2019/02/24

引退生活⑦ 【暇潰し「テレビ」】

  引退生活の心得の、7回目です。 そろそろ、終わりにしたいと思っています。 書き下ろしは、随分長い事、やっていなかったので、もう、書けなくなったかと思っていたのですが、やれば、やれるという事が分かったから、また、しばらく、やらない事にしようと思っています。




  「人間の、やる事」の、3分類。

1. やらなければいけない事。
2. やりたい事。
3. やってもやらなくてもいいけれど、暇潰しにやる事。

  今回は、最後の一つ、「やってもやらなくてもいいけれど、暇潰しにやる事」について書きます。


  「やってもやらなくてもいいけれど、暇潰しにやる事」などと書くと、最低にどうでもいい事のように聞こえると思いますが、どうしてどうして、なんのなんの、引退生活に於いては、この「暇潰し」というのが、大変、重要になって来ます。 最も重要と言ってもいいくらいに、重要。

  老後資金の蓄えがある、引退優等生的な方々ほど、「やらなければいけない事」が少なく、「やりたい事」は節制するので、勢い、「暇潰し」しかやる事がなくなる傾向があります。 で、暇潰しの仕方を工夫しないと、やはり、見る見る、廃人化して行くのです。 濡れ落ち葉になり、配偶者にへばりついているなんて、まだいい方で、何もする気がなく、ただ、ボーッとしているだけ。 それを、廃人と言わずして、何と言おう。 もちろん、認知機能も急激に低下して、すぐに、要介護になります。

  暇潰しの方法を一つ一つ、見て行きましょう。


【テレビ】
  引退後の暇潰しといったら、これに頼っている人が、最も多いと思います。 あまりにも、普通に利用されているので、空気のような存在になり、暇潰しの内にさえ入れていない人も多かろうと思います。 朝から夜まで、ずっと、テレビ。 そして、その、ほとんどの時間を眠っていると・・・。 いや、それは、うちの母の事ですが。

  テレビは、暇潰しには、大変有効な利器なわけですが、見過ぎるのは、どうかと思います。 テレビを、長時間、見続ける行為自体が、廃人的だからです。 そうそう面白い番組ばかりあるわけではないですから、ボーッと画面を見ているだけになりがちで、それでは、廃人と変わらないではないかというわけです。

  一日に、3・4時間くらいが、ちょうどいいんじゃないでしょうか。 それを超えている人の場合、考え方を換えて、他の暇潰しを捜す努力をした方がいいと思います。 同じ、居間に座って過ごすのであっても、パズルをやるとか、本や雑誌を読むとか、暇潰しのバラエティーを広げた方が、脳の刺激になって良いでしょう。


  逆に、テレビを全く見ないという人もいると思いますが、それはそれで、問題。 趣味に没頭したり、遊びに出かけたりするのに夢中で、テレビも新聞も、ネットもやらず、社会全体の情報から隔絶していると、他人との会話に支障を来すような、重度の世間知らずになってしまいます。

  現役であっても、50代以上の人で、感覚が若い頃のまま、停止している人というのは、珍しくありません。 たとえば、世界情勢の話題になると、まだ、冷戦が続いているようなつもりでいるとか。 80年代で頭が停まっていて、未だに、日本の家電メーカーが、世界を牽引していると思っているとか・・・。 いや~、いるいる! ネット通販のレビューを書いている連中なんて、そんな奴ばっかりだ。

  引退者になると、ますます、それがひどくなるわけだ。 状況というのは、時々刻々、変化して行くのだという事が理解できず、自分が、それを最初に頭に入れた時の状況が、永遠に続いていると思い込んでいるんですな。 とっくの昔に時代遅れになった知識をひけらかしている老人を見ると、絶望的に憐れになって来ます。


  とはいえ、それも、程度の問題でして、自分の人生とは、全然、関係がないニュースに、激怒したり、感激したりしているのも、どうかと思いますねえ。 国際情勢なんて、引退者には、限りなく、関係が薄いです。 どこで、何人、死人が出ようが、あなたと、何の関係があるというのよ? 怒ってばかりいると、性格が、どんどん、悪くなりますよ。

  また、同国人の、スポーツ選手や、芸術家、芸能人、学者、技術者などが、何か、大きな功績を上げたからといって、まるで、自分の事のように大喜びするのは、大変、大変、おこがましいです。 功績を上げたのは、その本人であって、あなたではありません。 あなたは、何もしていません。 ふふふ、何もできないじゃないですか。 くれぐれも、人の褌で相撲を取らないように。 恥ずかしい。


  テレビ番組の選択は、個人の好き好きなので、私が、どうこう言う事ではないです。 それを承知で書くわけですが、歳をとると、見れなくなる番組というのは、確実にありますねえ。 若者が中心的登場人物のドラマは、典型例。 その中でも、学生の話なんかは、典型中の典型で、全く、見るに耐えません。 幸い、学園物のドラマが、ほとんど存在しないから、都合が良いのですが。

  では、年配の俳優ばかり出るドラマなら、見たくなるのかというと、それもまた、駄目でして、脚本・演出などのスタッフが、若ければ、高齢者の考え方が分からないから、ろくなドラマにならず、逆に、スタッフまで年寄りだと、やたら、人情物の話ばかりになったり、お涙頂戴になったりで、やはり、ろくなドラマになりません。、

  そういえば、新作2時間サスペンスの放送枠が、全ての局から消えるそうですな。 無理もないか。 主役級の俳優さん達が、歳を取り過ぎて、明らかに、おかしな世界になってしまっていますからねえ。 70歳を過ぎた人が、定年前の刑事を演じているシリーズは数知れませんし、演じている俳優さん達が、二人とも還暦近いのに、まだ、婚約者同士というシリーズもあります。 これから、結婚するんですか? ありえねーと思いますが。

  原作になっている推理小説の時代設定が、古くなり過ぎたシリーズもあります。 戦時中の事件が元で、その復讐が、今現在行われているなんて話は、とっくの昔から、もう、無理でしょうに。 若くても、80代の人達が、復讐ですって? 馬鹿馬鹿しい。 ボケたって、そんな事はしませんよ。 比較的、主人公が若い、浅見光彦シリーズに、そういう古い設定の話が多いのは、痛いですなあ。

  松本清張作品は、割と、時代を換え易いですが、「銀座のバー」は、古いで。 あれは、もう、とっくから、あかんで。 今でも、銀座のバーは存在すると思いますが、そういう問題ではないです。 今の現役世代が、出入りするような所ではなくなっているというのです。 1980年代頃ですら、「銀座のバー」は、すでに、古かったと思います。

  2時間サスペンスは、過去の作品の再放送が、BSで、いくらでも見られるから、新作に拘らなくても、見足りなく感じる事はないと思います。 70年代後半から、すでに、スタートしていたわけですから、その頃の作品も放送してくれれば、見るんですがねえ。 なぜか、90年代後半以降のばかり、多いです。 時代劇の一時間物は、70年代の作品でも、放送しているくせに。

  あと、韓ドラですが、嵌まると、どんどん、見る本数が増えて、週に、20作くらい、起きている間は、一日中見ているという生活になります。 新作ドラマとしては、日本の一時間物より、明らかに、レベルが高いので、見始めると止まらなくなってしまうんですな。 日本のドラマで、対抗できるのは、懐かしさで、評価点が加算される、2時間サスペンスの再放送だけ。 

  面白いのだから、見なければ損なのですが、見過ぎると、病的な生活になってしまいますから、ブレーキをかけるべきです。 とりわけ面白そうな作品だけ、一日、2本くらいにしておけば、いいんじゃないでしょうか。 なーに、再放送も多いから、長い期間でみれば、大抵の作品は、見る事ができるはずです。


  バラエティー番組ですが、見れる間は、見ていた方がいいと思います。 その内、感覚がズレて来て、見れなくなってしまいます。 常に、若い人向けに作っているカテゴリーだから、それは、致し方ない事です。 私が最後まで見ていたのは、「イッテQ」ですが、引退してから、間もなく、見れなくなってしまいました。 自分の生活と、番組の中で出演者がやっている事の差が大きくなり過ぎて、見るに耐えなくなったのだと思います。 他のバラエティー番組は、尚の事。


  他に、意外に見れなくなるのが、教養番組でして、引退したら、「これ以上、何かを習っても、意味がない」と思えて来て、急速に、興味が衰えました。 「ぶらぶら美術・博物館」や、「地球ドラマチック」、「放送大学」など、全く見なくなってしまいました。 「ブラタモリ」は、まだ見ています。

  私とは逆に、現役時代を俗物として過ごした人達は、引退後、時間のゆとりが出来て、知識・教養に興味が湧いて来るというケースもあるかも知れませんな。 結構な事だと思いますが、俄か知識を、他人にひけらかしたりしないように。 自慢なんかしなくても、知らなかった事を知る事だけで、充分に面白いはずです。


  あと、旅番組は、貴重です。 お金の関係で、自分で旅に出る事ができない場合、テレビを見ているだけで、日本全国、世界のあちこち、名所旧跡・景勝地を見られるのですから、これほど、ありがたい事はない。 もっとも、日本国内に限っては、2年間くらい、いろんな旅番組を見ていると、どこもかしこも、全て、見尽くしてしまいますけど。

  旅番組は、BSの方が盛んですが、最近、地デジ局が真似し始めて、些か、問題が起こりつつます。 「俳優や二流タレントでも、うけるのだから、第一線の芸人を旅人にすれば、もっと、面白くなるだろう」と、単純に考えているらしいのですが、第一線の芸人というのは、普段、ほとんど、芸能人同士でしか話をしていないので、一般人への接し方が分かっていません。 地元の人に、ツッコミを入れたり、からかったりしているのを見ると、ゾーッとします。

  いつか、相手を怒らせて、喧嘩になり、問題が起こるんじゃないでしょうか。 地方の一般人も、芸能人の旅人が礼儀正しければ、ニコニコ笑って、普通の旅行者よりも余計に歓迎してくれますけど、揚げ足を取ったり、からかって来たりする奴に、いつまでも、笑顔でつきあってはくれないでしょう。 なんで、赤の他人に、からかわれなければならんのよ?




  暇潰しの項目は、まだあるのですが、長くなったので、次回に回します。 書いている本人、つまり、私ですが、その意思に反して、このシリーズ、なかなか、終わりませんなあ。