2005/10/01

人気外国語ランキング


  先日、新聞で知ったのですが、高校で英語以外の外国語を教える所が増えているそうです。 学生の数は、全言語を合わせても4万人程度で、全体から見れば微々たる数ですが、確実に増加しているのは、良い傾向だと思います。

  2003年5月の文科省の調査によると、約半数が中国語で19045人、以下、フランス語8081人、韓国朝鮮語6476人、ドイツ語4275人、スペイン語2784人、ロシア語478人と続き、他にも、イタリア語、ポルトガル語、インドネシア語、エスペラントなどが学ばれているそうです。

  教育特区制度が出来た為に起こった現象で、別に文科省が旗振りをしたわけではないようです。 言わば自然発生したわけで、各言語の勢力が、現在日本で重要視されている外国語の順位をそのまま表わしている点が面白いです。

  中国語がダントツなのは、当然と思われます。 よほど国際情勢に疎い人でない限り、中国が今後30年以内に、アメリカの数倍の規模を持つ超大国になる事は容易に想像できますから、将来への投資と見なされる事が多い外国語学習で人気が集まるのは少しも不思議ではありません。 中国語は漢字を共用する関係上、日本人には学び易い言語です。 10代の頃に基礎だけでも頭に入れておけば、読める所までは確実に行くと思うので、現実的に実の成る学習対象と言えます。 ただ、発音や会話の方は、たとえ授業に中国人講師がついていたとしても、あまり期待は出来ないでしょう。 特に発音は、テレビの中国語会話でも見ていた方が、綺麗な音が出せるようになります。

  フランス語が2番目なのは、伝統の強味でしょうね。 発音は始める前に想像しているよりは楽ですが、文法には泣かされるに違いありません。 20年くらい前には、「フランス語を習っています」 と言われると、何だか気取ったいやらしさを感じたものですが、最近は日本人全般のフランスへの憧れが薄れたせいか、そういうイメージが消散しました。 実用的な学習対象として捉えられるようになったのは、フランス語にとって却って良い事だと思います。 その上で、実際に習ってみれば、フランス語が持つ文化・文明の香りは、知的好奇心旺盛な学生にとって、学習意欲を掻き立ててくれる大きな要素になると思います。

  三番目は韓国朝鮮語ですが、この言語、もっと順位が上がってもいいと思います。 日本語と近縁であるが故に、とにかく習い易いという最大の利点があります。 つくづく思うのですが、最初に習う外国語は、母語と近縁種が一番です。 少ない労力で実用段階まで進む事が出来るので、学習者の外国語への抵抗感を大幅に減らす事が出来ます。 その点から見ると、日本で最初に英語を教えているのは、不適当な選択と言わざるを得ません。 フランス人やドイツ人が英語を習うのとは、条件が全然違うのです。 発音は聞き取れない、語順は半分逆、表現方法もまるで異質、となれば、苦手になるなという方が無理です。 現在、韓国朝鮮語が人気なのは、韓流ブームが影響していると思われますが、願わくば、このまま学習者が増えて行って欲しいものです。 日本語母語話者にとって、中国語と韓国朝鮮語は、習わなければ損になる言語と言っていいでしょう。

  ドイツ語やスペイン語が多いのは、順当な所でしょうか。 ドイツ語は、戦前までは知識人の教養の証明のような扱いをされていましたし、現在でも、EUの中心的な言語として、極めて重要です。 スペイン語は、使用国数が多いので、海外旅行では実用的な強みを発揮するでしょう。 隣国なのに、ロシア語が少ないのは勿体ないですな。 文学や科学技術など、学ぶべき所がいくらもあるのに。 大御所では、アラビア語やヒンディー語が入っていないのは残念ですね。 アラビア語が出来る高校生などいたら、大変カッコいいと思いますが。

  学校で教えられる言語は、選択の幅が広ければ広いほど良いと思います。 実用面もさる事ながら、「外国語は、とりあえず英語だけやっておけば充分」 という固定観念を子供に植えつけないようにするのにも役立ちます。 一旦頭に侵入した偏見はなかなか消えませんから、早い内に、世界中の全ての言語の価値が同等である事を知っておいた方が良いでしょう。