2016/01/31

錆との戦い② 【酸劇編】

  旧母自のブレーキ・ワイヤーを新しい物に交換してから、他の部分のボロが目立つようになり、「少しでも、マシにならないか」と思って、錆取りを考え始めたのが命取り。 やりたい気持ちはあるものの、あまりにも、錆びている部分が多いせいで、技術的にも、意欲的にも、高い壁にぶつかり、難渋している次第。   とりあえず、1月初めに、やってみた事だけ、公開日記の方から、移植します。 いや、なにせ、壁に当たっているので、「何か、やった」というより、「ほとんど、手付かず」といった方がよい状態なのですが・・・。 とりあえず、今回は、酸での錆落としを試したところまで。




≪2016/01/01 (金)≫
  新年ですが、これといった感慨はなし。 どんどん、無為の陥穽に嵌まって行く、虚脱感があります。

  元日だというのに、というか、元日だからですが、屋外で、あまり、ガチャガチャ動き回るのも、近所迷惑かと思い、ほとんど、自室で寝ていました。 自転車の錆を溶かす為に、100円ショップで、サンポールを買って来ようかと思っていたのですが、元日から、サンポールを買いに行くのは、何となく、相応しくないような気がして、やめました。

  そもそも、自転車の錆をどうするかよりも、それ以外にやる事がないという、そちらの方が問題ですな。



≪2016/01/02 (土)≫
  午後、犬の寺へ墓参。 帰りに、100円ショップに寄り、自転車の錆を溶かす為の、「トイレ・クリーナー」を買って来ました。 サンポールの類似品です。 500ml。 本家のサンポールがいくらなのかは、知らずじまい。 ちなみに、トイレ用の洗剤なら、何でもいいというわけではなく、成分を確認して、酸性の物を選びました。 アルカリ性の物が、結構ありましたよ。 意外ですが、マジックリンも、アルカリ性のようです。


  今日は、買っただけ。 今朝、今年の方針として、「何か、やる事を思いついても、急いで片付けようとしない」というのを思いつき、早速、実行している次第。 勤めていた頃と違い、時間はいくらでもあるのですから。



≪2016/01/03 (日)≫
  昨日買って来た、サンポールの類似品、「トイレ・クリーナー」で、旧母自の錆落としに取りかかりました。 酸なので、皮膚をやられないように、ビニール手袋をし、更にその上に、軍手をしました。 軍手は、ビニ手が破れないように、クッションにする為です。 本来なら、ゴーグルやマスクも装着した方がいいようですが、今日は、そんなに大仕事をする気はなかったので、そこまでしませんでした。

  目標は、メッキ部品。 旧母自の場合、荷台、クランク、前籠ステー、スタンドです。 前輪スポークも亜鉛メッキですが、そちらは、別の処置方法を検討中なので、今日は手を出しませんでした。 ネット情報によると、酸で錆を溶かす場合、ドブ浸けが、最も効果的だとの事。 だけど、そんなに液がないので、チビチビと、ウエスに湿して、錆びている所をこすって行きました。 見る間に、ウエスが、ボロボロになって行きます。 さすが、酸だ。

  酸を使った後、そのままにしておくと、酸化が進んで、また錆びてしまうので、アルカリ性の洗剤をウエスに着けて、同じようにこすり、中和しておきます。 だけど、phは、目に見えるわけではないから、本当に中和できたかどうかは、怪しいところ。 液体なら、リトマス試験紙が使えますが、固体表面のphは、どうやって測るんでしょうねえ? いや、もし、専用の機械があっても、買うつもりはないから、知っても意味はないですけど。 しばらく置いてみて、錆びて来なければ、良しとします。。

  で、錆に対する、酸の効果ですが、確かに、落ちました。 だけど、びっしり錆に覆われている所は、一応、メッキの色は戻っても、手触りはザラザラで、目を近づけると、小さい穴がたくさん開き、鉄の地肌が見えています。 やはり、メッキ面の腐蝕も進んでいたわけだ。

  とりあえず、556を塗っておきましたが、塗った途端に、メッキが剥げている部分が、錆色に戻ってしまったのには、驚きました。 いや、元の錆びた状態よりは黒っぽい、目立たない赤なんですがね。 うーむ、化学反応は、分からん。 もう一度、最初から、やり直して、透明の錆どめ塗料を塗っておいた方がいいかもしれません。


  錆は、指が入らないような狭い所まで入り込んでいるので、ドブ浸けしたくなる人の気持ちは、良く分かります。 おそらく、半日くらい浸けておけば、ほとんどの錆は溶けると思います。 さぞや、気持ちがいい事でしょう。 だけど、ドブ浸けすると、メッキ面の内部の錆まで溶けてしまい、メッキの土台がなくなって、鉄の地肌が丸裸になってしまう恐れがあります。 極力、メッキ面を残すつもりでいる私は、それでは、困るのです。

  前籠ステーにせよ、荷台にせよ、スタンドにせよ、外して、折り畳んだり、分解したりすれば、ドブ浸けできない事はないです。 途中で、表裏を引っ繰り返すとして、水深2センチくらいあれば、足りるでしょうか。 トイレ・クリーナーをあと、2本くらい買って来れば、できそうです。 やりたくて、うずうずしているのですが、その後で、メッキ面が陥没するのを見るのは、怖い。 やはり、やめておいた方が、無難か・・・。


  どうせ、古い自転車ですから、どんなに錆をとっても、新品同様にはなりません。 目立つ赤錆が見えなくなれば、それでいいのです。 完璧を目指そうとするから、こんな風に、ドブ浸けの誘惑と戦わねばならんのですな。




  酸の錆取り体験記は、とりあえず、以上です。 正月三箇日に、こんな事をしていた人間は、あまり、いないのでは? 恐らく、酸に嵌まって、何でもかんでも、錆びた物を片っ端からドブ浸けしてしまう人もいると思うのですが、私の場合、やりたい気持ちと、「面倒だな」と思う気持ちが入り混じる結果となりました。 1月3日から、日にちが経つに連れ、「あまり、使いたくない」という気持ちが勝って行く有様。


  それにしても、メッキ処理というのは、困った代物でして、一度、錆にやられてしまったら、素人では、直しようがありません。 再メッキに出すなんて、検討するのも愚か。 そんな金があったら、部品を新品に買い換えてしまった方が、遥かに安く上がると思います。 いや、自転車ごと買い換えてしまった方が、安いかも知れない。

  どうしてまた、こんなに、メッキ処理が自転車の世界に広まったのでしょう? 自転車は、軒下に置かれる事が多く、半分雨曝しになるのは、想定内のはずなのに、錆びたら元に戻せない処理法を普及させるなど、国賊的行為ではありませんか。 実用車全盛だった時代には、メッキ部品なんか、ほんの僅かだったんですよ。 せいぜい、砲弾形ライトの中と外くらい。 他は、全部、塗装でした。

  それが、荷台やスタンドを、丸棒の溶接で作るようになってから、メッキが出て来るのですが、その時、表面処理を塗装のままにしておいてくれたら、こんなに、錆に苦しめられる事などなかったのです。 メッキの方が、見てくれがいいから、そちらが普及したのでしょうが、ピカピカしているのは最初だけで、半雨曝しにしていると、一年もしない内に、錆びて来ます。

  私の折自は、軒下置きとはいえ、カバーをかけていて、手入れの時には、メッキ部分を、556で拭いているから、錆が目につく所はないです。 しかし、メッキ面の上に、薄く錆が出ている事は、珍しくありません。 拭けば取れるから、「まだ、錆びていない」と思っていたのですが、これは、錆びていないのではなく、メッキの下では、錆が進行していて、メッキ面の微細な孔を通って、錆が浮き出しているのでしょう。 カバーをかけていても、所詮、程度の問題なのかも。

  前回も書きましたが、つくづく、一番安いタイプの、メッキではなく、黒塗りしてある自転車が羨ましい。 メッキより、ずっと、錆びた時の処置が簡単です。 いっそ、旧母自の、荷台とスタンドも、黒で塗ってしまおうか? いや、それはまた、決断を必要とされる事なのですが・・・。 そもそも、旧母自は、私が買った自転車ではないですし。


  話を、酸に戻しますが、錆が落ちるだけでなく、本体の鉄も溶かしてしまうので、「一晩、浸ける」といった使い方は、如何なものかと思います。 たぶん、頑固な汚れを洗剤で落とす時の、「浸け置き洗い」から連想して、「浸けておく時間が長いほど、錆が良く取れる」と思うんでしょうけど、錆びていない所まで溶けてしまうから、様子を観察していないと、部品が痩せてしまう恐れがあります。 特に、ボルト・ナットなどは、隙間が出来て、スカスカになり、締め付け力が足りなくなる危険性あり。

  どうしても、ドブ浸けしたいという場合、液量を、部品を浸せるギリギリに抑えておいた方がいいと思います。 液量が多いと、化学反応が続く間、どんどん、溶けて行ってしまいますから。 酸性液が、値段が安いにも拘らず、錆取りグッズとして売られていないのは、そういう問題点があるからではないかと思います。

  自転車専用の部品なら、仕方ありませんが、ボルト・ナットのような、汎用部品は、錆取りなんかするより、同じサイズの、ステンレス製の物を買って来てしまった方がいいかも知れませんな。 錆を落とした後には、何かしら、防錆処置をしなければなりませんが、ボルト・ナットに錆どめを塗る作業を、チマチマやっていると、つくづく、そう思います。 ステンレスは、大した発明ですわ。

  ネットで調べると、酸に、部品をドブ浸けして、「こんなに、綺麗になりました」というところまでは、紹介している人が多いですが、大抵、その後、どうなったかには、触れていません。 たぶん、防錆処置を怠ったか、遅れたかして、すぐに、錆びたんじゃないかと思うのですよ。 それまで以上に、真っ赤っかに。

  恥ずかしながら、今回初めて気づいた事なんですが、鉄という金属は、表面が地肌のままで使われる事は、まず、ないんですな。 錆どめ&塗装でも、メッキでも、焼入れでも、何かしら、防錆処置をしなければ、あっという間に、錆びてしまうのです。 地肌のままで使うといったら、刃物くらいですかねえ。 それでも、刃の部分以外は、焼入れしますけど。


  旧母自の荷台、左側ステーです。 左は、錆取り前。 右は、錆取り後。 赤茶色の錆は取れたものの、メッキ面は、穴だらけです。