2016/05/15

錆との戦い⑬ 【父自B&A 前編】

  父自レストアの写真です。 サブタイトルの、「B&A」というのは、「ビフォー・アフター」の意味。 もーう、13回目ともなると、サブ・タイトルに、気の利いた言葉を並べようなんて野心が、かけらもなくなるものですな。

  前後編の二回で終わらせるつもりですが、組み写真の数は、三回に分けた旧母自と同じくらいあるので、一回の枚数が多くなります。 例によって、解説文の中に、今までに出した文章と重複している内容が出て来るかもしれませんが、気にせず、読み飛ばして下さい。





≪父自レストア 全体≫
  これは、全体の写真。 上段がビフォー、下段がアフターです。 後ろから撮った写真もあるのですが、本体の色が違うだけで、あまり差が際立たないので、前から撮った写真だけにしました。

  前から見た時の、一番の変化点は、前籠が新しくなった事ですかね。 前籠の錆取りは、かなり早い段階で諦めて、父の了解を得た上で、プラスチックの新品を買っておいたので、それに付け替えたわけです。 やはり、新品は、気持ちいいですな。

  フレーム、フォーク、前後泥除け、チェーン・カバーを、シルバーから、黒に塗り替えたのも、大きな違いです。 錆びた所を掻き落とし、全体に紙鑢をかけてから、アサヒペンの、「カラーサビ鉄用 黒」を塗ったもの。 黒は、旧母自に塗ったグレーより、何となく塗り難くて、乾いた後で、ムラが出来てしまいました。 だけど、これは、カラーサビの薄め方の違いや、塗装面の紙鑢がけの丁寧さの違いが関わって来るので、何が主原因だったかは、分かりません。

  他に、見た目では分かりませんが、前輪タイヤが新品になり、前後輪のチューブも、それまで米式だったのを、英式に変えた新品になっています。 父自のレストアにかかった金額は、

前籠 1100円
カラーサビ 820円
前輪タイヤ 907円
チューブ前後 648円

  で、計 3475円になりますが、その内、父から貰ったのは、前籠の代金1100円と、それ以外をひっくるめた、1000円だけでした。 私としては、1375円の赤字ですが、レストアは、父に頼まれたわけではなく、私が暇潰しでやった事なので、この程度の出費は、致し方ありません。




≪父自 荷台≫
  父自の荷台。 上段がビフォー、下段がアフターです。 旧母自は、部品を少しずつ外して、錆取りして行ったのですが、父自では、経験値が高くなったお陰で、要領が良くなり、初日に、全部バラバラにしてから、部品の錆取りを始めました。 荷台は、大物なので、一番始めに取り組んだ口。

  ビフォー写真を見ても、どこが錆びているのが、分かり難いと思います。 旧母自の荷台ほど、真茶色になっていたわけではないので、比較的、楽に作業できました。 スクレイパー、金ブラシ、紙鑢の順で使って行きました。 最終的に、クローム・メッキが残っている所と、鉄肌が出てしまった所の混合になりましたが、まあ、錆が見えなくなれば、良しとします。

  寒くて、部屋の中で作業したのですが、水が零れたり、撥ねたりするのを避ける為、全く水を使わないでやったところ、マスクが錆色に染まるという、ぞっとするような体験をしました。 危ない危ない、呼吸器系の方から、破傷風になってしまうよ。

  錆を取った後、透明錆どめを塗り、更に、その上から、クリヤーを塗って、仕上げました。 クリヤーが水を弾くので、透明錆どめが溶ける事はないのですが、湿度が高いと、クリヤーの下で白化してしまいます。 しかし、メッキ面や鉄肌を見えるようにするには、透明錆どめ+クリヤー以外、処置方法がないのです。




≪父自 スタンド≫
  父自のスタンド。 上段がビフォー、下段がアフターです。 撮影した日の天気と時間帯が違うので、雰囲気が変わってしまっていますが、まあ、大雑把な目で見てください。 荷台同様、スタンドも、父自は、旧母自ほど、錆がひどくなくて、錆取り自体は、割と簡単でした。 水を使わなかったせいで、マスクが錆色になってしまったのも、同じ。

  ビフォーとアフターで、決定的に違うのは、やはり、スプリングですな。 スプリングの錆が、いかに自転車をボロく見せるか、よくよく分かりました。 スプリングは、外して、酸に着け、錆が落ちた後、スタンドに戻して、それから、スタンド全体に、透明錆どめと、クリヤーを塗りました。 クリヤーですが、スプリングだけは、スプレーして、中まで吹き込みました。

  父自のスタンドの錆取りをしていた時に、はっきり気づいたんですが、クローム・メッキは、メッキ面が露出しているわけではなく、もう一層、クリヤーのようなものが塗られているようです。 それは、荷台も同じでしたし、旧母自のクローム・メッキ部品でも、それらしいものが観察できました。

  たぶん、クローム・メッキだけだと、錆が出る早いので、クリヤーでコートしてあるのだと思います。 問題は、それだけ重ねても、やはり、錆びて来るのを防げないという事でして、鉄というのは、とことん、表面処理が厄介な代物なのだと思いましたっけ。




≪父自 前輪周辺≫
  二台目の事ですし、あまり、細々と部品別に写真を出していると、まどろっこしいので、前輪周辺に写っているものを、全部、説明してしまいます。 上段がビフォー、下段がアフターです。

【前輪スポーク】
  父自の前輪スポークは、旧母自以上に錆がひどくて、最初から、シルバーで塗ってしまうつもりでいました。 一応、錆を落としたものの、案の定、赤錆色を落としきれず、そのままでは、問題外の有様。 で、透明錆どめを塗ってから、家にあった、油性トタン・シルバーを塗ったら、見違えるように綺麗になりました。 スポークは腐蝕が進んで、凹凹なので、近づくと、塗ってある事がバレバレなのですが、ちょっと離れていれば、まず、分かりません。

【前泥除けステー】
  旧母自は、なぜか、泥除けステーがステンレスで、錆びていませんでした。 一方、父自は、鉄にクローム・メッキで、ボロ錆び状態。 酸に浸け、鉄肌を出してから、透明錆どめと、トタン・シルバーを塗りました。 どうせ、上から塗ってしまうので、錆どめは、透明でなくてもよかったのですが、普通の錆どめを持っていなかったので、透明錆どめを使わざるを得なかった次第。 だけど、これから、レストアをやるという人には、透明錆どめは、水や湿度に弱いので、お薦めしません。

【前籠ステー】
  父自の前籠ステーは、ビフォー写真を見ての通り、真っ赤に錆びていました。 酸に浸けて、錆を落とし、鉄の地肌を出しても、凹凹で、金属光沢は期待できません。 そこで、これも、透明錆どめの上から、トタン・シルバーを塗りました。 元がひどかっただけに、綺麗になって、清々しました。 ペンキの貧乏臭さなど、どうという事はありませんな。

【ライト】
  父自は、ハブ・ダイナモのオート・ライトで、これは、変わっていません。 ハブ・ダイナモ車でも、前輪の取り外しは簡単で、車軸の近くにあるコネクターを抜くだけです。 リード線を留めるクリップが、上下に付いているので、それを外せば、リード線も解く事ができます。 組み直す時に、コネクターの向きや、クリップの位置を間違えないように、写真を撮ってから、バラしました。

【タイヤ】
  前輪のタイヤも、新品になっています。 ビフォー写真のタイヤも、まだ使えたのですが、この前輪は、もう一年以上、少しずつ空気が減る症状に悩まされていて、今回、チューブを米式のから英式のに交換したついでに、タイヤも新しくしたというわけ。 前輪は、溝の減りが遅いですから、今後、換える事は、もうないと思います。




≪父自 前ブレーキ≫
  父自の、前ブレーキです。 左右から撮影しました。 上段がビフォー、下段がアフターです。 元は、クローム・メッキで、不思議と、前面は、あまり錆びておらず、裏側やボルト・ナット類が、ひどく錆びていました。 旧母自では、前ブレーキは、バラバラに分解したのですが、組み直した後、調整に苦労したので、父自では、分解せずに、そのまま、酸に浸けました。 形が立体的で、大きさもありましたから、少しずつ動かしながら、部分部分を浸しました。

  錆は落ちたのですが、クローム・メッキの下から、銅メッキが出て来てしまいました。 またかよ! 透明錆どめとクリヤーの組み合わせでは、赤っぽくなって、なんだか、錆びているように見えてしまいます。 そこで、透明錆どめの上から、トタン・シルバーを塗って、隠してしまいました。

  綺麗にはなったのですが、このトタン・シルバーが、可動部分に入り込んで、動きが悪くなり、組み直す時に、またぞろ、調整に苦労する羽目になりました。 前ブレーキは、組み立ての難所だったんですなあ。 結局、片効き気味なままとなりましたが、まあ、ちゃんと、制動できるので、良しとしました。


  ヘッド・セットのワンも写っていますから、ついでに触れておきますと、父自では、フォークを抜かずに、本体を塗り替えたので、ヘッド・セットの分解もしませんでした。 上側は、プラスチックのカバーが被さっていて、錆びていませんでしたし、写真に写っている下側も、汚れを取ったら、ほとんど錆がでいませんでした。 下側だけ、透明錆どめとクリヤーを塗っておきました。




≪父自 ブレーキ・レバー周辺≫
  ブレーキ・レバー周辺。 上段がビフォー、下段がアフターです。 同じ角度で撮った写真がなくて恐縮です。 父自のブレーキ・レバーは、レバーはもちろん、取り付け基部まで、プラスチックで覆われていたので、それ自体は、何もしていません。 ただ、ハンドルに締め付ける為の六角ボルトが、かなり錆びていたので、それだけは、酸に浸けました。

  透明錆どめを塗った後、シルバーで仕上げたのですが、六角レンチを挿し込んで、締め付けたら、せっかく塗ったシルバーの塗料が剥がれてしまい、締め付けた後で、また、中だけ塗り直しました。 写っていませんが、ハンドルをステムに締め付けている六角ボルトも、同様に処置しました。 今後も、六角レンチを挿すたびに、剥がれてしまうわけですが、たぶん、もう、何度も、そんな機会はないと思います。

  プラスチックで覆われているとはいえ、ブレーキ・レバーですから、中には、金属芯が入っていると思われます。 しかし、こういう風に、プラスチックで覆えるのなら、鉄製部品は、みんなそうしてしまった方が、錆が分からなくていいのではと、思わないでもなし。 いや、全部やったのでは、重くなり過ぎるのかな?


  父自は、内装三段ギアで、そのシフト・レバーが、ハンドル右側に付いています。 それをハンドルに締め付けている金属のバンド部分が錆びていたので、紙鑢でざっと削り、やはり、透明錆どめとシルバーの塗料を塗っておきました。 内装ギアの場合、シフト・レバーも、後輪車軸に共締めされているシフター部品も、割と簡単に、取り外しや取り付けが可能です。 車軸に挿さっているピンさえなくさなければ、の話ですけど。


  ハンドルそのものは、ステンレスなので、錆びていません。 全く以て、ステンレスは、凄い発明だと思います。 自転車ほど、鉄、ステンレス、アルミの、防錆能力の違いが、はっきり観察できる機械もありますまい。 更に、クローム・メッキ、亜鉛メッキ、ペイント塗装の違いまで分かるのだから、さながら、「防錆特性の見本市」の様相を呈していると言えます。




≪父自 後ろブレーキ≫
  父自の後ろブレーキ。 上段がビフォー、下段がアフターです。 旧母自は、バンド・ブレーキですが、父自は、ローラー・ブレーキで、サイズがコンパクトです。 外殻は、クローム・メッキでしたが、さほどの錆ではなく、コンパウンドで磨いただけで、落ちました。 透明錆どめと、クリヤーで、コートしてあります。

  旧母自同様、この付近は、一際、綺麗になったのですが、荷台ステーや、スタンド、泥除けステーなどの赤錆色が落ちた事が効いているんでしょうなあ。 いろんな部品が集中している場所なので、全体をレストアすると、綺麗さも、集中するわけだ。

  ちらっと写っていますが、左側のチェーン引きのナットも錆びていたので、酸に浸け、透明錆どめとシルバーを塗りました。 ちなみに、父自のチェーン引きには、左右で形状の違いがあり、逆には付けられないようになっていました。 ただし、それぞれを裏返しに付ける事はできるので、間違えないように気をつけなければなりません。




  ビフォー・アフターの前編は、以上です。 旧母自の時には、一部、ビフォー写真を撮り忘れるという、ポカをやりましたが、父自に関しては、一応、全部、揃っています。 その代わりと言ってはなんですが、作業中の写真は、一枚も撮りませんでした。 二台目の事とて、旧母自よりも、作業の進捗が速かったから、尚更、写真を撮っている暇がなかったんですな。


  全体写真を見ると分りますが、レストア前と後とでは、印象がガラリと変わってしまいました。 本体の色が、明から暗に、正反対になったのと、前籠がプラスチックの新品に変わったのが、大いに利いたものと思われます。 別に、自慢するわけではありませんが、ちょっと離れて見ると、新品の自転車にしか見えません。 錆の色が見えなくなるというのは、凄い効果があるんですなあ。 天晴れ天晴れ! ・・・、「天晴れ」は、死語か。 死語を通り越して、化石語かな?

  ただし、少し近づけば、プラスチック部品の劣化具合で、古い自転車である事が分かります。 更に、へばりついて、じーっと観察すれば、あちこち塗り直した、とんだボロである事が分かります。 だけど、そんな物好きは、一万人に一人もいやしないでしょう。 新品だと思って、盗んで行く奴がいたら、後で、びっくりするでしょうねえ。