2012/01/15

バイク・タイヤ交換計画③

  12月24・25日の土日に前タイヤを交換し、26・27日の二日間、通勤に使いましたが、問題はありませんでした。 28日から連休に入りましたが、遅番明けで昼近くまで寝ていて、半日しかなかったのに加え、仕事の疲れが残っていたので、その日は、他の事をして過ごしました。 満を持して、結構予定日の29日を迎える事になります。


≪12月29日 木≫
  今日は、いよいよ、この連休のメイン・イベントである、バイクの後輪タイヤの交換です。 6時に起き、朝食。 その後、ネットのハウツー・サイトで、チューブレス・タイヤ交換方法のおさらい。 あまり、新しい知見は得られず。 とにかく、やってみるしかないか。

  8時頃から取り掛かりました。 前輪の時は、普段着のズボンでやって、油汚れをつけてしまったので、今回は、汚れてもいいように、仕事用の服を着ました。 手が痛くならないように、手袋も使います。 この辺りは、多少、経験値が上がった模様。 先週の土日ほど寒くなかったのは、幸いでした。

  外すタイヤは、5年乗った、ブリジストンの≪TRAIL WING-302≫。 新しく着けるタイヤは、IRCの≪GP-210≫。 サイズは、どちらも、120/80-18 M/C 62P TL。 最後のTLというのは、チューブレス(TUBELESS)の事。 ついでながら、チューブ・タイヤの事は、WT(WITH TUBE)と略すようです。 タイヤをネット上で、自分で買う時には、この記号に気をつけないと、ホイールに着かないタイヤを買ってしまう恐れあり。 もっとも、ホイールとタイヤが、どんな組み合わせであっても、チューブさえ入れてしまえば、使えない事は無いらしいですが。

  そういえば、前回、書き忘れましたが、前タイヤの銘柄も、後ろと同じでした。 外したのは、3年乗った、ブリジストンの≪TRAIL WING-27≫。 新しく着けたのは、IRCの≪GP-210≫。 サイズは、どちらも、2.75-21 45P WT。 チューブ・タイプなので、WTが付いています。 ≪TRAIL WING-27≫は、オフロード・タイヤでしたが、≪GP-210≫は、オフロード・バイク用のオンロード・タイヤです。


  という事で、作業開始。 エンジンの下にコンクリート・ブロックを積み、後輪を浮かせます。 後輪は、車軸のナットを外し、シャフトを引き抜けば、簡単に外れます。 前輪の時と同様に、コンクリートの床にダンボールを敷いて、新しいタイヤを置き、その上に後輪を載せます。 後輪の場合、片側には、ブレーキ・ディスクが、もう片側には、ドリブン・スプロケットが付いていて、どちら側も出っ張っていますから、床から浮かせるのは必須。

  まず、バルブの虫を虫回しで外し、空気を抜きます。 次に、ホイールからタイヤのビードを落とすのですが、これが強敵。 タイヤ・レバーでこじ開けるだけだと、全く落ちません。 サイトの指示通り、少しずつ開いて行くのですが、一周やっても二周やっても、変化は見られません。 そもそも、「開いて行く」と言っても、「そういうつもりで、やっている」というだけで、目で見る限り、隙間が開いているように見えないのです。

  ちなみに、ビードというのは、タイヤがホイールに嵌り込む部分で、中にワイヤーの輪が通っています。 チューブ・タイヤでは、空気を抜いただけで、簡単に外れるのですが、チューブレスだと、ビード部分がホイールに密着する事によって、空気を逃がさない構造なので、がっちり嵌り込んでおり、まず、それを外さないと、タイヤをホイールから外せないのです。 この、ビードを外す行為を、「ビードを落とす」と言い習わしているらしいです。

  やむなく、庭のプレハブと、ブロック塀の基礎の間に車輪を置き、ジャッキを咬ませて、タイヤを挟み込んでみました。 それでも外れないので、父の車を持って来て、車の重さでビードを落とそうと思ったのですが、何と、車の最低地上高が低過ぎて、タイヤを置くと、ジャッキを入れる隙間がありません。 これは、最初に思いついたアイデアで、ネットの質問掲示板でもこの方法を薦めている回答者がいましたが、とんだ机上の空論でした。 いや、車にもよるのか。 クロカン車なら、いけるのかもしれません。

  「ビード落としの段階で、バイク屋かスタンドに頼まなければならないのか」と思い、この時点にして、真っ青です。 「ビードだけ落として貰って、また、持って帰って来るというわけにはいかないだろうか・・・」などと、あれこれ想像するにつけ、気分は憂鬱になって行きます。 単にタイヤ交換ができればいいというわけではなく、これは、イベントであり、チャレンジでもあるので、諦める事、イコール、敗北を意味するのです。

  しおしおと、プレハブ横に戻り、ブロック塀側にボックス・レンチを挟んで、先端圧を高めたら、ようやく、片側の一箇所が落ちました。 ビードが落ちると、タイヤとホイールの間に隙間が開くので、はっきり分かります。 広い所に出して、手でタイヤの横腹を押すと、簡単に、一周全て落ちました。

  タイヤを引っ繰り返して、逆側も同じようにしましたが、今度はなかなか落ちません。 何度かやり直して、ぎゅうとこら押し潰したら、明らかにビードがリムの底の方まで下がり、ようやく落ちました。 なぜか、先端圧が高いボックス・レンチ側よりも、ジャッキの底面が当っている方が落ちます。 そういえば、専用器具であるビード・ブレーカーも、落とす方は、横に広い部品がついています。 ある程度、面積が広い物で押した方が、外れ易いのでしょう。 まあ、とにかく、落ちてくれたのは、めでたいです。

  タイヤを外すのが、また一苦労。 昨晩、食品トレイのスチロールで作ったキズ防止カバーは、一瞬で割れてしまい、代わりにビニール・テープやクラフト・テープを貼ったのですが、これもすぐ破れました。 話にならぬ。 やむなく、キズ覚悟で、どんどん進めます。 片側外すだけでも、大いに手こずったのですが、もう片側もなかなか外れず、ほとほと、往生しました。 ホイールはキズだらけ。 20分くらいで、何とか、タイヤは外れましたけど。

  休むのももどかしく、すぐに、新しいタイヤを嵌めに掛かります。 これも、両側とも、えらい苦労しました。 ビードが入る部分には、極力、キズをつけないようにしたかったのですが、最後には、そんな事は言っていられなくなり、力任せに押し込みました。 全部入れた後で、タイヤの黄色マークを合わせ忘れた事に気付き、愕然! しかも、角度もあろうに、180度ズレています。 一番遠いではないか。

  黄色マークは、タイヤの最も軽い所で、それをバルブの位置に合わせる事で、重さのバランスを取るのです。 何とか、直さねば・・・。 タイヤが着いた状態で、ホイールを回して行くのですが、ビードがホイールに部分的に嵌ってしまって、なかなか回らず、 またまた往生しました。 腕が折れるのと、肩が抜けるのと、どっちが先かと思うほど、力を使って、ようやく合わせました。

  とりあえず、自分でできるのはここまでです。 ビードをホイールに嵌め込むためには、内側から圧力を掛けるしかなく、エア・コンプレッサーが必要なので、ガソリン・スタンドへ持って行かなければならないのです。 ある意味、これが、チューブレス・タイヤを自分で交換する際の最大の難関と言えるかも知れません。 家じゃできませんから。

  ちなみに、この、ビードを嵌める行為の事を、「ビードを入れる」と言い習わしているようなのですが、面白い事に、同じ行為を、「ビードを出す」と表現している人もあり、「入れる」と「出す」が、同じ意味で使われている、珍しいケースとなっています。 問題の原因は、タイヤの形状が複雑な事にあり、ビードは、確かに、「入れる」ものなのですが、入れる方向がタイヤの外側に向いているので、「出す」と言っても、間違いではないのです。 しかし、これでは、混乱する人も多い事でしょう。 特に、「ビードを出す」という言い方を、「ビードを落とす」の意味に取ってしまう人は、かなり、いると思われます。

  話を戻します。 エア・コンプレッサーは、小さい物なら、1万円くらいで売っているらしいのですが、タンク容量が小さいと、ビードが入らないケースがあるらしく、そんな当てにならない物に、お金は掛けられません。 大体、しょっちゅう、タイヤ交換をする人ならともかく、私は、今後もバイクに乗り続けて、タイヤをマメに換えるとしても、3年に一度くらいしか使わないわけで、そんなに長く放置していたら、機械が壊れてしまいます。

  コンプレッサーの購入は問題外として、何とか、代用品を工夫して、家でビード入れができないものかと思い、「車のスペア・タイヤを持って来て、ホースでバイクのタイヤに繋ぎ、一気に空気を送り込めば、コンプレッサーと同じ効果が期待できるのではないか?」などとも考えていましたが、空気が漏れないようなホースを用意するには、また、お金が掛かってしまいそうなので、やめておきました。

  さて、そういう問題があるビード入れ作業なのですが、「タイヤを嵌めている時点で、部分的とはいえ、自然にビードがタイヤに入ってしまうくらいならば、足踏みポンプでも、そのまま空気を入れられるのではないか?」と思えて来ました。 とりあえず、入れてみると、1kpaくらいまで入りました。 お、いけるのか? しかし、全周は入らず、一部分だけ落ちたままです。 やっぱり、駄目か。

  ここで、近所のガソリン・スタンドに電話。 前に、車の廃タイヤを引き取って貰った店です。 「バイクのタイヤでも、引き取ってくれますか」と訊くと、「いいですよ」との返事。 値段は、車と同じで、一本、315円。 そのついでに、エア・コンプレッサーを借りようという算段です。 この時点で、11時ちょい過ぎ。

  と、その時、ふと思い出しました。 新品タイヤに付いていた注意書きに、「ビードを入れる際の空気圧は、4kpaまで」とあったのです。 足踏みポンプで、1kpaまで入ったのなら、そのまま、4kpaまで入れれば、ビードが入るのではありますまいか? とりあえず、試してからでも遅くはないと思い、やってみました。 すると、どうでしょう、2kpaまで入れたら、「ビン!」という音がして、片側が入ったではありませんか! 更に、しばらく入れ続けると、また、「ビン!」という音がして、もう片側も入りました。 これは嬉しい! お金を取られないかビクビクしながら、スタンドで頼まなくても、よくなったのです。

  空気が入り易いように、バルブに虫を入れてなかったので、一旦、空気を抜いたのですが、空状態でも、ビードは、しっかり嵌っています。 これなら、OK。 バルブに虫を入れて、空気を入れ直しました。 この時点で、11時半。 このまま、しばらく置いて、空気が抜けないか、様子を見る事にします。 その間に、黒の塗料で、キズついたホイールを修復しました。

  ここで、昼飯。 30分後、確認しましたが、空気は抜けていません。 よしよし。 後輪を車体に取り付けます。 後輪は、前輪と違って、チェーンを掛けなければならないものの、タイヤ交換の難儀に比べたら、車輪の組みつけなんぞ、遊びのようなものです。

  古タイヤを車に積んで、ガソリン・スタンドへ。 年末の事とて、かなり、混んでました。 二本で、630円。 もちろん、こちらが払います。 店員が、領収書を切ってくるといって、建屋に入ったのですが、なかなか出て来ません。 時間が掛かった理由は、≪廃タイヤ引き取り≫の項目がレジに無かったかららしいです。 「洗車名目で切りましたが、いいですか」と訊くので、「いいです」と答えて、帰って来ました。 幹線道路も、大変混んでいました。

  帰ると、今度は、バイクの試し乗りに出ました。 混んでいる道を避け、前輪の時とは違うコースを、2キロくらい。 オンロード・タイヤに変わって、乗り心地がどうこうというより、エンジンがなかなか安定せず、最初の1キロくらいは、ガタガタ言ってました。 一旦、ディスクを外した、リア・ブレーキの利き具合も確認。 まあ、あんなもんでしょう。 ここで、2時20分くらい。 体力を著しく消耗したので、あとは、夕飯まで寝ていました。

  連休最大のイベントでしたが、タイヤ交換と、ビード入れ、古タイヤの処分まで、一気に済ませられたのは、よかったです。 それにしても、足踏みポンプで、ビードを嵌められたのは、大変な幸運でした。 ハウツー・サイトの記述でも、質問掲示板の回答でも、「手動のポンプでは、絶対無理!」と断言されていたので、まさか、入るとは思いませんでした。 あとは、何日か様子を見て、空気が抜けなければよいのですが。


  以上で、タイヤ交換の日記は終わりです。 前輪に比べると、後輪は、スムースに進んだと言えますな。 交換作業自体は、半日で終わってしまいましたから。 「チューブレスの交換は、チューブ・タイプより、簡単」という言葉を、ネット上で何度か目にしましたが、確かに、そう言えないでもなし。 ただし、ビード落としと、ビード入れは、専用の機械が無い場合、やはり、難しいと思います。 不可能ではないと言うだけで・・・。

  全て終わった後で思いついたんですが、車を重石にして、ビードを落とす場合、まず、車をジャッキで持ち上げてしまってから、タイヤを車体の下に置き、板切れなどを咬ませて、車を下ろしていけば、うまく行くかもしれません。 次の機会には試してみる事にしましょう。 いつになるか、分かりませんけど。

  本当は、車輪の重心を平均させるために、≪バランス取り≫という作業もしなければならないのですが、私の場合、時速70キロまでしか出さないので、黄色マークを合わせるだけにして、それ以上、細かい事はやりませんでした。 ハウツー・サイトの記述によると、黄色マークすら合わせなくても、別段、走りに変化は無いとの事。 私も、数回乗った限りでは、ブレのようなものは、全く感じていません。


  最後に、そもそも、なんでまた、「自力でタイヤ交換しよう」などと考えたかと言いますと、お金が惜しかったのもさる事ながら、他に、バイク屋に持って行きたくない事情があったのです。 過去ログに、≪激怒誘発店員≫という文章があるので、それを読んで貰えば、詳しい事が分かりますが、行きつけのバイク屋に、嫌な女店員がおり、そいつと接触したくなかったのです。

  「虚仮の一念、岩をも通す」と言うと、些か用法違いの気がありますが、その女の顔を見るのが、我慢できないほど嫌だったため、「どうにかして、バイク屋に行かずに、タイヤ交換の危機を乗り越えられないか」と、知恵を絞り、粉骨砕身したわけですな。 「そうまで嫌がる女店員というのは、どんな奴なのか、一度見てみたい」などとは、ゆめゆめ思ってはいけません。 二言三言、言葉を交わしただけでも、心的外傷ストレスを被るのは避けられませんから。

  でも、結果的には、自分で交換したお蔭で、お金は、半額以下で済みました。 工具の新規購入は一つも無かったから、タイヤ代と代引き手数料だけで、合計13185円しか使いませんでした。 バイク屋に頼めば、工賃込みで、28000円ですから、この差は大きいです。 しかも、勤め先の福利サービスに、「タイヤ代補助」という項目があり、領収書を提出すれば、半額補助して貰えるので、実際に使った金額は、6500円程度という事になります。 おいし過ぎか。

  もし、また、同じ事をやる機会があったら、ホイールに当てる、≪キズ防止カバー≫だけは、買ってみようと思います。 高くても、500円くらいですから。 他に、今回の経験から導き出せる教訓はと言うと、ビード・クリームは、ハンド・ソープで、完全に代用できます。 虫回しは、絶対必要。 350円くらいです。

  タイヤ・レバーは、25センチくらいの物が一本あれば、後は自転車用の短いのでも何とかなります。 ただし、長いのが二本あれば、もっとやり易くなるのは確か。 同じタイヤ・レバーでも、丸棒タイプと、板タイプの二種類がありますが、丸棒の方が、隙間に突っ込んだ状態のまま、くるっと回して、ヘラ部分の向きを変える事ができるので、便利です。 どちらも、500円くらいです。 車を持っている場合、車載工具に入っていないか、調べてみる価値あり。