2019/06/16

時代を語る車達 ⑨

  出かけた先で撮影した車の写真に、個人の感想的な解説を付けたシリーズです。 前回やったのは、去年の8月でした。 随分と久しぶりですなあ。 こういうシリーズがあった事自体、忘れかけていました。




  スズキの、ハスラー。 2013年から、現行で生産販売されている車。 数年の間を置いて登場した、Kei(1998-2009年)の後継車だそうですが、私の目には、似ても似つかない別物に見えます。 前にも書きましたが、Keiは、年齢性別関係なく、万遍ない購買層が買っていたのに対し、ハスラーのユーザーは、40歳以下の男性が、ほとんどなんじゃないでしょうか。 高齢者マークをつけたKeiは、いくらでも見ますが、ハスラーに、高齢者マークは、まるで、似合いません。

  この車で印象に残っている場面というと、2014年の8月、退職後に行った北海道旅行で、礼文島を貸切タクシーで回っていた時、なだらかな山の叢の中の道を、ハスラーが数台、互いを撮影しながら走っていて、タクシーの運転手さんと二人で、「あれは、何をやっているんだろう?」、「CMの撮影にしては、機材が素人っぽい」、「一般人が、勝手にCMを作って、ネットに公開するのが流行っているらしいから、それかもしれない」という会話をした事を覚えています。

  ≪Dr.スランプ≫のテレビCMが受けたから売れたというわけではないと思いますが、近年珍しい、ヒット車になったのは、否定のしようがない事実です。 この車の最大の功績は、「誰もが車に飽きてしまった、こんな時代でも、イメージの作り方次第では、ヒット車を出せる」という事を、実証した事でしょうか。 だけど、私は、イメージで売る戦略というのは、高く評価する気がないです。

  オンロードも、オフロードも走れる、クロス・オーバー・カーというコンセプトですが、言うまでもなく、オフロード車に乗っているからといって、実際にオフロードを走る人は稀です。 ハスラーの場合、デザインのオシャレ度を見ても分かるように、本格的なオフロード車というわけではないので、ロード・オンリーで使う方が、無難だと思います。 小石を撥ね上げて、キズだらけにするのは、あまりに、忍びない。

  この車、発売当初、バカ売れしたのですが、今は、だいぶ、人気が下がっていると思います。 「何となく、面白そう」で買ったはいいが、シートの座面が高くて、乗り降りし難かったり、同じく、車高が高いという理由で、普通の買い物の荷物が積み難かったり、タイヤを交換しようとして、大径タイヤの値段が高い事に驚いたりと、買う前には想定していなかった問題点が出て来て、満足度が下がったユーザーが多いのでは?

  それらは、ハスラーだけではなく、オフロード車全てに共通する問題でして、オフに行く気もないのに、「何となく、活動的で、カッコいいイメージがある」程度の認識で手を出したユーザー側に責任があります。 90年代に起こった、オフロード車ブームの時にも、小山のようにバカでかい車を買ってしまい、使ってみて、後悔するユーザーが続出したわけですが、その頃から、何も進歩していないわけだ。

  「よーし! そんな事を言うなら、オフに行ってやろうじゃないか! 本来の性能を引き出してやろうじゃないか!」などとは、くれぐれも、くれぐれも、思わないように。 一回走っただけで、ロッカー下や、ドアの下半分が、キズだらけになります。 ハスラーのデザインが素晴らしいとは言いませんが、キズだらけが似合うような無骨なデザインではないので。


  後ろに写っているのは、ダイハツの、ムーヴ・ラテです。 2004年から、2009年まで生産・販売されていた車。 すでに、生産終了から、9年経っていますが、まだまだ、普通に見る事ができます。 ムーヴをベースにした、トール・ワゴンですな。

  このデザインが、変わっていてねえ。 目にするたびに、じーっと見入ってしまうのですが、車というより、何か、不思議な生き物のように見えます。 イモムシのような、もさい感じもするのですが、「もさくて、何が悪い」と言われているような、強烈な主張が感じられます。



  日産の、初代モコです。 スズキの、初代MRワゴンの相手先ブランド供給車。 2002年から、2006年まで、生産・販売されていた車。 ワン・ボックス・フォルムは、理屈で考えれば、美しいはずなのですが、現物を見ると、あまり面白くないという、妙なジレンマがありますなあ。

  グリル周辺だけ、日産独自のグラフィックに変えられていて、初代MRワゴンより、むしろ、特徴的になっています。



  マツダの、フレア・クロスオーバー。 スズキ・ハスラーの相手先ブランド供給車で、2013年から現行。 車そのものについては、先立って書いた、ハスラーと同じです。

  問題は、名前ですな。 「フレア」というのは、ワゴンRのOEM車。 「フレア・ワゴン」が、パレット/スペーシアのOEM車。 そして、「フレア・クロスオーバー」は、ハスラーのOEM車。 フレアという名前が、3車種に使われていて、大変、紛らわしいです。 マツダの方で命名しているのだと思いますが、どうも、OEM車の名前を軽く考えているように思えてなりません。

  OEM方針そのものを批判するつもりはないですが、多くの車種を扱いたいのなら、名前くらい、一つ一つ、考えればいいのに。 マツダの販売店にとっては、ただ、右から仕入れて、左へ売るだけの車でしょうけど、お客にとっては、マツダのオリジナル車と何ら変わる事がない、何年も大事に使う、高い買い物なのですから。



  ダイハツの、キャスト。 2015年から、現行の車。

  デザイン的には、明らかに、2代目ミラ・ジーノの後継車として開発されたものだと思います。 トール・ワゴンが人気だから、「レトロ車+トール・ワゴン」というコンセプトで、こういう形にしたんでしょう。 2代目ミラ・ジーノ以上に、BMW・ミニから、多くのデザイン要素を戴いている模様。

  ところが、その開発中に、スズキのハスラーが、馬鹿売れしたものだから、さあ、大変。 対抗馬を立てなくてはならないけれど、一から作っていたのでは、何年も遅れてしまう。 そこで、本来、3代目ミラ・ジーノになるはずだった、この車に、急遽、SUV的なパーツをくっつけて、クロス・オーバー車風に仕立てて、発売したのだと思います。

  車をデザインで見ている人は、みな、ビックリしたでしょうねえ。 私も、ビックリしました。 レトロと、クロス・オーバーじゃ、イメージが、両極端、文科系と体育会系くらいの違いがありますから。 今にして思えば、大急ぎで、対抗馬を立てなければならないほど、ハスラーが、長期間、人気を維持したわけではないのですがねえ。

  SUVパーツを付けない、純然たるレトロ版も用意されているらしく、それを買った人は、正解だったわけですな。 うちの近所にも、初代ミラ・ジーノから、キャストのレトロ版に買い換えた家があります。 ただし、車高が高過ぎたり、フェンダーのプレス・ラインがモダン過ぎたりと、レトロ車としては、中途半端なところもあります。

  向こうに見えているのは、ミラ・ココア(2009年~2018年)。 ルノー4のパクリである事は、ひとまず措くとして、こうして並べて見ると、キャストに、圧勝してしまいますな。 販売時期が重なっていたわけですが、もし、私だったら、検討の余地もなく、微塵の迷いもなく、ミラ・ココアを買います。




  今回は、以上、5台(6台)まで。

  このシリーズ、香貫山のゴルフ練習場に来る車を撮ったものが多かったんですが、去年の春に、そこが、営業をやめた後、パタッと、来る車がなくなって、萎んでしまいました。 なかなか、他人の車を撮影するのは、難しいものです。 防犯カメラが増えた上に、車にも、駐車中にも作動するドライブ・レコーダーが登場し、何かあった時に、「ただ、写真を撮っていただけです」では、言いわけにならなくなってしまったからです。




  オマケとして、私の車の写真も出しておきます。 去年の7月18日に、伊豆の国市・長岡にある老舗温泉饅頭店、「黒柳」の駐車場で撮ったもの。 ここの駐車場、広いので、つい、車を撮影したくなります。

≪写真上≫
  日が当たっていると、塗装の劣化が見えなくなって、綺麗に写りますな。 この写真だけ見ると、21年も経っているとは思えない。 この後、ダッシュ・ボードに木目部品を入れるので、内装は変わりますが、外観は、今でも、この状態です。

  向こうにあるのは、トヨタのアクアですが、20年ほどで、車の形が、いかに変わったかが分かります。 私は、セルボ・モードの方が、車らしく見えますけど。

≪写真下≫
  この角度が、一番、セルボ・モードらしさが感じられます。 バック・ドアに、横に折れ線が入って見えますが、これは、写真に撮った時だけ、そう見えるもので、肉眼だと、はっきりした線は見えません。 肉眼より、写真の方が、コントラストが強くて、中間色が飛んでしまうからなんでしょう。