2012/09/16

鹿島灘からの帰還

  ≪房総・鹿嶋灘ツーリング≫の続きです。

  8月16日、フェリーで東京湾を渡った私とバイクは、房総半島の海岸線を反時計回りに太平洋岸へ向かい、≪洲崎灯台≫、≪野島崎灯台≫、≪九十九里浜≫などのランド・マークを、不完全ながらも制覇しつつ、銚子の南にある≪飯岡灯台≫の近くまで進み、近くの丘の上にある畑の隅で、蚊に刺されつつ、野宿したのでした。

  日付が変わり、17日になりました。 夜7時から、横になったので、朝3時までで、8時間という事になります。 睡眠はしていませんが、一応、それだけの時間、横になっていたわけですから、肉体的には休んだという事になるでしょう。 さて、出発だ。 この時間から出れば、≪犬吠埼≫で、日の出が見られるはずです。

  起きたのは3時でしたが、真っ暗だったので、テントを畳むのに手間取り、バイクに乗って、幹線道路まで出て来た時には、3時半になっていました。 しかし、バイクに乗ってしまえば、こっちのもの。 とりあえず、野宿の心細さからは解放されたわけです。

  昔もそうでしたが、野宿していた山の中から、未舗装の凸凹道を、生い茂る竹や潅木のトンネルを潜りつつ、探り探り進んで、舗装路まで出て来るまでの時間は、原始世界から文明世界へ抜け出して来るような、解放的感動を覚えます。 霧が出ていて、ヘルメットのシールドが曇り、なかなか、取れませんでした。

  この時すでに、前日、野宿場所探しに手こずったのに懲りて、何とか、この日一日で、家まで帰ってしまおうと考えていました。 予定したルートを全部回っても、どうにか、夜までには着くんじゃないかと思えたのです。 ちなみに私は、強行軍が否応も無く好きらしく、行けると思ったら、無理やりにでも行ってしまう、困った性格を持っています。

  銚子市に入ると、街灯がほとんど点いていませんでした。 アップダウンがある道なのに、真っ暗になってから、次の街灯が見えるという間隔。 ≪犬吠埼≫へ向かう道に入ると、街灯は本当にゼロになりました。 節電も、ここまで徹底すると、凄い。

  ずっと、ハイビームで走ります。 霧の向こうで、前を行く原付の尾灯が、道のアップダウンに伴い、見えたり見えなくなったりします。 怪談か。 「見えなくなった後、出て来なかったら、嫌だな」と思っていたら、本当に見えなくなったままになり、背筋が寒くなりました。 しかし、もちろん、怪談などではなく、その辺りまで行くと、横に曲がる道があるのでした。 たぶん、そこで曲がって行ったのでしょう。

  犬吠埼に近づくと、軽く、道に迷いました。 360度を見渡せるという、≪地球展望館≫の看板がありましたが、時間的にどうせ開いていないので、そちらには行きませんでした。 標識にある≪犬吠埼≫の文字は、同名の集落を指していて、灯台は別物らしく、灯台を指す標識は見当たりません。 やがて、灯台の明かりが見えたので、それを頼りに、接近して行きました。

  4時10分、灯台に到着。 ライトが回っていて、迫力抜群でしたが、写真を撮るには、暗過ぎ。 自販機でコカ・コーラのペットボトルを買い、昨日買ったパンを食べつつ、日の出を待ちます。 灯台の下に、喧しい若者達の先客が屯ろしていて、些か身の危険を感じ、少し離れた所にいました。

  一般論ですが、旅先で最も警戒しなければならないのが、若者の集団です。 特に、宵の口とか、早朝とかに、人里離れた空き地とか観光地の駐車場とかに集まっている連中が危ない。 一人一人だと無害でも、5人6人と集まると、気が大きくなる一方で、責任感が極限まで薄くなり、他人の迷惑なんぞ、全く顧みなくなります。

  ここにいた集団も、ガヤガヤ騒ぎながら、灯台下とトイレの間の、100メートルくらいの距離を行ったり来たりしていました。 どうやら、一人がトイレに行きたいと言い出すと、付き合いで、ぞろぞろついて行っている様子。 まったく、不気味だったらありゃしない。

  4時45分頃、日の出。 しかし、水平線上の雲が高くて、なかなか出て来ません。 灯台の海側の散策路に立って、頭が出て来るのを待っていたんですが、先を急ぐ身の事とて、待ちきれず、50分には出発しました。

  5時頃、銚子市街で迷いました。 川沿いに出て、≪銚子大橋≫を目印に、国道124号に戻りました。 ランドマークとは、よく言った。 銚子大橋は、驚くくらい巨大でした。 写真を撮るタイミングを逸したのは悔やまれます。 迷子になった直後は、先を急いで焦っているので、写真の事まで、気が回らんのですよ。

  国道124号を北上。 神栖市の道路脇で休憩。 残っていたあんぱんを食べました。 コーラは、早くもぬるくなり、頗るまずいです。 なまじ、ペットボトルだから、「半分残して、後で飲もう」などとケチ臭い事を考えてしまうのです。 13年前は、コーラの500㏄と言ったら、缶しかなかったので、その場で飲み尽して、終りだったんですがね。

  鹿島灘を見に来たのだから、海を見なければ帰れませんが、道路からは、全く見えません。 7時に、≪鹿島灘臨海公園≫でとまり、公園の小高い丘に登りましたが、やはり、肝心の海は見えません。 やむなく、海の方へ暫く下って行って、辛うじて、砂浜が見える所まで行って、鹿島灘の写真を撮りました。 もう、ここへ来たというだけの証拠写真に近いです。

  7時45分、大洗市街で、また迷子。 今回、犬吠埼と言い、銚子と言い、大洗と言い、市街地でロストすることが多かったです。 市街地に入ると、国道がまっすぐ通っていない事が多く、下調べしておいた曲がり口の交差点を見つけられないのです。 逆に言えば、市街地だからこそ、標識が多くて、元のルートへの復帰も容易なわけですが、それにしても、見知らぬ街で迷子になるのは、心細い事この上無いです。

  うろうろとうろついて、何とか県道2号を見つけ、かの有名な≪大洗海岸≫に出て、写真を撮りました。 この辺り、駐車場は、全て有料で、1日780円。 バイクを停める所が無いので、路肩駐輪し、海まで走りましたよ。 写真一枚撮るのに、780円は論外ですが、家族で、海水浴目的で来るのなら、高くはないでしょう。

  大洗からは内陸に入って、国道6号線に乗り、水戸から石岡へ向かいます。 カンカンのいい天気で、まだ午前中だというのに、糞暑くなりました。 ちなみに、茨城県は、道路の制限速度が高く、私のバイクでは、流れについていく事ができずに、ヒヤヒヤし通しでした。 車線変更せずに抜いていく車には、ぞっとします。

  とりわけ、124号と51号が、怖いのなんのって! 制限速度は、法定の60キロだと思うのですが、プラス10キロの70をキープしている車なんぞ、一台も無く、どやつもこやつも、80、90で、すっ飛ばして行きます。 まだ早い時間とはいえ、なぜ、このカモネギどもを取り締まらぬ、茨城県警よ。

  それどころか、平地だと言うのに、≪ゆずり車線≫などというものが設けられていて、遅い車は道を譲れと指示しています。 まるで、法定速度で走っている方がとろいと言わんばかり。 何か、間違っているぞ、茨城県よ。 幸いな事に、6号線は、渋滞気味で、割と気楽に走れました。

  石岡で曲がって、355号を≪霞ヶ浦≫へ。 9時40分、≪霞ヶ浦大橋≫に到着。 橋の袂にある≪高洲崎公園≫で橋の写真を撮りました。 近所の人と思われる、おじいさんと小学校低学年くらいの孫娘が、雑種の母犬一匹と子犬三匹を連れて来ていたのですが、子犬が私の方について来てしまって、孫娘が連れ戻しに来ました。 子犬は、何にでもついて行きますなあ。

  そこの水飲み場で、ジャブジャブと洗面。 眠くなりそうな頃合いなので、頭に刺激を与えねばなりません。 この後、コンビニで、≪午後の紅茶≫の500ccペットボトルを購入。 眠気を飛ばすには、紅茶以外に選択肢がないですな。 これも、ぬるくなるとまずいですが、炭酸飲料よりは、マシ。

   霞ヶ浦大橋からは、354号で西進し、つくば市で、再度、6号に戻りました。 東京方向へ南下して、柏市で、16号へ。 都心に入りたくないので、環状になっている16号で迂回しようという作戦。 正午前に、16号に入れたので、「うまくすれば、5時までに家に帰れるかもしれない」などと考えていましたが、それは、超甘い考えでした。

  12時45分、春日部のミニストップで、休憩。 おこわおにぎり115円で、遅い昼飯にしました。 同じ店で、アイスを買おうとしたら、前の客で時間が掛かりすぎ、アイスが溶けかけたので、やめてしまいました。 たった一人の客に、5分もかけているのですから、無能な店員もいたものです。

  千円以上お買い上げだからと言って、クジを引かせ、クジが当ったと言って、景品を店の奥まで取りに行き、私が持っているアイスが溶けかけた頃、並んだ客が増えて来たのを見て、「レジ、お願いしまーす」などと、他の店員を呼んでいる始末。

  ヘルプを呼べるのなら、もっと早く呼べばいいものを。 というか、時間がかかりそうな客がいて、その後ろに、アイスを一本だけ持った客がいたら、前の客に頼んで、先にアイスの客を片付けてしまおうという段取りは出来ないんですかね? 溶けるのが分かっていて、待たしておいて、どうする?

  もちろん、そのアイスは買いませんでした。 ボックスに戻して、出て来てしまいました。 溶けかけたアイスなど、商品価値ゼロですから、そんな物を買ってやる義理はありません。 何で、私が、間抜けな店員のミスを尻拭いしてやらなければならんのさ?

  コンビニの店員というのは、気楽ですねえ。 客を怒らせても、始末書一枚書かされるわけじゃない。 客が帰ってしまえば、逆にブツクサ文句を言って、終わりなのですから。

  激怒している内に、さいたま市と川越市を過ぎました。 怒りで眠気が飛んだのは、禍転じて福という奴でしょうか。

  2時頃、狭山市のコンビ二で、アイスを買い直しました。 ここでは、至ってスムースに買う事ができました。 それが当然でしょう。 ようやく、溜飲が下がった次第。

  4時頃、埼玉・東京を突破し、ようやく、神奈川県に入りましたが、相模原市で、またまた道に迷いました。 246号の入り口を見つけられず、どんどん、東へ戻ってしまいます。 不安が頂点に達して、標識に≪厚木≫の文字を見つけると、たまらず、そちらへ曲がりました。 県道52号で、全く見知らぬ山の中を通り、辛うじて厚木に入りました。

  この失敗は、出かける前のルート選定の杜撰さに原因があります。 静岡県東部に住む人間の習性で、「神奈川県まで戻ってくれば、後は、どうにか帰って来れるだろう」という思い込みがあり、それが、もろに出てしまったんですな。 家に戻ってから、地図で調べ直したら、16号と246号の合流点は、横浜市内でした。 道理で、どんどん、東へ戻ってしまうわけです。 下調べの時に、ちゃんと見ておけば、相模原から、厚木へ直行できたものを・・・。

  4時30分、相模川の右岸に出て、川沿いの道を下りました。 相模川は、まっすぐ南下しているので、それに沿っていけば、いつかは、246号に出るはず。 暫く走って、246号を見つけると、ほっとして、そちらへ曲がりました。 これでもう、迷う事はありません。

  5時18分、平沢で休憩。 246号で、東から戻って来たのは、18年ぶりくらいですが、厚木から小山までが、こんなに遠かったとは・・・。

  御殿場に入ったら、雨がポツポツ降り出しました。 前にも、こんな事があったな。 ツーリング中、ずっと晴れだったのに、静岡県に入った途端、降り出すのです。 マーフィーの法則か。 合羽を上だけ着て、リュックにカバーをかけたのですが、裾野に入ったら、呆気無く、やんでしまいました。 また、マーフィーだ。

  7時に家に到着。 オド・メーター、93252キロ。 出発した時は、92473キロでしたから、全走行距離は、779キロだった事になります。 使ったお金は、フェリー代、ガソリン給油2回、あと、食費で、5193円でした。

  やれやれ。 とにかく、無事に帰ってこれてよかったです。 13年ぶりにやってみたわけですが、やっぱり、野宿ツーリングは怖いですわ。


 ↑ 迷いながら、光を頼りに辿り着いた、≪犬吠埼灯台≫。 4時頃でしたが、着いた時は、真っ暗で、光源部分しか写らず、20分くらい待ってから撮ったのが、この写真。 ≪FINEPIX JX550≫は、暗さに弱いようで、かなりのブレ。 


 ↑ これは、更に時間が経ち、5時頃の写真。 灯台のすぐそばまで商店が迫っていますが、ここは旅館ではありますまいか? 昔、家族で来た時に、この辺りに泊まったと思うからです。 とにかく、灯台のすぐそばでした。 夜中に窓から外を見たら、満天の星空だったような記憶があります。


 ↑ 犬吠埼からの日の出。 「出てないじゃないか」と思うでしょうが、雲の間から日の光が見えたから、一応、日の出という事で勘弁して下さい。 水平線から雲の上までが高くて、なかなか、上まで出てこなかったのです。 日の出を、1時間も待っていたので、えらい時間ロスになりました。


 ↑ ≪鹿島灘臨海公園≫から垣間見た、鹿島灘。 時間は、7時頃です。 犬吠埼を出てから、2時間も経っています。 何とか、鹿島灘を見たいと思ったのですが、なかなか、海岸に出られる場所がなく、たまたま見つけた臨海公園に寄り、海を目指したものの、ここまでが限界でした。 ここから、海まで行っていたら、更に30分かかっていたでしょう。


 ↑ 大洗市街地。 大洗でも、迷いまくり、市街地をぐるぐる回って、ようやく、この、≪大洗磯前神社≫の鳥居を見つけ、現在地が判明した次第。 基本的に、迷っている間は、不安で不安で、写真撮影どころではありません。 道が分かって、ようやく、「写真でも撮るか」という、心のゆとりが出るわけです。


 ↑ ≪大洗海岸≫。 これは、大洗市街地の北側にあります。 どうも、≪大洗海水浴場≫とは、別物のようで、海水浴場の方は、市街地の南に広がっていました。 どちらも、泳げる事に変わりはないようですけど。


 ↑ ≪霞ヶ浦≫を渡る、≪霞ヶ浦大橋≫。 この辺り、広々としていて、大変、気持ちのいい所です。 橋の袂に、≪高洲崎公園≫という大きな公園があり、そこから、湖沿いの土手道に出て、撮った写真。


 ↑ 茨城県は、基本的にまっ平らな地形で、ちょこちょこと、小山があるという感じでした。 この付近も、高い所が無くて、広大な霞ヶ浦も、一望というわけにはいきません。 大橋の東側に、道の駅があり、展望塔のようなものが立っていましたが、時間がないので、そこには寄りませんでした。


 ↑ 国道6号。 これは、11時20分頃、茨城県と千葉県の境付近で休憩した時の写真。 バイクは、どこでも休憩できる点、車よりも気楽です。 6号線は、終始、渋滞気味で、時間がかかる反面、恐怖感は少なかったです。


 ↑ 千葉県柏市の、6号と16号が交わる地点。 11時40分頃です。 6号は、東京から東北へ向かう道ですが、16号は、首都圏をぐるりと大回りしている環状線で、これに乗りさえすれば、神奈川まで、自動的に連れて行ってくれます。 昼前に、16号に入れる事が分かり、ほっとしている時。


 ↑ 神奈川県に入り、どうにかこうにか、厚木で246号に入れました。 246号に乗りさえすれば、沼津まで、迷う事はありません。 時間は、5時20分頃です。 平沢という土地で休憩した時の写真。 これが、この旅、最後の一枚になりました。