免許返すか、命返すか
↑ この写真は、内容と無関係です。
あまり、時事ネタには喰いつきたくないんですけど、ちょっと、極端な例が出たので、触れておきます。 車を運転していた90歳の女性が、赤信号を無視して突っ込み、歩道に乗り上げて、1人を死なせ、3人に怪我をさせたという事故。
うーむ、90歳ですか・・・。 こんな事故を起こさなければ、聞いた人が誰でも感服するような年齢ですが、何とも、まずい事をやってしまいましたなあ。 とりわけ、死者を出してしまったのは、大変、非常に、この上なく、まずい。 せめて、ケガ人だけだったら、全然、印象が違ってくるのに・・・。
おそらく、この事故は、この人の人生の中で、最大の出来事だと思いますが、という事は、事故で人を死なせる為に、90年間生きて来た事になってしまいます。 そんな人生って、一体、何なんですか?
「赤信号と分かっていたが、歩行者が歩き出す前に通れると思った」という言い訳が、不気味なほどに恐ろしい・・・。 言い訳になっていない言い訳とでも言いましょうか。 つまり、この人、普段から、「赤信号でも、条件付きで、進んでよい」という運転をして来たわけだ。 これまで、大きな事故を起こさなかったのは、運が良かっただけだったんでしょう。
もう、だいぶ前の事ですが、歩行者側の話で、「大阪の交差点では、車が来なければ、赤信号でも渡る習慣がある」という事が、批判的に話題になりました。 それに対して、大阪の人が、新聞の投書欄に、「赤信号で渡って、何が悪い。 車が来ないのに、待っている方が、馬鹿だ」という文章を、堂々と書いていたのを覚えています。
いやー、まー、そういう考え方もあるんでしょうなあ。 だけどー、そういう処世術は、常にリスクを冒しているわけですから、事故に遭う時には、遭うと思いますよ。 当たり前だよねー、赤信号、無視してるんだもの。 なに? 青信号の方に、停まれって言うの? ムチャクチャだわ。
その時の体調も大きく関係していて、健康で頭がはっきりしている時なら、赤信号でも、車が来ないのを確認して渡る事が可能かもしれませんが、いつも、体調万全とは限りません。 信号を守るか守らないかは、習慣ですから、酔っているとか、風邪を引いて頭がぼーっとしているとか、体調が悪い時でも、つい、その習慣が出てしまいます。 「赤信号でも、車が来ない事を確認すれば、渡ってよい」が、条件が抜け落ちて、「赤信号でも、渡ってよい」になってしまったら、そりゃ、ハネられるでしょうよ。
一方、「どんな時でも、赤信号では、進まない」という習慣が身についている人なら、体調が悪くて、周囲の状況把握が疎かになっている時でも、赤信号さえ見れば、条件反射的に、進もうとしませんから、事故を起こす危険性は、ぐーんと低くなります。 これは、サバイバル能力の違いと言ってもいいのでは? 「交通ルールなんて、ケース・バイ・ケースだ」と公言しているような人達は、やはり、事故に遭って、早く死んで行く率が高いと思うんですよ。
話を戻します。 加害者が、赤信号でもアクセルを踏んだ理由ですが、「急いでいた」からだそうです。 しかし、別に、目的地へ急いでいたわけではなく、整備工場から出て来たところで、その工場の人が見送ってくれていたから、早く、そこから去らねばならないと思って、急いでいたのだそうです。
「ああ、そういうの、あるよねー。 いつまでも見送らせていると悪いから、早く行きたくなるよねー」とは、誰でも思うと思いますが、そのせいで亡くなった人や、その遺族は、「あるある」とは、思ってくれませんわなあ。 そんな、つまらない理由で、人の命を・・・。 大それ過ぎていて、頭がクラクラして来ます。
加害者は、車を運転するのが好きだったらしく、赤い車で、リヤ・スポイラー付き。 なるほど、事故さえ起こさなければ、「スーパー高齢者」として、人々を驚嘆させ、テレビ局が取材に来てもおかしくないような人だったんですな。 だけど、この事故で、一気に暗転したわけだ。 一般論として、事故を起こした時、スポーツ・タイプの車であるほど、色が派手であるほど、改造度が甚だしいほど、運転者の人格は悪く見られます。 カッコつけて、事故って、他人を死なせてたんじゃ、まるっきり、カッコつかんわなあ。
そういや、車体に、アニメやゲームのキャラを描いた、「イタ車」というのがありますが、ああいう車でも、事故を起こす事はあるんでしょうねえ。 被害者や、その遺族に、どの面さげて、謝るのかね? 穴があったら入りたいどころではないと思いますが。 いや、そもそも、イタ車に乗るような輩は、そういう恥ずかしさは感じないのかも知れませんな。 人を死なせても、虚構と現実の区別がつかない恐れあり。
ちなみに、ある年齢以上の人は、「イタ車」と聞くと、「イタリア車」の事だと思うので、相手が、キョトンとした顔をしているようだったら、説明してから話を進めた方がいいです。 相手が車に詳しい人であればあるほど、分かった後で、「なんだ! そういう車の事か!」と呆れられると思いますが、致し方ありません。 こんな紛らわしい言葉を流行らせた奴らが悪い。
話を戻します。 加害者は、「次の免許更新は、しないつもりだった」とも言っているそうですが、3年も先の話でして、鬼が三匹笑ってしまいます。 本当に返すつもりだったのか、周囲への牽制として言っていただけなのか、それも分かりません。 猶予期間を設けたがる人は、期限が来たら、また、同じ事を言う傾向があります。 もし、本気だったとしら、この事故を、地団駄踏んで後悔している事でしょう。
森加計問題や、日大アメフト問題など、白々しい嘘を平気で口にする連中が、世間の呆れと怒りを誘っている折から、この加害者が、正直に証言している点は、宜しいと思うんですが、その内容に問題があり、心理を曝け出しているだけに、「えっ! そんな下らない理由で、こんな重大事故を起こしてしまったの?」と、思わず、額に縦線が並びます。 とにかく、死人を出したのは、まずい。 どんな言い訳も、全て、戯言として一蹴されてしまいます。
加害者の家族は、当人の自殺に注意した方がいいと思います。 高齢だから、自殺をしないとは限りません。 とはいえ、なにせ、被害者を一人死なせてしまっており、その方とご遺族の無念を考えると、第三者が、加害者の事を心配するのは、なにか、おかしい感じもしますねえ。 自殺しても、責任は取れないですし、服役しても、お金の補償をしても、亡くなった被害者に償う事はできないでしょう。 他者の命を奪うというのは、大変な事なんだわ。
ここからは、完全に一般論ですが、高齢ドライバーの免許返納は、テストで篩い分けるのではなく、非情に、年齢で切ってしまった方がいいのかも知れませんねえ。 本人の意思に任せている限り、たまたま、テストだけ、うまく切り抜けたという人達は、自分から返したりはしないでしょう。
自転車か、電動アシストに乗り換えれば、どれだけ、気が楽になる事か。 車の維持費がかからなくなるから、生活にゆとりが出て来る人もいると思います。 車だと、どんなに安く維持しようとしても、年間8万円くらい、かかってしまいますが、自転車なら、最安、ゼロ円だものね。 保険に入っても、5千円くらい。 無収入の引退者にとって、この差額は大きいと思います。
ところが、車に執着している人に限って、自転車には、絶対、乗ろうとしないんだわ。 それまでの人生で、「自転車なんか、子供が乗るもの」と見下し、実際に自転車に乗っている人間を、「ああ、○○さんは、チャリンコしかないのか。 じゃあ、あんなとこまで、行けないなあ。 わははは!」などと、さんざん、コケにして来たので、いざ、自分が車に乗れなくなった時に、自転車を使う事に、心理的抵抗が大きいわけだ。
「車がなけりゃ、生活できないよ」というセリフ、高齢ドライバー問題を取り上げた報道番組で、どれだけ、聞かされた事か・・・。
「自転車にしたら、どうですか?」
「一番近いスーパーまで、3キロもあるのに、自転車じゃ行けないよ」
「んー・・・、楽勝で行けると思いますけど・・・」
なにせ、自転車に乗った事がねーもんだから、どのくらいの距離を、どのくらいの時間で行けるか、分かってねーのよ。 とりあえず、乗ってみ。 家に一台くらい、自転車があるでしょうに。 で、「自転車でも、車の代用になりそうだ」と分かったら、奮発して、電動アシストを買えばいいじゃないですか。 車の維持費に比べたら、安い安い。 2年で元を取ってしまいます。
くれぐれも、カッコつけて、クロスバイクを買ったりしないように。 血も涙もない言い方ですが、引退者がスポ自に乗ったって、カッコなんか、つきゃしません。 そもそも、車の代用にするなら、荷物が積めなくては、使い物にならんではないですか。
電アシにして、前籠に入りきらない買い物をした時には、スーパーで、タダのダンボール箱を貰って、荷台に縛って帰って来るのが、ベストですな。 そういう使い方をしている人こそ、「ああ、生活上手な人だなあ」と思ってもらえるのです。 それに引き替え、スポ自老人のイタい事よ・・・。
危険運転常習者の高齢ドライバーは、認知機能が落ちているわけですから、自転車に乗っても、危険と言えば、危険なわけですが、重大事故を避けられる点、自転車に乗り換えるメリットは、充分あります。
近年、免許を返す高齢者は、増加傾向にあるそうですが、良い事だと思います。 今回の事故で、「明日は我が身」と震え上がり、返納者が、一層、増えればいいですな。 そうなれば、命を落とされた方も、無駄に死んだわけではなくなりますから。 そうとでも思わないと、やりきれませんな、こういう事故は。 月並みな結びではありますが・・・。
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