ひきこもり③
川崎で起きた、児童襲撃事件の犯人が、「ひきこもり」だったらしいという事から、ひきこもり問題が、注目されています。 この犯人の場合、一度、社会に出た形跡がある上、本人には、自覚がなかったようで、ひきこもりの典型的なタイプからは、だいぶ、外れているような気がするのですが、それはさておき、ひきこもりが、世間の注目を浴びてしまった結果に変わりはありません。
で、ひきこもりについて、何か書こうと思ったのですが、昔、書いた文章があったのを思い出したので、まず、それを出します。 2本ありますが、どちらも、ホーム・ページ「換水録」のコラムだった頃の、「心中宵更新」に出したもので、このブログでは、初出です。
【2002年10月23日付】
☆ ひきこもり① ☆
もう、二三週間前になりますが、テレビのある番組で、「ひきこもり」をひきずり出す企画をやってました。 専門家が立ち会って、親が子供に引導を渡し、更生施設に入れるという内容でした。
ひきこもり少年の籠っていた部屋が映ったんですが、新聞、雑誌、ビデオテープなどが散乱堆積し、「いかにもそれらしい・・・」という感じでした。 独身男性の部屋はみんな似たようなものだろうと思われるかもしれませんが、新聞が持ち込まれている所に、ひきこもりの特徴がよく表れています。 彼らに共通するのは、知性への憧れで、重要な情報源である新聞とは切っても切れない関係にあります。
ひきこもりは十人十色で、一人を立ち直らせた方法が、他の者にも通用するわけではないとはよく言われますが、立ち直らせる方法はさておき、共通する特徴は見出す事が出来ます。
・ 他人を怖がっている。
・ 自分を他人よりレベルの高い人間だと思っている。
怖がると言っても、対人恐怖症とは違います。 街を歩いたり、見知らぬ人に道を教えたりする事は何でもありません。 彼らが恐れているのは、他人と密接に付き合い、その上で自分の事が高く評価されない事です。
仕事に就く気にならないのは、能力的にできないからではありません。 彼らのほとんどは、一度も仕事をした経験がないので、勤まるか勤まらないかなど分かりはしません。 彼らが恐れているのは、もし勤まらなかった場合、他人の前で大恥を掻いてしまうのではないかという事です。 何せ、自分は他人より優れていると信じているので、他人に恥を掻かされるなど、我慢できないのです。
「随分と断定的に分析するじゃないか」と思われるかもしれませんが、実は私、元ひきこもりなのです。 だから、彼らの心理はかなりよく読めます。 随分昔の事で、まだ「ひきこもり」という言葉がありませんでしたが・・・。
では、一先輩として、彼らの境遇に同情するかというと、それは全くできません。 彼らの置かれている状況は間違っているとしか言いようがないからです。
とはいえ、親や外部の人間が無理矢理立ち直らせようとしても、まず無駄です。 反発されるだけでしょう。 当人がその気にならなければ、一歩も先に進みません。
ひきこもっていながら、ネットをやっている人達は結構いるようなので、もしかしたら、これを読んでいる人の中にも該当者がいるかもしれません。 そこで、一言・・・・
はっきり言って、今のままでは、あなたの人生はなかったも同然です。 悪くなる事はあっても、よくなる事はありません。 歳をとればとるほど、居場所はなくなっていきます。 本当にただのクズになってしまいます。 親や親戚は、全然当てになりませんよ。 頼りになるのは自分だけです。
どうせお先真っ暗なら、もう自分は死んだものだと思って、一か八か社会に出ましょう。 新聞の折り込み求人広告を集め、興味がある所に電話して見てください。 絶対断られると思ってかければ怖いものはありません。
繰り返します。 いつか親がどうにかしてくれるなんて思ってたら駄目ですよ。 あなたの親は、あなたに飯を食わせる以外、能力がないのです。 頼りになるのは自分だけなんですよ。
【2004年3月18日付】
☆ ひきこもり② ☆
何でも、今、NHKが「ひきこもり特集」をやっているみたいで、ちょくちょく、それらしい番組を目にします。 ひきこもりについては、前にも一度書いたんですが、こういう番組を見ると、また書きたくなってしまうんですな。
NHKが何を考えているのか、今一つ分からないんですが、スタジオにひきこもりを何十人も集めて意見を聞くというあれは、どんなもんなんでしょ?
ひきこもりには、各々個別の事情があるので、みんながみんなそうだとは言い切れませんが、長く家に篭っていた人間が、反動として望むのは、やはり「他人から注目されたい」という事ではないかと思います。 ひきこもりは、気位が人一倍高いので、本来「自分は注目されて当然」という意識があります。 その意識が何年も抑圧されているわけですから、一触即発、いつ爆発してもおかしくないような状態になっています。 そんな連中をテレビに出してやり、アップで撮って、意見まで聞いてやるのですから、ひきこもり達にとってみれば、待ちに待った晴れ舞台。 無上の喜びを感じるに違いありません。
しかし、当然の事ながら、収録が終われば、彼らはただのひきこもりに戻ります。 親兄弟からお荷物扱いされ、近所から気味悪がられる半端人間に戻ってしまうのです。 この落差はあまりにも大きく、あまりにも残酷です。 テレビに出て、それをきっかけにひきこもりから脱出できるのなら有意義な事ですが、彼らが陥っている穴はそんなに浅い物ではないと思います。 大部分の者は、ひきこもりに戻るでしょう。 そして、「次の出番はいつだろうか?」 「今度テレビに出たら、何を喋ろうか?」などという妄想に耽りながら、また何年も篭り続けるのです。
ひきこもりから立ち直った人に話を聞くというような企画もありましたが、一般の職場に勤めた人ならともかく、ひきこもり相談所に雇ってもらった元ひきこもりなんて、どんなに偉そうな事言ったって、全然当てになりませんぜ。 つまり、そいつら、一般の仕事に就くのが怖くて、相談所に逃げ込んで、そのまま職員になってしまったわけで、一般社会から逃げている事に変わりはないんですから。
ひきこもりは、やはり男性が多いと思うんですが、誰か他人に相談するという時に、若い女性は避けた方がいいです。 恐らく、期待しているものと得られるものが全然違う事に気付いて、より深く傷付く事になると思うからです。
私は男だから、女性の気持ちが完全に分かるというわけではないんですが、一般的に言って、女性というのは、男性より、現実的な考え方をします。 ぶっちゃけて言ってしまうと、収入がなくて、家に篭っている男に恋愛感情を抱くなんて事は、ほぼ100%あり得ません。
どんなに頻繁にメールをやりとりしていても、どんなに優しく励ましてくれても、それは恋愛とは全く違う動機、即ち、同情や仕事への使命感から発せられたものです。 その辺の所は、くどいほど自分に言い聞かせておいた方がいいです。 自分の方から訪ねて行くなんて、絶対駄目です。 相手が引いている限界線を越えたら、ストーカー扱いで警察に通報されるのがオチですぜ。
個人に密着して取材した番組もありました。 30歳くらいの男性でした。 ひきこもり特有のごっちゃごちゃの部屋の中には、いかにも今風のひきこもりらしく、パソコンがありました。 もちろん、ネットに繋がっていて、ひきこもり同士でメールをやりとりし励ましあっているとの事でした。
でもねえ・・・・「相手もひきこもりだから、気持ちがよく分かる」って言われれば、確かにその通りですけど、気持ちが分かってもらえたって、ひきこもりの解決には何の役にも立ちませんぜ。 励ましあっているというより、同類相憐れむで、慰め合ってるんですな。 「自分だけがおかしいんじゃない。 俺には仲間がいる」・・・・・いっかんなあ。 ひきこもりの仲間なんて、いたって、百害あって一利なしだと思いますよ。 一生ひきこもっていたいというなら、また話は別ですが。
できれば、ネットもやめた方がいいんですよねえ。 特に、ホーム・ページなんて持ってしまうと、そこでは一人前の人間のように振舞えるので、これまた錯覚に陥りやすいんですな。 大体、通信費は誰が払ってるのよ? 親に頼るのは食費だけにしといた方がいいよ。 だけど、ネットは、やめろと言われてもやめられないでしょうなあ。 最初から手を出さなければ一番よかったんですが、もう手遅れですな。
その番組に出ていた男性、最後には一大決心をして、親に向かって「一緒に暮らしていると、どうしても頼ってしまうから、家を出て一人暮らしをしたい。 でも、すぐには無理だから、とりあえず、アルバイトでもして、お金をためて・・・・」というような事を言うんですが・・・・・。
あのなあ、アルバイトができるなら、ひきこもりとは言わないんだ。 そういう人は「フリーター」というんだ。 フリーターは、少ないけれど、ちゃんと収入がある。 やりくりすれば、一人で生きていく事もできる。 不安定ではあるけれど、人様から後ろ指さされるような暮らしではないんだ。 親に寄生している自分と一緒にしたらいかんぜ。
一般社会人とひきこもりの違いは何かというと、一にも二にも、収入があるかないか、それに尽きます。 親と一緒に住んでいたって、収入があれば、何の問題もありません。 もし、アルバイトならできるというなら、すればいいではないですか。 一人暮らしなんて、発想の飛躍もいい所で、いきなりそんな事ができるなら、そもそも、ひきこもりなんて、やってないでしょうに。 その非現実的な妄想こそが、ひきこもりのひきこもりたる所以なんですが。
何だか、今回は、前回に比べて、血も涙もない内容になってしまいました。 いやねえ・・・・NHKのひきこもり番組見ていたら、何だか、励ましたって、アドバイスしたって、とても追い付かないような気がしてきたんですよね。 さすがに、10年以上、こもっているなんて人の場合、もう駄目でしょう。 学生時代からずっとこもって、30歳過ぎてしまったなんて人を雇う所はないですぜ。
もし、「このままじゃ、駄目なんだ」という気持ちが少しでもあるなら、明日からでも、バイトの口を探しに出た方がいいです。 皿洗いくらいなら、よほど労働適性がない人でもできます。 最大の敵は歳をとってしまうことです。 脱出は早ければ早いほどいいです。
昔書いた文章は、以上です。 結構、辛いですな。 だけど、この頃は、ひきこもりについて、考えるだけの興味があったのですから、まだマシだったわけで、その後、まるっきり、興味がなくなって、どうでもよくなってしまいました。 マザー・テレサ風に言うと、最悪になったわけだ。
今回の、児童襲撃事件が起こった時、「これは、模倣犯が出るかも知れんな」と思ったのですが、今のところ、それは出ていないようです。 その代わり、ひきこもりが家にいる家族が、「うちのも、こんな事件を起こすのではないか」と警戒して、本人に、きつく当たり、そのせいで、息子殺しや、家族刺傷、本人自殺といった事件が起こりました。 インパクトが、そっちへ行ってしまったか。
事件の直後、ネット・ニュースで、「『死にたいなら一人で死ぬべき』という非難は控えてほしい」、「こういった発言を公の場でする事で、犯罪者予備軍の感情を刺激する可能性があるので」という意見が出していました。 だけど、「死ぬなら、一人で死ね」は、ごくごく、常識的な反応だと思いますよ。 働いている人間はもちろんの事、おそらく、ひきこもりの99.99パーセントくらいの人達も、この犯人に対して、「死ぬなら、一人で死ね」と感じたと思います。
この意見を出した人、別に、「ひきこもりは、全員、追い詰められた犯罪者予備軍だ」と見做しているわけではないと思いますが、今回の事件で、犯人がひきこもりだったと報道されている手前、誤解を招くので、「ひきこもり」と、「追い詰められた犯罪者予備軍」を、きちんと区別した方がいいと思います。 ちなみに、今回の犯人と近い境遇にあったと思われる、大阪池田小事件の犯人も、秋葉原通り魔事件の犯人も、いわゆる、ひきこもりではありませんでした。 「ひきこもりが、重大犯罪をやらかす」という結び付け方は、全くの的外れです。
ひきこもりは、むしろ、犯罪からは遠い人達です。 他人が怖いんだから、極力、接触を避けたがるのですよ。 また、もし、自暴自棄になって、死ぬのなら、世間の皆様が望んでらっしゃる通り、一人で死にます。 だけど、そもそも、死ぬ気がないから、何年も、ひきこもっているのであって、自ら死ぬひきこもりは、稀です。 家族が追い詰めて、激怒させ、殺し合いの喧嘩にでもなれば、別ですけど。
そこでまた、今回の児童襲撃事件の犯人に戻るわけですが、この人、ひきこもりの枠で捉えるべき人なんですかね? 単なる、一時的な無職なのでは? 叔父・叔母の家を、一度、出ていたという事は、働いて、自活していた期間があるわけでしょう? ひきこもりにも、働いた経験がある人がいますが、その場合、実家に住み続けているのが普通です。 一度、出て、戻った人は、ひきこもりの枠に入れるとしても、かなり、特殊な例になるんじゃないでしょうか。
当人は、ひきこもり扱いされて、怒って、否定していたそうですが、普通、ひきこもりは、自分がひきこもりである事を、否定したりしません。 むしろ、自分が置かれている状況を、簡潔に言い表せる言葉として、重宝していると思います。 その点でも、今回の犯人が、ひきこもりに該当していたかどうか、大いに疑問です。 ひきこもりでない人間が起こした事件であれば、ひきこもり対策を施しても、今後、同様の事件を抑止する為の役には立ちません。
とはいえ、何かしら、社会的な対策を取ってくれると言うのなら、ひきこもりの面々には、損な話ではないですわな。 中には、「余計なお世話だ!」と、身震いして、嫌がる人もいると思いますが、働かず嫌いで、働いた事がない人の場合、ちょっとした支援が、「天から降りてきた蜘蛛の糸」になる場合があるかも知れません。
たとえば、ひきこもりの扱い方に熟知した人が誘いに来て、工場や事務所などに連れて行き、「一日に、2・3時間、これこれこういう作業をすれば、報酬を払います」と言えば、割と簡単に、ひきこもりから抜けられる人が、かなりの割合、いると思うのですよ。 誘う側は、雑な性格の人は駄目で、腫れ物に触るような繊細な対応が求められますが、丁寧にお膳立てをしてやれば、働く事自体を嫌がる事はないと思います。
人間不信に陥っている人も多かろうと思いますが、とことん、面倒を見る覚悟で、「渡る世間に鬼はなし」を信じられように計らえば、次第に、心が開けて来るのでは? もっとも、実際には、ブラック企業や、ブラック上司に代表されるように、「渡る世間に鬼はいる」のであって、そういうのに当たって、すぐに、ひきこもりに戻ってしまうかもしれませんけど。
ひきこもりの数は、増加傾向にあると思われ、数的には、もはや、「ごく一部の人」ではなくなり、ひきこもりが政党を作ったら、堂々、国会に20議席くらい送り出せるほどの割合になっていると思います。 どこかの自治体が、就労年齢なのに、就労していない人の割合を調べたら、全体の1割くらいが該当して、おったまげたという話を聞いた事がありますが、日本全体で見ても、そんな割合なんじゃないでしょうか。
その自治体とは、別の所だと思いますが、役所で、就労支援をやったら、何十人かいたひきこもりを、ほぼ全員、就労させられたとの事。 「えっ! ほぼ、全員?」と、驚いたのは、私です。 6・7割が就労したというのなら、「凄い成果だな」と、感服したところですが、ほぼ全員となると、「相当には、荒っぽい事をやったのではなかろうか」と疑ってしまうわけです。 そうでないとしても、恐らく、また、仕事をやめて、ひきこもりに戻る人は出て来るでしょう。
ここで、私が、何か書いて、それを読んだ人が、ひきこもりから脱せられるというのなら、いくらでも書きますが、実際には、そんな事はないと思うのですよ。 長い間、社会と隔絶した状況にいるわけで、赤の他人から、アドバイスされたくらいでは、とてもとても、働きに出るなんて、大きな決心はできません。
役所に、相談窓口があれば、電話相談あたりから始めて、最終的に、就労に繋げるレールが敷けるかもしれませんねえ。 しかし、ひきこもりの当人は、自分から、相談しようとしないでしょうなあ。 かといって、親が勝手に相談すると、怒ると思います。 本人が、他人の中に出て行く気がないのに、それを無理やり引き出そうとしたら、それは、暴行や拷問と変わりないです。
役所で窓口を設ける場合、そこの職員は、地元出身者でない事が望ましいです。 地元に住んでいる大抵の人間は、役所に、何人か、同級生や同窓生が勤めているものですが、そういう、かつて、対等の関係だった知りあいに、就労の相談など、できるものではありません。 これは、少子化対策に、地方の自治体がやった、「官製お見合い」が、応募者が集まらずに、ことごとく失敗したのと、同じ理由です。 自分から、恥を曝しに来る奴なんかいません。
ハロー・ワークなら、すでに、どこにでもあるわけですが、親が、勝手に、ハロー・ワークに行って、仕事を探して来て、子供に向かって、「明日から、行け」などといっても、全く、解決になりません。 行くわけがない。 笑ってしまうくらい、確実に、行きません。 他人が怖いんだから、行けるわけがないじゃありませんか。
だから、ひきこもり専用の相談窓口や、専用の仕事が必要になるわけです。 ブラック上司がのさばっているような職場は、問題外。 時間的には、一日フル就業も、厳しい。 本人が、「もっと、働きたい」と言い出すまでは、せいぜい、半日くらいにして、家にいられる時間を長く取ってやる気遣いが必要です。 だけど、全国的に、それをやるのは、難しいでしょうなあ。
で、ひきこもりについて、何か書こうと思ったのですが、昔、書いた文章があったのを思い出したので、まず、それを出します。 2本ありますが、どちらも、ホーム・ページ「換水録」のコラムだった頃の、「心中宵更新」に出したもので、このブログでは、初出です。
【2002年10月23日付】
☆ ひきこもり① ☆
もう、二三週間前になりますが、テレビのある番組で、「ひきこもり」をひきずり出す企画をやってました。 専門家が立ち会って、親が子供に引導を渡し、更生施設に入れるという内容でした。
ひきこもり少年の籠っていた部屋が映ったんですが、新聞、雑誌、ビデオテープなどが散乱堆積し、「いかにもそれらしい・・・」という感じでした。 独身男性の部屋はみんな似たようなものだろうと思われるかもしれませんが、新聞が持ち込まれている所に、ひきこもりの特徴がよく表れています。 彼らに共通するのは、知性への憧れで、重要な情報源である新聞とは切っても切れない関係にあります。
ひきこもりは十人十色で、一人を立ち直らせた方法が、他の者にも通用するわけではないとはよく言われますが、立ち直らせる方法はさておき、共通する特徴は見出す事が出来ます。
・ 他人を怖がっている。
・ 自分を他人よりレベルの高い人間だと思っている。
怖がると言っても、対人恐怖症とは違います。 街を歩いたり、見知らぬ人に道を教えたりする事は何でもありません。 彼らが恐れているのは、他人と密接に付き合い、その上で自分の事が高く評価されない事です。
仕事に就く気にならないのは、能力的にできないからではありません。 彼らのほとんどは、一度も仕事をした経験がないので、勤まるか勤まらないかなど分かりはしません。 彼らが恐れているのは、もし勤まらなかった場合、他人の前で大恥を掻いてしまうのではないかという事です。 何せ、自分は他人より優れていると信じているので、他人に恥を掻かされるなど、我慢できないのです。
「随分と断定的に分析するじゃないか」と思われるかもしれませんが、実は私、元ひきこもりなのです。 だから、彼らの心理はかなりよく読めます。 随分昔の事で、まだ「ひきこもり」という言葉がありませんでしたが・・・。
では、一先輩として、彼らの境遇に同情するかというと、それは全くできません。 彼らの置かれている状況は間違っているとしか言いようがないからです。
とはいえ、親や外部の人間が無理矢理立ち直らせようとしても、まず無駄です。 反発されるだけでしょう。 当人がその気にならなければ、一歩も先に進みません。
ひきこもっていながら、ネットをやっている人達は結構いるようなので、もしかしたら、これを読んでいる人の中にも該当者がいるかもしれません。 そこで、一言・・・・
はっきり言って、今のままでは、あなたの人生はなかったも同然です。 悪くなる事はあっても、よくなる事はありません。 歳をとればとるほど、居場所はなくなっていきます。 本当にただのクズになってしまいます。 親や親戚は、全然当てになりませんよ。 頼りになるのは自分だけです。
どうせお先真っ暗なら、もう自分は死んだものだと思って、一か八か社会に出ましょう。 新聞の折り込み求人広告を集め、興味がある所に電話して見てください。 絶対断られると思ってかければ怖いものはありません。
繰り返します。 いつか親がどうにかしてくれるなんて思ってたら駄目ですよ。 あなたの親は、あなたに飯を食わせる以外、能力がないのです。 頼りになるのは自分だけなんですよ。
【2004年3月18日付】
☆ ひきこもり② ☆
何でも、今、NHKが「ひきこもり特集」をやっているみたいで、ちょくちょく、それらしい番組を目にします。 ひきこもりについては、前にも一度書いたんですが、こういう番組を見ると、また書きたくなってしまうんですな。
NHKが何を考えているのか、今一つ分からないんですが、スタジオにひきこもりを何十人も集めて意見を聞くというあれは、どんなもんなんでしょ?
ひきこもりには、各々個別の事情があるので、みんながみんなそうだとは言い切れませんが、長く家に篭っていた人間が、反動として望むのは、やはり「他人から注目されたい」という事ではないかと思います。 ひきこもりは、気位が人一倍高いので、本来「自分は注目されて当然」という意識があります。 その意識が何年も抑圧されているわけですから、一触即発、いつ爆発してもおかしくないような状態になっています。 そんな連中をテレビに出してやり、アップで撮って、意見まで聞いてやるのですから、ひきこもり達にとってみれば、待ちに待った晴れ舞台。 無上の喜びを感じるに違いありません。
しかし、当然の事ながら、収録が終われば、彼らはただのひきこもりに戻ります。 親兄弟からお荷物扱いされ、近所から気味悪がられる半端人間に戻ってしまうのです。 この落差はあまりにも大きく、あまりにも残酷です。 テレビに出て、それをきっかけにひきこもりから脱出できるのなら有意義な事ですが、彼らが陥っている穴はそんなに浅い物ではないと思います。 大部分の者は、ひきこもりに戻るでしょう。 そして、「次の出番はいつだろうか?」 「今度テレビに出たら、何を喋ろうか?」などという妄想に耽りながら、また何年も篭り続けるのです。
ひきこもりから立ち直った人に話を聞くというような企画もありましたが、一般の職場に勤めた人ならともかく、ひきこもり相談所に雇ってもらった元ひきこもりなんて、どんなに偉そうな事言ったって、全然当てになりませんぜ。 つまり、そいつら、一般の仕事に就くのが怖くて、相談所に逃げ込んで、そのまま職員になってしまったわけで、一般社会から逃げている事に変わりはないんですから。
ひきこもりは、やはり男性が多いと思うんですが、誰か他人に相談するという時に、若い女性は避けた方がいいです。 恐らく、期待しているものと得られるものが全然違う事に気付いて、より深く傷付く事になると思うからです。
私は男だから、女性の気持ちが完全に分かるというわけではないんですが、一般的に言って、女性というのは、男性より、現実的な考え方をします。 ぶっちゃけて言ってしまうと、収入がなくて、家に篭っている男に恋愛感情を抱くなんて事は、ほぼ100%あり得ません。
どんなに頻繁にメールをやりとりしていても、どんなに優しく励ましてくれても、それは恋愛とは全く違う動機、即ち、同情や仕事への使命感から発せられたものです。 その辺の所は、くどいほど自分に言い聞かせておいた方がいいです。 自分の方から訪ねて行くなんて、絶対駄目です。 相手が引いている限界線を越えたら、ストーカー扱いで警察に通報されるのがオチですぜ。
個人に密着して取材した番組もありました。 30歳くらいの男性でした。 ひきこもり特有のごっちゃごちゃの部屋の中には、いかにも今風のひきこもりらしく、パソコンがありました。 もちろん、ネットに繋がっていて、ひきこもり同士でメールをやりとりし励ましあっているとの事でした。
でもねえ・・・・「相手もひきこもりだから、気持ちがよく分かる」って言われれば、確かにその通りですけど、気持ちが分かってもらえたって、ひきこもりの解決には何の役にも立ちませんぜ。 励ましあっているというより、同類相憐れむで、慰め合ってるんですな。 「自分だけがおかしいんじゃない。 俺には仲間がいる」・・・・・いっかんなあ。 ひきこもりの仲間なんて、いたって、百害あって一利なしだと思いますよ。 一生ひきこもっていたいというなら、また話は別ですが。
できれば、ネットもやめた方がいいんですよねえ。 特に、ホーム・ページなんて持ってしまうと、そこでは一人前の人間のように振舞えるので、これまた錯覚に陥りやすいんですな。 大体、通信費は誰が払ってるのよ? 親に頼るのは食費だけにしといた方がいいよ。 だけど、ネットは、やめろと言われてもやめられないでしょうなあ。 最初から手を出さなければ一番よかったんですが、もう手遅れですな。
その番組に出ていた男性、最後には一大決心をして、親に向かって「一緒に暮らしていると、どうしても頼ってしまうから、家を出て一人暮らしをしたい。 でも、すぐには無理だから、とりあえず、アルバイトでもして、お金をためて・・・・」というような事を言うんですが・・・・・。
あのなあ、アルバイトができるなら、ひきこもりとは言わないんだ。 そういう人は「フリーター」というんだ。 フリーターは、少ないけれど、ちゃんと収入がある。 やりくりすれば、一人で生きていく事もできる。 不安定ではあるけれど、人様から後ろ指さされるような暮らしではないんだ。 親に寄生している自分と一緒にしたらいかんぜ。
一般社会人とひきこもりの違いは何かというと、一にも二にも、収入があるかないか、それに尽きます。 親と一緒に住んでいたって、収入があれば、何の問題もありません。 もし、アルバイトならできるというなら、すればいいではないですか。 一人暮らしなんて、発想の飛躍もいい所で、いきなりそんな事ができるなら、そもそも、ひきこもりなんて、やってないでしょうに。 その非現実的な妄想こそが、ひきこもりのひきこもりたる所以なんですが。
何だか、今回は、前回に比べて、血も涙もない内容になってしまいました。 いやねえ・・・・NHKのひきこもり番組見ていたら、何だか、励ましたって、アドバイスしたって、とても追い付かないような気がしてきたんですよね。 さすがに、10年以上、こもっているなんて人の場合、もう駄目でしょう。 学生時代からずっとこもって、30歳過ぎてしまったなんて人を雇う所はないですぜ。
もし、「このままじゃ、駄目なんだ」という気持ちが少しでもあるなら、明日からでも、バイトの口を探しに出た方がいいです。 皿洗いくらいなら、よほど労働適性がない人でもできます。 最大の敵は歳をとってしまうことです。 脱出は早ければ早いほどいいです。
昔書いた文章は、以上です。 結構、辛いですな。 だけど、この頃は、ひきこもりについて、考えるだけの興味があったのですから、まだマシだったわけで、その後、まるっきり、興味がなくなって、どうでもよくなってしまいました。 マザー・テレサ風に言うと、最悪になったわけだ。
今回の、児童襲撃事件が起こった時、「これは、模倣犯が出るかも知れんな」と思ったのですが、今のところ、それは出ていないようです。 その代わり、ひきこもりが家にいる家族が、「うちのも、こんな事件を起こすのではないか」と警戒して、本人に、きつく当たり、そのせいで、息子殺しや、家族刺傷、本人自殺といった事件が起こりました。 インパクトが、そっちへ行ってしまったか。
事件の直後、ネット・ニュースで、「『死にたいなら一人で死ぬべき』という非難は控えてほしい」、「こういった発言を公の場でする事で、犯罪者予備軍の感情を刺激する可能性があるので」という意見が出していました。 だけど、「死ぬなら、一人で死ね」は、ごくごく、常識的な反応だと思いますよ。 働いている人間はもちろんの事、おそらく、ひきこもりの99.99パーセントくらいの人達も、この犯人に対して、「死ぬなら、一人で死ね」と感じたと思います。
この意見を出した人、別に、「ひきこもりは、全員、追い詰められた犯罪者予備軍だ」と見做しているわけではないと思いますが、今回の事件で、犯人がひきこもりだったと報道されている手前、誤解を招くので、「ひきこもり」と、「追い詰められた犯罪者予備軍」を、きちんと区別した方がいいと思います。 ちなみに、今回の犯人と近い境遇にあったと思われる、大阪池田小事件の犯人も、秋葉原通り魔事件の犯人も、いわゆる、ひきこもりではありませんでした。 「ひきこもりが、重大犯罪をやらかす」という結び付け方は、全くの的外れです。
ひきこもりは、むしろ、犯罪からは遠い人達です。 他人が怖いんだから、極力、接触を避けたがるのですよ。 また、もし、自暴自棄になって、死ぬのなら、世間の皆様が望んでらっしゃる通り、一人で死にます。 だけど、そもそも、死ぬ気がないから、何年も、ひきこもっているのであって、自ら死ぬひきこもりは、稀です。 家族が追い詰めて、激怒させ、殺し合いの喧嘩にでもなれば、別ですけど。
そこでまた、今回の児童襲撃事件の犯人に戻るわけですが、この人、ひきこもりの枠で捉えるべき人なんですかね? 単なる、一時的な無職なのでは? 叔父・叔母の家を、一度、出ていたという事は、働いて、自活していた期間があるわけでしょう? ひきこもりにも、働いた経験がある人がいますが、その場合、実家に住み続けているのが普通です。 一度、出て、戻った人は、ひきこもりの枠に入れるとしても、かなり、特殊な例になるんじゃないでしょうか。
当人は、ひきこもり扱いされて、怒って、否定していたそうですが、普通、ひきこもりは、自分がひきこもりである事を、否定したりしません。 むしろ、自分が置かれている状況を、簡潔に言い表せる言葉として、重宝していると思います。 その点でも、今回の犯人が、ひきこもりに該当していたかどうか、大いに疑問です。 ひきこもりでない人間が起こした事件であれば、ひきこもり対策を施しても、今後、同様の事件を抑止する為の役には立ちません。
とはいえ、何かしら、社会的な対策を取ってくれると言うのなら、ひきこもりの面々には、損な話ではないですわな。 中には、「余計なお世話だ!」と、身震いして、嫌がる人もいると思いますが、働かず嫌いで、働いた事がない人の場合、ちょっとした支援が、「天から降りてきた蜘蛛の糸」になる場合があるかも知れません。
たとえば、ひきこもりの扱い方に熟知した人が誘いに来て、工場や事務所などに連れて行き、「一日に、2・3時間、これこれこういう作業をすれば、報酬を払います」と言えば、割と簡単に、ひきこもりから抜けられる人が、かなりの割合、いると思うのですよ。 誘う側は、雑な性格の人は駄目で、腫れ物に触るような繊細な対応が求められますが、丁寧にお膳立てをしてやれば、働く事自体を嫌がる事はないと思います。
人間不信に陥っている人も多かろうと思いますが、とことん、面倒を見る覚悟で、「渡る世間に鬼はなし」を信じられように計らえば、次第に、心が開けて来るのでは? もっとも、実際には、ブラック企業や、ブラック上司に代表されるように、「渡る世間に鬼はいる」のであって、そういうのに当たって、すぐに、ひきこもりに戻ってしまうかもしれませんけど。
ひきこもりの数は、増加傾向にあると思われ、数的には、もはや、「ごく一部の人」ではなくなり、ひきこもりが政党を作ったら、堂々、国会に20議席くらい送り出せるほどの割合になっていると思います。 どこかの自治体が、就労年齢なのに、就労していない人の割合を調べたら、全体の1割くらいが該当して、おったまげたという話を聞いた事がありますが、日本全体で見ても、そんな割合なんじゃないでしょうか。
その自治体とは、別の所だと思いますが、役所で、就労支援をやったら、何十人かいたひきこもりを、ほぼ全員、就労させられたとの事。 「えっ! ほぼ、全員?」と、驚いたのは、私です。 6・7割が就労したというのなら、「凄い成果だな」と、感服したところですが、ほぼ全員となると、「相当には、荒っぽい事をやったのではなかろうか」と疑ってしまうわけです。 そうでないとしても、恐らく、また、仕事をやめて、ひきこもりに戻る人は出て来るでしょう。
ここで、私が、何か書いて、それを読んだ人が、ひきこもりから脱せられるというのなら、いくらでも書きますが、実際には、そんな事はないと思うのですよ。 長い間、社会と隔絶した状況にいるわけで、赤の他人から、アドバイスされたくらいでは、とてもとても、働きに出るなんて、大きな決心はできません。
役所に、相談窓口があれば、電話相談あたりから始めて、最終的に、就労に繋げるレールが敷けるかもしれませんねえ。 しかし、ひきこもりの当人は、自分から、相談しようとしないでしょうなあ。 かといって、親が勝手に相談すると、怒ると思います。 本人が、他人の中に出て行く気がないのに、それを無理やり引き出そうとしたら、それは、暴行や拷問と変わりないです。
役所で窓口を設ける場合、そこの職員は、地元出身者でない事が望ましいです。 地元に住んでいる大抵の人間は、役所に、何人か、同級生や同窓生が勤めているものですが、そういう、かつて、対等の関係だった知りあいに、就労の相談など、できるものではありません。 これは、少子化対策に、地方の自治体がやった、「官製お見合い」が、応募者が集まらずに、ことごとく失敗したのと、同じ理由です。 自分から、恥を曝しに来る奴なんかいません。
ハロー・ワークなら、すでに、どこにでもあるわけですが、親が、勝手に、ハロー・ワークに行って、仕事を探して来て、子供に向かって、「明日から、行け」などといっても、全く、解決になりません。 行くわけがない。 笑ってしまうくらい、確実に、行きません。 他人が怖いんだから、行けるわけがないじゃありませんか。
だから、ひきこもり専用の相談窓口や、専用の仕事が必要になるわけです。 ブラック上司がのさばっているような職場は、問題外。 時間的には、一日フル就業も、厳しい。 本人が、「もっと、働きたい」と言い出すまでは、せいぜい、半日くらいにして、家にいられる時間を長く取ってやる気遣いが必要です。 だけど、全国的に、それをやるのは、難しいでしょうなあ。
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