映画批評③
毎日、定時帰りで、仕事が閑なのは、大変宜しい。 家にいる時間が長くなって、映画三昧で暮らせるのも、これまた宜しい。 問題は、映画を見たら、感想を書かなければならない事で、これが、思いの外、面倒くさい。
ものすごく面白い映画なら、感激して、感想を書かずにはいられないし、ものすごく腹が立つ映画なら、激怒して、感想を書きたくなるものですが、そのどちらでもないとか、単純につまらないとかいう場合、テンションが落ちきって、パソコンを起動する気力も出ません。
ところが、感想を書かずに、それっきりにしてしまうと、その映画の内容を、半年もしない内に、綺麗さっぱり忘れてしまうのです。 歳を取るに連れ、脳のHDD残量が減った為か、忘れても生命に別状のない情報は、記憶に残さないプログラムに改変されてしまったのかもしれませんなあ。
で、感想を書いておけば忘れないかと言うと、そういうわけでもなく、その映画を見た事自体を忘れてしまって、日記を検索して、過去に書いた感想を発見し、「こんなの、書いたっけか?」と、こめかみに冷や汗が浮く事もしばしば。 うーむ、歳は取りたくないものじゃて。 もっとも、映画そのものを見直せば、「ああ、これは、前に見たな」というのは分かりますけど。
というわけで、今回も、映画批評。 毎回くどいようですが、辛口なので、気に入っている映画を貶されたくない方は、ご遠慮下さい。
≪勝利への脱出≫ 1980年 アメリカ
マイケル・ケインさん、シルベスター・スタローンさん出演の、戦時収容所脱走・サッカー物。 変なカテゴリーですが、恐らく、このカテゴリーの作品は、これ一本ではありますまいか。 ≪大脱走≫を下敷きにしつつ、スポーツ物の要素を加味したという形。
第二次世界大戦中、ドイツの収容所で、捕虜のサッカー・チームを作っていた元イングランド代表選手が、ドイツ代表チームと、国際試合をする事になってしまい、連合国の捕虜の中から有名選手を集めて、最強チームを作り、パリの競技場で試合に臨む傍ら、レジスタンスの助けを借りて、集団脱走を試みる話。
かなり複雑な話である上に、見せ場に、サッカーの試合を据えているので、テーマの分散は避けられません。 見せたいのが、試合なのか、脱走なのか、心理劇なのか、はっきりしないのです。 欲張り過ぎに、いい結果はないか。
スタローンさんは、中心的人物ではありますが、主役ではないので、注意。 いわゆる、スタローン色の映画ではないです。 本物のサッカー選手のペレさんが出演していて、そこそこ重要な役をやっています。
元ドイツ代表選手のドイツ軍士官が、スポーツマン・シップに溢れていて、相手チームの好プレーに思わず拍手してしまう場面は、妙に感動します。
≪ダイヤモンド・イン・パラダイス≫ 2004年 アメリカ
ピアース・ブロスナンさん主演の、泥棒もの。 最後の大仕事を終え、婚約者とカリブ海の島へ移住した泥棒が、島に寄港した豪華客船に展示されている大粒のダイヤを巡って、追って来たFBI捜査官と、敵同士とも友人とも思える、奇妙な駆け引きを繰り広げる話。
はっきり言って、三流映画です。 前にも見たような気がするのですが、ほぼ完全に忘れていました。 レベルが低くて、記憶に残らなかったようです。 ≪ホット・ロック≫のような、出し抜き話をやりたかったのではないかと思うのですが、ストーリーの展開が、無理無理な感じ。
婚約者役をやっている女優さんが、シルベスター・スタローンさんと、石田あゆみさんを足して二で割ったような顔をしていて、どうにも、ヒロインに見えません。 というか、女に見えんという見解もあり。 脚本が悪い上に、ヒロイン選びに失敗すると、主演が誰でも、もう、救いようがありません。
≪ロック・ユー≫ 2001年 アメリカ
中世ヨーロッパで、馬上槍の試合中に死んでしまった主人に成りすまして試合に出場し、優勝した従者が、その後、貴族の名を騙って、試合に出続け、運命を変える事に挑戦する話。
物語の設定は面白いんですが、試合、恋愛、親子愛と、テーマを欲張っている割に、エピソードが少ないため、ストーリーが平板で、30分もしない内に、飽きて来ます。 特に、中盤の軸になる恋愛の駆け引きは、熱が出るほど月並みで、退屈なだけ。
途中、本物の英国王子が、身分を隠して試合に出場していた事が分かった時点で、その後の成り行きが大体、想像できてしまうのですが、どーも、ストーリー展開が、教科書的過ぎるような気がします。
馬上槍の試合だけにテーマを絞って、スポーツ物の要素を加え、平民の元従者三人が、貴族の強豪どもを薙ぎ倒す、痛快コメディーにすれば、ずっと、面白くなったのに。
原題は、≪ある騎士の物語≫。 ≪ロック・ユー≫というのは、冒頭部で使われている曲、クイーンの≪ウィ・ウィル・ロック・ユー≫から取ったと思われる邦題ですが、それだけ聞いても、どんな映画なのか、さっぱり分かりません。 まったく、邦題というのは・・・。 余計な事しないで、原題を直訳すればいいのに。
≪ナイト&デイ≫ 2010年 アメリカ
トム・クルーズ、キャメロン・ディアス、ダブル主演の、スパイ・アクション。 帰省する飛行機の中で、スパイ同士の戦いに巻き込まれた女性が、エネルギー革命を引き起こす大発明と、その発明者を守っているという男に、世界中を引き回される話。
いわゆる、ノン・ストップ・アクション映画なのですが、「ノン・ストップ・アクション映画を作りたい」という気持ちだけが前面に出てしまっていて、ストーリーの背景設定がついて来れていない観があります。 なぜ、ヒロインが、巻き込まれ続けなければならないのか、その理由に説得力がありません。
見せ場はアクションなのに、コメディー色をつけようとしている点にも問題があります。 コメディーを入れると、緊迫感が殺がれてしまうのですよ。 では、コメディーとして見たらどうか? というと、こんなにバタバタ、人が殺されるコメディーはあり得ません。 合計で、百人くらい死んでいるのでは?
ちなみに、キャメロン・ディアスさんは、コミカルな場面だけ、活き活きとしています。 元々、ロマ・コメの女優さんだからでしょう。 年齢的に、この種の役は、もう無理があると思いますが。
≪マシニスト≫ 2004年 スペイン・アメリカ
クリスチャン・ベイルさん主演の、サイコ・スリラー。 クリスチャン・ベイルさんは、役作りのために、どえらい減量をしたそうで、ほとんど、骨と皮だけで登場します。 一年間眠れず、激痩せした工員が、幻覚や妄想に襲われて、追い詰められて行く話。
サイコ・スリラーは、大抵、こんな感じで、最初は、主人公と同調して、周囲がおかしいと思いながら見ているのですが、ある時を境に、おかしいのは主人公の方である事に気づかされ、後は、なぜ、主人公がおかしくなったかが説明されて終わります。
見ている間は緊張感があるのに、見終わると印象が何も残らない、というのも、サイコ・スリラーの特徴。 謎解きを、あまり完全にやってしまうと、不思議な感覚が残らないんですな。 結局、精神異常者は、物語の主人公たりえないという事でしょうか。
舞台はアメリカで、かなり日差しが強い地方だと思うのですが、フィルターで減光しているので、何だか、ヨーロッパ北部で撮ったような雰囲気になっています。 暗い光が欲しいなら、イギリスあたりで撮れば良かったのに。 フィルターを使って、作り物っぽい映像にするよりは、ずっといいと思うのですが。
≪サラリーマンNEO 劇場版(笑)≫ 2011年 日本
NHKのコント番組、≪サラリーマンNEO≫の劇場版。 NHKの番組が映画化されたのは、これが初めてじゃないんですか? 他にもあり? テレビの方は、コントのオムニバス形式ですが、この映画は、ストーリーがある、ドラマ仕立てです。
シェア5位のビール会社が、新開発の商品で、業界トップに挑む事になり、社員達が悪戦苦闘する話。 主演は、小池徹平さん。 助演が、生瀬さん。 他に、テレビの方のレギュラー陣。 セクスィー部長の沢村一樹さんも出てますが、あまり、いい役回りではないです。
映画というより、ドラマのような雰囲気ですが、丁寧に作ってあるので、印象は悪くありません。 ギャグの配分が良く、最初から最後まで、間延びなしに、楽しく見る事ができます。
≪バグダッド・カフェ≫ 1987年 西ドイツ
ラスベガス近くの砂漠の中にポツンとある、GS・モーテル付きの喫茶店に、旅行中、夫と別れたドイツ人女性が住み着いた事から、女主人の癇癪が原因でギスギスしていた店の雰囲気が一変する話。
新しい人間が加わった事で、悪かった環境が劇的に改善されるというパターンの話は、さほど、珍しくありません。 ≪落差≫を利用した典型パターンですな。 この映画の場合、ドイツ人女性が、掃除好きで、赤ん坊好きで、女主人の息子が弾くピアノに理解があり、遊び好きの若い娘とも仲良くなれるというキャラ設定で、些か、用意された状況に嵌り過ぎの嫌いが無きにしも非ず。
その上、最終的に店を大繁盛させた切り札が、市販の手品セットで覚えた手品だったというのは、何だか、木に竹を接いだような唐突感があります。 その程度の事で、昼間っから、店が満員になったりしないって。
映像は、色の使い方が変わっていて、個性的といえば個性的ですが、不自然で気持ちが悪いというのが、一般的な感想ではありますまいか。 黒澤明監督の、≪どですかでん≫は、初のカラー作品という事で、色に拘り過ぎたため、やはり、気持ちの悪い映像になっていましたが、この映画の色使いにも、同じような未消化の稚拙さが感じられます。
≪ザ・インタープリター≫ 2005年 アメリカ
ニコール・キッドマンさん主演の、政治サスペンス。 国連で通訳を勤める女性が、アフリカのある国の大統領を暗殺する密談を聞いた事で、シークレット・サービスが、大統領一行及び、彼女の警護に当たるものの、彼女がその国の出身で、大統領を恨む過去を隠していたために、担当捜査官に疑念を抱かれる話。
うーむ、こんなに暗鬱なアメリカ映画も珍しい。 猟奇作品でも何でもないのですが、とにかく、見ていて、気が滅入ります。 女優を主人公にして、政治絡みの話を作ると、アクションよりも、心理劇を主体にせざるを得ないので、こんな風になってしまうのかもしれません。
テーマは、「恨みを克服できるか」という点にあり、これは、かなり、しっかり描き込まれています。 架空の国の架空の習慣だと思いますが、「恨みがある相手を川に流して、助ける気になるかならないか、試す」という話は、人生訓として、示唆に富んでいます。
アフリカの国なのに、そこの出身の主人公が白人女性というのも、ありえない事ではないとは言え、やはり、違和感を覚えます。 アメリカ映画界には、アフリカ系の綺麗な女優さんがいくらもいるのに、なんで、そちらを使わなかったのか、首を傾げてしまいます。
担当捜査官を演じているのは、ショーン・ペンさんですが、この役が、また暗い。 主人公を疑ってばかりで、第一印象、極悪です。 ラストで、ようやく、主人公と打ち解けますが、「今、僕達は、同じ岸に立っている」と言っても、二人の間には、埋められない距離があり、その先、恋愛に発展のしようがない事が分かるので、あまり、いい後味は残しません。
≪カムイ外伝≫ 2009年 日本
崔洋一監督作品。 主演は、松山ケンイチさん。 抜け忍となり、追っ手に命を狙われ続けるカムイが、ある漁師と関わった事で、離れ小島の漁村に住み着くが、その漁師の女房も抜け忍だったため、常に追っ手の影が付き纏い、平穏と不安が交錯する日々を送る話。
見せ場は、忍者同士のアクションですが、昔の忍者物のような、忍術合戦ではなく、スピードとパワーの斬り合いが中心です。 正直のところ、こういう残虐な場面は、もう、うんざりという感じでして、見ている間中、不安感と不快感が消えませんでした。
時代劇が衰退した理由の一つに、現代の日本人が、斬ったり刺したり殺したりという、残虐な物語に、魅力よりも、嫌悪感を覚えるようになってしまった、という面があるのかもしれませんなあ。 言うまでもなく、実際の江戸時代には、こんなに殺人事件ばかりあったわけではないです。 殺人事件と言うより、大量虐殺だね。
伊賀の追っ手達が、カムイによって、バタバタと返り討ちにあって行きますが、こんなに死んでしまったのでは、人材の供給が追いつかないはずで、本業の方に支障を来たすのは、火を見るよりも明らか。 抜け忍狩りに現つを抜かすより、もっと、現実的な事業運営を目指した方がいいと思いますよ、お頭。
映像には、CGを大量に使っていますが、所詮、日本のCG技術なので、やはり、スカです。 特に、海のシーンは、目を背けたくなるひどさ。 色も明る過ぎるし、波も静か過ぎ。 湖だって、もっと、波がありますぜ。 これ、アメリカのCG技術者が見たら、失笑するでしょうねえ。 これで、OKを出してしまう、監督も監督。
脚本に、宮藤官九郎さんが名を連ねていますが、コメディーではないので、それらしい特徴は、全く見受けられません。
≪ザ・ロック≫ 1996年 アメリカ
前に断片だけ見ていたのですが、今度は、最初から見てみました。 アルカトラズ刑務所跡に、観光客を人質に取って立て籠もり、毒ガスを搭載したミサイルでサンフランシスコを狙う元軍人一味に対し、かってアルカトラズから脱獄した事がある、元イギリス諜報部員を案内役にして、FBIが、特殊部隊を送り込む話。
あらすじを読んだだけでも、かなり無茶苦茶な設定である事が分かると思います。 まあ、立て籠もりに対して、特殊部隊を送り込むところまではいいとして、何で、案内役が、元イギリス諜報部員でなければならないのか、それが分かりません。 単に、ショーン・コネリーさんを出したくて、≪007≫に引っ掛けたとしか思えないのですが、だとしたら、あまりにも軽薄な思い付きです。
潜入早々、いきなり、特殊部隊の戦闘員が全滅してしまうのも、大変な御都合主義。 単に、主人公と案内役の二人だけを生き残らせるために、他を始末したのだとしか思えません。 特殊部隊の指揮官が、「部下に武器を捨てろとは言えない!」と絶叫しますが、なんで、言えないのか、さっぱり分かりません。 圧倒的に不利な状況なら、部下の命を預かる責任者として、降伏を選択するのは、別におかしくもなんともないのですが。
無茶苦茶といえば、潜入前に、逃亡した案内役を追って、カー・チェイスをする場面がありますが、主人公が、通りかかったフェラーリを、FBIの権限で借りて使い、結局壊してしまうのも、なんで、フェラーリでなければならないのか、さっぱり分かりません。 単に、監督が、高いスポーツカーを出したかっただけなのではありますまいか。
で、監督は誰かと言うと、嫌な予感が的中して、あのマイケル・ベイなんですな。 道理で、発想が子供っぽいわけだ。 この監督、どの作品を見ても、まるっきり感心しません。 作る映画、作る映画、駄作だらけだと思うのですが、なんで、一線で起用され続けているのか、さっぱり分かりません。
以上、今回は、10本まで。 相変わらず、日に二本のペースで見ているので、週に一回、10本ずつの紹介では、いつまでたっても、感想が終わらないのですが、まあ、私の事ですから、映画三昧生活にも、その内、飽きるでしょう。
ものすごく面白い映画なら、感激して、感想を書かずにはいられないし、ものすごく腹が立つ映画なら、激怒して、感想を書きたくなるものですが、そのどちらでもないとか、単純につまらないとかいう場合、テンションが落ちきって、パソコンを起動する気力も出ません。
ところが、感想を書かずに、それっきりにしてしまうと、その映画の内容を、半年もしない内に、綺麗さっぱり忘れてしまうのです。 歳を取るに連れ、脳のHDD残量が減った為か、忘れても生命に別状のない情報は、記憶に残さないプログラムに改変されてしまったのかもしれませんなあ。
で、感想を書いておけば忘れないかと言うと、そういうわけでもなく、その映画を見た事自体を忘れてしまって、日記を検索して、過去に書いた感想を発見し、「こんなの、書いたっけか?」と、こめかみに冷や汗が浮く事もしばしば。 うーむ、歳は取りたくないものじゃて。 もっとも、映画そのものを見直せば、「ああ、これは、前に見たな」というのは分かりますけど。
というわけで、今回も、映画批評。 毎回くどいようですが、辛口なので、気に入っている映画を貶されたくない方は、ご遠慮下さい。
≪勝利への脱出≫ 1980年 アメリカ
マイケル・ケインさん、シルベスター・スタローンさん出演の、戦時収容所脱走・サッカー物。 変なカテゴリーですが、恐らく、このカテゴリーの作品は、これ一本ではありますまいか。 ≪大脱走≫を下敷きにしつつ、スポーツ物の要素を加味したという形。
第二次世界大戦中、ドイツの収容所で、捕虜のサッカー・チームを作っていた元イングランド代表選手が、ドイツ代表チームと、国際試合をする事になってしまい、連合国の捕虜の中から有名選手を集めて、最強チームを作り、パリの競技場で試合に臨む傍ら、レジスタンスの助けを借りて、集団脱走を試みる話。
かなり複雑な話である上に、見せ場に、サッカーの試合を据えているので、テーマの分散は避けられません。 見せたいのが、試合なのか、脱走なのか、心理劇なのか、はっきりしないのです。 欲張り過ぎに、いい結果はないか。
スタローンさんは、中心的人物ではありますが、主役ではないので、注意。 いわゆる、スタローン色の映画ではないです。 本物のサッカー選手のペレさんが出演していて、そこそこ重要な役をやっています。
元ドイツ代表選手のドイツ軍士官が、スポーツマン・シップに溢れていて、相手チームの好プレーに思わず拍手してしまう場面は、妙に感動します。
≪ダイヤモンド・イン・パラダイス≫ 2004年 アメリカ
ピアース・ブロスナンさん主演の、泥棒もの。 最後の大仕事を終え、婚約者とカリブ海の島へ移住した泥棒が、島に寄港した豪華客船に展示されている大粒のダイヤを巡って、追って来たFBI捜査官と、敵同士とも友人とも思える、奇妙な駆け引きを繰り広げる話。
はっきり言って、三流映画です。 前にも見たような気がするのですが、ほぼ完全に忘れていました。 レベルが低くて、記憶に残らなかったようです。 ≪ホット・ロック≫のような、出し抜き話をやりたかったのではないかと思うのですが、ストーリーの展開が、無理無理な感じ。
婚約者役をやっている女優さんが、シルベスター・スタローンさんと、石田あゆみさんを足して二で割ったような顔をしていて、どうにも、ヒロインに見えません。 というか、女に見えんという見解もあり。 脚本が悪い上に、ヒロイン選びに失敗すると、主演が誰でも、もう、救いようがありません。
≪ロック・ユー≫ 2001年 アメリカ
中世ヨーロッパで、馬上槍の試合中に死んでしまった主人に成りすまして試合に出場し、優勝した従者が、その後、貴族の名を騙って、試合に出続け、運命を変える事に挑戦する話。
物語の設定は面白いんですが、試合、恋愛、親子愛と、テーマを欲張っている割に、エピソードが少ないため、ストーリーが平板で、30分もしない内に、飽きて来ます。 特に、中盤の軸になる恋愛の駆け引きは、熱が出るほど月並みで、退屈なだけ。
途中、本物の英国王子が、身分を隠して試合に出場していた事が分かった時点で、その後の成り行きが大体、想像できてしまうのですが、どーも、ストーリー展開が、教科書的過ぎるような気がします。
馬上槍の試合だけにテーマを絞って、スポーツ物の要素を加え、平民の元従者三人が、貴族の強豪どもを薙ぎ倒す、痛快コメディーにすれば、ずっと、面白くなったのに。
原題は、≪ある騎士の物語≫。 ≪ロック・ユー≫というのは、冒頭部で使われている曲、クイーンの≪ウィ・ウィル・ロック・ユー≫から取ったと思われる邦題ですが、それだけ聞いても、どんな映画なのか、さっぱり分かりません。 まったく、邦題というのは・・・。 余計な事しないで、原題を直訳すればいいのに。
≪ナイト&デイ≫ 2010年 アメリカ
トム・クルーズ、キャメロン・ディアス、ダブル主演の、スパイ・アクション。 帰省する飛行機の中で、スパイ同士の戦いに巻き込まれた女性が、エネルギー革命を引き起こす大発明と、その発明者を守っているという男に、世界中を引き回される話。
いわゆる、ノン・ストップ・アクション映画なのですが、「ノン・ストップ・アクション映画を作りたい」という気持ちだけが前面に出てしまっていて、ストーリーの背景設定がついて来れていない観があります。 なぜ、ヒロインが、巻き込まれ続けなければならないのか、その理由に説得力がありません。
見せ場はアクションなのに、コメディー色をつけようとしている点にも問題があります。 コメディーを入れると、緊迫感が殺がれてしまうのですよ。 では、コメディーとして見たらどうか? というと、こんなにバタバタ、人が殺されるコメディーはあり得ません。 合計で、百人くらい死んでいるのでは?
ちなみに、キャメロン・ディアスさんは、コミカルな場面だけ、活き活きとしています。 元々、ロマ・コメの女優さんだからでしょう。 年齢的に、この種の役は、もう無理があると思いますが。
≪マシニスト≫ 2004年 スペイン・アメリカ
クリスチャン・ベイルさん主演の、サイコ・スリラー。 クリスチャン・ベイルさんは、役作りのために、どえらい減量をしたそうで、ほとんど、骨と皮だけで登場します。 一年間眠れず、激痩せした工員が、幻覚や妄想に襲われて、追い詰められて行く話。
サイコ・スリラーは、大抵、こんな感じで、最初は、主人公と同調して、周囲がおかしいと思いながら見ているのですが、ある時を境に、おかしいのは主人公の方である事に気づかされ、後は、なぜ、主人公がおかしくなったかが説明されて終わります。
見ている間は緊張感があるのに、見終わると印象が何も残らない、というのも、サイコ・スリラーの特徴。 謎解きを、あまり完全にやってしまうと、不思議な感覚が残らないんですな。 結局、精神異常者は、物語の主人公たりえないという事でしょうか。
舞台はアメリカで、かなり日差しが強い地方だと思うのですが、フィルターで減光しているので、何だか、ヨーロッパ北部で撮ったような雰囲気になっています。 暗い光が欲しいなら、イギリスあたりで撮れば良かったのに。 フィルターを使って、作り物っぽい映像にするよりは、ずっといいと思うのですが。
≪サラリーマンNEO 劇場版(笑)≫ 2011年 日本
NHKのコント番組、≪サラリーマンNEO≫の劇場版。 NHKの番組が映画化されたのは、これが初めてじゃないんですか? 他にもあり? テレビの方は、コントのオムニバス形式ですが、この映画は、ストーリーがある、ドラマ仕立てです。
シェア5位のビール会社が、新開発の商品で、業界トップに挑む事になり、社員達が悪戦苦闘する話。 主演は、小池徹平さん。 助演が、生瀬さん。 他に、テレビの方のレギュラー陣。 セクスィー部長の沢村一樹さんも出てますが、あまり、いい役回りではないです。
映画というより、ドラマのような雰囲気ですが、丁寧に作ってあるので、印象は悪くありません。 ギャグの配分が良く、最初から最後まで、間延びなしに、楽しく見る事ができます。
≪バグダッド・カフェ≫ 1987年 西ドイツ
ラスベガス近くの砂漠の中にポツンとある、GS・モーテル付きの喫茶店に、旅行中、夫と別れたドイツ人女性が住み着いた事から、女主人の癇癪が原因でギスギスしていた店の雰囲気が一変する話。
新しい人間が加わった事で、悪かった環境が劇的に改善されるというパターンの話は、さほど、珍しくありません。 ≪落差≫を利用した典型パターンですな。 この映画の場合、ドイツ人女性が、掃除好きで、赤ん坊好きで、女主人の息子が弾くピアノに理解があり、遊び好きの若い娘とも仲良くなれるというキャラ設定で、些か、用意された状況に嵌り過ぎの嫌いが無きにしも非ず。
その上、最終的に店を大繁盛させた切り札が、市販の手品セットで覚えた手品だったというのは、何だか、木に竹を接いだような唐突感があります。 その程度の事で、昼間っから、店が満員になったりしないって。
映像は、色の使い方が変わっていて、個性的といえば個性的ですが、不自然で気持ちが悪いというのが、一般的な感想ではありますまいか。 黒澤明監督の、≪どですかでん≫は、初のカラー作品という事で、色に拘り過ぎたため、やはり、気持ちの悪い映像になっていましたが、この映画の色使いにも、同じような未消化の稚拙さが感じられます。
≪ザ・インタープリター≫ 2005年 アメリカ
ニコール・キッドマンさん主演の、政治サスペンス。 国連で通訳を勤める女性が、アフリカのある国の大統領を暗殺する密談を聞いた事で、シークレット・サービスが、大統領一行及び、彼女の警護に当たるものの、彼女がその国の出身で、大統領を恨む過去を隠していたために、担当捜査官に疑念を抱かれる話。
うーむ、こんなに暗鬱なアメリカ映画も珍しい。 猟奇作品でも何でもないのですが、とにかく、見ていて、気が滅入ります。 女優を主人公にして、政治絡みの話を作ると、アクションよりも、心理劇を主体にせざるを得ないので、こんな風になってしまうのかもしれません。
テーマは、「恨みを克服できるか」という点にあり、これは、かなり、しっかり描き込まれています。 架空の国の架空の習慣だと思いますが、「恨みがある相手を川に流して、助ける気になるかならないか、試す」という話は、人生訓として、示唆に富んでいます。
アフリカの国なのに、そこの出身の主人公が白人女性というのも、ありえない事ではないとは言え、やはり、違和感を覚えます。 アメリカ映画界には、アフリカ系の綺麗な女優さんがいくらもいるのに、なんで、そちらを使わなかったのか、首を傾げてしまいます。
担当捜査官を演じているのは、ショーン・ペンさんですが、この役が、また暗い。 主人公を疑ってばかりで、第一印象、極悪です。 ラストで、ようやく、主人公と打ち解けますが、「今、僕達は、同じ岸に立っている」と言っても、二人の間には、埋められない距離があり、その先、恋愛に発展のしようがない事が分かるので、あまり、いい後味は残しません。
≪カムイ外伝≫ 2009年 日本
崔洋一監督作品。 主演は、松山ケンイチさん。 抜け忍となり、追っ手に命を狙われ続けるカムイが、ある漁師と関わった事で、離れ小島の漁村に住み着くが、その漁師の女房も抜け忍だったため、常に追っ手の影が付き纏い、平穏と不安が交錯する日々を送る話。
見せ場は、忍者同士のアクションですが、昔の忍者物のような、忍術合戦ではなく、スピードとパワーの斬り合いが中心です。 正直のところ、こういう残虐な場面は、もう、うんざりという感じでして、見ている間中、不安感と不快感が消えませんでした。
時代劇が衰退した理由の一つに、現代の日本人が、斬ったり刺したり殺したりという、残虐な物語に、魅力よりも、嫌悪感を覚えるようになってしまった、という面があるのかもしれませんなあ。 言うまでもなく、実際の江戸時代には、こんなに殺人事件ばかりあったわけではないです。 殺人事件と言うより、大量虐殺だね。
伊賀の追っ手達が、カムイによって、バタバタと返り討ちにあって行きますが、こんなに死んでしまったのでは、人材の供給が追いつかないはずで、本業の方に支障を来たすのは、火を見るよりも明らか。 抜け忍狩りに現つを抜かすより、もっと、現実的な事業運営を目指した方がいいと思いますよ、お頭。
映像には、CGを大量に使っていますが、所詮、日本のCG技術なので、やはり、スカです。 特に、海のシーンは、目を背けたくなるひどさ。 色も明る過ぎるし、波も静か過ぎ。 湖だって、もっと、波がありますぜ。 これ、アメリカのCG技術者が見たら、失笑するでしょうねえ。 これで、OKを出してしまう、監督も監督。
脚本に、宮藤官九郎さんが名を連ねていますが、コメディーではないので、それらしい特徴は、全く見受けられません。
≪ザ・ロック≫ 1996年 アメリカ
前に断片だけ見ていたのですが、今度は、最初から見てみました。 アルカトラズ刑務所跡に、観光客を人質に取って立て籠もり、毒ガスを搭載したミサイルでサンフランシスコを狙う元軍人一味に対し、かってアルカトラズから脱獄した事がある、元イギリス諜報部員を案内役にして、FBIが、特殊部隊を送り込む話。
あらすじを読んだだけでも、かなり無茶苦茶な設定である事が分かると思います。 まあ、立て籠もりに対して、特殊部隊を送り込むところまではいいとして、何で、案内役が、元イギリス諜報部員でなければならないのか、それが分かりません。 単に、ショーン・コネリーさんを出したくて、≪007≫に引っ掛けたとしか思えないのですが、だとしたら、あまりにも軽薄な思い付きです。
潜入早々、いきなり、特殊部隊の戦闘員が全滅してしまうのも、大変な御都合主義。 単に、主人公と案内役の二人だけを生き残らせるために、他を始末したのだとしか思えません。 特殊部隊の指揮官が、「部下に武器を捨てろとは言えない!」と絶叫しますが、なんで、言えないのか、さっぱり分かりません。 圧倒的に不利な状況なら、部下の命を預かる責任者として、降伏を選択するのは、別におかしくもなんともないのですが。
無茶苦茶といえば、潜入前に、逃亡した案内役を追って、カー・チェイスをする場面がありますが、主人公が、通りかかったフェラーリを、FBIの権限で借りて使い、結局壊してしまうのも、なんで、フェラーリでなければならないのか、さっぱり分かりません。 単に、監督が、高いスポーツカーを出したかっただけなのではありますまいか。
で、監督は誰かと言うと、嫌な予感が的中して、あのマイケル・ベイなんですな。 道理で、発想が子供っぽいわけだ。 この監督、どの作品を見ても、まるっきり感心しません。 作る映画、作る映画、駄作だらけだと思うのですが、なんで、一線で起用され続けているのか、さっぱり分かりません。
以上、今回は、10本まで。 相変わらず、日に二本のペースで見ているので、週に一回、10本ずつの紹介では、いつまでたっても、感想が終わらないのですが、まあ、私の事ですから、映画三昧生活にも、その内、飽きるでしょう。
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