2009/09/27

無念の断念

  執念深く検討を続けて来た、≪一眼デジカメ購入計画≫ですが、思わぬ方面から障碍が立ち現れ、頓挫しかけています。 それは、浪費を避けようという理性でもなく、要求に合致する性能のカメラが無いという事情でもなく、私の健康状態でした。 具体的に言うと、腰痛です。

  私はフィルム一眼時代に買った、ウエスト・バッグを持っています。 標準のズーム・レンズを着けた一眼レフ一台と、小物がちょっと入れられる程度の大きさです。 それを押入れから引っ張り出して、デジビノのセットを入れ、ここ一ヶ月ばかり、休みの日になると出かけていたのですが、大した重さでないにも拘らず、腰へ来てしまったのです。 コンパクト・デジカメの≪オリンパス C-2≫と、双眼鏡の≪ビクセン FOKUS 9×21≫と、木で作ったアタッチメントだけですから、合計450グラムくらいしかないのに、ほんの二時間程度、徒歩や自転車で動き回っただけで、参ってしまいました。

  肉体労働をしているので、休みに腰を痛めると、翌日から地獄が待っています。 私の腰痛は、20代前半からの年代物でして、一度起してしまうと、回復は遅々としたもので、ひどい場合は、三ヶ月くらい痛みが取れない事もあります。 たった450グラムで、この様ですから、一眼デジカメを持ち歩けるとは、到底思えません。 一眼デジカメの重さといったら、本体だけで500グラム、それにレンズが標準ズームでも200グラム以上しますから、最軽量の組み合わせでも、デジビノよりずっと重いのです。 その上に、三脚なんざ担いだ日には、もう10分も動けますまい。

  私が、一眼デジカメで撮りたいと思っている写真というと、フィルム一眼の頃にやっていたのと同じように、ISO感度を下げて画質を緻密にし、絞りを限界まで絞って全域にピントを合わせた、極力鮮明な写真ですが、それを撮るには、三脚は必須でして、手持ちでは話になりません。 私の趣味に関係なく、一眼レフというのは、三脚とセットにした時に、その特徴的機能が発揮される機械なので、手持ちでは宝の持ち腐れになってしまうのです。 一眼レフの手持ちで撮れる写真は、コンパクト・デジカメでも撮れるはず、どころの話ではなく、むしろ、コンパクト・デジカメの方が、ずっとうまく撮れます。

  一眼デジカメをすでに所有している方々にお薦めしたいのですが、ちょっとした散歩や、他の人と一緒に行動しなければならない旅行など、三脚を持って行けない状況である事が分かっていたら、一眼より、コンパクト・デジカメを持って行った方が、断然、有効に使えると思います。 三脚使用と手持ちとでは、「あ! これは撮れそうだ!」と思う光景に出会う確率が、5倍くらい違うんじゃないでしょうか。 特に、仰角撮影になると、三脚では最初から諦めてしまう事が多いです。 脚を全展長し、エレベーターもいっぱいに延ばして、高い木の枝に咲いた花を撮る自分の姿を想像すると、あまりの面倒臭さに、撮る前からうんざりしてしまうのです。

  「手ブレ補正があるから、三脚無しでも、大丈夫」と思うでしょうが、手ブレ補正は、コンパクト・デジカメにもついていますから、同一条件の勝負となれば、軽い方が勝ちます。 それに、一眼デジカメは、ミラーの動作がある分、より不利になります。 そういえば、キャノンやペンタックスの一眼デジカメでは、入門機種から、≪ミラー・アップ機構≫が搭載されているようですな。 無いよりはあった方が、ずっと有用ですが、ミラー・アップしている間はファインダーは真っ暗ですから、出番はセルフタイマー使用時などに限られるわけで、やはり、手持ち向けではありません。

  ああ、この種の、カメラに関する能書きは、今までさんざん書いて来ましたねえ。 こういう事は、写真趣味をやっている人なら、大抵頭に入っているのですが、写真に興味が無い人は全然知らないし、これから写真を始めようという人も、ほとんど知りません。 でもって、「せっかく新しい趣味を始めるのだから、道具はいい物を揃えよう。 途中で買い直す事になったりしたら、却って高くつくし」といった、その時点に於ける最も合理的な判断を下して、最初から一眼デジカメの、Wズーム・キットを買ってしまうのです。

  ところが、その、安くても5万円以上する、高級感たっぷりの一眼デジカメで、「とりあえず、庭の花でも撮ろうかな」と思い、サンダルをつっかけて、庭に出て、花に近づいて、いざ撮ろうとすると、あら、どうしましょ! ピントが合わせられない事に気付くんですな。 18-55ミリの標準ズームじゃ、最短撮影距離は、せいぜい寄っても、ワイド端で25センチでしょう。 花撮影で25センチも離れたら、花の写真というより、植物の写真になってしまいます。 ここに於いて、5万円も出して買った高級カメラなのに、マクロ撮影ができない事を知って、驚愕するわけですな。 こと、マクロに関しては、一万円以下の特売・投売りコンパクト・デジカメにも劣るわけです。

  で、その後、どういう行動を取るかというと、気が動転してしまうんでしょうねえ、何と、やしやし、マクロ・レンズを買いに行くのですよ。 マクロ・レンズもピンキリですが、平均的な品で3万円くらいするでしょう。 ほーら、もう8万円消えてしまった。 これと全く同じパターンで、望遠ズームが、テレ端300ミリくらいでは、撮れる物が無い事に気付き、レンズと同じくらいのお金を出して、テレ・コンバーターを買ったりしてしまいます。 更に、ネットで知り合った写真趣味の先輩から、「やっぱ、レンズは、単焦点の方がボケ味がいいですよ」などと唆され、よせばいいのに、広角・標準・中望遠・望遠と、単焦点レンズを揃えてしまったりします。 中には、魚眼レンズまで買って、一度しか撮らずにしまいこんでいる馬鹿もいる。 あんなもんで、何を撮るんじゃい? 買う前に、ちっと考えてみりゃ、分かりそうなもんだ。

  こういう状態を、カメラ病用語で、「≪レンズ沼≫に嵌まった」というらしいですが、一度嵌まると、破産するまで抜け出せないらしいです。 これねえ、カメラ・メーカーが仕掛けている、一眼レフの罠でして、レンズ・キットや、Wズーム・キットというのは、わざと、そういう不満が出るような組み合わせにしてあるんですな。 もし、良心的な技術者なら、コンパクト・デジカメの高倍率ズーム機につけているような、マクロから広角・望遠までカバーできるレンズをセットするでしょう。 ところが、それではレンズ沼に嵌められないので、そもそもそういうレンズを作っていないのです。 恐ろしい話じゃありませんか。 どれだけの人間が、この罠のせいで、身上潰したことか。

  だけどねー、趣味というのは、そういう方向に行きがちなものなのですよ。 だから、レンズ沼に嵌まってしまった人達を、あまり責めるのも、気の毒な気はするのです。 趣味は、徐々にうまくなって、自分の成長が実感できる間は面白いのですが、当初の目標を達成してしまうと、そこから飽き始めます。 特に、大人の趣味は、その傾向が強い。 飽きてしまっているものを、更に続けようとしたら、道具を変えたり、場所を変えたりする以外に無いのです。 釣り、ゴルフ、走り屋、パソコン、みんな同じですな。 本当は飽きているくせに、それを認めるとやめなければならないので、道具を変えて延命を図っておるのです。

  カメラの機構について知識がある人達は、一眼レフもコンパクト・カメラも、撮れる写真の95パーセントくらいは、同じである事を知っています。 デジカメの場合、むしろ、コンパクトの方が、カバー範囲が広い事も承知の上。 それでも、一眼レフを使いたくなるのは、写真趣味に飽きるのが嫌だからです。 新しいレンズやボディーを買い続けていれば、常に新鮮な気持ちで撮影に出かけられるからです。 まあ、一回撮ってしまえば、それで飽きてしまうという、非常にコスト・パフォーマンスの低いリフレッシュ方法なわけですけど。


  おっと、何だか、途方もなく脱線しておりますな。 一眼レフ批判は、もうええっちゅうに。 なんてったって、つい先週まで、私自身、一眼デジカメのボディーが欲しくて、閑さえありゃあ、中古品市場を調べてたんだから。 くっそー、腰さえ丈夫なら、買えたのになー。 これも、運命か。 ああ、断っておきますが、私は別に、自分が腰が悪くて重い器材を持ち運べないから、腹癒せに一眼レフを貶しているわけではありません。 私が繰り返し書いている一眼レフの欠点は、すべて、実際に存在するものです。

  でねー、諦めるしかないんですよ。 だって、買ったとなれば、外へ持ち出さなければ、意味がありませんし、持ち出せば、確実に腰を潰してしまうのだから、もう買わない以外に選択肢がないじゃないですか。 せっかく高い金出して買ったカメラなのに、家の中だけでしか撮れないなんて、馬鹿馬鹿しいにも程があります。 家の中で、何を撮るっちゅーねん? 出掛けてナンボなんですよ、写真趣味は。 で、泣く泣く諦めたってわけですよ。 厳しいねえ、現実は。


  というわけで、ここから先は、私がここ2週間ほどの間にネット上で集めた、一眼デジカメに関する情報を元にした、純粋な余談です。

  ペンタックスの一眼デジカメですが、610万画素の、≪ist≫系列機や、≪K100D≫系列機は、ISO感度が、最低で200なんですね。 やはり、私としては、100は欲しいところです。 ちなみに、私はフィルム時代には、100を使ってました。 暗くなっちゃって、スローシャッターしか切れないんですが、動かない物しか撮らなかったので、そちらは問題なし。 ただ、三脚必須で、セットするまでの時間がかかってしまって、それが面倒でした。 半日歩いて、7・8構図しか撮れないのが普通。 1構図辺り、露出をずらして、3枚ずつ撮るので、それだけでも、24枚撮りフィルムが、ほぼ消えてしまいましたけど。

  「結構、高級なデジカメを持っているけど、ISO感度なんていじった事が無い」という方は、一度、マニュアル設定で、100以下にして撮ってみると、面白いですよ。 画質がポンと上がるから。 手ブレ補正があれば、手持ちでも何とかいけるでしょう。 キャノンの一眼デジカメは、入門機の≪EOS Kiss≫でも、100まで下げられます。 ペンタックスの入門機も、≪K-m≫以降の機種なら、OK。 厳しいのがニコンで、中級機以上でないと100が選べません。 ニコンの一眼デジカメは、デザインが私好みなんですが、スペックを仔細に見ると、思わぬ所に落とし穴があります。 だけど、≪D二桁≫系列機を買っている人達は、そんな所、気にもしないんでしょう、きっと。

  そういや、≪カメラのキタムラ≫の、アウトレット・コーナーに、≪EOS Kiss F≫の、レンズ・キットやWズーム・キットが大量に出ているの、知ってます? 安い店舗だと、Wズーム・キットで56000円などというのがありましたが、相当お買い得ではありますまいか。 ≪EOS Kiss F≫は、すでにカタログ落ちしていますが、現行機の≪X2≫より、画素数が少し落ちるだけで、他のスペックは大して変わりません。 レンズは全く同じですから、どう考えても、お買い得でしょう。 しかし、どうして、あんなにたくさん、アウトレットに出て来たのか、それが不思議です。 捌き切らない内に、≪X2≫を発売しなければならない事情でも出来したんでしょうか。

  キャノンといえば、最近出た、≪EOS 5D MarkⅡ≫という機種は、撮像センサーの大きさが、フィルムの35ミリ判と同じ面積だそうですな。 「おっ! とうとう、そんなのが出たか!」と目を見開きました。 普通、一眼デジカメの撮像センサーは、≪APS-C≫サイズといって、35ミリ判の半分くらいの面積しかなく、そのせいで、同じレンズをつけても、焦点距離が約1.5倍になってしまいます。 それが、≪EOS 5D MarkⅡ≫では、35ミリ判と全く同じ焦点距離で撮れるというわけです。

  望遠系レンズの場合、撮像センサーが≪APS-C≫サイズなら、200ミリのレンズが、実質300ミリ相当の画角になっていたため、お得だったわけですが、≪EOS 5D MarkⅡ≫では、そのメリットが無くなります。 また、≪APS-C≫サイズ用に作られた、≪18-55ミリ≫といった標準ズームを、≪EOS 5D MarkⅡ≫につけた場合、広角に寄り過ぎていて、18ミリで撮ったりしたら、見るに耐えないくらい画像が歪む事と思われます。 うーむ、良い事なんだか、悪い事なんだか。

  とはいえ、一旦フルサイズが登場したからには、今後、各社雪崩を打って、右倣えするものと思われます。 最初は、プロ向けやハイアマ向け機種に導入され、いずれは、ローアマ向けにも普通に搭載されるようになるでしょう。 というか、フルサイズが定着すれば、≪APS-C≫サイズの撮像センサーは、生産中止になってしまう可能性が高いです。

  そういや、キャノンの交換レンズ群を見ると、従来の一眼デジカメ専用のレンズだけ、≪EF-S≫レンズとして別扱いにしていますが、あれは、35ミリ判サイズの撮像センサーが主流になったら、お払い箱にする準備なのかもしれませんな。 現在、キャノンが売っている一眼デジカメ用レンズの大半が、≪EF-S≫レンズなのに、そのドル箱商品ですら、際物視しかしていないところが、トップ・メーカーの冷徹さを物語っています。

  デザインだけ見ると、オリンパスの≪E-三桁≫系列機もカッコいいと思うんですが、オリンパスは、独自規格の落とし穴があるので、ホイホイ飛びつくわけにいかんのですよ。 あの、≪XDピクチャー・カード≫が、果たして、いつまで店頭に置かれている事やら。 もしオリンパス製品を買うなら、先々不足すると思われる物や、消耗品の類は、多めに買い溜めておいた方が無難だと思います。 デザインは、いいんだけどねえ。 ≪E-P1≫は、薦めません。 前にも書きましたが、あれは、機構的に、一眼レフではないですから、一眼レフの利点を備えていませんし、コンパクト・デジカメとしては重すぎで、ノスタルジックな外観以外、いい所がありません。

  ペンタックスの新製品、≪K-X≫ですが、ボディーとグリップの色を組み合わせて、100タイプ選べるそうです。 ペンタックスの一眼デジカメは、ラインナップがシンプルで、お客を迷わせない所が良かったんですが、今回は、全然別の方向性で、大いに迷わせる事になりそうですな。 だけど、色なんかはどうでもいいとして、≪K-X≫は、性能的には申し分無いと思います。 買って損という事はないでしょう。 ちょっと、高いけどね。 乾電池モデルは、バッテリーの劣化を気にしないで済む点が優れています。