2010/08/15

自転車買いたい新書

  先日、≪自転車入門≫という新書本を読みました。 その本の感想については、後日、読書感想文の記事で紹介します。 掻い摘んで説明しますと、老境に差し掛かって自転車趣味に目覚めた著者が、クロス・バイクやロード・バイクを買った経緯、あちこち出かけて行った記録、自転車と健康の関係などを書き綴った本です。

  実は、この種の老いらく趣味の本はよくあるもので、自転車関連でも、類似書がちらほら見受けられるのですが、それはこの際どうでも宜しい。 問題は私が、この本を読んだせいで、≪自転車買いたい病≫に感染してしまった事なのです。 著者は自転車の専門家ではなく、全く畑違いの人で、本の内容も、さほど高いレベルではないのですが、にも拘わらず、手もなく、籠絡されてしまったのです。

  私とて、自転車は子供の頃から、二週間と空ける事なく、ずーーーっと乗って来たので、一家言くらいはあります。 今までに乗った事があるのは、子供用自転車が2台、中学生の時のセミドロ5段変速車、高校生の時のセミドロ6段変速車、家族共用の軽快車が歴代3台、それに、2007年に自分で買った折り畳み自転車といったところ。

  しかし、この本で私が魅了されてしまったのは、そういった普通の自転車ではなく、スポーツ車なのです。 何が違うといって、スピードが違う。 折り畳み自転車は、一応、スポーツ車の範疇に入るらしいのですが、スピードとは無縁であり、私には今まで、自転車とスピードを結び付けて考える習慣がありませんでした。

  スピードが出る自転車が存在する事は知っていましたが、そういう自転車は、競輪選手や≪ツール・ド・フランス≫のようなロード・レースの選手、大学のサイクリング部の部員など、特殊な身体能力を持った人達が使うものだと思っていました。 ところが、違うらしいんですよ。 幹線道路を走っているロード・バイク乗りの中には、単に趣味で乗っている普通の人達が、非常に高い割合で含まれているというのです。 皆さん、レーサー・スタイル、バリバリの服装で決めているので、素人目には見分けがつかないだけらしいのです。

  この本を読んでいて、最初に驚かされたのは、「ママチャリのスピードが遅いのは、サドルが低過ぎて、脚のエネルギーを有効に引き出せないからだ」 という記述でした。 寝ながら読んでいたんですが、「え! そういう事だったの?」 と、跳ね起きましたね。 論より証拠という事で、父の自転車(26インチ 3段ギア)のサドルを20センチくらい上げて試してみたところ、これが速い速い! 普段、てれてれ漕いでいるのと同じ自転車とは、とても思えぬ速さが出ました。 活動的興奮を覚えたのは、久しぶりです。 血が沸き立つとは、ああいう経験を言うんですねえ。

  サドルの高さは、ペダルが一番下に来た時に、膝の関節が僅かに曲がるくらいが、最も効率がいいらしいです。 股下の長さを測って、それに0.89を掛けると、クランク軸の中心からサドル上面までの長さが出るので、その数値に合わせて調整すればいいんですな。 これは、サドル調整レバーがついている自転車なら、すぐにでもできるので、是非お試しあれ。

  ただし、その分、低速での取り扱いは困難になり、危険性が増してしまいました。 足付きが悪く、さっと止まれないのが厳しいです。 また、トッブ・ギアまで使うので、停まるたびにギアを切り替えねばならず、これが結構な煩わしさ。 やはり、車やバイクと同じで、一つの性能に特化すると、他が犠牲になるようですな。

  速過ぎて歩道を走れず、車道に出るのですが、さすがに車の流れにはついて行けないので、冷や冷やしながら走らなければなりません。 車の方でも、邪魔で仕方ないでしょう。 しかし、あの速さは、一度経験したら忘れられない快感ですな。 エンジンに頼らず、自分の体力から生み出したスピードという点が、面白いのです。

  その後、別の本も借りてきて、更に詳しく調べたところ、知らなかった事がいくつも出てきました。 スポーツ自転車は、スピードだけではなく、適正な乗り方をすれば、背筋が鍛えられるので、腰痛が治る事があるというのです。 それまで、自転車競技というと、ハードなスポーツで、体を酷使するイメージが強かったですから、これは意外でした。 腰痛持ちの私としては、是非試してみたい療法です。 スピード感を味わえ、しかも、腰痛も治るなら、一石二鳥ではありませんか。 この時点で、むくむくと、≪自転車買いたい病≫のウイルスが、体の中で増殖し始めました。

  その後、川の土手に行って、何回か試しましたが、追い風と向かい風では、スピードが全然違う事に、今更ながら気づいた次第。 速い事は速いんですが、乗れば乗るほど、軽快車の限界を思い知ります。 腰を鍛えているというより、逆に痛めている感じ。 サドルを限界まで上げても、まだ適正な高さに足らんのですわ。 私の体格だと、26インチでは、小さいのかとも思いましたが、店へ行って、27インチ車のフレームをこっそり計測してみたら、何と、父の自転車より小さいではありませんか。 タイヤの大きさが、フレームの大きさを直接決めているわけではないんですな。

  軽快車には、28インチというのもありますが、価格は2万円台後半になり、結構な値段です。 それだけ出すなら、最初から性能が高いクロス・バイクを買った方が費用対効果が高いです。 ところが、ネットでクロス・バイクの体験記を読むと、ほとんどの人が、物足りなくなって、ロード・バイクに買い替えているとの事。 だけど、ロード・バイクといったら、レースに使うようなドロップ・ハンドルの自転車ですぜ。 私のようなスチャラカ自転車乗りが、そこまでやりますかね?

  ちなみに、クロス・バイクは、2万円からあります。 ロード・バイクの方は、最低でも6万円以上。 ハンドル以外は同じに見えますが、乗ってみると、全然違うらしいです。 クロス・バイクは、無帽でも乗れますが、ロード・バイクは、ヘルメットを被らないと、格好がつかないです。 あの、穴がたくさん開いた、妙に派手なヘルメットですよ。 格好以上に、えらいスピードが出るので、転倒した時に、無帽では命に関わるのだとか。 それは分かりますが、私の場合、バイク通勤しているので、休みの日までヘルメットを被るのは、勘弁して欲しいです。

  思い起こせば、私が高校で自転車通学していた頃は、女子は、≪ミニ・サイクル≫という、軽快車の前身のような自転車に乗り、男子はみんな、ドロップ・ハンドルの自転車に乗っていました。 もっとも、私は、ドロップ・ハンドル車がいかにも扱い難そうだったので、セミ・ドロップ車でしたけど。 それが今では、学生の自転車は、軽快車の一種であるシティー・サイクルに完全制覇され、ドロップ・ハンドルは、スポーツ自転車の専用装備になってしまったのです。 隔世の観あり。

  逆に言うと、昔の男子高校生は、プロが使うスポーツ・バイクと、ほぼ同じ形状の自転車に、ごく普通に乗っていた事になります。 ギアは、12段くらいはついてましたから、その気になれば、時速40キロくらいは出せたんじゃないでしょうか。 たぶん、私のセミドロ車も、サドルを上げて、適正ポジションにすれば、同じくらいのスピードが出たと思います。 いやあ、知らなかったなあ。 捨てるんじゃなかった。

  しかし、高校の頃ですら、ドロップ・ハンドルに恐怖を感じていた私が、この歳になって、あれを使えるものなんですかねえ? 物の本によると、人間の力を、最も効率よく自転車に伝えるためには、ドロップ・ハンドル車で、背中が半円を描くような前傾姿勢を取らないと駄目なのだそうです。

  でねー、そういう事を知ってしまったものだから、ドロップ・ハンドル車が買いたくなって、困っちゃってるんですよ。 最低でも6万円と、洒落にならないくらい高いのに。 またまた、物の本によると、ロード・バイクを始めた人の9割が、一年以内にやめてしまうのだとか。 うむうむ、分かるぞ、その気持ち。 格好よく、爽快に風を切って走るつもりだったのが、想像以上に疲れたり、行きたい目的地に行き尽くしたりして、出掛ける気が失せてしまうのであろう。 大人になってから始めた趣味に、よくあるパターンじゃて。

  断言しますが、私がロード・バイクを買ったとしても、必ず、同じ情況に陥いると思います。 

「すぐ飽きるに決まっている!」 (机ドン!)

  しかし、頭に情報を入れれば入れるほど、買わなければいけないような気になって来るのです。 現実的には、置く場所も無ければ、乗りこなせるかどうかも分からず、勢いで買ってどうにかなるようなものでもないのに。

  ストレート・ハンドルが付くクロス・バイクなら、誰でもすぐに乗れるみたいですが、ギアの枚数が多いだけで、学生が乗っているシティー・サイクルと大差ないという気がせんでもなし。 実際、泥除けと前籠を付けたら、シティー・サイクルと区別できる人は、あまりいないでしょう。

  また、クロス・バイクは、前傾姿勢が弱いので、背筋を鍛える上で、ロード・バイクほどの効果は望めないような気がします。 「クロス・バイクから始めて、前傾姿勢に慣れて来たら、ハンドルだけドロップに替えれば、ロード・バイクとして使えるだろう」 というのは、これからスポーツ自転車を始めようと思っている人のほとんど全員が、一度は考える事らしいです。 私も考えました。 しかし、実行する人は稀。 なぜなら、ハンドルを替えると、ブレーキ・レバーや、シフト・レバー、ワイヤーなど、ハンドルについている重要部品も軒並み替えなければならず、えらい高くついてしまうからだそうです。

  とりあえず、クロスで始めて、物足りなくなったら、ロードに買い替えるのが一番多いパターンらしいですが、どちらも、安い買い物ではないのであって、私のようなケチには、そんな贅沢な計画は、ほいほい受け入れられません。 買うとしたら、一台だけ。 となると、最終的に行き着くとされている、ロードの方になってしまうんですな。

  置き場所も厄介でして、外に置いておくと、あっという間に盗まれるらしいです。 さすが、自転車泥棒、専門家だけあって、目が肥えており、高い物は、すぐに見分けられるようです。 ロードの方だと、30万円でも、まだ普通クラスの価格帯と言いますから、そんなの屋外に置いときゃ、そりゃ、盗まれますわなあ。 たとえ、最低クラスの6万円でも、盗む方にしたら、いい標的でしょう。

  私が現在、折り畳み自転車を置いている場所は、家の道路に面した側で、自転車を出し入れしていれば、人目につきやすいです。 危ない危ない。 うちには物置がありますが、6万円もする自転車を置けるような綺麗な場所ではありません。 父が仕事部屋に使っていた、六畳のプレハブなら合格ですが、果たして、父が許可するかどうか。 とりあえず、訊いてみるか。 普通に置いたら、場所を取りますが、幸い、ロード・バイクは軽いし、前輪を簡単に取り外せるので、ラックを作れば、立てて置く事も出来ます。 それなら、OKしてくれるかも知れません。

  置き場所は何とかなるとして、本当の障碍は、乗る時間を作れない事でしょう。 今使っている折り畳み自転車の代わりにするとすれば、日曜の午後という事になりますが、週に一度、3時間程度乗るだけで、背筋が鍛えられるとはとても思えません。 土曜の午後も乗れば、多少は効果が上がるかもしれませんが、土曜は、掃除・洗濯・ブログの執筆など、雑用があって、何かと忙しいです。

  通勤に使うのは、問題外。 肉体労働をしているのに、片道18キロの出退勤を自転車で行なうのは、疲労が激し過ぎて、不可能です。 また、会社の駐輪所で自転車を盗まれる恐れも高いと来たもんだ。 会社に出掛ける前や、帰って来た後に乗るというのは、想像するだに地獄。 冗談じゃないですよ。 朝は一分でも長く寝ていたいし、帰って来たら、すぐ風呂入って、飯食って、寛ぎたいです。 つまり、どんな自転車を買うにしても、平日には使えないのです。 ホリデー・ユーザーしか選ぶ道は無いわけだ。

  もし、日曜の午後に、折り畳み自転車の代わりに、ロード・バイクを使うとしたら、出掛ける目的は写真撮影ですから、持って行くカメラをどうするかも考えなければなりません。 今使っている高倍率ズーム機のX70は、大き過ぎて、持ち運べません。 薄型コンパクト・デジカメを新たに買うしかありませんが、それでまた1万円飛びます。 やれやれ、生活パターンの変更は、難儀な事業だのう。

  そういえば、ロード・バイクで買い物に行くのは、かなり無理があるそうです。 そもそも、スタンドが無いのだから、店の駐輪所に置く事ができません。 ロード・バイクで出かけたら、走る事と、せいぜい写真を撮るくらいの事しかできないのです。 折り畳み自転車でも、籠が無いから、大きな物を買う事はできませんが、店を冷やかすくらいの事はできました。 ロード・バイクでは、それも難しいのです。 「軽さを求めてロード・バイクを買うのに、スタンドを追加するなど、矛盾している」というのです。 それは分かるけど、皆さん、不便だとは思わんのか? 本音を吐露して貰いたいです。


  という具合に、胃が痛くなるほど、悩んでいるわけです。 毎度の事ですが、何か欲しくなると、結局、買うまで、熱が下がらないので、今度も買う事になるのかもしれません。 今のところ、まだ、車種の選定まで進んでいないので、今日にも明日にも、というほど切迫していませんが、置き場所と、乗る時間の問題が片付いたら、バタバタと進展するかもしれません。 最低価格帯の車種は、どのメーカーでも種類が限られているので、あまり選択の余地が無いからです。

  そうそう、どこで買うかも、結構重大な問題です。 量販店なら、気楽だし、値引きもあるのですが、店員の知識量にバラつきがあり、素人同然の店員に当たると、えらい目に遭うのだとか。 スポーツ自転車は、適正ポジションが乗り手によって違うので、初心者のように自分でできない場合、店で調整してもらわなければならないらしいのです。 本やネットで調べると、「家の近くで、スポーツ自転車を扱っている自転車店を探せ」 とあるのですが、どの店が頼りになるか、初心者であればこそ、分かるはずがありません。

  「店との信頼関係は大切」 なのだそうですが、私が、車やバイクのディーラーと付き合った経験から言うと、店の人というのは、客をカモとしか思っていないのであって、信頼関係などというものが築けるとは到底思えません。 常連化すればするほど、仲良くなればなるほど、高い物を売りつけられるだけではありますまいか。 それなら、量販店で、自分が好きな物を安く買った方が、いっそサバサバするような気もするのです。