2012/10/21

セックスレス

  私は独身で、しかも、今までに一度も結婚した事が無いのですが、結婚している人達を傍から見ていて、非常に不思議だと思う事があります。 その最たるものが、≪セックスレス夫婦≫。

  私が中学生の頃、兄が、電子ゲームの玩具を持っていました。 今のポータブル・ゲーム機と同じくらいの大きさでしたが、値段は確か、8000円前後で、一種類のゲームしかできません。 その頃、大流行していた、インベーダー・ゲームを単純化したようなゲームでした。

  私も遊ばせて貰ったんですが、そういうゲームをやった事がなかったので、嵌まりに嵌まり、「貸してくれ、貸してくれ」と、兄に陳情の嵐を浴びせていました。 しかし、弟に甘い兄ではなかったので、ほんとに、たまにしか、遊ばせて貰えませんでした。

  その時、不思議だったのは、私に遊ばせないだけでなく、兄自身が、あまり、そのゲームを手にしようとしない事でした。 兄に向かって、「何でやらないの? 俺だったら、朝から晩までやってるよ」と言ったのですが、何の反応も無し。

  今思うと、兄は、本物のインベーダー・ゲームも、小遣いが底をつくくらい頻繁にやっていた人なので、そんな単純な玩具は、すぐに飽きてしまったのでしょう。 その後、テレビ・ゲーム時代の幕が開き、私も、スーパー・ファミコンとPS2は経験したので、今なら、その気持ちはよく分かります。


  で、セックスレス夫婦です。 唐突に話題が戻って恐縮ですが、私が不思議さを感じた、その感じ方が、このゲーム玩具の記憶と重なるので、こういう展開になった次第。 独身者から見ると、「夫婦なのに、なんで、セックスしないのか?」というのが、実に不思議なのです。

  私同様、独身の人は、必ず、結婚生活に憧れた事があると思うのですが、言うまでもなく、その中心にあるのは、性行為なのであって、極端な事を言えば、性行為以外で、夫婦がやっている事は、幼児が興じている、≪ままごと≫と、本質的な違いがありません。

「人生の伴侶を得たのであって、セックスが目的で結婚したのではない」

  はあ~っ? はんりょーっ? おまえは、サルトルか? 嘘をつくな、嘘を! というか、考えが足りなくて、本当に、そう信じているのか? それはそれで、嘘つきよりも、問題だな。

  大体、あんたら、夫婦と言っても、一般的な話題で会話してないだろう? 喋る事があるとすれば、共同生活をする上で必要な打ち合わせか、子供の話か、ペットの話、芸能人のゴシップ話・・・。 一般的な話題と言えるのは、せいぜい、近所の住人の悪口くらいのもの。

  そんな会話しか交わせない、≪伴侶≫がいるものか。 お笑わせでないよ。 そんなの、ただの同居人ではないか。 同棲ほどの睦まじさも無く、ルーム・シェアしている他人同士と比べても、大差ありません。

 「他に話す事なんか無いだろう」と思っているあなたは、勤め先で同僚と話をする時、配偶者とするよりも、遥かに、話が盛り上がるのを、毎日のように経験しているはず。 同性同士だから? いやいやいや、異性間であっても、同僚との会話の方が、配偶者とのそれより、ずっと面白いのです。

  結婚して以来、 夫婦間の会話で、大盛り上がりした事がある人、手を挙げて! ・・・はい、誰もいませんね。 盛り上がるほどではないけれど、時々、話が弾む事がある人は? お、何人か、いますね。 なるほど、あなた方は、かなり、幸せな方だと思います。

  私の感覚では、性行為もせず、会話も楽しくない他人が、同じ家の中に住んでいて、トイレの順番で気を使ったり、風呂から出た後、バス・タオルを使うか、普通のタオルを使うか、バス・タオルだったら、共用するか、別にするかで意見が喰い違ったり、食事をダイニングで食べるか、居間で食べるかで、激論を交わしたりする、そんな生活は、耐えられません。 そんなの、ただの、≪敵≫ではありませんか。

「料理や、家事をやってくれるから」
「外で働いて、お金を稼いで来てくれるから」

  あなた方は、前世紀の遺物です。 互いに互いを奴隷にして、役割分担をしているだけ。 ≪役割分担≫というと、何となく聞こえがいいですが、その実、これは、「男は外で働き、女は家を守る」といった、鼻を抓みたくなるような古臭い考え方を、カッコつけて表現する時に、言い訳にしていた、一種の≪粉飾表現≫に過ぎません。

  通用したのは、1990年くらいまででして、現代では、≪役割分担≫は、結婚の理由には、全くなりません。 なぜ、成立しなくなったかというと、一方では、女性が働くのが当然になり、もう一方では、男性が一人でも暮らせるような社会システムが出来上がったからです。

  女性にしてみれば、学校を卒業すれば、就職するのが当然になり、男性と変わらない収入を得られるのですから、もはや、人生を男に頼る必要、全く無し。 今、小学生の女子に、「将来の夢」に関するアンケートを取ったら、必ず、「ケーキ屋さん」や「アイドル歌手」といった、具体的な職業を書くのであって、「お嫁さん」だの、「専業主婦」などと答える子供は、皆無ではありますまいか。

  ちなみに、私が小学生だった頃には、そういう女子は、割と普通にいました。 ところが、彼女らが高校生になった頃には、進学しないのであれば、就職するのが当たり前の世の中に変わっていて、卒業後すぐに結婚した人間など、一人もいませんでした。

  ただ、一旦、就職しても、結婚を契機に仕事を辞めて、専業主婦に切り替えるというパターンが普通でした。 ≪寿退社≫などと言われていましたが、これも、結婚後も働き続けるのが主流になった現代では、逆に、奇異な習慣だったと思えてしまいます。 つまりその、私達の世代は、過渡期にあったわけですな。

  男性にしてみれば、コンビニ弁当の登場を筆頭に、ファースト・フード店の普及、スーパーの惣菜コーナーの充実などが進み、男の一人暮らしに於いて最大のネックだった、食事の問題が解決された事で、「どうしても、結婚しなければならない」という切迫感が失われました。

  かつては、「男やもめに、蛆が湧く」などと言われ、部屋の片付けにせよ、風呂の掃除にせよ、「早く結婚して、女房に面倒見てもらえ」と、周りからせっつかれたものですが、これも、今や昔話。 ≪片付けられない女≫に代表されるように、女だからと言って、清潔な住環境を保つ能力が優れているわけではない事が分かるに連れ、結婚の理由にならなくなってしまいました。

「もう何年も交際している彼がいるけれど、いつまでたっても、プロポーズしてくれない」

  それはね、その彼が、あなたの事を、妻として、必要としていないからですよ。 独身生活にうんざりしていて、結婚願望が強い男なら、明らかに早過ぎるようなタイミングで、指輪を用意していたりするものです。 そうでない男は、当面、女性に助けてもらわなくても、生活に支障が無いから、結婚が、逆に負担に感じられてしまうのです。

  で、こういうヤキモキ女性達が使う奥の手が、≪できちゃった婚≫です。 できちゃった婚を、「避妊の失敗による悲劇」だと思い込んでいる人も多かろうと思いますが、私は、そんな事、信じません。 何年間も、避妊を卒なくこなして来た女性が、突然、しくじるなど、考えられませんな。 わざと妊娠して、男を騙し、結婚を決断させているに違いない。

  ちなみに、避妊の管理で、男を騙すなんて、訳無いです。 大抵の男は、いい歳した大人になっていても、女性の生理に関する知識がありません。 ≪性知識≫は、三度の飯より好きなのに、≪生殖知識≫は無いのです。

  月経周期の基本的パターンが、頭に入っている男が、全体の10パーセントいるか、大いに疑わしいところ。 女なら、中学生でも理解できる程度の、単純な仕組みなんですが、男は、自分の体とは無関係だと思っているから、覚えようという気にならないんですな。 アンケート調査をしてみれば、生理期間を、「排卵している期間」だと誤解している男が、うじゃうじゃ出て来ると思いますよ。

  女性の体はもちろん、自分の体さえ分かっていない男も、珍しくない。 男同士で、その種の話をしていると、精液が、陰嚢の中で作られていると思い込んでいる人物が、少なからずいます。

「でさあ、精液が、キ○タ○から、ぐって、上がってくるじゃん?」

  上がって来ねーよ。 上がって来るのは、精子だけだよ。 なんで、そんな事も知らないんだよ。 もう、30歳をとうに過ぎたような面々ですよ。 しかも、結婚もしてるんですよ。 思春期の頃に、男性性器の解剖図とか、見なかったんですかね? 女性性器の解剖図なら、熱心に見た? その割には、

「子宮の中で射精すると・・・」

  なんて事を、平気で口にします。 できねーよ、そんな事。 できたら、チューブも使わんと、毎回、人工授精してる事になるな。

  ここまで読んで、すごく不安な気持ちになった諸兄よ。 今からでも遅くない。 生殖器の構造と仕組みについて、勉強を始めなさい。 自分のペニスが、女性のどこに入っているかも知らんのでは、心置きなく快楽に耽られまいて。

  日常的に、性交渉をする相手がいても、避妊管理は女性任せで、「その日が、いいか悪いか」だけ訊いて、事に及んでいる男が、ほとんど。 あまり興味が旺盛過ぎて、相手の女性の体の事を、当人以上に知っているという男も気味が悪いですが、何も知らぬよりは、ずっと、マシですな。

  避妊具を女性に買わせているケースも多いと思うのですが、妊娠を企む女性側からすると、そういう立場にあれば、こっちのもの。 破れ易いように針で孔を開けておくなんて、それこそ、子供でもできる事です。 パッケージの上からでも開けられますから、事前にバレる心配は、まず、ありません。

「できちゃったみたい」
「ええっ! 困ったなあ・・・」
「どうする? 堕ろす?」
「・・・・、いやあ、そんな・・・、しょうがない、結婚しよう」


  見事に騙されてますなあ。 しかし、それでいいのですよ。 そんなきっかけでも無ければ、永久に、結婚する気にならないのですから。


  何だか、話が錯綜してしまっていますな。 面倒臭いので、強引に、本来のテーマに戻れば、どうして、セックスレス夫婦ができてしまうかが、疑問なのです。

  やりゃあいいじゃん。 無料でできる相手が、同じ家の中にいるんだから。 なぜ、やらぬ?

「女房が妊娠してから、しなくなったなあ」

  ああ、まあ、そりゃ、納得が行く理由ですな。 子供を複数作った場合、最後の子供を妊娠した後、途絶えたわけだ。 問題は、子作りが済んだ後、なぜ、性行為を再開しなかったかです。

「なんとなく、そんな雰囲気じゃなくなっちゃって」

  これは、非常に多くの夫が口にする言葉なのですが、恐らく、妻の方も、同じでしょう。 予定していた数の子供は、もう作り終えてしまって、子作りを、性行為の目的にできなくなると、快楽だけのために行なうという事になり、それが、後ろめたさを感じさせるのでしょうか。

  だけどさあ。 結婚を念頭に於いていなかった独身時代の性行為は、快楽目的だけでやってたんですよね。 子作りが終わった途端に、いきなり、≪道を説く君≫に変身するのは、変じゃないですか?

  妊娠期間中、性行為を断っていて、出産後、それを再開させる場合、どちらかが言い出さなければならないわけですが、「それが、気まずくて、嫌だ」というケースも多いのではないでしょうか。 もう、それ以上、子供を作る予定が無い場合、尚の事。

  しかし、肝心な事を忘れています。 子作りが終わろうが、子育て中だろうが、子供が成長して家を出ようが、つまり、自分が何歳になろうと、「性欲が消えて無くなる事はない」という厳然たる事実がある事です。 最近の研究では、性欲は、死ぬまで、無くならないらしいです。

  男も女も同じです。 女性の場合、閉経すれば、生殖能力を失うわけですが、それも、性欲とは関係ありません。 ≪冬ソナ・ブーム≫の時、ぺ・ヨンジュンさんに恋焦がれる中高年女性が、膨大な数、出現しましたが、50代、60代、いや、70代であっても、「ヨン様が、私を抱いてくれたら・・・」と空想して、眠れぬ夜を過ごさなかった人はいないと思います。

  性欲と切り離した恋愛感情がありえないのは、くどくど説明するまでもありますまい。 プラトニック・ラブ~ぅ? アホけ? そんな奴、いるか! やりたいけど、言わないだけだよ。 軽蔑されるのが怖くてな。 好きなのに、性行為はしたくないなんて、不自然ではないか。

  健康的な趣味を持とうが、知性の世界に逃げ込もうが、性欲からは逃れられません。 「性欲なんて、もうありません」などと言っている人間の方が、嘘をついているのです。 どんなに高潔な人格の持ち主だろうが、「孫と遊ぶのが、唯一の楽しみ」と言っているような老人だろうが、性への興味を完全に消失している事はありえないです。

  つまり、性欲は、何歳になっても、何らかの方法で、処理せざるを得ないのです。 で、独身者ならば、自慰行為に精を出し、既婚者ならば、浮気、不倫、買春などに走るわけですが・・・、ちょっと待て! どうして、そうなる? 家の中に、配偶者という、合法的、且つ、無料で性交できる相手がいるではないか。 なぜ、そちらに頼まない?

  妻の最後の出産後、再開を切り出すのが気まずいというのなら、出産前、最後に性行為をした直後に、契約を取り決めておいたらどうでしょう? 言わば、相手との性行為に抵抗感が無い内に、次の予約をしてしまうわけですな。 例えば、

「出産後、最初の生理が過ぎたら、気分が乗る乗らないに関係なく、健康上の問題が発生していない限り、厳重に避妊した上で、性交渉を再開する」

  といった内容の取り決めをしておくのです。 大仰になりますが、契約書を交わしておいてもいいです。 それなら、どちらか片方にその意思があれば、さほど、気まずい思いをせずに、再開に漕ぎ着けられます。 心理上、非常に微妙な事だと思うのですが、一度、再開すれば、その後も習慣を維持する気になると思うのですよ。

  この種の取り決めをしておかずに、出産後、いきなり、性交渉を持ちかけると、配偶者から、「不潔な人・・・」といった目で睨まれる事になり、そういう視線で見られた事に、精神的ショックを受けて、二度と再開を口にしなくなってしまうケースは、非常に多く存在すると思います。

  家族間の不和のきっかけは、ほとんどが、≪軽蔑≫から始まります。 血の繋がった親子でさえそうですから、本来、他人である夫婦間では尚の事。 自分を軽蔑している人間が、家の中にいるというのは、居たたまれません。 一度、軽蔑されたために、性交渉が途絶えてしまった例は、相当な数に上るのでは?

  極端な例では、新婚旅行で、新妻に甘えようとしたら、まるで、汚物でも見るような目で見下され、「そういうのは、お母さんとすれば?」と言われてしまい、以降、性行為をしていても、全く興奮せず、ゴリラの交配のように淡白な儀式になってしまったというのもあります。

  こういう話を聞くと、「子供っぽい男と結婚した自分にも非があるんだから、ちょっとくらい、甘えさせてやればいいのに・・・」と思う反面、「一度、甘えを許すと、一生、甘えられる危険性もあるから、この反応も致し方ないか・・・」とも思います。

  そういや、≪できちゃった婚≫で結婚した夫婦で、結婚後、一度も性交渉を持った事が無いという人達もいるようですな。 昔は、性行為をする為に結婚したわけですが、今や、性行為をしないために、結婚する時代になったのか。 いやあ、性風習の変化は、急転直下だねえ。

  そういうケースでは、男の方に、「この女は、避妊に失敗する」という警戒心が植えつけられてしまっているため、尚更、再開がしにくいのでしょう。 妻の方から、再開を持ちかけて、断られるケースも、もちろんあります。

「今は、母親だろ。 子供の立場になってみれば、親にそんな事、してほしくないじゃないか」

  ううう、胸に突き刺さるような、鋭い説得力ですな。 「不潔な女・・・」と、蔑まれたも同然ですが、避妊に失敗している前歴があるものだから、強い態度が取れないのは、辛いところ。 この夫婦は、もう、それっきり、ただの同居人で終わるしかないかも知れませんなあ。

  でねー、一度、断られて、相手を恨んだとしても、その後、相手側から、再開を持ちかけて来た時に、承諾すればいいんですよ。 ところが、軽蔑された仕返しに、「今更、そんな事、できないよ。 それなら、あの時、OKしてくれれば良かったじゃないか」なんて、突っ撥ねるものだから、まーた、距離が開いちゃうんですな。 まー、他人なんか、そんなもんだと言えば、そんなもんですが。


  再開のタイミングを逸したケース以外にも、セックスレスの原因はあります。

「もう、女房の裸見たって、立たないよ」

  おおっと・・・、正直な意見が出て来ましたねえ。 確かに、女性の外見上の衰えは、男性よりずっと早いです。 20歳頃、「天使が地上に舞い降りたか・・・」と思うばかりの美女だったのが、30歳になると、「どこの妖怪だ?」になってしまうから、落差が凄まじい。 莫大な金を貢いで、ようやく結婚に漕ぎ着けたなんて男は、ダイヤのつもりで買った石が、いつのまにか、砂利に化けてしまったかような、≪騙された感≫に、一生、苛まれ続ける事でしょう。

  だけどねえ。 女房の外見を、そんな風にしちゃったのは、亭主にも、原因があるんですよ。 かなり前から、セックスレスになっちゃってるでしょう? そうすると、女の側にしてみれば、外見の魅力を維持する大きな動機が、無くなってしまうのですよ。

  痩せていようが、太っていようが、亭主が指一本触れて来ない事に変わりはないとなれば、食欲を抑えてまで、体型に気遣う必要は無いですわなあ。 髪型も然り。 化粧も然り。 そりゃ、加速的に老けますって。 また、性交する気も無いのに、女房の外見について、あれこれ意見もできないでしょう。 ただの同居人に、そんな注文をつける資格はありません。

  これが、性行為の習慣を維持していて、月に一度でも、夫に抱かれる事があるとなれば、まるで、事情は違って来ます。 張り合いがあるじゃありませんか。 エステだの、ブランド化粧品だのと、あまり散財されるのも困りますが、費用面での節度を守れるのなら、女房は、くたびれているよりは、綺麗な方がいいよねえ。

  つまり、女房がくたびれた外見になったから、セックスレスになったのではなく、セックスレスになったから、女房がくたびれてしまったのですよ。 「女は、恋をすると、綺麗になる」とは、よく言いますが、途絶えていた性交渉を再開すれば、見る見る、若返るんじゃないでしょうか。 まあ、当然、年齢から来る限界はあると思いますけど。


  最後に触れておかなければならないのは、「子供が出来ない夫婦」のセックスレスです。 こちらは、子供が出来た夫婦とは、安直な比較が許されないほど、深刻な理由があります。

  結婚を全く考えていない段階の独身者だと、「おお、子供が出来ないのなら、避妊の必要もないから、やりたい放題じゃないか」などと、プラス面を見るかも知れませんが、とんでもない思い違いなのであって、自分達が、同じ立場に置かれたら、天の無情な仕打ちに、己の運命を呪い倒す事でしょう。

  性行為は、快楽だけが目当てでもできますが、やはり、本来の目的は、子供を作る事にあるのであって、「自分達夫婦には、子供が出来ない」と分かった時に、それを嫌というほど、痛感する事になります。 全く避妊せずに、何度繰り返しても、絶対に子供が出来ないのです。 欲しいのに、出来ないのです。 もう、泣くしかないじゃありませんか。 プラス面? そんなもん、ありゃしねーよ。

  すればするほど、空しいだけ。 そりゃ、セックスレスにもなるわなあ。 これがまた、微妙なところで、「確率はものすごく低いが、もしかしたら、受精する可能性もある」と思えば、その気にもなるのでしょうが、子宮全摘手術を受けているとか、無精子症の診断結果がはっきり出ているなどというケースでは、ただ、相手の体を汚しているだけのような罪悪感が付き纏い、する前から、萎えてしまいます。

  たいていは、どちらか一方に、より重大な問題があって、妊娠に至らないわけですが、自分の方に問題があると分かっていると、性行為を持ちかけるのも、ためらわれるでしょう。 「こんな嫌な思いをするくらいなら、生まれて来ない方が良かった」とまで思うでしょう。

  気の毒、この上無し。 こういう夫婦に比べたら、いっそ、一生独身で、自分に生殖能力があるか無いか、知らないまま死ぬ者の方が、まだ幸せです。 子供を産めない嫁を、責める姑というのが、今でもいるらしいですが、本人の辛さが分からんのか、このボケめ! 地獄に堕ちるべきですな。 地獄の概念とは、そういう者のために、用意されているのです。


  強引に纏めますが、子供ができない夫婦の無念に比べれば、子供が出来た後、セックスレスになったなんてーのは、贅沢な悩みですぜ。 ほんのちょっと、勇気を出して、再開すれば、すぐに解決する事じゃないですか。

  大丈夫ですよ。 もともと、好き合っていた仲なんだから、とりあえず、二人きりになって、「お前にしか頼めないんだ」とか、「もう、好きじゃないの?」とか言ってれば、その内、その気になってくれますって。