2015/04/19

腰がグキッとね

  4月6日、月曜日の事ですが、腰を痛めました。 夕食後、自室で、ベッドに横になって、D-lifeの≪フィニアスとファーブ≫を見ていたのですが、終わった後、少し、うとうとして、7時頃に目覚め、起き上がったら、背中の右後ろの方が、やけに痛い。 しばらくは、気のせいかと思っていたのですが、机に向かい、椅子に座って、パソコン作業をする内に、だんだん、ひどくなり、次に立ち上がった時には、体を曲げられなくなってしまいました。 こうなると、もう、否定のしようもなく、完全に腰痛です。

  重い物を持ったわけではなく、自分の体を起こしただけで、腰痛になったというのが、すぐには信じられず、「腹筋を鍛えるのを怠っていたせいか」、「季節の変わり目のせいか」、「一度暖かくなったのに、雨で気温が下がったから、そのせいか」などと、いろいろと、原因を考えたのですが、腰痛というのは、別に、原因が分ったからと言って、すぐに治るというわけではないので、詮ない詮索は、やめる事にしました。

  私は、植木屋の見習いをしていた21歳か、22歳の時に、まだ、根が繋がっている木を、無理に引っこ抜こうとして、ギックリ腰をやり、以来、腰痛持ちになってしまいました。 腰痛持ちになった事がない人は、分からないと思いますが、他の病気と違い、治療で完治するというものではなく、一度、腰痛持ちになったら、一生、それと付き合わなければなりません。 いつも痛いというわけではありませんが、数年に一度くらい、「グキッ」と来て、短い時でも一週間、長いと一ヵ月以上、痛みが続く事があります。 症状は、人によって、バラバラ。

  痛くない時でも、常に、重い物を持たないように気をつけて暮らさなければならず、油断が許されません。 私は、勤めている間、ずっと、肉体労働をしていましたから、体が資本でして、どれだけ、神経を使った事か。 時折、腰痛に理解のない上司の下につく事があり、そういう時に、「グキッ」と来ると、最悪です。 「このまま働いていると、二三日で、動けなくなってしまうから、明日一日だけ、休ませてください」と言っても、信用しねーのよ。 自分がやった事がないもんだから、腰痛の基礎知識が頭に入っていなくて、「スポーツ選手は、手術して治してるよな」などと、頓珍漢な事を言います。

  だからよー、腰痛というのは、人によって違うんだよ。 体を休めれば、治る事が分かっているのに、手術しに行く馬鹿がいるか? ・・・いや、そういえば、一人、そういう人がいましたよ。 グループ企業への応援先で、腰痛になって、潰れてしまい、「面目が立たないから」と言って、手術を受けたものの、結局、駄目で、帰って来たという人が。 馬鹿だねー。 手術で治る症状と、治らない症状があるのに、なんでも、切りゃいいってもんじゃないでしょうに。 結局、その人、体が治らず、現場から離れて、警備係に異動になってしまいましたが。

  そうそう、腰痛じゃないですけど、病気絡みで、変な事を言う上司がいましたよ。 風邪を引いて、熱が出たので、休ませてくれと電話したら、向こうで、怒ってんのよ。 言う事が凄い。 「なんで、風邪を引くんだ!?」 どうやら、自分が風邪を引かない体質らしく、他の人間も、みんなそうだと思っているらしいのです。 こっちは、目を白黒させてしまいましたが、言い争う気力もなかったので、「はあ。 仕事の後、汗を掻いたのを、そのままにしておいて、体が冷えたのが原因だと思います」と答えたら、筋が通った答えだと思ったのか、「そうか」で、終わりになりました。 こういう相手に、「ウイルス性の風邪は、うつれば、誰でも引く」などと言っても、通用しません。 自分が引かない事を説明できないからです。

  もっと滑稽なケースもありました。 私が風邪を引いて、一日休んだ後、まだ、治るには程遠いものの、仕事はできるだろうと思って出勤したら、その頃、新しい人に変わったばかりの、二段上の上司が、「休む時には、電話を入れろ」と、文句を言って来ました。 私は、休む前日に、一段上の上司に、「明日、休ませて欲しい」と言ってあったんですが、それが、上に伝わっていなかった模様。

  で、その件で、二段上の上司が、私の所へ、話をしに来たのですが、こちらは、まだ、風邪を引いているので、うつしてはまずいと思って、早く話を切り上げようとしていたら、その上司が言うには、「いやあ、大丈夫だ。 俺は、風邪引かないから」と、胸を張っていました。 ところが、翌日から、その人、鼻水ビービーになってしまったという次第。 当たり前だよ。 風邪っ引きと、面と向かって、何分も喋ってたんだから、うつらないわけがないだろうが。 「馬鹿は風邪を引かない」というのは、嘘か本当か分かりませんが、少なくとも、「風邪を引かない奴は、馬鹿な事を言う」というのは、真実のようです。

  かくのごとく、その病気になった事がない人間が、上司になると、この手の悶着が必ず起こります。 自分が経験がないもんだから、他人の苦しみが分からないのよ。 他人が訴える病状を全く信じておらず、腹の底で、「どうせ、怠けたいだけだろう」と思っているのは、まず疑いないところ。 実際には、怠けたいのは、早く出世して、肉体労働の現場から離れたいと思っている、そいつらなんですがね。


  それはさておき、腰痛に話を戻しますと、勤めている間にも、軽重合わせて、10回くらいは、「グキッ」と来たと思うのですが、腰痛だけで、何日も休んだというのは、一回だけで、残りは、休んでも、せいぜい一日くらいでした。 勤めていた期間の後半は、腰に負担がかかりにくい仕事をしていたから、大きな、「グキッ」は、なかったんですな。

  ところがだ。 今回の腰痛は、それらに比べると、重傷だったのです。 痛くなってから、三日間くらいは、まともに歩けなかったくらいですから。 一週間経っても、まだ、痛い。 もし、仕事をしている頃だったら、ゆうに診断書提出クラスの症状ですな。 ただ、起き上がっただけで、こんな大きなダメージを受けてしまうって、どうなってんのよ、私の体は? 毎日、ぐだらぐだらと、遊んでばかりいるから、筋肉が衰えきっているんでしょうか? 体操や、自転車での運動を続けていたんですがねえ・・・。


  別に、何の仕事をしているわけでもないので、治るまで、寝ていればいいのですが、困ったのは、着替えです。 上半身は、問題ないですが、下半身が困る。 腰が曲げられないので、ズボン、パンツ、靴下が、穿けないのです。 まだ春先である上に、雨続きで、気温が低い事もあり、汗を掻かないから、風呂は三日間入らず、着の身着のままで寝ていたんですが、さすがに、四日目には、耐えられなくなりました。 だけど、シャワーだけ浴びるにしても、下半身の衣類を、一度脱いでしまったら、もう穿けません。 さあ、どうする?

  入院経験がありますから、すぐに思いついたのは、前合わせの入院服です。 ネットで手に入るとは思ったものの、取り寄せている時間がない。 そこで、母に、浴衣があるか訊いたら、あるとの事。 客用の浴衣で、我が家には、もう、20年近く、泊り客が来ていませんから、ずっと、衣装ケースの奥で眠っていた物でした。 服はそれでいいとして、下着が問題。 トランクスは、とても穿けません。

  で、思いついて、褌を作る事にしました。 材料はタオルと、手芸用の平らな紐です。 タオルの片方の端を、2センチくらい折り返して縫い、そこへ、紐を通します。 紐の長さは、ウエスト+蝶々結びができる程度のゆとりを見ておきます。 タオルを後ろに回し、前で紐を結んで、タオルを後ろから前へ、股を通して持ち上げ、腹の所の紐に潜らせて、前に垂らします。 越中褌と同じ方式ですな。 

  風呂場でシャワーを浴びた後、着けてみたところ、長さが少し足りない様子。 紐を通す為に、片側を折り返したので、その分、短くなってしまったんですな。 で、着替え用の、もう一本の方は、タオルの端に、紐を直接縫いつける事にしました。 いや、私は、最初から、そうしたかったんですよ。 だけど、縫うのが億劫で、母に頼んだら、私の説明が通じずに、折り返してしまったんですな。 確かに、折り返して紐を通すようにしてあれば、洗濯の時に、紐だけ外せるから、干す分には、体裁がいいんですが、そのせいで、実用性を損なってしまうのは、問題でしょう。

  なるほど、越中褌というのは、理由もなく、ああいう形をしているわけではなかったわけだ。 本体に、ある程度、長さが必要なのは、前に垂らす部分が短過ぎると、中へ引っ張られて、外れてしまうからでしょう。 だけど、それは、激しい動きをする場合の話であって、寝ていたり、家の中を歩いている程度なら、前垂れ部分が短くても、外れない事が、後に分かりました。

  これで、下着の問題は、解決しましたが、浴衣は、失敗でした。 浴衣で寝た事がある人なら、分かると思いますが、布団の中に入ると、脚の方が、くしゃくしゃになってしまって、体に着いていてくれません。 夏なら、その方が、涼しくていいのですが、春先・雨続きの低気温では、寒くて寒くて、とても耐えられません。 特に、ふくらはぎが、氷でも当てられたように冷たい。 靴下を穿かなかったのも失敗で、全く体温が維持できない始末。

  やむを得ず、無理やり、パジャマのズボンを穿きました。 これが大変だった。 両手でズボンを持って、足を入れるだけなんですが、腰の曲げが浅いと、手は下がらない、足は上がらないで、ズボンの中に入らないんですな。 不様、極まりない。 やむなく、片手で持って、テキトーに足を突っ込むのですが、反対側に入ってしまったり、途中で引っかかって、倒れそうになったり、七転八倒の悪戦苦闘。 ただ、ズボンを穿くためだけに、こんなに苦労したのは、初めてです。 それでも、何とか、穿けてよかった。

  靴下は、どうにもならないので、母に頼んで、穿かせてもらいました。 この歳になって、母親に靴下を穿かせてもらう事になるとは、情けない限りです。 でも、家族がいて、良かった。 独り暮らしだったら、どうなっていた事か。 歳の順に死んで行くとすれば、いずれ、私は独り暮らしになるわけですが、そうなる前に、いろいろと対策を考えておいた方が良さそうです。

  手で持つからいけないのであって、ズボンや靴下の口を開いた状態で固定する器具を作ればいいのかも知れません。 たとえば、四本足の椅子を引っ繰り返したような形で、椅子の足の尖端部分に、トランクスやズボンの口を折り返して引っかけ、自分の足を突っ込んでから、持ち上げれば、楽に穿けそうではありませんか。 割と簡単に作れそうな気もしますが、今の健康状態では、とても、無理。 とにかく、今回の腰痛が治るのを待ちます。


  腰本体の治療ですが、今までの経験から、湿布のような物は、気休めに過ぎないと思っていたので、使い捨てカイロを、専用ベルトに入れ、それを腰に巻いていました。 温めると、血行がよくなるのは確かなようで、それのおかげで、だいぶ良くなったのですが、完治には程遠い。 寝たり起きたりの日々が続きます。 寝過ぎていると、筋肉が衰えて、腰痛がひどくなるというケースもあり、時折、空いている部屋の中を歩き回るのですが、歩き過ぎると、また痛めるから、両者の按配が難しいです。

  ちなみに、腰痛に一番悪いのは、座る姿勢でして、これは、すぐに限界が来ます。 今回の私の場合、食事は、椅子に座って食べていましたが、毎回、10分くらいで、ギブ・アップしました。 身近で、腰痛患者が出ると、「とにかく、座って休んでいて」などと、椅子を勧める人がいますが、それは、「もっと、苦しめ」と言っているのと同じなので、ご注意あれ。 


  その後、微々たる進展ではあるものの、少しずつ回復し、腰を痛めてから、8日後、4月14日、火曜日になって、ようやく、自力で靴下を穿けるようになりました。 口の所だけ、両手で開いて、足を入れ、あとは、片手で引っ張り上げるという、不様な方式ですけど。 トランクスは、まだ無理で、相変わらず、タオル褌ですが、靴下さえ穿ければ、自分一人で着替えができるわけで、家族に迷惑をかけずに済みます。 やれやれ、ようやく、回復の目途が立ったか。 翌日の15日、水曜には、自転車に乗れるまでになり、まだ、痛みは残っているものの、ほぼ、普通の生活に戻りました。

  一番ひどかった頃には、寝返りも打てない有様だったので、自転車に再び乗れるようになろうとは、まるで思えませんでした。 体が動かせないと、気分が落ち込むもので、「もし、回復しなかったら、えらい事だ・・・。 親の面倒を見るどころか、こっちが要介護になってしまう。 いっそ、紐を使って、自分で首を絞めて、死んだ方がいいかもしれない」などという事まで考えました。 鬱病の入口的な発想ですな。 昔は、腰痛が長引いても、そんな気にはならなかったから、私の心が、弱くなったんでしょうねえ。 歳は取りたくないものです。

  今までの経験を振り返ると、私の場合、腰痛にはピークがあり、痛い状態が、延々と続くという事はなかったです。 痛くならないように、庇って暮らしていれば、次第に回復して行くものなんですな。 ただ、人によっては、骨に神経が触っていたりして、ずっと痛みが続く人もいるとの事。 腰痛と一口に言っても、骨、軟骨、神経、筋肉と、いろんな部位のいろんな部品が絡んで来るので、人によって、原因は、バラバラなのです。

  「腰痛体操」というのがあり、病院で、それを教わって来た人が、他の人に、勧めたりしていますが、あれも良し悪しでして、普通、痛い最中に、体操などしたら、もっと痛くなってしまいます。 個々人の症状の違いには、常に留意しなければなりません。 もし、それが飲み薬だったら、自分の薬を、人に勧めたりしないでしょう? 腰痛体操も、同じ事です。



  この二週間というもの、ほとんど、雨で、たまに、ちらほらと晴れるだけ。 今にして思うと、やはり、今回の腰痛の最も大きな原因は、急激な気温の低下だという気がします。 3月の半ば頃に、「すっかり、春の陽気になった」と思って、掛け布団を一枚にしてしまっていたので、寒さのぶり返しに、対応できなかったのです。 働いていた頃は、早朝出勤があった関係で、4月の終わりくらいまで、冬のようなつもりで暮らしていたのに、今年は、一ヵ月以上早く、防寒態勢を解除してしまったわけですから、無茶といえば、無茶な事をしたものです。