心気症
≪一病息災理論≫というのがあります。 人間の体は、完全に健康な状態というのは、ほとんど無く、常に必ず、どこかに悪い所がある。 逆に考えれば、一ヵ所、悪い所をキープしていれば、他の病気に罹らなくて済む。 というもの。
科学的根拠は無いのですが、この理論を聞くと、「それはある!」と共感してくれる人が多いのではないかと思います。 ほんっとに、「完全に健康」という時期は無いのですよ。 どこかしら、おかしい。
頭痛がしたり、吐き気がしたり、胃が締め付けられたり、腰や膝が痛かったり、口内炎がリレー式に出来たり、怪我がいつまでも治らなかったり、皮膚に変な出来物が出来たり・・・、何かしら、病気・怪我が付き纏うのです。
本当の病気なら、病院へ行けば、大抵は治るのですが、体が勝手に、病気の症状だけを作り出している場合、通院しているのに、いつまでたっても、症状が改善しなかったり、他の病院へ追っ払われてしまったりと、厄介な事になって行きます。
そういう症状の事を、≪心気症≫と言いますが、この名称は、的を射ていないところがあります。 「心」と「気」が並ぶと、当人が自分の意思で病気を作り出しているようなイメージがありますが、それでは、まるで、仮病のようではありませんか。 違うんですよ、仮病じゃないんですよ。 症状は、本当にあるのです。 当人は、マジ、困っているのです。 仮病だったら、どれだけ、気が楽か・・・。
当人の意思と関係なく、体が勝手に病気・怪我の症状を作り出してしまうから、困るのです。 それも、本当の病気・怪我をしていない時に、出て来る傾向が強い。 どうやら、当人の意思に関係なく、体が独自に、一病息災理論を実践しているような気配があります。 「常に、どこか、悪くさせといてやれ」という感じで・・・。
私の場合、心気症に最初に見舞われたのは、高校生の時でした。 その年代には、よくあると思いますが、足の付け根の内側に、皮膚の爛れのようなものが出来たのです。 あれにゃあ、参りましたね。 真っ先に疑ったのは、インキンですが、近所の泌尿器科の医院で調べてもらったら、違うとの事。 ほっとはしましたが、それで治るわけではありませんでした。
その時の診断は、「陰嚢湿疹」でしたが、別に、陰嚢の方は、何ともなっていなかったので、「ちょっと、違うんじゃないの?」と思いつつも、貰った薬を塗っていました。 だけど、結局、薬では治らず、あれこれ考えた末、通学に使っていた自転車のスポーツ・サドルが股に当たっているのではないかと思い当たり、サドルをミニ・サイクルの物に換えたら、あっという間に治りました。
こう書くと、「サドルのせいだったんだろう」と思うでしょうが、今にして思うと、違うんですよ。 通学時間なんて、行き帰り合わせても、日当たり一時間にもならないのであって、その程度の乗車で、皮膚の爛れなんて出るはずがないのです。 それでなくても、私は、釈迦力になって漕ぐ方ではなかったのですから。 あれは、心気症だったに違いありません。
その頃、クラスの中に、自分が性病になった事を自慢して回る、糞馬鹿な不良がおり、私を含めて、真面目な生徒は、「なんで、こんな奴らが、学校に来ているんだ?」と震え上がっていましたが、そいつらと接触して、性病をうつされるのではないかと恐れるあまり、そんな症状が出たのではないかと思います。 それにしても、ひでー学校だったなあ。
次に襲われたのが、水虫症状です。 これは、家の中に元凶がいました。 母が調理師をやっていたのですが、長靴を履きっ放しの仕事なので、水虫になり、一時期、通院して、薬を塗っていたのです。 これも、恐ろしかったねえ。 なにせ、家の中で、風呂場のマットや、トイレのスリッパなどを共用しているのですから、うつる可能性、極めて濃厚。
実際には、母は、症状が出て、すぐに病院に行き、処方薬を使って、半年くらいで治してしまったので、うつる事はなかったのですが、心気症に、そんな理屈は通用しません。 感染を恐れるあまり、靴下を履きっぱなしで夏冬過ごしていましたが、そんな事をしていれば、逆に、衛生上宜しくないのであって、もろに水虫の症状が出ました。
それがきっかけで、感染症全般に対する恐怖心が増幅して、病的潔癖症になり、そのせいで、他人との接触を極度に恐れるようになって、高校卒業後、三年間もひきこもりなってしまうのですが、それはまた、別の話。
水虫の市販薬を、何年かつけていましたが、ちっとも良くならなかったのが、ある時、「薬を塗っているのに、全く症状が変わらないのはおかしいではないか。 もしや、これは、気のせいなのでは?」と思い始め、薬をやめ、靴下も履かないようにして、ケセラセラで暮らしていたら、あっさり、治ってしまいました。 ものの見事に、心気症だったんですねえ。
その後、働き始めてからすぐに、ギックリ腰をやり、10年くらいは、腰を気遣って暮らしていたのですが、その間は、皮膚疾患は、全く出ませんでした。 一病息災理論に則り、一つしかない席を、腰痛が占めていたので、心気症が入り込む余地が無かったのでしょう。
ところが、仕事がだんだん、楽なものに変わって来ると、また、水虫症状が出て来ます。 腰痛をうまくコントロールできるようになったので、一病席が空きやがったんですな。 10年のブランクは大きく、「気のせいだ」と信じる事ができずに、それから、7・8年もの間、市販の水虫薬、≪ブテナロック≫を塗り続ける事になります。 しかし、心気症ですから、治るわけがありません。
で、とうとう、腹を括り、皮膚科に行ってみる事にしました。 皮膚科医院という場所自体が、感染源のような感じがして、それまでは近づかなかったのですが、背に腹は代えられません。 行ってみると、スリッパは無く、靴のまま診察室に入れて、思っていたよりも、ずっと衛生的な所でした。
患部の皮膚片を採って、顕微鏡で見た先生が、「こりゃ、水虫じゃないな」と言った時には、ぱっと目の前が明るくなりました。 続いて、「とりあえず、湿疹の薬を出しますから、様子を見てください」と言われました。 むむ、また、湿疹か。
で、出された軟膏を塗り始めると、7・8年も私を苦しめていた傷口が、一日で塞がり、二日後には、健康な皮膚と見分けがつかなくなってしまったから、たまげるじゃありませんか。 信じられませんよ、あーた。 何年間も真っ赤に開いていた傷口が、消えてなくなってしまったんですよ。
「湿疹だったんだから、湿疹の薬が効くのは当たり前だろう」と思いますか? いやいやいや、そもそも、腰痛に苦しんでいた時には、湿疹なんて全く出なかったのに、腰痛が治った途端、突然、湿疹になるはずがありません。 効いたのは、薬ではなく、「水虫ではない」という、先生の言葉だったのです。 心気症、恐るべし。 たかが気のせいで、あんなにはっきりした傷口が出来てしまうんですねえ。
一週間後、再び医院へ行き、先生に見せると、「ほほう、極端だねえ」と、楽しそうに笑っていました。 「でも、また、出来るかも知れないよ」と、意味深に付け加えたのは、心気症だと見破ったからではないかと思います。
それ以来、四年くらい、皮膚疾患とは無縁の生活をしていたんですが、このほど、まーた、変なのが出て来ました。 しかも、今までで、最も厄介な場所、陰嚢にです。 先週の土曜の夜、なんだか、ピリピリ痛くなったので、最初は、「毛が引っかかったかな」くらいに思っていたんですが、一晩寝ても治りません。 で、鏡で見てみると、表面に擦り傷のような傷口が出来ています。
これにゃあ、びっくりだね。 どーして、こんな所に傷口が出来るのよ? ぶつけたら、ピリピリどころか、その時点で、悶絶しているでしょうに。 尖った所に擦ったような記憶も無し。 というか、傷がつくほど、擦れたら、その時点で、飛び上がってるでしょうに。
で、土日は、ピリピリくらいで済んだのですが、月曜になり、仕事が始まったら、激痛に苦しめられる事になりました。 その一週間前から仕事の内容が変わって、踏み段を昇降する作業が増えたのですが、その昇る時に、陰嚢が、トランクスの股の縫い合わせ部分に擦れるのです。 恐らく、傷が出来た原因も、これに違いありません。
一日に、250回くらい、傷口を布で擦られるわけで、治るどころか、悪くなる一方。 何とか、三日間ごまかして、年末年始の連休に持ち込みましたが、来年からも、仕事内容は変わりませんから、また痛い思いをするのは必定。 休みの内に、どうにかせにゃなりません。
最初は、擦過傷だと思っていたので、≪キシロ≫という殺菌軟膏を塗っていたのですが、悪くもならない代わりに、よくもなりませんでした。 そのキシロは、もう10年近く前に買った物だったので、使用期限が切れているせいかと思い、今度は、≪オロナイン≫を買って来ました。 176円。 安いな。
オロナインなら、名が通った薬だから、悪い事にはならないだろうと思ったのですが、これも、駄目でした。 むしろ、ヒリヒリして、悪くなってしまったような感さえあります。 で、注意書きを読んだら、「湿疹には、使用しないで下さい」とあります。 なに、湿疹?
その時まで、全く考えていなかったのですが、もしかしたら、擦り傷ではなく、過去、何度も私を苦しめて来た、あの湿疹なのではありますまいか? 正確に言うと、心気症から来る湿疹症状です。
擦り傷だとすると、奇妙な点もあるのです。 私は、今年の1月から3月までの三ヶ月間も、同じように、踏み段を昇降する仕事をしていたのですが、その時は、そんな傷はできませんでした。 三ヶ月やっても出来なかった傷が、たった一週間で出来るというのは、不自然この上無い。
一方、心気症から来る湿疹なら、原因なんて関係ありませんから、充分にありえる事です。 そこで、以前、皮膚科で貰って、足指の傷口を二日で治した、あの湿疹軟膏をつけてみようと思ったのですが、その≪アンテベート≫という薬は、医療機関でしか処方してもらえない薬で、≪劇≫という文字まで入っており、陰嚢に使っていいものかどうか、ためらわれました。
調べてみると、湿疹の薬には、ステロイド系と非ステロイド系など、強弱の違いがあり、「陰嚢は皮膚が薄くて、薬を吸収し過ぎるので、副作用を避けるために、ステロイド系は使わない方が良い」などと、怖い事が書いてあります。 ≪劇≫を使わんで良かった。
そこで、なるべく肌に優しいタイプの湿疹軟膏を買って来て、使ってみたところ、これまた、一日で、傷口が塞がり始めました。 あらあら、やっぱり、湿疹だったんですねえ。 これが本当の、「陰嚢湿疹」なんでしょうかねえ。 部位だけは、合っている。
もしかしたら、かつて、足指に出来ていた傷口も、市販の湿疹薬で、治ったのかもしれませんな。 足指に傷口が出来た時、殺菌軟膏と水虫薬は塗っていましたが、市販の湿疹薬は試した事がありませんでしたから。
市販の湿疹薬というのは、普通、「かゆみ・かぶれ・虫さされ」などが、効能書きの前の方に並ぶので、湿疹の薬という印象が薄い上、痒みを止めるための成分のせいで、ヒリヒリするイメージがあるので、「敏感な患部に塗るなど、とんでもない」という感じがするのです。 しかし、効くものは、やはり、効くわけですな。
治る目処がついたのは嬉しいのですが、もう、湿疹にはうんざりという感じです。 しかも、心気症の湿疹には。 いいえ、心気症に決まっています。 他に考えられんのです。 原因は、定かには分かりませんが、今現在、他に悪い所は無いので、一病息災理論に則って、発病した可能性が高いです。
心気症の旦那よー。 もーえーがな。 勘弁してくんなまし。 あんたにゃ、30年も苦しめられてきたけれど、それで、私の人生が良くなったという事はないじゃありませんか。 あんたも私の一部なんでしょう。 なんで、自分自身を苦しめるような真似を、わざとするんですか? いいじゃないですか、健康な時は、健康に暮らさせてくれれば。 もういい歳ですから、羽目を外したりしませんよ。
科学的根拠は無いのですが、この理論を聞くと、「それはある!」と共感してくれる人が多いのではないかと思います。 ほんっとに、「完全に健康」という時期は無いのですよ。 どこかしら、おかしい。
頭痛がしたり、吐き気がしたり、胃が締め付けられたり、腰や膝が痛かったり、口内炎がリレー式に出来たり、怪我がいつまでも治らなかったり、皮膚に変な出来物が出来たり・・・、何かしら、病気・怪我が付き纏うのです。
本当の病気なら、病院へ行けば、大抵は治るのですが、体が勝手に、病気の症状だけを作り出している場合、通院しているのに、いつまでたっても、症状が改善しなかったり、他の病院へ追っ払われてしまったりと、厄介な事になって行きます。
そういう症状の事を、≪心気症≫と言いますが、この名称は、的を射ていないところがあります。 「心」と「気」が並ぶと、当人が自分の意思で病気を作り出しているようなイメージがありますが、それでは、まるで、仮病のようではありませんか。 違うんですよ、仮病じゃないんですよ。 症状は、本当にあるのです。 当人は、マジ、困っているのです。 仮病だったら、どれだけ、気が楽か・・・。
当人の意思と関係なく、体が勝手に病気・怪我の症状を作り出してしまうから、困るのです。 それも、本当の病気・怪我をしていない時に、出て来る傾向が強い。 どうやら、当人の意思に関係なく、体が独自に、一病息災理論を実践しているような気配があります。 「常に、どこか、悪くさせといてやれ」という感じで・・・。
私の場合、心気症に最初に見舞われたのは、高校生の時でした。 その年代には、よくあると思いますが、足の付け根の内側に、皮膚の爛れのようなものが出来たのです。 あれにゃあ、参りましたね。 真っ先に疑ったのは、インキンですが、近所の泌尿器科の医院で調べてもらったら、違うとの事。 ほっとはしましたが、それで治るわけではありませんでした。
その時の診断は、「陰嚢湿疹」でしたが、別に、陰嚢の方は、何ともなっていなかったので、「ちょっと、違うんじゃないの?」と思いつつも、貰った薬を塗っていました。 だけど、結局、薬では治らず、あれこれ考えた末、通学に使っていた自転車のスポーツ・サドルが股に当たっているのではないかと思い当たり、サドルをミニ・サイクルの物に換えたら、あっという間に治りました。
こう書くと、「サドルのせいだったんだろう」と思うでしょうが、今にして思うと、違うんですよ。 通学時間なんて、行き帰り合わせても、日当たり一時間にもならないのであって、その程度の乗車で、皮膚の爛れなんて出るはずがないのです。 それでなくても、私は、釈迦力になって漕ぐ方ではなかったのですから。 あれは、心気症だったに違いありません。
その頃、クラスの中に、自分が性病になった事を自慢して回る、糞馬鹿な不良がおり、私を含めて、真面目な生徒は、「なんで、こんな奴らが、学校に来ているんだ?」と震え上がっていましたが、そいつらと接触して、性病をうつされるのではないかと恐れるあまり、そんな症状が出たのではないかと思います。 それにしても、ひでー学校だったなあ。
次に襲われたのが、水虫症状です。 これは、家の中に元凶がいました。 母が調理師をやっていたのですが、長靴を履きっ放しの仕事なので、水虫になり、一時期、通院して、薬を塗っていたのです。 これも、恐ろしかったねえ。 なにせ、家の中で、風呂場のマットや、トイレのスリッパなどを共用しているのですから、うつる可能性、極めて濃厚。
実際には、母は、症状が出て、すぐに病院に行き、処方薬を使って、半年くらいで治してしまったので、うつる事はなかったのですが、心気症に、そんな理屈は通用しません。 感染を恐れるあまり、靴下を履きっぱなしで夏冬過ごしていましたが、そんな事をしていれば、逆に、衛生上宜しくないのであって、もろに水虫の症状が出ました。
それがきっかけで、感染症全般に対する恐怖心が増幅して、病的潔癖症になり、そのせいで、他人との接触を極度に恐れるようになって、高校卒業後、三年間もひきこもりなってしまうのですが、それはまた、別の話。
水虫の市販薬を、何年かつけていましたが、ちっとも良くならなかったのが、ある時、「薬を塗っているのに、全く症状が変わらないのはおかしいではないか。 もしや、これは、気のせいなのでは?」と思い始め、薬をやめ、靴下も履かないようにして、ケセラセラで暮らしていたら、あっさり、治ってしまいました。 ものの見事に、心気症だったんですねえ。
その後、働き始めてからすぐに、ギックリ腰をやり、10年くらいは、腰を気遣って暮らしていたのですが、その間は、皮膚疾患は、全く出ませんでした。 一病息災理論に則り、一つしかない席を、腰痛が占めていたので、心気症が入り込む余地が無かったのでしょう。
ところが、仕事がだんだん、楽なものに変わって来ると、また、水虫症状が出て来ます。 腰痛をうまくコントロールできるようになったので、一病席が空きやがったんですな。 10年のブランクは大きく、「気のせいだ」と信じる事ができずに、それから、7・8年もの間、市販の水虫薬、≪ブテナロック≫を塗り続ける事になります。 しかし、心気症ですから、治るわけがありません。
で、とうとう、腹を括り、皮膚科に行ってみる事にしました。 皮膚科医院という場所自体が、感染源のような感じがして、それまでは近づかなかったのですが、背に腹は代えられません。 行ってみると、スリッパは無く、靴のまま診察室に入れて、思っていたよりも、ずっと衛生的な所でした。
患部の皮膚片を採って、顕微鏡で見た先生が、「こりゃ、水虫じゃないな」と言った時には、ぱっと目の前が明るくなりました。 続いて、「とりあえず、湿疹の薬を出しますから、様子を見てください」と言われました。 むむ、また、湿疹か。
で、出された軟膏を塗り始めると、7・8年も私を苦しめていた傷口が、一日で塞がり、二日後には、健康な皮膚と見分けがつかなくなってしまったから、たまげるじゃありませんか。 信じられませんよ、あーた。 何年間も真っ赤に開いていた傷口が、消えてなくなってしまったんですよ。
「湿疹だったんだから、湿疹の薬が効くのは当たり前だろう」と思いますか? いやいやいや、そもそも、腰痛に苦しんでいた時には、湿疹なんて全く出なかったのに、腰痛が治った途端、突然、湿疹になるはずがありません。 効いたのは、薬ではなく、「水虫ではない」という、先生の言葉だったのです。 心気症、恐るべし。 たかが気のせいで、あんなにはっきりした傷口が出来てしまうんですねえ。
一週間後、再び医院へ行き、先生に見せると、「ほほう、極端だねえ」と、楽しそうに笑っていました。 「でも、また、出来るかも知れないよ」と、意味深に付け加えたのは、心気症だと見破ったからではないかと思います。
それ以来、四年くらい、皮膚疾患とは無縁の生活をしていたんですが、このほど、まーた、変なのが出て来ました。 しかも、今までで、最も厄介な場所、陰嚢にです。 先週の土曜の夜、なんだか、ピリピリ痛くなったので、最初は、「毛が引っかかったかな」くらいに思っていたんですが、一晩寝ても治りません。 で、鏡で見てみると、表面に擦り傷のような傷口が出来ています。
これにゃあ、びっくりだね。 どーして、こんな所に傷口が出来るのよ? ぶつけたら、ピリピリどころか、その時点で、悶絶しているでしょうに。 尖った所に擦ったような記憶も無し。 というか、傷がつくほど、擦れたら、その時点で、飛び上がってるでしょうに。
で、土日は、ピリピリくらいで済んだのですが、月曜になり、仕事が始まったら、激痛に苦しめられる事になりました。 その一週間前から仕事の内容が変わって、踏み段を昇降する作業が増えたのですが、その昇る時に、陰嚢が、トランクスの股の縫い合わせ部分に擦れるのです。 恐らく、傷が出来た原因も、これに違いありません。
一日に、250回くらい、傷口を布で擦られるわけで、治るどころか、悪くなる一方。 何とか、三日間ごまかして、年末年始の連休に持ち込みましたが、来年からも、仕事内容は変わりませんから、また痛い思いをするのは必定。 休みの内に、どうにかせにゃなりません。
最初は、擦過傷だと思っていたので、≪キシロ≫という殺菌軟膏を塗っていたのですが、悪くもならない代わりに、よくもなりませんでした。 そのキシロは、もう10年近く前に買った物だったので、使用期限が切れているせいかと思い、今度は、≪オロナイン≫を買って来ました。 176円。 安いな。
オロナインなら、名が通った薬だから、悪い事にはならないだろうと思ったのですが、これも、駄目でした。 むしろ、ヒリヒリして、悪くなってしまったような感さえあります。 で、注意書きを読んだら、「湿疹には、使用しないで下さい」とあります。 なに、湿疹?
その時まで、全く考えていなかったのですが、もしかしたら、擦り傷ではなく、過去、何度も私を苦しめて来た、あの湿疹なのではありますまいか? 正確に言うと、心気症から来る湿疹症状です。
擦り傷だとすると、奇妙な点もあるのです。 私は、今年の1月から3月までの三ヶ月間も、同じように、踏み段を昇降する仕事をしていたのですが、その時は、そんな傷はできませんでした。 三ヶ月やっても出来なかった傷が、たった一週間で出来るというのは、不自然この上無い。
一方、心気症から来る湿疹なら、原因なんて関係ありませんから、充分にありえる事です。 そこで、以前、皮膚科で貰って、足指の傷口を二日で治した、あの湿疹軟膏をつけてみようと思ったのですが、その≪アンテベート≫という薬は、医療機関でしか処方してもらえない薬で、≪劇≫という文字まで入っており、陰嚢に使っていいものかどうか、ためらわれました。
調べてみると、湿疹の薬には、ステロイド系と非ステロイド系など、強弱の違いがあり、「陰嚢は皮膚が薄くて、薬を吸収し過ぎるので、副作用を避けるために、ステロイド系は使わない方が良い」などと、怖い事が書いてあります。 ≪劇≫を使わんで良かった。
そこで、なるべく肌に優しいタイプの湿疹軟膏を買って来て、使ってみたところ、これまた、一日で、傷口が塞がり始めました。 あらあら、やっぱり、湿疹だったんですねえ。 これが本当の、「陰嚢湿疹」なんでしょうかねえ。 部位だけは、合っている。
もしかしたら、かつて、足指に出来ていた傷口も、市販の湿疹薬で、治ったのかもしれませんな。 足指に傷口が出来た時、殺菌軟膏と水虫薬は塗っていましたが、市販の湿疹薬は試した事がありませんでしたから。
市販の湿疹薬というのは、普通、「かゆみ・かぶれ・虫さされ」などが、効能書きの前の方に並ぶので、湿疹の薬という印象が薄い上、痒みを止めるための成分のせいで、ヒリヒリするイメージがあるので、「敏感な患部に塗るなど、とんでもない」という感じがするのです。 しかし、効くものは、やはり、効くわけですな。
治る目処がついたのは嬉しいのですが、もう、湿疹にはうんざりという感じです。 しかも、心気症の湿疹には。 いいえ、心気症に決まっています。 他に考えられんのです。 原因は、定かには分かりませんが、今現在、他に悪い所は無いので、一病息災理論に則って、発病した可能性が高いです。
心気症の旦那よー。 もーえーがな。 勘弁してくんなまし。 あんたにゃ、30年も苦しめられてきたけれど、それで、私の人生が良くなったという事はないじゃありませんか。 あんたも私の一部なんでしょう。 なんで、自分自身を苦しめるような真似を、わざとするんですか? いいじゃないですか、健康な時は、健康に暮らさせてくれれば。 もういい歳ですから、羽目を外したりしませんよ。
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