2016/05/22

錆との戦い⑭ 【父自B&A 後編】

  父自レストアの写真、後編です。 父自のレストア記事も、ようやく、今回で終わりです。 寂しいような・・・、嬉しいような・・・、いや、実は、寂しくも嬉しくもありません。 なぜなら、父自が終わっても、まだ、母自のレストア記事が続くからです。 年初から、まるまる2ヵ月も、レストア作業を続けていたわけですから、書くネタは、いくらでもあるのです。 書きたいかどうかは、また、別の話ですけど。





≪父自 馬蹄錠≫
  父自の馬蹄錠。 上段がビフォー、下段がアフターです。 改めて、ビフォー写真を見ると、かなり、錆びてますねえ。 満遍なく錆が行き渡っている感じ。 もし、鉄部品を錆びさせる技を持つ職人がいたら、「いい仕事してますねえ」と褒めちぎりたいところ。 これだけ、錆が出ていると、塗料は、錆の上に乗っているような状態になっていますから、スクレイパーでこすれば、面白いように、パリパリ剥がれて行きます。

  部品の基本色が、メッキ系の軽快車の場合、馬蹄錠は、グレーに塗装されています。 グレーというと、旧母自の本体部分を塗った、「カラーサビ鉄用 グレー」を持っているので、父自の馬蹄錠は、最初から、それで塗るつもりでいました。 スクレイパーと紙鑢で、錆を落とした後、脱脂だけして、「カラーサビ鉄用 グレー」を直接塗りました。 実に綺麗になった。 満足満足。

  裏側は、クローム・メッキでしたが、金ブラシで錆を落とし、透明錆どめとクリヤーを塗っておきました。 だけど、馬蹄錠の裏側は、普通の姿勢では見えませんから、全部、グレーで塗ってしまってもいいと思います。 モデラーではないのですから、あんまり、律儀に塗り分けても、見えない所では、意味がありません。

  操作ラベルは、この時点では、まだ、ビニール・ボンドを買ってなかったので、透明錆どめで貼り付けました。 今のところは、くっついていますが、透明錆どめは、雨に弱いですから、その内、剥がれてしまうかも知れません。 だけど、父も、私と同じで、雨の日に自転車で出かける事はなく、あまり、心配はしていません。

  ちなみに、父自の馬蹄錠のツマミは、楕円筒形で、手前に回転させてから、押し下ろさないとかかりません。 慣れないと、操作が難しいです。 盗まれないように、解錠し難くするのなら分かりますが、施錠し難くして、誰が得をするのか、不明。 そういや、ネットを調べると、このツマミの事を、「レバー」と書いている人がいますが、「レバー」というのは、「梃子」の事でして、この場合は不適当です。 「ボタン」の方が、まだ近い。 もちろん、「スイッチ」ではありません。 全部、ごっちゃにしている人は、多そうですけど。

  も一つ、ちなみに、馬蹄錠は、ボルト2本で留まっているだけですから、解錠状態なら、外してしまうのは、プラスのドライバー一本で、わけなくできます。 ただし、施錠状態だと、馬蹄錠を、シート・ステーから外しても、車輪から外せませんから、無意味です。 取り付ける時には、荷台を着ける前に、馬蹄錠を着けておく方がいいです。 後からだと、荷台と泥除けの隙間が狭くて、入らない場合があります。 自転車にもよりますけど。




≪父自 シート・ピン≫
  父自のシート・ピン。 上段がビフォー、下段がアフターです。 これも、ビフォーの方は、錆びまくってますなあ。 こんな部品こそ、プラスチックでコートしてしまえばいいのに。 薄いと、割れるから、駄目かな? シート・ピンは、酸に浸けて、錆を落とし、透明錆どめと、トタン・シルバーを塗って仕上げました。 今にして思えば、グレーのカラーサビ鉄用だけ塗っても良かったと思います。

  父自のシート・ピンは、ボルト側に、回り止めの部品が付いておらず、ボルトの頭のすぐ下に、突起があって、それが、荷台の共締め孔に切られた溝に入って、回り止めになるという仕組みでした。 要は、ボルトが回らなければいいわけで、部品点数が少なくできるのなら、その方が良いと思います。 荷台の孔は、それ用に加工しなければなりませんが、たぶん、機械で打ち抜いていると思うので、大きな手間ではないでしょう。

  軽快車の荷台には、父自のように、前側の端をシート・ピンに共締めするタイプと、旧母自のように、シート・ステーに締め付けるタイプがあり、前者の方が、部品点数も、加工工数も少なくなります。 ホーム・センターで、交換部品として売っている荷台も、大抵は、共締めタイプです。 だけど、自転車全体のデザインを見ると、シート・ステーに締め付けるタイプの方が、締まりがあって、見栄えがいいと思います。




≪父自 前籠ブラケット≫
  父自の前籠ブラケット。 上段がビフォー、下段がアフターです。 ビフォーは、鉄の上に、シルバー塗装でした。 錆びてますなあ。 この部品、信号待ちで停まった時などに、ふと下を見ると、真っ先に目に入って来るのですよ。 それが錆びていると、気になって、気になって。 もっとも、父自は、父の自転車であって、私は、滅多に乗らないんですけど。

  ヘッド・セットの分解はしなかったのですが、プラスチック・カバーと、一番上のナットだけ外し、前籠ブラケットを抜いて、酸に浸けました。 前籠を留めるナットも、酸浸け。 錆を落として、透明錆どめを塗り、トタン・シルバーで仕上げました。 ナットやボルトを塗装すると、締め付ける時に、ペンキが剥がれてしまうので、締めた後で、塗り足して、補修しなければなりません。

  前籠は新しいのに交換したのですが、ボルト・ナットは、別売りなので、前から付いていた物を使いました。 ボルトの先の、ナットから食み出した部分に、ゴムのキャップが被さっていたのですが、これのおかげで、ボルトの先は、錆びていませんでした。 ちなみに、父自前籠の後ろ側ボルトは、左右一体の組み部品になってました。 それは、前籠の中を写した写真で見せます。

  ブレーキ・ワイヤーと、シフト・ワイヤーが通っているプラスチックのガイドは、前籠ブラケットに被せてあるもので、ワイヤーを捌くのに役に立っているようなので、そのまま、新しい前籠でも使いました。 前後ブレーキ・ワイヤーだけなら、別に要らないと思うのですが、シフト・ワイヤーまであると、ガイドがあった方が、何となく、安心できます。

  写っているので、ついでに触れますと、旧母自のステムは、ステンレスでしたが、父自は、鉄で、この錆びよう。 これは、大き過ぎて、酸に浸けられないので、スクレイパー、紙鑢、コンパウンドで錆を落とし、透明錆どめとクリヤーを塗りました。




≪父自 サドル≫
  父自のサドル。 上段がビフォー、下段がアフターです。 ビフォーは、見事に錆びています。 だけど、旧母自に比べると、侵蝕が浅く、同じやり方をすれば、楽勝だと思っていました。 ところが、こちらのサドルは、スプリングと、V字棒が、外れなかったんですわ。 スプリングは、根元の方のナットを回すと、ボルトも一緒に回ってしまい、V字棒は、一番前の部分が、どうしても、外せませんでした。

  やむなく、横棒と、スプリング下側のボルト・ナットだけ、酸に浸けて錆を落とし、スプリングとV字棒は、サドルに付けたまま、金ブラシと紙鑢で、ざっと錆を落とし、脱脂して、カラーサビ鉄用グレーだけを塗りました。 組み直してから、スパナが当たってカラーサビが剥がれた所を補修して、出来上がり。 ヤグラの方は、錆びていなかったので、そのまま組み直しました。

  色は、トタン・シルバーでも良かったんですが、それだと、下に錆どめを塗らなければならず、面倒なので、一回塗りで済む、カラーサビ・グレーにしました。 昨今の、軽快車用サドルは、錆びないように、というか、錆びても、見えないように、プラスチックでコートされている物があり、外見的には、それと、ほぼ同じなので、グレーに塗ってしまっても、別に、おかしいとは思われないでしょう。

  シート・ポストは、元から付いていた物で、長さは、25センチです。 錆がほとんど出ていないところを見ると、ステンレスなんでしょうなあ。 思い起こせば、2010年の秋、私が、父自を借りて、沼津の外港から、富士川河口まで往復していた時には、市販品の30センチ・シート・ポストを買って来て、サドルを高くしていましたが、それでも低かったです。 その後、元のに戻して、今に至ります。




≪父自 クランクとチェーン・カバー≫
  父自のクランク。 一番上が、左側のビフォー、二番目が、左側のアフター、三番目が、右側のアフターです。 父自のクランクは、クローム・メッキでしたが、左右とも、仏像の螺髪ような、棘棘した錆が、びっしり出ていて、どうせ、これは、表面を削らなければなるまいと思い、酸に浸けるのは端折って、いきなり、グラインダーをかけました。

  鉄肌を出してから、透明錆どめを塗り、その上から、トタン・シルバーで仕上げました。 これも、近づいて見れば、ペンキを塗ってある事が分かりますが、普通の距離なら、気づかないと思います。 右側は、ギアの表裏も、周縁部だけ残して、トタン・シルバーで塗ってあります。 そのせいで、ポリッシュ仕上げにした旧母自より、綺麗になりました。

  父自のチェーン・カバーは、右側から見ると、チェーン・ケースのように見えるのですが、車体側がオープンになった、チェーン・カバーです。 ビフォーでは、裏側まで錆びていたので、表裏とも、スクレイパーと紙鑢で錆を落とし、本体と同じ、カラーサビ鉄用黒を塗りました。 ボトム・ブラケットに共締めしてある、チェーン・カバー・ブラケットは、酸に浸け、鉄肌を出し、透明錆どめとトタン・シルバーを塗ってあります。

  ペダルは、何もしていません。 他が綺麗になると、ボロが目立ちますなあ。 だけど、機能的に何の問題もないので、新品に交換する理由がなく、そのままになりました。 新品にしても、どうせまた、すぐに、ボロくなるでしょうし。




≪父自 前籠ボルト≫
  父自の前籠ボルト。 上段二枚がビフォー、下段がアフターです。 父自の元の籠は、鉄のメッシュに、グレーの塗装をしたものでしたが、錆びて塗装が浮き、ボロボロと剥がれ落ちている状態だったので、プラスチック製の新品に交換しました。 取り付け用のボルト・ナットは別売りで、わざわざ買うのは馬鹿馬鹿しいと思い、元から付いていた物を使う事にしました。

  上側、つまり、籠の後ろ側を、前籠ブラケットに固定する側は、2本のボルトの頭が、プラスチックで一体化された、組み部品になっていたのですが、新品のプラ籠とは、プラスチック部分の形状が合わなくて、やむなく、鑢で削って、強引に合わせました。 ちなみに、2本のボルトの間隔は、どの籠でも、共通のようです。

  アフター写真を見ると、プラスチックの左右に隙間が空いてしまっていますが、これは、削る幅を決めた時、締め付け位置の高さを間違えて、下の方で測ってしまったからです。 ちゃんと、分解する前に、新しい籠を載せてみて、締め付け位置を確認したんですが、メモを取らず、記憶だけに頼ったせいで、間違えてしまった模様。 締め付ける段になって、ようやく気づいて、地団駄踏みましたが、後悔先に立ちませんでした。

  下側、つまり、籠の底を、前籠ステーに固定する側は、ボルトのベースごと、そのまま使えました。 裏側に付くナットは、前籠ステーを挟み込むような形に成形された、長方形の金属板に、二つのネジ孔が切られているタイプで、旧母自にも同じような物がついていました。 なぜ、普通のナットを使ってないのか、理由は不明です。





≪父自 後ろ泥除けステー≫
  父自の泥除けステー。 ちょっと、撮影角度が違いますが、上段がビフォー、下段がアフターです。 前輪の泥除けステーに関しては、≪前輪周辺≫の時に、少し触れましたが、そちらでは、写真が遠かったので、後輪側の写真で、はっきり見せます。 前側も後ろ側も、錆の程度は同じくらいでした。 真っ茶色になっていて、まるで、その色で塗装されているかのようです。 ここまで、錆びると、却って気持ちが・・・、いや、気持ちいいってこたーないか。

  元は、鉄にクローム・メッキでして、外して、酸に浸け、錆を落としたものの、侵蝕がひどくて、表面が凹凹になっていました。 まず、透明錆どめを塗ったのですが、この頃にはもう、透明錆どめだけでは、雨で溶けてしまうと分かっていたので、トタン・シルバーを上から塗りました。 アフターの写真を見ての通り、細い部品だと、ペンキで塗ってある事が、ほとんど分かりません。 よほど、泥除けステーの表面処理に興味津々な人でない限り、亜鉛メッキだと思う事でしょう。

  ステーを泥除けに留めているボルトと、そのベースの金属板(コバン)、そして、裏側の、コバン・ナットは、ステンレス製で、錆びていませんでした。 いっそ、ステーそのものも、ステンレスにしてくれれば良かったんですがねえ。 コストなんて、数百円も変わらないと思うのですが、なぜ、ケチる?

  ちなみに、ネットで、ステンレス製のステーが、400円くらいで売っていたのですが、とりあえず、錆取りをして、塗るだけ塗ってみようと思い、やってみたら、割と綺麗に仕上がったから、買うのはやめた次第。 自転車の部品は、新品に換えようと思えば、ほとんどが手に入りますが、調子に乗って買ってばかりいると、自転車本体より高くなってしまいます。

  ところで、泥除けステーは、前用と後ろ用があるのですが、車輪の直径は同じなのに、なぜ、異なるのかというと、車軸の径が前後で違うから、車軸に嵌める部分の孔の大きさが違って来るんですな。 そのおかげで、前後同時にバラしても、どっちがどっちか分からなくなる事はありませんでした。




  ビフォー・アフターの後編は、以上です。 個々の部品や作業に関しては、もはや、これ以上、付け加える事もありません。

  父自のレストアを総括しますと、二台目だったので、経験済みの作業が多く、期間も、旧母自の3分の2くらいで、終わりました。 部品に関しては、旧母自より、錆が少なかったので、その分、楽だった事もあります。 フレーム・フォーク・泥除け・チェーン・カバーは、旧母自より錆がひどかったですが、それらは、錆取りを程々で済ませ、カラーサビで、ベタ塗りしてしまったので、手間的には、変わりませんでした。

  そうそう、色を黒にしたせいで、レストア前の、シルバーの時には起こらなかった問題が、一つ出て来ました。 塗装面に埃が着き易くなったのです。 いや、着く埃の量は同じかもしれませんが、黒地なものだから、それが目立つようになったと言うべきか。 まあ、時々、濡れ雑巾で拭いてしまえば、綺麗になるから、大した問題ではないですけど。

  分解と組み立てに関しては、変速機がある父自の方が、作りは複雑なのですが、内装3段なので、それほど、難しいというわけでもなく、タイヤ交換した時に、後輪を外した経験があったから、どうという事はなかったです。 だけど、部分部分の分解経験がない人の場合、いきなり、全解体して、レストアするのは、かなりの冒険になってしまうかも知れませんな。 もっとも、軽快車をレストアする人は、ほとんどいないから、そんなのは、いらぬ心配か。