ツーリングに出かける前に、取り付けていたものですが、今は、通勤にも荷台を使っているため、わざわざ取り付ける必要はありません。 楽なもんだ。
登山用リュックの他に、ナップ・ザックも、背負って行くのですが、中は、日記用のノートが入っているだけです。 コンビニで食料を買った後だけ、パンやおにぎりが入りますが、すぐに食べてしまうので、普段は、ほとんど、重量を感じません。 背中でも腰でも、体に直接、重い物を着けてしまうと、長距離ツーリングでは、駄目なのです。 肩が凝ったり、腰が重くなったりで、さんざんな目に遭います。
服装は、通勤と、ほぼ同じで、下はチノ・パン、上は、半袖シャツと、春物のジャンパーを着て行きますが、今回は、ポケット・ベストを間に挟みました。 ポケットが四つ付いているので、財布やら、免許入れやらを収めるのに便利。 靴は、通勤に使っているスニーカーです。 バイクのシフトをするので、紐式ではなく、ファスナー式の奴。
問題だったのは、カメラです。 普段使っている、ペンタックスの≪X70≫は、大き過ぎて、バイクで持ち歩くのには、甚だ不便です。 今回、野宿するとなると、雨で濡らしたり、衝撃で壊したりする危険性もあり、とても、持って行く気になりません。
≪天城山≫に持って行った、日立の≪HDC-2≫は、もう古くて、惜し気が無いし、乾電池式ながら、300枚くらいは楽に撮れるので、旅行には打って付けなんですが、≪天城山≫の写真が、あまりにもひどかったのと、この春買い換えたパソコンに非対応で、画像を取り込む方法が、メモリー・カードを差し替えるしかなく、そうすると、写真の順番が狂ってしまうという、致命的欠陥が露呈してしまったため、これまた、持って行く気になりませんでした。
というか、≪HDC-2≫は、これだけ使用条件が悪化したら、もう引退させるしかありませんな。 家電量販店で、一万円ポッキリで買ったのが、2004年の4月。 固定焦点で、マクロはほとんど利かず、露出はテキトー、画像の記録に時間がかかる等々、最初は、しょーもないカメラだと思いましたが、とにかく、電池の持ちがよく、シャツの胸ポケットに入るぎりぎりの大きさ・重さである上、一応、200万画素で、天気が良ければ、そこそこ、まともな写真が撮れるという事で、8年間、常に使える状態で、手の届く所に置いていました。 岩手にも持って行ったし。
とはいうものの、マクロが使えないのと、曇りの日の、葬式めいた暗い写真には、前々から困ったものだと思っていて、その内、買い換えようと検討していたのも事実。 今は、1万円以下で、遥かに高性能なのが、ゴロゴロ売ってますし。 で、野宿ツーリングに行くのを機会に、買ってしまう事にしました。 というか、こんなきっかけでも無いと、買えないのです。 ケチだから。
≪天城山≫へ行ったのが、8月13日。 翌14日の午前中には、≪HDC-2≫がパソコンに非対応である事が判明し、その日の午後から、新しいカメラを吟味し始めました。 新聞の折り込みチラシを調べたり、家電量販店に値段を見に行ったり。 ネットでも調べましたが、aigoの≪T1458≫など、面白そうな品もあったものの、16日には出発するので、通販では間に合いそうにありません。
そういや、ネット・ショップの中に、「お盆なので、休みます」という店がありましたが、稼ぎ時に休むとは、商人の末席にも加えられぬ、甚だしい不心得。 一般人が休んでいる時に働かなくて、銭を儲けられると思ったら、大間違いですぜ。
結局、14日には決まりませんでした。 15日になって、沼津の家電量販店、ノジマへ行ったら、フジの≪FINEPIX JX550≫というのが、6980円で売っていて、ぐっと興味を惹かれました。 光学5倍ズームで、≪X70≫の24倍ズームには遠く及ばないものの、1600万画素なので、後でトリミングすれば、もっと拡大できるはず。
撮影性能よりも、注目すべきは、重さです。 本体に、バッテリーとカードを含めて、113グラムですから、シャツの胸ポケットに入れても、下に引っ張られる重さを感じません。 コンパクト・カメラは、持ち運び方法が重大でして、ポケットにいれられるか、専用ケースを腰に吊るすか、鞄に入れなければならないかで、使い勝手が全く違って来ます。 もちろん、軽ければ軽いほど良くて、特に、胸ポケットに入る重さは、極めて貴重と言えます。
余談ながら、「今、女性に、ミラーレス一眼が人気」などと聞くと、他人事ながら、熱が出て来ます。 愚かな者どもよ・・・。 そんな重いの、使い物にならんわ。 「高いカメラなら、いい写真が撮れるはず」という、低次元な思い込みが命取り。 あまりにも不便なので、すぐに使わなくなります。 高かったのにねえ。
そもそも、ミラーレス一眼は、機構的には、一眼レフでも何でもなく、単なる交換レンズ式のコンパクト・デジカメに過ぎないのですが、交換レンズまで持ち運ぶとなれば、鞄に入れるか、カメラ・バッグを肩にかけるしかなく、そんな大掛かりになるのでは、写真撮影が目的の時にしか、持ち出せません。 旅行のお供なんて、とても無理無理。
交換レンズの持ち運びを断念し、その日の撮影目的に合わせて、一本だけに絞るとしても、一番薄いレンズでも、本体に着けた状態で、専用ケースに入らんでしょう。 というか、そもそも、腰に吊る専用ケースなど、用意されていないのでは?
大体、「一眼」という、ただの言葉に踊らされているのが情けない。 まず、意味を調べなさいよ。 一時間もあれば、理解できる事なんだから。 ミラーレス一眼が、一眼レフでない事も、一眼レフ機構自体が、デジカメでは、ほとんど意味が無い事も、すぐに分かります。
厄介なのは、写真が巧い人でも、一眼を使っている人が多い事です。 そういう人は、一眼でなくても、いい写真を撮れるのですが、カメラ欲しい病を患っているために、新型が次々と出る一眼を買わずにはいられないのです。 そんな人達を真似ても、無意味でしょうが。
おっと、つい熱くなってしまいました。 話を戻します。 とりあえず、≪FINEPIX JX550 ≫を最有力候補にしておいて、他の店にも回ります。 ≪X70≫を買った、キタムラへ行きましたが、カメラ・コーナーが大幅に縮小されていて、びっくりしました。 ああ、たぶん、家電量販店や、ネット通販との価格競争に負けて、売れなくなってしまったんでしょうなあ。 カメラ専門店で買ったからといって、何か特典があるわけじゃないものねえ。
次に、コジマへ。 ここには、キャノンの≪PowerShot A2300≫が、6980円で売っていました。 写真の写りを優先すれば、キャノンが一番だと思うのですが、キャノンの・コンパクト・デジカメは、過去に2台買って、2台とも3年くらいで壊れているので、ちと二の足を踏むところ。 ついでながら、イメージ・キャラクターが、吉高某なのも、マイナス要因。 いや、別に、私が個人的に、好きになれないというだけの話なんですが。
で、結局、ノジマへ戻り、≪FINEPIX JX550≫を買う事にしました。 高い買い物をする時には、さんざん悩むのが私の癖なのですが、今回は、ツーリングの出発が翌日に迫っていた為、存分に悩む時間が無かったのです。 6980円のところ、ポイントを使って、6886円。 大して変わらんか。 カメラを買ったのは、2年半ぶりです。
家に帰り、すぐに開梱。 大急ぎで、説明書を読みます。 まあ、コンパクト・デジカメの使い方なんて、似たようなものですけど。 びっくりしたのは、最小画像サイズが、2304×1728になっていた事です。 約400万画素くらいですか。 普段、≪X70≫で使っているのは、1024×768で、約80万画素なので、5倍も大きいっす。 いーや、参ったな、おい。 こういう時代か。
どうせ、ネット上でしか使いませんから、100万画素以下で充分。 それより大きいと、データ量が多くなり過ぎて、取り込みには時間がかかるわ、保存場所は喰うわで、いい事無し。 しかし、すでに買ってしまった以上、後悔先に立ちません。 最小サイズに設定して、持って行く事にしました。
バッテリーの充電方式は、ちょっと変わっていて、独立した充電器ではなく、バッテリーをカメラ本体に入れたまま、USBケーブルで、コンセント・プラグを大きくしたような形のアダプターと繋ぐようになっていました。 進化と言うべきか、そのつど、パソコンからUSBケーブルを外さなければいけないので、不便と言うべきか。
まあ、カメラの件は、それで片付きました。 後は、細かいルートの書き出しです。 ポケットに入れられるように、小さなメモ用紙に、通る道路の、国道・県道番号と、曲がる交差点名、通過する市町村名などを書き込んで行きます。 ポータブル・カーナビも参考にしましたが、ナビそのものは持って行けません。 そもそも、父の物なので、水濡れや衝撃で壊したくないからです。
書き込みながら、どこへ寄るかを決めて行ったので、かなりの泥縄式。 1号線で箱根を越え、神奈川県は、相模湾の海岸線を1号と134号で抜け、逗子からは、県道で三浦半島を横切って、横須賀の久里浜港へ。 フェリーで房総半島に渡ったら、金谷港から東京湾岸を南下し、海岸線をなぞって、洲崎灯台、野島崎灯台を見ます。
それから、太平洋岸を北東へ上り、九十九里浜を通過。 犬吠埼を回り、鹿島灘を北上。 有名な大洗海水浴場を拝み、そこから内陸へ。 6号で東京方面へ進み、途中、県道で、霞ヶ浦を見に行き、また6号へ戻って、千葉県の柏市で、16号に乗り換えます。 16号は、東京を環状に迂回しているので、ぐるっと大回りして、神奈川へ入り、246号に乗り換えれば、後は、沼津まで、道に迷う事はありません。
野宿ツーリングなので、眠る場所がどこになるかは、行ってみなければ分かりません。 距離を計算したわけではないのですが、過去の経験と照らし合わせて、このくらいのコースなら、遅くとも、2泊3日くらいで帰ってこれるはず。 三日かかっても、夏休みは、まだ一日残っているので、後片付けには充分です。
さて、準備はここまで。 いよいよ、翌日には、13年ぶりの野宿ツーリングに出発します。
↑ フジフィルムの、≪FINEPIX JX550≫。 ごくごくありふれた、沈胴式ズームの、コンパクト・デジカメです。 外寸は、94.0×56.6×21.3ミリ。 重量は、113グラム。 突起部をなだらかに丸めてあって、角張ってないので、胸ポケットに、スルリと入って行きます。
↑ 充電器。 というより、充電タップ。 バッテリーをカメラに入れたまま、USBケーブルで、このタップとカメラを繋ぎ、コンセントに挿せば、充電されます。 旅先に持って行くには、この大きさは便利です。 もっとも、コンセントがある部屋に泊まる場合に限りますが。
↑ パッケージ。 ≪FINEPIX JX550≫は、本来、海岸向けの製品らしく、箱の外面には、日本語の表記は一切ありませんでした。 フジのサイトにも、ページがありません。 取扱説明書は日本語ですが、他の幾つかの機種と兼用でした。 独立した充電器が入っていないため、箱は小さいです。
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